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徒然日記 ~2018/07/03~

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田口章太郎「松井秀喜の五打席連続敬遠。一九九二年八月十六日、夏の全国高等学校野球選手権大会で、星稜の松井に対して明徳義塾が一度もバットを振らせない作戦を敢行した……いやぁ、あれは酷い! 酷過ぎる! だって、敬遠はルールに則った立派な戦術でしょ? 頭に来ましたよ。『全打席敬遠してまで勝負に拘るのは教育上考えられない』。将又『教育上、高校生なら正々堂々と戦うべきだ』なんて……だったら、最初から敬遠をルールとして認めなきゃいい話じゃないですか。全力で逃げる戦い方だってある筈だ。『教育上』といえば、そのルールさえオカシイことになってしまう」

 

先日発表した上半期ベスト5入りを惜しくも逃した『やけ弁』。第一話冒頭の神木君の長台詞。『教育』を『フェアプレー』に言い換えると、色々と思うところがある今日この頃です。そういや、グループリーグ直前に『今まで日本代表が勝ったのは数字のナントカとナントカがついた日なので、今回は勝てるかも!』という一部マスコミ報道もありました。

 

「敵要塞への総攻撃は二十六日! 理由? 二十六は偶数だから割り切れる! つまり、要塞を割ることが出来る!」

 

という明治時代の発想からまるで成長していない……そりゃあ、司馬さんも兵も死ぬであろうとか火の玉ストレートの文章を書きますよ。あらゆる意味でフットボールは国民性がダイレクトに出るスポーツ。はっきりわかんだね。今回の話題は二つ。

 

 

1.『西郷どん』第二十五話『生かされた命』簡易感想(ネタバレ有)

 

深夜にツイッターで録画実況している『西郷どん』。私の帰宅時間の影響で何時に始まるか判らないのですが、毎回、天河真嗣さんやMasaさんやRIE-BOHさんにおつきあい頂いております。皆さん、一度本編を御覧になっているにも拘わらず、初見の私に話をあわせて下さいまして、本当に感謝に堪えませんが、今回は幕末薩摩大河で薩英戦争完全スルーという悪夢の如きオチを既に御存じであった訳で、確実に絶望のズンドコに叩き落されるに違いない私の、それも、砲撃で部屋が吹っ飛ぶ予告動画に釣られて投稿した『西郷大河で薩英戦争をやらないなんてあり得ない』なんてツィートを如何なる目で御覧になっていたのかと思うと、些か複雑な心境ではあります。これでは道化だよ。まさに、

 

与力「汚いぞNHK! 卑怯だぞNHK! 薩英戦争なんかなかったんだ!」

天河真嗣さん「でも、僕観ていて途中で分かっちゃった。薩英戦争ないなって(諦めの境地)

 

を地で行く展開。この『おやきネタ』を振って即座に返信してくれた天河さんって凄い。

さて、冒頭で触れたように幕末薩摩大河で薩英戦争完全スルー(大事なことなので二回赤字で書きました)という暴挙に出た『西郷どん』ですが、その陰に隠れて、

 

馬関戦争

八月十八日クーデター

参与会議体制崩壊

一会桑政権誕生

 

などの重大事件もクソミソにスルーされたのを見落とすべきではないでしょう。これに比べたら、本作の生麦事件の描写がショボ過ぎたことなんぞ、大した問題ではありません。特に、

 

一橋慶喜「酔って叫んで何が悪い! ジゴロー! ジゴロー!」

 

というラストタイクーンの暴言に端を発する参与会議体制崩壊&一会桑政権誕生を描かないと、何で吉之助サァが沖永良部島から召還されたのか、その理由が全然判らないと思うのですが……そして、八・十八クーデターをスッ飛ばしたら、近々に放送されるであろう禁門の変で薩摩と長州が戦う理由も不明なままではないでしょうか。前々回の放送で吉之助サァと久坂玄瑞は仲よく酒を酌み交わしていたのに……その彼らが何故、ドンパチすることになったのか、その原因を全く描かないのは控え目にいって異常です。まぁ、次回の放送で回想的に描く可能性も微レ存なので、迂闊に突っ込むのは控えますが、そもそも、薩英戦争も『異国の文明や技術を習得すべし』と説いていた斉彬の偉大さを回顧するのに好適の事案であったのにも拘わらず、何でスルーしたのか。本作は登場人物の有能さをモブキャラに褒めさせるだけで描いた気になっているんですよねぇ。そして、それらの重要案件をガン無視した代わりに何を描いたかといえば、

 

 

うーん、この変態クーデリア仮面。次回は『革命篇』に先駆けての特番とのことですが、重要な政治劇の要素を削ぎ落したガリガリの本編を、明治維新というゴールに持っていくほどの凄い内容なのでしょう。身体の震えがとまりません、悪寒で。ついでに、今回も無駄に愛加那とのイチャラブをゴリ押ししておきながら、吉之助サァとイトサァをどう結びつけるのか、その展開も楽しみで仕方ありません、悪い意味で。

 

 

2.『銀河英雄伝説 Die Neue These』簡易総評(ネタバレ有)

 

先日、甥っ子と話す機会がありまして、丁度いいから新銀英伝の感想を尋ねたところ、

 

「お父さんは『新版のキルヒアイスは内面から滲み出る優しさが表現出来ていない』っていっていた」

 

と答えたのを聞いて、大爆笑してしまいました。いや、判るよ! 俺も全く同感だよ! 新版のキルヒアイスの優しさはラインハルトとアンネローゼにしか向けられていない感が半端ないよ! でも、自分の兄貴の口から内面から滲み出る優しさなんて道徳の教科書みたいな言葉が出るとは思わなかったよ! 甥っ子には私が笑った理由を口止めしておきましたが、個人的に今年一番のネタなので、ブログで書いちゃった。すまん、兄貴。子供の頃、俺の手をエアガンのマトにした件はチャラにするから勘弁して下さい。

さて、先日TVシリーズの放送が終了した『銀英伝』。原作も旧版も大人気の作品なので、放送前は賛否両論が噴出するんだろうなぁと予想していましたが、意外なことに(少なくとも私が見聞きした範囲では)皆、概ね同じ場面で興奮して、同じ場面で残念がっているケースが殆どでした。勿論、私も同様です。上記のキルヒアイスの件を筆頭に、イゼルローンのキャゼルヌの執務室の手書き&セロテープ表札のシーンは『流石は実務の鬼! 無駄な装飾に割く時間と予算と労力を惜しんでいる!』と唸らされる一方で『何でクリスチアンとベイがつるんでいるんだよ~! コイツら、ヤンと相性が悪いだけで、軍部での立ち位置は全然違うじゃんかよ~!』と愚痴ったり、皆、考えることは同じだなぁということばかり。これって凄いことですよね。銀英伝という作品はキャラクターの造型が殆ど全てのファンの間で概ね並列化されているのですよ。これほどにパイの広い作品なのにファン同士のキャラクター解釈にブレがない。しかも、それが主人公級のキャラクターに留まらず、端役にまで及んでいる訳で、こういう作品はもう現れないんじゃあないかと確信できたのが、本作の放送の一番の収穫でした。最終回はアムリッツァに届かなかったのが残念ではありますが、十万隻の追撃戦が展開されるアムリッツァは劇場映えする戦いなので、続編の劇場版は冒頭からクライマックス待ったなしと思うことにしましょう。

最後は上記のキルヒアイス、キャゼルヌ、ベイ&クリスチアンの三つを含めて、本作で善かれ悪しかれ印象に残った場面10選で〆にします。

 

4 ルビンスキー役に手塚秀彰さん

 

第一部最後の大物を演じるのは誰か、長らく気を揉んでいましたが、ここでジンネマンの登板! ド嵌りにも程があるだろ! 手塚さんの相手役ということでドミニクは甲斐田さんかと思いましたが、こちらは予想を外しました。まぁ、甲斐田さんはヒルダ役ありそうだからね、仕方ないね。

 

5 ブルームハルト老け過ぎ問題

 

原作でシェーンコップに童貞を揶揄われた&旧作でイケメンキャラであったため、ファンの間でも童顔系の印象が根強かったブルームハルト。しかし、蓋を開けてみるとシェーンコップよりも老け顔というキャラデザに批難殺到。あれ、絶対に旧作のデア・デッケンのキャラデザの資料が何処かで入れ違ったんじゃあないかと思う。

 

6 トダさんイケメン問題

 

こちらは旧版とは真逆にイケメン過ぎる整備士となったトダさん。因縁の相手であるポプランよりもモテそうなのはどうかと思うんですけど……でも、ポプランとの乱闘を単なる個人的な喧嘩ではなく、アムリッツァ前哨戦の補給不足と関連づけたシナリオはGOODでした。ガンダムでもパイロット食とか特別でしたからねぇ。

 

7 レムラー少佐ぐう有能説

 

イゼルローン攻略戦でシェーンコップが持ち込んだ偽造ID。機器認証では問題なしと表示されているにも拘わらず、敢えて『贋物ではないのか?』とシェーンコップにカマをかけたレムラー少佐の慎重さに唸らされました。尚、初見ではドイツ語読めないから、何やっているのは一瞬判らなかったのは内緒だ。しかし、帝国の要衝にある認証機器を誤魔化すレベルのIDを用意したキャゼさん、何者なの……? この人、ヤンやシェーンコップとは違う意味で化け物だろ。

 

8 ヤンの一人称『俺』問題

 

過去編の一回のみの台詞とはいえ、本作で一番の痛恨事はこれ。ヤンも若かったということかも知れないが、しかし、ヤンが自分のことを『俺』というのは聞きたくなかった……何? 幾ら何でもクレームが細か過ぎる? ラインハルトの一人称がボクだったらおかしいだろ? それと同じことだ。

 

9 二代目オーベルシュタイン、先代に寄せ過ぎ問題

 

全編を通じて『これは塩沢さんの未公開収録分か?』という、絶対にあり得ない錯覚に囚われ続けた諏訪部版オーベルシュタイン。ここまで見事に先代のイメージを保持したキャラクター継承は滅多にありません。私の中で二代目ブライトさんに匹敵する事案です。流石はオクレ兄さん。これで軍務尚書は@100年戦える!

 

10 フォーク&トリューニヒトが一見マトモ過ぎる問題

 

パッと見はサンフォード議長と区別がつかなかったトリューニヒトと、同じく、一見するとヤンよりもマトモそうに描かれたフォーク准将。フォークは声優的に万死に値するというスタッフの隠れたメッセージがあったと思うことで自分を納得させられましたが、希代のアジテーターにしてポピュリズムの体現者であるトリューニヒトの、マトモそうなキャラクター造型に抱いた違和感は容易に晴れませんでした。しかし、或る友人から、

 

「そりゃあ、パッと見でアジテーターと判る政治家には誰も投票しないでしょ? あとになってから有権者が『こんな人を選んだ筈じゃあなかった』と頭を抱えるのが民主主義の恐ろしさなんですよ」

 

との解説を聞いて、すげー納得した。ひょっとすると、本作のトリューニヒトは中盤以降、一気に大化けするのかも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


徒然日記 ~2018/07/10~

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来月発売予定の『ファイプロワールド』で使える技リストにスモールパッケージボムがあると知って、地味にテンション爆超状態の与力です。知った日は興奮で朝になっても寝つけませんでした。いや、現実の使い手本人は決して好きではないのですが、あの技は私の脳内にいる或るオリジナルレスラーのフィニッシュホールドにドンピシャなのよ。上半期の『風雲児たち』と『よりもい』の圧倒的ツートップを脅かす……否、覆す可能性が出てきました。これは寝不足待ったなし。今のうちに下半期の予定を整理しておかないと大変なことになりそうな予感。

夏アニメも放送前から期待していた『はたらく細胞』と『あそびあそばせ』が立て続けに当たりで超満足。特に『あそびあそばせ』の先っぽだけ真実はいつも一つ舐めてみたけどタダの水っぽいのシーンは翌日、腹筋が筋肉痛を起こすと覚悟しました。両方共原作は未見ですが、これは『宇宙戦艦ティラミス』と同じく、アニメで面白さが倍増する系の作品ではないかと思います。残る視聴予定作品は『京都寺町三条のホームズ』『ぐらんぶる』『アンゴルモア元寇合戦記』。ドラマでは『極道めし』に注目。いやー、これは寝れねーわー、この夏寝れなくてつれーわー。そんな訳で今週も短目の徒然日記。話題は二つ。

 

 

1.『西郷どん』スペシャル2『いざ革命へ! 西郷と四人の男たち』簡易感想(ネタバレ有)

 

 

今週の『西郷どん』の感想は本編がお休みのため、ありません。代わりに放送された『西郷どん』の特番バラエティは見ましたが、そのバラエティ自体が本編に負けず劣らずのクオリティでしたので、マトモな感想を書く気も起きません。そりゃあ、本編のクオリティ自体がアレなのは百も承知ですよ? でも、番宣用のバラエティなのに誰一人ドラマの内容に一言も触れないってどういうことなの? 嘘でも出まかせでもいいから、視聴者に本編を見たいと思わせないでどうするの? 兎に角、不自然なほどに誰も何もドラマ本編を語ろうとしない異常さが印象に残りました。何というか、

 

生放送で大御所俳優のヅラが落ちたのに、誰もそれに気づかないフリをして、台本通りのトークを展開するバラエティ番組を見ているような居心地の悪さ

 

とでもいいましょうか。しょっぱい例えですみません。或いは制作陣が本編には触れるに足る内容がないことを言外にアピールしているのかも知れません。

いやね、それでもね、役者さんの頑張りは伝わってくるのよ。銀さんも師匠もピュア勝も山川も、それぞれ、キチンと御自身が演じる人物の分析と演技プランを練っておられるのが、インタビューから感じ取れるのよ。特に桂は山川ファンの私でさえ、

 

「悔しい……でも、玉鉄の桂、似あい過ぎて見入っちゃう!(ビクンビクン)

 

と心の中でアヘ顔晒すレベルの完成度でしたよ。何で俳優個々人がキチンと出来ていることを制作陣は出来ないのか。

スタジオ収録分の唯一にして最高の見どころは、

 

「これまで西郷どんはタダのいい人っぽい感じなんですよ!(赤文字部分・筆者註)

「皆に好かれて仲間がいるなんていうのは、ひょっとすると、島国の日本人の甘えなのかも?」

「長州の藩士って偏った人多いんですよ!」

 

という磯田さんのコメント。時代考証担当者としての本音ダダ漏れで草生える。正直、どの芸人やタレントのコメントよりも面白かった。あの番組で一番バラエティ慣れしているんじゃあないかと思いました。

そして、続々とあがってくる追加キャストの情報。来島の爺さんに長州力とは……何だ、これは……たまげたなぁ。いや、ヴィジュアル的&出身地的には四分六でアリですが、何となく雰囲気で何をいっているか判る奄美編でも字幕を出している以上、この人の台詞でも字幕は必須でしょう。『GO』でスズムシを演じたドラゴンとどっちの滑舌が上か。プヲタ的には非常に興味深いネタではあります。

 

 

2.言葉と宗教というものの把握を(二〇一八年改訂版)

 

 

多分、中学時代に一番読み返した本。

初見の頃は戦国史に詳しくなかったので、鈴木重秀が金ケ崎の退き口に参戦していたと本気で信じ込んでいました。その意味でエンタメ路線に全振りした司馬さん作品の一つの到達点ではないかと思います。序盤で描かれた秀吉と寧々の濡れ場に興奮したものですが、歴史上の人物の【チョメチョメ】で盛りあがるとか、今考えると当時から随分と闇が深いな、俺。

それはさて置き、本作は孫市視点で石山合戦が描かれているため、基本的に本願寺のダークサイド描写は控え目ですが、司馬さんも書いている途中で素に戻る瞬間があったのか、文章の端々で本音をぶっちゃけておられます。

 

「石山本願寺はすでに思想的な山師になり果てている。南無阿弥陀仏は極楽への呪文におちぶれ、宇宙の絶対唯一神であるはずの阿弥陀如来は野卑な現世利益の匂いを帯びはじめていた」

 

とか、主人公が与する陣営の評論とは思えない冷酷さで、当時の私はエゲツナイ宗教があったものだとドンびきしました。しかも、数日も経たないうちに我が家の御宗旨が、その『エゲツナイ宗教』と知って倍率ドン。更にドンびき。ちなみに勤皇派のほうです。この点でも穏健的佐幕派の私とは相性が悪い模様。余談は兎も角、この時の衝撃が契機となって、随分と宗教に関する書籍を読み漁ったのを覚えています。それこそ、昨年の記事で書いたように注連縄の一件で父親にこっぴどく叱られたトラウマを持つ私は、宗教へのモヤモヤ感を論理的に整理したい欲求が根底にあったのでしょう。そして、最終的に到達した結論は、

 

「本来、教団というものは人の悪いものだ。古来、どの宗教どの宗派にもこの点はかわりない」

 

という、まさに『尻啖え孫市』で司馬さんが述べた一文そのままでした。出発点が到達点という古典的なオチでしたが、旅の苦労を知った者のみが家の中に青い鳥を見つけられるのも、また真理ですね。数年後、これも司馬さんの言葉を借りると元兇のおぞましさについては書く気もおこらない事件が発生した際、

 

「何故、宗教団体がこのような事件を起こしたのか」

「今回の事件は現代日本の抱える精神的病理が根底にある」

 

という当時の世論に違和感を覚えた私は、所属していたゼミの論文会で、他の宗教の歴史や習慣を事例に挙げて反論(≠擁護)したものです。尤も、教授を含め、周囲の反応は実に冷ややかでした。まぁ、自分の御宗旨を犯罪組織とクソミソにされて喜ぶ人は絶対的少数派ですから、残当な結果といえるでしょう。

先日の一連の報道を契機に、久しぶりに『尻啖え孫市』&当時の自分のゼミ論を読み直している今日この頃。この前年のゼミ論では差別用語の規制問題について書いていました。当時から表現規制には敏感に反応していたようです。実際、当時と今を比べると表現規制は明らかに進行しているのよ。『尻啖え孫市』も手元にある新装版の奥付に、

 

「本作品中には、今日では差別表現として好ましくない用語が使用されています。しかし、戦国時代を背景にしている時代小説であることを考え、これらの『ことば』の改変は致しませんでした。読者の皆様のご賢察をお願いします」

 

との『おことわり』が入っていますが、ン十年前の旧版を読んだ人間的には新装版の、

 

「わしは足がわるい。それでもわしを好くか」

 

という台詞に思いっきり改変しているやんけとのツッコミを禁じ得ませんでした。孫市がぽるとがる様に告白する名場面なのに……尚、原文がどう書かれていたかは皆さま御自身で御確かめ下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『西郷どん』第二十六話『西郷、京へ』感想(ネタバレ有)

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与力「……ご、ごめんなさい。俺、俺、反省します……先週の『西郷どんSP2』を作ったスタッフの皆さん……今週の放送を視聴して何の見所もない本作をベースに何とか番宣をデッチあげた皆さんの苦労が身に染みて判りました。あの番宣を制作したということは! それだけで『ありがとう!』ということなんですね! 今回はそれが判っただけでも収穫だ……!」

 

……という訳で、先週ボロクソに貶した筈の『西郷どんSP2』のほうがまだしもマシな内容で終わった今週の『西郷どん』。『SP2』は新規キャストのインタビューは面白かったですし、磯田さんの本音ダダ漏れコメントも底意地の悪い視点で楽しめたからなぁ。それに引き換え、本編は全く見所ナッシング。番宣よりも本編のクオリティのほうが低いという、ある意味革命的な内容でした。まさに革命編の開幕に相応しいですね、勿論、悪い意味で。

尚、本来は『ぐらんぶる』とか『アンナチュラル』とか『海帝』とかの感想も書くつもりでしたが、職場の三週連続イベント企画の影響で疲労困憊甚だしいので、今回は『西郷どん』のみとさせて頂きます。上記三作品については何とか時間を捻り出して書きたいんだよなぁ。特に日本の第一線級の漫画雑誌で鄭和が主人公の物語が連載されるなんて、これこそ、革命的な出来事ではないかと思いますので。感想のポイントは3つ。

 

 

1.御屋形様は転生なされた!(イケボ

 

勝海舟「西郷? 何をやった男だ?」

 

アバンタイトルで全視聴者の心情を代弁したエンケン勝安房。見た目はピュア勝そのまんまですが、中身は直江状の朗読途中に鼻で笑ったセコム兼続並みの毒舌です。ピュア勝からダーク勝への華麗なるジョブチェンジ……じゃない、転生といえるでしょう。このダーク勝でしたら、第二次長州征伐の講和交渉の途中で慶喜に梯子を外された時も、

 

勝海舟「忘れたですむ話ではない……ような気がする」

一橋慶喜「安房、声が小さい! 耳に入ってこぬわ! ぁあ?」

勝海舟「……何でもござらん!」(半泣き半ギレ)

 

とはならないと思う。いや、それはそれで見てみたいけど。

しかし、このアバンタイトルでの岩公、勝、龍馬の登場のさせ方の稚拙さときたら……ハッキリいって、このシーンは物語の進行と全く関係なかったじゃあないですか。ただ出しただけ。『こちらがこれからの重要人物ですよ~♪ 覚えておいて下さいね~♪』という視聴者を舐め腐った&手抜きにも程がある紹介。岩公や勝や龍馬が幕末のキーマンなのは、いわれなくても判っていますよ。大事なことは彼らを如何なる解釈で描くかでしょう? 重要人物の登場はキチンとストーリーと絡ませる、或いはそれぞれのキャラクターをたてながらやるものではないでしょうか。第一次&第二次大阪編突入時にストーリー展開とキャラクター設定を同時に進行させた『真田丸』の手際のよさを見習え。

 

 

2.一分で判(った気にな)る文久~元治講座

 

西郷吉之助「オイたちはほんのこて嫌われているようじゃの」

 

京洛で何時の間にか長州から目の仇にされている薩摩。吉之助サァが二度目の遠島を食らう直前、有馬新七たち等と共に宴席の場に長州の久坂玄瑞が居合わせたことを御記憶の方もおられると思います。あの時は曲がりなりにも共闘関係にあった長州と薩摩が何故、いがみ合う間柄になってしまったのか。ここの過程がズッポリと抜け落ちているので何時の間にか長州が何となく悪者にされている感が半端ないのですよ。まぁ、この時期の長州に関しては『自業自得』『自縄自縛』の要素が強いので、全く同情出来ないんですけれども、流石に今回は可哀想。一応、今回に至る流れを超簡単に説明しておくと、

 

薩摩「久光公が上洛なさる! 武力で幕府を倒して攘夷親征の魁となる!」

長州「マジかよ三郎最高だな! 幕府を倒せるなら俺らも力貸すわ!」

三郎「は? 俺の目標は公武合体と幕政改革なんですけど? つーか、帝から京の治安を任された手前、過激派はウチの藩士でも(物理的に)斬り捨てるわ」

長州「マジかよ三郎最低だな! もう薩摩なんか信用出来んわ。俺らだけで攘夷と倒幕やったるわ(テノヒラクルー)

帝「攘夷の詔を下しておいたぞ」

長州「やったぜ、下関を通過する異国船砲撃するわ」

米仏「民間船を砲撃するとは許せませんね。報復します」

長州「グエーやられたンゴ」

三郎「俺の行列横切った英国人斬り捨てたぞ」

英国(本音:大名行列に割り込むとかアホちゃうか)これは大英帝国に対する挑戦ですね。報復します(キリッ)

薩摩「おっやんのか?」

英国「なんやコイツ、意外と手ごわいやんけ。戦うよりも商売の相手にしたほうが儲かりそうやな」

長州「おい薩摩。何、異国と商売してんだよ? 攘夷親征が帝の御意志だっつってんだろ?」

薩摩「……はぁ、コイツうっざ。会津の兵力利用して長州追い落としたろ!」

会津「いいよ」

長州「ああああああああああああああああああああ!【略

慶喜「三郎の奴、意外とヤベー。コイツ追い落とさないと何時か幕府乗っ取られるわ」

三郎「やったぜ。これで安心して幕政改革に専念できるわ」

慶喜「中川宮、薩摩の金で食べる飯は美味いか?(泥酔のフリ)

参与会議メンバー「ああああああああああああああ!【略

慶喜「やったぜ、これで安心して幕政改革に専念できるわ」

長州「長州追い落としは薩摩と会津の陰謀! 帝は彼らに操られている!(ギャーギャーギャー)

三郎「……はぁ、もうヤダ。薩摩に帰るわ」

一蔵「まぁまぁ、多方面に顔が利く西郷なら手詰まりの局面を打開できますぜ(企み顔)

 

多少、時系列が前後していますが、概ね上記の流れではないかと思います。まぁ、時系列でいったら、今回の一蔵サァの畳回しももっと前の逸話だからね、多少はね。正直、これでも物足りないという自覚はありますが、肝心の『西郷どん』はこれすら描けていないので仕方ないね。それにしても、改めて書き起こすと薩摩に対する長州の悪感情は逆怨みでしかないことがよく判るな。さっき、長州が少し可哀想と書きましたが、やっぱり訂正しますわ。

 

 

3.今更感210%

 

西郷吉之助「攘夷か開国か、それを考えるためにも、まずは民の暮らしを守ることを考えてたもんせ」

 

その民を守るための政策として攘夷か開国のどちらを選ぶかって話をしているんだろ? 頭湧いてんのか?

 

事、此処に至って、物語の根本を覆すような吉之助サァの一言。何で今更、そんなことが議論のタネになるのか、サッパリ判らない。てめぇの頭はハッピーセットかよ? 案の定、慶喜にちょっとなにいっているかわからないと呆れられる始末。よりにもよって、慶喜にこんなことをいわれるようじゃあ、人間としてオシマイな気がするのですが。しかも、ここまで偉そうなことをいっておきながら、肝心の三郎の説得に失敗するや、

 

西郷吉之助「オイの力不足にございます。こんとおりにございもす。お許し下さいませ(ドゲザー)

 

これが今回の序盤に『オイにできるこつがあったら何でも言うてくいやい』とドヤ顔で宣った男の台詞である。土下座以外に交渉のスキルがないのか、この男は。これではぼんくら官兵衛と変わらん作中ではゴシラ院時代を彷彿とさせる見事な企み顔でマグマの如く滾る怒りを表現した松田慶喜ですが、本作の吉之助サァのいうことを信じるほうがどうかしているので、迂闊の誹りを免れ得ませんね。まぁ、慶喜も慶喜で、

 

徳川慶喜「今の俺には誰が味方で誰が敵かさえ判らんのだ」

 

という見事なまでのブーメランを放っているのですが。これ、会津藩の耳に届いたら、

 

松平容保「私にはアナタが敵か味方か判らないのですが……」

西郷頼母「敵だぞ」

山川大蔵「味方を置き捨てて逃げる敵だぞ」

神保修理「味方から身代わりの生贄を差し出させる敵だぞ」

 

という怨嗟の言葉が返ってきそうです。

 

 

 

 

 

 

 

『西郷どん』第二十七話『禁門の変』感想(ネタバレ有)

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先週、BSで(何故か午前中に)再放送された二〇一三年の作品。『日テレ版にどこまで食いつけているか』との軽い気持ちで視聴しましたが、如何に西郷頼母が主人公の物語とはいえ、頼母を除く会津藩士が総じてド低能扱いのうえ、頼母本人も自分の意見が通らないと途端に臍を曲げる狭量な為人(史実的にはアリでも物語の主人公としてはOUT)で、全く魅力を感じられませんでした。他にも容保公に酌をする照姫様(この段階で既におかしくないか?)の様子が妙に生々しいばかりか、八月十八日の政変が、

 

オラついた新撰組に七卿たちがボコられる

 

という全く理解不能な場面で終了……こんな脚本を書いたのは誰だと思って調べてみると何とジェームス三木さん……これが一番の衝撃ですね。まぁ、序盤の台詞にはジェームスさんらしい荘重さが健在で、照姫様や八・十八クーデターの件は脚本よりも演出の問題が大きそうですが、これ以上見続ける気力が湧かずに二話目で視聴を断念した次第。ちなみに全話視聴なさった天河真嗣さんの情報によると、

 

『西郷頼母の妹と恋仲になった土方が自害の場に駆けつけてジュテームって絶叫』

『奥羽越列藩同盟の交渉に当たったり、甲賀町口門の戦いに参加したり、戦時下の鶴ヶ城で容保に謁見するミラクル土方』

『飯沼貞吉は戦時下の飯盛山から鶴ヶ城に運び込まれる』

『最後は会津追放でなく、容保の子を宿した腰元を米沢に送るという超展開。しかも豪華な駕籠に乗せて。包囲された鶴ヶ城から駕籠で。超綺麗な駕籠で』

 

 

本作と同年に放送された『八重の桜』第一部のクオリティの高さを、改めて再認識させられました。その『八重の桜』ファンがツイッターのそこかしこで怒りを爆発させた今週の『西郷どん』。私も概ね同意見です。完全に越えてはならない一線上の虎の尾を踏んでしまいました。そんな今回のポイントは2つ。褒めるところ? ねーよそんなもん! 

 

 

1.馬鹿者

 

西郷吉之助「桂どんを一橋様に会わせてみようかち思うちょりもす」

小松帯刀「その者、信用できるのですか?」

西郷吉之助判りもはん。じゃっどん、オイは一橋様のほうが気になっちょいもす。長州の申し出にどう出られるかを見てみたか」

 

乞食の恰好で乗り込んできた初対面の桂を慶喜に会わせようとする吉之助サァ。何かというと『全ては新しい日ノ本のため』とか『侍の本懐は民の暮らしを守ること』とか偉そうなフレーズを口にする本作の吉之助サァですが、慶喜のリアクションを見たいがために、

 

信用できるかどうか判らない者をVIPにアポなしで会わせる

 

という発想が既に常人のそれではありません。芸人に無茶ブリをして楽しむタチの悪いプロデューサーのようです。これには純粋に慶喜に同情してしまいました。そもそも、桂を名乗る乞食が本人かの確証もないのに……これでは影武者徳川家康に嵌められた井伊家の二の舞だよ。斯くも吉之助サァが不誠実なのですから、慶喜が不誠実で応じるのは至極当然なのですが、何故か、慶喜が吉之助サァを嵌めるシーンはおどろおどろしいBGMとゴシラ院時代を彷彿とさせる企み顔で、如何にも慶喜が悪者であるかのように表現する始末……というか、ここまでアカラサマな企み顔を浮かべている慶喜の本心を察知出来ない時点で、本作の吉之助サァはタダのでくの坊でしかありません。こんなもん、草刈昌幸の『ワシが裏切る訳ないではないか』とか『案ずるな、既に策は講じてある』とかいう言葉を真に受けるレベルの低能ぶりです。馬鹿。単純に馬鹿。

そのうえ、慶喜と桂を会わせただけで『はい、俺の仕事はここまで! あとは御二人で何とかしてね!』というスタイナーブラザーズを彷彿とさせる投げっ放しジャーマン的態度もどうにかならないのでしょうか。ネゴシエイトして、両者の落としどころを探って、言質を取って、履行を確認して、報復が起きないのを見届けて、初めて交渉は成功したといえるのですよ。

 

『主人公に後世視点で正しいことをいわせたから、あとは主人公のいうことを聞かなかった周囲の人間が悪い。主人公は何も悪くない』

 

こんな発想は最初から成功しない史実を見越したうえでそれでも主人公は必死に頑張りました的なアリバイ作りでしかありません。そんなことで主人公の先見性や魅力を描けたと思ったら大間違い&逆効果。視聴者の目には先の展開が読めているのに危機を回避できないド低能で腐れ脳ミソなキャラクターに映るのが関の山だということが、描いている人間には判らないのでしょうか。未来からの逆算カッサンドラ演出、ホンマクソ。

 

 

2.偽善者

 

西郷吉之助「こげな傷、何ともなか! これ以上、戦を広げてはならんのじゃ!(ジタバタジタバタ

 

禁門の変で長州兵の狙撃により、足を負傷した吉之助サァ。リアクションが大袈裟な割に本人は意外とピンシャンしている&大声で命令を下す余裕がある所為か、何となく、

 

西郷吉之助「痛いンゴォオ!」(ゴロンゴロン

 

みたいな印象を受けてしまいました。ここは吉之助サァの重傷を強調するのではなく、痛みに堪えて指揮を執るほうが絶対にカッコよくなるシーンなのに……まぁ、そんなことが些細な話に思えるくらい、今回の禁門の変のクソっぷりはズバ抜けていました。『タカチュカサシャマ! タカチュカサシャマ!』という舌足らずな久坂の台詞しか記憶にない『花燃ゆ』がマシに思えるレベルです。『花燃ゆ』がマシに見えるってことは何とか致命傷で済んだレベルのクオリティということですからね、念のため。

いやね、本作は西郷が主人公の大河ドラマじゃあないですか? そして、禁門の変といったら、西郷初陣の戦いじゃあないですか? 更に来島又兵衛を演じるのが長州力じゃあないですか? ほならね? 普通の視聴者は、

 

西郷吉之助(御所に)入るなコラ、入るな! 入るな! 入るなよ! (蛤御門の敷居を)またぐなよ、コラ! またぐな! またぐなよ! またぐな! またぐなよ、絶対に!」

 

と長州兵の侵入を阻止する吉之助サァ&薩摩兵の活躍を期待するのは子供でも判るじゃあないですか。それを何だ、今回の吉之助サァは?

 

西郷吉之助「僕は……僕は……殺したくなんかないのにぃぃー!」

 

とか初期キラさんみたいな腑抜けた物言いしやがって。そもそも、あの物言いは戦場で強制徴用された民間人だから許されたんだぞ。それにキラさんは『撃ちたくないんだー!』とかいいつつ、敵をボッコンボッコン撃墜していたんだぞ。流石はキラさん、パネェっす。まぁ、それは兎も角、慶喜も幕府も会津も長州も薩摩も皆、戦争をしたくて仕方ない状況で、吉之助サァ一人は平和を望んでいました的な聖人設定やめろ。やる時は相手をボコボコに叩き潰すまでドンパチをする&ドンパチが終わると掌を返したように優しく接するという一歩間違えるとDV男と変わらない硬軟織り交ぜた外交姿勢こそ、薩摩&西郷の真骨頂なのに何で最初からラブ&ピースが前提で話が進んでいるんだよ。

しかも、その西郷の説得が上手くいきかけた瞬間に会津兵が乱入した所為で交渉が失敗するという胸糞展開。悪いのは会津! 吉之助サァは何も悪くない! そういいたいのでしょうか? 禁門の変の描写で会津藩の戦後処理に難があったのは確かです。特に会津藩による長州の残党狩りが京の人々を巻き込む稚拙さと苛烈さで行われたのに対して、薩摩藩は概して秩序ある行動を取り、これが民心の掌握に繋がりました。そうした薩摩藩と会津藩の巧拙の差を冷徹に描いて、のちのちの展開に繋げる期待を持たせるのでしたら、何の問題もありません。でも、今回は吉之助サァ一人(≠薩摩)を愛と平和と正義の使徒にデッチあげるために不都合な事実を『会津が全部悪い』という安直な筋書きで済ませようとする怠惰な姿勢がミエミエでした。

『西郷が主人公のドラマなんだから、会津がワリを食うのは仕方ない』という理屈は成立しません。『八重の桜』の禁門の変は素晴らしかったじゃあないですか。援軍に駆けつけた西郷=おやっさん=吉之助のカッコよさといったら、兄つぁまが喜びのあまり、放たれた銃弾を躱すという人間の動体視力を越えた能力を発揮するほどでした。会津と薩摩。立場が真逆なだけで同じシチュエーションを舞台にした物語なのですから、それが出来ないとはいわせません。更に桂=ミッチー=小五郎が戦火で両親とはぐれた女の子と共に泣く描写も、長州を単なる悪役として描かないフェアな姿勢に感銘を受けたものです。長州と会津。立場が真逆なだけで同じシチュエーションを舞台にした物語なのですから、それが出来ないとはいわせません。大事なことだから二回書きました。

 

今までは単なる駄作という印象の『西郷どん』でしたが、今回の内容で私の中でハッキリと敵認定されました。今後の感想記事も腹を括って描くことが出来そうです。その点だけは『ありがとう』といいたいですね。

 

 

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荒川弘版『アルスラーン戦記』第61章『マルヤムの使者』感想(ネタバレ有)

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漁師①「俺、ナルサス様に魚の捕り方教えたら、礼にと絵を一枚くれたぞ」

漁師②「上手いのか?」

漁師①「いやぁ……俺には絵の良し悪しはわからん」

 

冒頭の何気ないダイラムの日常を描いたオリジナルシーン。直後のルシタニア軍による侵略との対比としても見事ですが、ラストで悪逆非道なルシタニア兵に天罰が下る伏線にもなっていたとは……流石は美術の天災軍略の天才ナルサス。その場に居ることなく、侵略者に一矢報いる策を講じていたとは驚きです。のちにキシュワードがナルサスの書き残した策でトゥラーン軍を撃滅する名場面があるのですが、その前フリとなる場面を荒川センセが創作してくれたのかも知れません。アルスラーンがパルスの玉座に就き、ナルサスが泣く子も笑う宮廷画家大陸行路随一の軍師となった暁には、この逸話もナルサスの英雄譚的四行詩として末永く(&主にギーヴの口から面白おかしく)語り継がれることでしょう。

物語の大筋とは離れた地域で離れたストーリーが展開する点で、何気に島編に近いダンバルド内海編の始まり(といっても、次々回くらいで終わりそう)ですが、今回も原作の要素以上にオリジナルパートがキレッキレの面白さでした。尚、今月も主人公は一コマも出番がない模様。アルスラーンは田中センセ作品でも特に不遇な主人公だからね、仕方ないね。

 

 

1.男クバード

 

クバード「悪いな、今日は酔っ払っておらんが、寝不足で加減がわからん」

 

加減が判らん時は常にオーバーキルのほうにメーターを振り切るクバードさん。たまには手加減し過ぎることもあっていいのではないかと思いますが、今回も因縁をつけてきたルシタニア兵の首を初太刀でぶった斬るという弾けっぷり。前の頁で赤ん坊を串刺しするという蛮行を犯したとはいえ、ほんのちょびっとルシタニア兵が可哀想に見えます。特に今回の犠牲者は『荷物と馬を置いていけば、見逃してやらんこともない』と一定の選択肢を提示しているのに、クバードさんの返答は初手から斬首というエゲツナイ対応。グロ注意! グロ注意!

それにしても、毎回言い訳を探しては思うさま虐殺戦闘を堪能するクバードさんが、完璧なコンディション時にどこまで精密な攻撃が出来るか、一度試してみたくもあります。でも、そういう時は『コンディションが良過ぎると逆に調子が出ない』とか平気でいいそう。ド真ん中のストレートは逆に打てない悪球打ちの岩鬼みたいなものでしょうか。ストライクゾーンが膝から脛までしかなさそうな印象です。ムラがあり過ぎて四番には向かない恐怖の六番打者みたいなタイプですね。

 

 

2.オブラートを探せ

 

メルレイン「妹を捜している。昨年、秋の終わりに親父と共に略奪に出たまま、行方不明なのだ」

クバード(犯罪を『買い物に出たまま』みたいに言うな)

 

そんな人を食った為人のクバードをして、心中でツッコミを入れざるを得ないゾット族の日常。略奪という『自分が金銭を払う』のではなく『他人の金銭を奪う』行為の本質を考えると、買い物というよりは出稼ぎに近い感覚かも知れませんが、何れにせよ、不法行為には違いないのでどっぷりとOUTです。『働かざる者食うべからず』が家訓の荒川センセ的にも、働く方向性が斜め上にズレているので、恐らくはOUTでしょう。その辺を反映したのか、或いは原作に忠実な描写を心掛けたのか、メルレインのキャラクターデザインは単なるイケメンで終わっていたアニメ版よりも人相の悪さが七割増しといったところ。これは確かに可愛げがない。田中センセ曰く、メルレインは口を『へ』の字に曲げたような人相をしているが、パルスの言葉にひらがなの『へ』の字はないので、それを文章で表現するのに苦労したとか。オマケに、

 

メルレイン「親父はやはり、妹が大事なのだな。とても。そもそも親父は酔っ払うと俺も妹も張りとばしたが、酔いが覚めてから謝るのは妹にだけだった。俺に対しては全く悪びれる様子もなかったし……ブツブツブツブツ」

クバード(面倒くさそうな男だな)

 

と、面倒臭さ(或いは扱い難さ)ではパルス軍でも一、二を争うクバードに『面倒臭い』と評される始末。この発言をヒルメスが聞いたら絶対にお前が言うなとブチぎれたことでしょう。まぁ、そのヒルメスさんも大概面倒臭い性格なのですが。

 

 

3.ぷるキューレベル

 

ルシタニア兵「絵だぁ? 金になるのか、それは?」

漁師①「将来、宮廷画家になるとおっしゃっていた方の作です!」

ルシタニア兵「ほぉ、宮廷画家! それがさぞかし……ギャアアアアアアアアアアアア(バターン

 

名もなきルシタニア兵の魂に安らぎあれ。尤も、奴に魂なんて上等なものがあればの話ですが。しかし、兵士が悲鳴をあげて卒倒するレベルの画って……ここまでくるとパルス軍の先頭にナルサスの画を掲げて戦えば、どんな相手にも百戦百勝ではないかとさえ思えてきますが、敵よりも先に味方の士気が喪失する危険もあるので、迂闊に扱うのは危険過ぎるでしょう。味方を巻き込む範囲攻撃兵器は無用の長物。はっきりわかんだね。尤も、ダイラムの漁師は『絵の良し悪しは判らん』と評しているので、ナルサスの画を見て正気を保っているからには何らかの耐性を身に着けている可能性大。永くナルサスの画を見せつけられ続けたことで、ダイラムの人々にはナルサスの画に対する抗体があるのではないでしょうか。そう考えると、先述したナルサスの画をパルス軍の先頭に掲げるという無差別範囲兵器も、ダイラムの人々のみで編成した特殊部隊が役割を担うことで実戦投入も可能になるのではないかと思えてきます。やったねアルスラーン! (多分、ルクナバードがなくても)ザッハークにも勝てるよ!

 

 

 

 

 

徒然日記 ~2018/07/30~

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違う、そうじゃない。

 

恐らくは『別マガ』の巻末コメントで仄めかしていた田中センセの新刊歴史小説。確かに宋代の作品だけれどもさぁ……『奔流』のように日本での知名度の低い名将を魅力的な虚像(誉め言葉です、念のため)と共に提供する作品とか、或いは『白日、斜めなり』みたいに日本での通俗的なイメージを覆すような作品とかを期待していたのよ。いや、新刊が出たのは嬉しいけれどもね。次は史実ベースの作品を期待。鄭和は星野之宣さんが『海帝』で描いているので、候補から外してもよさそうです。今回の話題は3つ。

 

 

1.『西郷どん』第28回『勝と龍馬』雑感(≠感想)

 

先日、知人と『西郷どん』について話す機会がありまして、私のブログでの『西郷どん』に対する批評は概ね御賛同頂いているのですが、そのうえで、

 

「アナタは佐幕派だから『西郷どん』への評価が辛くなるんじゃあないですか?」

 

という御指摘も受けました。『辛くなる? 冗談じゃない。それじゃあ、まるで普段の大河批評が甘いみたいじゃないか?』というポプラン的反論はさて置き、確かに穏健的佐幕論と段階的幕府解体論の間を行ったり来たりしている私は、薩長視点の物語に対する偏見があるかも知れないと思い、その可能性を再精査する意味も含めて、個人的幕末~明治の好きな人物ベスト10を考えてみました。順位は特に固定なしで以下の通り。

 

徳川慶喜(将軍) 幕末後期の混乱はだいたいコイツの所為。

中島三郎助(幕臣) 幕末の嚆矢と掉尾に立ち会った男。

勝海舟(幕臣) 津川さんの勝安房が至高。異論は認めない。

榎本武揚(幕臣) トップに立たなければ有能極まりない政治家。

神保修理(会津藩) 慶喜好きで修理好きって、我ながらオカシイよね。

山川大蔵(会津藩) いわずと知れたミスタープッツン。

佐藤泰然(佐倉藩) この人の親類縁者偉人多過ぎ説。

井上聞多(長州藩) 自他共に認めるミスターナンバー3。

山田市之允(長州藩) あれぐらいやっていかないと(幕軍に)勝てない。

山田方谷(松山藩) ウチの継サァがお世話になりました。

 

ああ、これは佐幕派というよりもタダの年末時代劇好きですわ。それに将軍・幕臣・佐幕派が過半数を占めているとはいえ、慶喜や勝といった幕府の瓦解に貢献した人物も複数紛れ込んでいるので、アンチ薩長ゆえに『西郷どん』への当たりが厳しいという知人の指摘は、残念ながらハズレといえるでしょう。これで心置きなく、今年の大河ドラマを叩くことが出来そうです。まぁ、今週の『西郷どん』は叩くほどの内容もなかったのですが……いや、本当にスッカスカで何も思い出せないのですよ。相変わらずのおつかいクエストの連続で、しかも、何で吉之助サァがおつかいに出されるのか、おつかいの先で何をしたのか、その結果が歴史にどう反映したのかが描かれず、登場人物が吉之助サァすげーすげーとマンセーするばかりで、何がどう凄いのか全然判らない。『軍師官兵衛』もそうでしたが、他人がプレイしているクオリティの低いゲームを傍から眺めているような心境に陥る作品です。疎外感と退屈感が半端ない。

今回、唯一の収穫は制作陣が西郷を嫌っていることが完全に判ったことでしょうか。うん、だって絶対に嫌いでしょう? 禁門の変の直後、両親と逸れた童や家族の亡骸に縋る女性の傍で、助け出した犬に頬擦りしながら満面の笑みを浮かべるなんて、犬好きの要素を差し引いても真性のサイコパスですやん。描き方に悪意しかないわ。こんなんで視聴者が『吉之助サァって何て優しい人なの! 感動したわ! キャー! もうあげちゃうわッ、あたしのパンティー!』なんて思うと本気で考えてドラマを作っているのでなければ、悪意の裏返しに基づく褒め殺しと解釈するしかありません。先週、目出度く敵認定した『西郷どん』ですが、敵は敵でも単なる無能者か卑劣な内通予備軍かで当方の対応も変えなければいけませんので、総評記事に着手するのは先のことになりそうです。

 

 

2.『今日からCITY HUNTER』雑感(ネタバレ有)

 

 

 

 

 

四十歳・独身・派遣社員の女性が『CITY HUNTER』の世界に女子高生として転生するという、現在流行りの『リバイバル二次創作』と『なろう系』と『異世界転生もの』の濃厚魚介系トリプルスープラーメン的作品。世間では『リバイバル二次創作』にはコンテンツユーザーの高齢化や新規作品の人気の伸び悩み、或いは過去作品の栄光に縋るといった類のマイナスイメージがつきまとう傾向があるそうですが、私個人は基本的にウェルカム。漫画にかぎらず、八〇~九〇年代の大量生産&大量消費の時代に創作されたサブカルコンテンツには、毟り残した肉が付着したままで大量廃棄された作品が多数存在しましたから、それを再利用しようとする試みは原作のイメージを損なわない範囲であれば、どんどん推進して欲しいと思います。現在、ネットで配信されている『キン肉マン』の『六鎗客VS運命の王子編』も作者自身による原作へのオマージュやリベンジ要素がてんこ盛りで、毎週の更新が楽しみで仕方ありません。ゼブラVSマリキータの次回は三カ月後……ではありませんという自虐パロディ、ほんとすこ。

この『今日からCITY HUNTER』も、リアルタイムで連載を見ていた読者は普通に楽しめる内容になっています……が、私のような原作のヘビーユーザー(?)には些か物足りない……というか、アンフェアな構成に不満を覚えるのも事実。主人公は香の持つ3m棒で自分が原作の第何話にいるのかを把握したり、冴羽さんのもっこりで喫茶店の天井が破壊されるのを覚えていたりするほどの熱烈な『C・H』ファン設定なのですが、その割には海坊主の襲来に備えるために冴羽さんが部屋に子猫を潜ませておいたり、冴羽さんが香の仕掛けたトラップで自爆するのを忘れているという具合に、コイツは本当に『C・H』のファンなのかと疑いたくなる描写が多い。ちなみに私はキチンと覚えていました。あと、美樹ちゃんとかすみちゃんは誕生日が同じ。これ豆な。

まぁ、余談は兎も角、本作は主人公を熱烈な『C・H』ファンと設定しておきながら、物語の筋書きに合わせて原作のストーリーを覚えていたり、度忘れしていたりと悪い意味での御都合主義的展開が多く、リバイバル二次創作なのに熱烈な古参ファンにはオススメ出来ないという、矛盾した作品となっています。いや、繰り返すようにフツーに読む分には問題ないのですが……それにしても、この作品、どこまでやる予定なのか。第一話の冒頭で描かれたVS海原戦は流石に女子高生がついていくのは難しそう。しかも、原作はキャラクターが律義にリアルタイムで年齢とっていく律儀な作品でしたので、その頃には主人公の女子高生設定もどうなることやら。

 

 

3.竹次郎「せやろか?」

 

基本的に公の論壇やインタビューで陰謀論を唱える政治家を支持するつもりは毛頭ありません。内容が正しいか否かは別として、陰謀論という奴は『言ったもの勝ち』ですからね。政治家が迂闊に口の端に乗せてよいものではない。その点を踏まえたうえで、以下の文章に目を通して頂けると幸いです。

 

 

一部で結構な騒ぎになっているらしい現役国会議員の論文。流行りものは敬遠しがちな私ですが、今回はたまたま書店で手に取る機会があったので、購入&拝読しました。結論から申しあげると、著者の個人的体験に基づく憶測が散見するものの、全体的には穏当な内容。要するに『どこかでラインを引かないとエライことになりますよ』という警鐘以上のものではないと思いました。

ただし、この結論を書くために『生産性がない』の一文が必要であったか否かは疑問の余地があります。実際、この段落を丸々カットしても全体の構成に殆ど影響はありません。じゃあ、何でこの文章を入れたのかというと、ここから先は完全に憶測でしかないのですが、筆者が本当に書きたかったのは、まさにその一文であったからと考えるのが妥当でしょう。でも、それを結論に持ってくると流石に反発必至なので、途中にチョロッと書き込んだのではないかと思います。何故そう考えるのかといわれると、

 

私も時事ネタを書く時には同じ手法を好んで使うから

 

です。

 

炎尾燃「作者の一番言いたいことを大ゴマで言わせてはいけない! 言いたいことをストレートにネームにすると作品がうすっぺらくなるから気をつけろ! 本当に言いたいことは小さいコマでボソッと言わせて! あとは言いたいこと以外のこととか、言いたくないことを大ゴマで言わせろ!」

 

これは漫画や評論にかぎらないモノカキの基本的なテクニックですね。このほうが読者の印象に残るうえ、イザという時の退路も確保出来る。一石二鳥&一箭双雕&一挙両得&一粒で二度オイシイ手段。

今回の騒動では『生産性がない』というフレーズを『けしからん』と捉えるか、或いは『枝葉末節の揚げ足取り』と受け取るかで議論が真っ二つに割れているようですが、私個人は上記の理由から形式上の結論は兎も角、著者の本来の意図は『生産性がない』という言葉のほうに重きが置かれていると解釈しております。

尚、論文それ自体に対する批評は差し控えさせて頂きます、悪しからず。

 

 

 

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『西郷どん』第二十九話『三度目の結婚』感想(ネタバレ有)

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岩山イト「待っちょりもす……あん家で御帰りを待っちょりもす! 西郷吉之助の妻として、新しか国を一緒に見たか! ふつつかモンじゃっどん、宜しくお願い致しもす!」

西郷吉之助「……あいがとう! あいがとな、イトどん!」

 

 

 

 

 

 

『メリケンのように好きな者同士が結婚できるようになれたらいい』という第6話で提示された本作の主題(笑)が成就した瞬間でした。ドラマとはいえ、他人の幸福をやっかんでいると思われるのも業腹なので、

 

「近年の大河ドラマの製作者は、主人公と妻は必ず恋愛結婚であらねばならないという教義に毒されていやがる。あれは西郷と三郎の軋轢でメンタル摺り減らし続けた桂久武や小松帯刀が、西郷の媒酌人になることでプライベート面から彼の手綱を引き締めようとした組織力学の発露なんだぞ。孫が出来ようかって年齢で、何が純愛ロマンスだっての

 

という諸々の感情を押し殺して、私も心から祝福したいと思います。

 

じゃあ、今週が最終回でいいよね?

 

だって、如何に大河ドラマにおいてはウコ拭いたトイレットペーパー程度の価値しかない恋愛脳的思考であったとしても物語の主題は回収されましたからね。ほならね? 来週から放送する必要性なんかないってことでしょ? 私はそういいたい。それとも、如何に大河ドラマにおいてはウコ拭いたトイレットペーパー程度の価値しかない恋愛脳的思考であったとしても(大事なことなので二回書きました。本作では三郎に同じことを三回言わせているからセーフですよね)、その主題を書き終えたにも拘わらず、キャラクターが死んだ目を浮かべながら、これといった目的もなしにダラダラと話を続けるつもりなのでしょうか。まぁ、ダラダラと話を続けるといっても、本当は描かなくてはならないことが夏休みの宿題のように山積みで、とっくにスケジュールは万策尽きていると思いますがね。よい子の皆! 『西郷どん』のようにやるべきことを先送りにしていると確実にダメになるぞ! 夏休みの宿題は計画的に終わらせること! お兄さん(≠おじさん。心は何時も未成年)との約束だぞ! 夏休みの少年少女たちへの反面教師としてはそこそこ役に立った今週の『西郷どん』のポイントは4つ。

 

 

1.ももちゃんの唄ではありません

 

ナレーション「吉之助は朝敵長州の陣に一人乗り込み、戦をせずに争いを収めました」

 

はいはい。

ラブ&ピース。ラブ&ピース。

 

冒頭から吉之助サァが愛と正義と平和の使徒であるかの如きイメージを植えようとする印象操作のナレーション入りました。西郷が第一次長州征伐をグダグダのなし崩しで終わらせたのは事実ですが、それが恰もラブ&ピースの精神の賜であるかのように描く本作の姿勢には物心両面で嘔吐きを禁じ得ません。一応、一蔵サァには『倒幕の可能性を見越してこんなこともあろうかと長州に温情をかけておいた』的な本音を漏らしていますが、そもそも、吉之助サァが倒幕論に転じる動機づけが全く描けていなかったので、どちらにせよOUTです。その辺の理論をキチンと語ることもなく、吉之助サァは元気に今週の鰻ノルマを消化。これを見て『キャー! 今週も鰻のシーンよ! もうサイコーッ! あげちゃうわッ! アタシのパンティー!』と泣いて喜ぶ視聴者がいると制作陣は本気で思っているのでしょうか。何処に需要があるかサッパリ判らん。

さて、この時点で長州との連携を口にした吉之助サァ。その歴史的真偽は語るまでもないとはいえ、薩摩外交のシタタカサが窺えます。ボコボコに殴った相手に優しく接する&優しく接した翌日に相手をボコボコに殴りつけるという、先週の感想でも書いたようにDV男と紙一重の発想ですが、効果は絶大。幕末の薩摩外交が高く評価される所以です……が、実際のところは幕府と組んだり、会津と組んだり、朝廷と組んだりと出たとこ勝負の挙句、朝敵の長州しか組む相手がいなくなっていたと考える向きもあるとかないとか。この見境なしの外交姿勢は戦国時代の武田信玄を思わせますな。

 

 

2.ウソぴょん コダイ まぎらワシ ホラふ熊吉

 

熊吉「お見合いの女子ん衆に申しあげもす! 西郷吉之助は逃げも隠れもいたしもはん!」

 

最初の嫁に逃げられたうえ、奄美に妻子がいることを隠して、この物言いである。

 

制作陣的には吉之助サァ本人の発言ではないのでセーフ理論かも知れませんが、実際には熊吉の甘い台詞に乗せられた多数の女性が花嫁審査に参加して、貴重な時間を浪費している事実は変わりません。嘘。大袈裟。紛らわしい。充分にJARO事案です。或いは誇大求人広告で労基署通報事案。

そもそも、このシーン自体が極めて低劣。これ、史実じゃあないですよね? こんな吉之助サァの逆常盤御前みたいなエピソードを寡聞浅学菲才の私は存じません。百歩譲って、史実であったとしても、他に描くべきことが金属腐食して漏電火災を起こすレベルで山積している状態で、何でこんなエピソードに焦点を当てる……というか、今回の主題にしようと思ったのか、小一時間程問い詰めたい。

 

 

3.BS再放送をもう一度見て下さい、幻の味噌汁を御馳走しますよ

 

島津久光「こいはどげんこっじゃ! ないごて、また、参勤交代を命じられねばいかんとじゃ!」

ナレーション「三年前、久光は幕府と掛け合い、諸藩を苦しめる参勤交代を取りやめさせておりました。しかし、それを幕府が再開するというのです」

 

自分が幕府にやめさせた筈の参勤交代が復活するという報告に怒りが有頂天&ストレスがマッハ状態の三郎。前項と異なり、こちらは史実準拠です……が、肝心要の三郎が幕府に参勤交代をやめさせるシーンが描かれなかったので、全く意味の判らない場面になっています。毎回欠かさず見続けてきた熱心な視聴者も『そんな場面あったかしら?』と首を傾げたことウケアイ。鰻ノルマを三回くらい我慢したら描ける内容なのにね。こういうシーンを描きたいのであれば、キチンと前振りをしておけばいいのではないかと思いますが、計画性という言葉を知らない本作の製作陣にはレベルの高過ぎる要求なのでしょう。やんなるね。

それにしても、これは酷かった。ツイッターでの録画実況でMasaさんが御指摘なさったように、今回の参勤交代復活を巡る描写は『ぼんくら官兵衛』の『幻の味噌汁』と軌を一にしています。伏線も布石も味噌もクソもなく、完全後づけ設定で恰も事前に描写を済ませていたように振舞う姿勢、ほんとクソ。戦国と幕末、舞台は違えども愚者は常に同じ橋を渡るようです。

 

 

4.政策というものがよく判らない

 

西郷吉之助「オイはのう、民のための国っちゅうモンを作りたか。皆が腹一杯飯を食うて、笑って生きていける国を作りたかとじゃ」

 

はいはい、民のため、民のため。

 

脚本家、困った時の、民のため。これさえいわせておけば、どんなにド低能、或いはド外道な主人公の言動のエクスキューズになると思っているのでしょうね。『GO』や『なんたら官兵衛』のたいへーのよと同じ。『泰平の世』という台詞の量と大河ドラマのクオリティは反比例する。これ、永遠の鉄則な。そもそも、その『民のための国』を作る手段として、公武合体か尊王倒幕のどちらを選ぶかって話しているんだろ? 何で主人公しか民のことを考えていない前提で話が進んでいるんだよ? 頭湧いてんのか? 『皆が腹一杯飯を食うて笑える国』というのは理想であって、政策じゃねぇんだよ。オマエがいっているのは理想だ。一蔵サァが考えているのは政策だ。政策の是非を論じているのに『一蔵サァは俺の理想を判ってくれない! イトサァは判ってくれた!』と喜ぶとか、控え目にいって頭おかしいわ、この主人公。

ついでに吉之助サァとイトサァのやり取りも純粋に気持ち悪い。『吉之助サァもホントはイトサァのこと好きだけど、好きっていえないブキヨーなのよ! でも、そういうの見ていてドキドキするでしょ?』という80年代トレンディドラマの負のレガシーの腐臭がプンプンするぜ。鰻ノルマ以上に、これがウケると本気でスタッフが考えているとしたら、ソイツは過去からやって来た逆南方センセのような存在ではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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徒然日記 ~2018/08/14~

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今年上旬に江馬さんがお越しになった時、話題に登った作品が二つありまして、一つ目は、

 

 

こちらはレンタル解禁と同時に二晩で一気見しました。すげー面白かったけれども、江馬さんに事前情報を御伺いしていた筈なのに、第一話の終盤まで中堂が井浦さんと気づきませんでした。崇徳院とイメージが違い過ぎるんだもの。あと、北村有起哉さんが演じたジャーナリストにはマジで殺意を抱きました(誉め言葉)。これが北村さんの本気……! ストーリー以上に俳優陣の演技力に魅せられた作品でした。好きなキャラクターはキバヤシさん&毛利刑事。毛利刑事、いい意味でイタミンのパチモン臭さ満載ですこ。

そして、もう一つの作品は、

 

 

正確には江馬さんが帰りにどの新幹線を御利用されるかという話に端を発して、甥御さんが本作の影響で新幹線が好きになった……みたいな流れであったと思いますが、新幹線が変形ロボになるというカオス極まる設定が気になって、その後、何度か視聴していた次第。しかし、まさかのシンカリオンとエヴァのコラボが実現するとは……! 

 

 

確かにタイプエヴァの新幹線は実在したけどもさぁ。内容的にも熱中症予防の啓発も兼ねた満足のゆく出来でした。取り敢えず、今年のベスト10ランキング候補にノミネート。『アンナチュラル』『シンカリオン&エヴァ』 in の『やけ弁』『二人の女王 血の争い』 out かなぁ。江馬さんがJE市にお越しにならなかったら、二作品とも見逃していたかも知れません。本当にありがとうございました。今年も作品的に恵まれた一年になりそうな予感。

尚、プライベート&仕事面は【略】。詳細は伏せますが、期日までに頼んでおいた業務が前日になっても半分終わっていない&『終わっている』と報告があった業務の半分がリテイク案件&プロジェクト前日に現場責任者が仕事を残したままで定時帰宅とか、何をいっているのか判らねーと思うが、俺も何をされたのか判らねーから大丈夫だ(血反吐)。自分が何時の間にかムサニで働いているのではないかという幻覚に囚われている今回の話題は3つ。

 

 

1.『西郷どん』第30回『怪人 岩倉具視』超簡易感想(ネタバレしても内容に問題なし)

 

岩倉具視「出た目のサイの数がやな、二、四、六、八、十、十二が丁、その逆が半。勝ったら儲かるしやな。運試しや」

 

岩公が丁半バクチのルールを御丁寧に字幕入りで解説するという、色々な意味で他にすることはないのですかとの伏龍的慨嘆を抑えられない今週の『西郷どん』。ツモや直撃時に血を抜かれる『鷲巣麻雀』や、三・五の丁の目を四・五の半と強弁されたうえ、異論を唱えようとすると、

 

倉石組構成員「口にするなよ……メッタなことは……!」

 

とヤッパで脅迫されるといった特殊なハウスルールが存在する訳でもないのに、何故、この程度のことを岩公の口から説明させる必要があったのか。しかも、ルールを字幕入りで解説しておきながら、肝心のバクチはストーリーに全く関係ないままで終わりましたからね。西郷と岩公が何か己の政治信条を賭けあう的な展開になるのでしたら、ギリギリ理解出来なくもありませんでしたが、そういう要素一切ナッシング。賭場のシーン、普通に必要なかったでしょ? ついでに大久保と桂の喧嘩も要らなかったでしょ? 何で歴史描写に必要な要素を排除して、ムダな場面やムダな創作で穴埋めしようとするの? 大体、西郷がスッた金銭は今更繰り返すのも阿房らしい話ですが、その出所は奄美の黒糖地獄でしょ? 何で『民が笑って暮らせる世』を志している筈の人間が、百姓の膏血をバクチでスッて平然としているの? 西郷は褌一丁で愛加那に弾劾されればいいと思うよ。お前が他人の金で勝つ訳ねぇんだよ。あと、

 

ナレーション「京で我が物顔に振舞う慶喜を江戸に戻すため、二人の老中がやってきました」

 

とかいう、具体的にどんな悪事を仕出かしたかの事実も創作もなしに、一方的に慶喜を暴君扱いするのはやめろ。慶喜を敵前逃亡のヘタレに描くのは表面的な事実だから許す。人として軸がブレている描写は逆にウェルカムだ。しかし、無能な暴君に描くことは断じて認めん。『慶喜にこそ同情し隊』会員№184(ヒトツバシ)として断固抗議するものである!

 

 

2.中村梅之助さんも捨てがたい

 

極端な話、時代劇における当たり役とは視聴者が歴史上の人物を想像する際に思い浮かべる俳優さんの最大公約数の謂いではないかと思います。大河ドラマではナベケンの伊達政宗が鉄板でしょうか。大河ドラマではないものの、私の中では同レベルの鉄板に井上聞多=萩原流行さんというのもありますが、兎も角、万人が思い浮かべる共通のイメージを構築するのは並大抵のことではないでしょう。人気のある人物であれば、それは猶更ですが、しかし、俗に三英傑と呼ばれる三人は当たり役が確定しているのではないかとも思います。信長は高橋幸治さん、秀吉は緒形拳さん、家康は津川雅彦さんですね。この中で家康は他の二名と毛色の異なる印象があるのですが、これは高橋さんの信長と緒形さんの秀吉はテレビ的な意味での出世作であったのに対して、津川さんの家康は大河ドラマにおけるキャリアの集大成的なポジションであるからではないかと思います。まぁ、私の高橋信長と緒形秀吉のイメージも『黄金の日日』がベースなので、自分の理論に矛盾を感じてもいるのですが、私が津川さんの家康に毛色の違いを感じる要因はもう一つありまして、それは家康以上の嵌り役を知っているからです。

 

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本作で勝海舟を演じる津川さんがマジで嵌り役なのよ! 出番は前編の前半&後編の一部に留まっているのですが、旧幕臣による蝦夷地開拓という夢を追う主人公のロマンチ榎本に対して、江戸無血開城という、

 

自分が仕出かした訳でもない粗相の尻拭いを如何なる汚名に塗れようとも一命を賭して成し遂げようとする

 

リアリスト勝の苦渋と決断がヒシヒシと伝わってくるのよ。榎本に『オイラの幕引きが気に入らなかったら何時でも斬れ』と啖呵を切る台詞や、上野戦争を停められなかったことを榎本に批難された時、無言で『首級を討て』と己の項を扇子で叩くシーンとか、本当に堪らんのよ! 当時は漠然といい場面だなぁと思っていましたが、年齢を重ねてから、何度も作品を見返すうち、

 

「ああ、俺は勝が好きなのと同等に、津川さんが演じる勝が好きなんだな。俺が勝を好きになったのは津川さんの影響なんだな」

 

との思いを抱くようになりました。私にとっての理想の勝を演じた津川さんの訃報……遅ればせながら、慎んで哀悼の意を表します。あと、これは完全な余談なのですが、津川さんの演じる勝ファンを称しておきながら、上記の『五稜郭』での、

 

勝海舟「フランス語で『馬の耳に念仏』って何ていう? 教えてやろう、シャンソンってんだ。ハハッ」

 

の台詞って、どういう意味か今でも判らないのですよ。イキな解釈を御持ちの方、御教授頂けると嬉しいです。

 

 

3.赤マフラーと櫻井ヴォイスに気をつけろ

 

 

大河ドラマ&歴史劇繋がりで強引に話題を連結させようとする私の小賢しい意図は措くとして、今季の覇権アニメの一翼を担う『アンゴルモア~元寇合戦記~』。それこそ、日本史上屈指のイベント国家存亡の危機にも拘わらず、大河ドラマでマトモに描かれたことは一度しかない題材なので、他の表現媒体で見ることが出来るのは嬉しいかぎり。歴史上の経緯を知っているとどう足掻いてもバッドエンドという『ウォーキング・デッド』クラスの悪い未来しかしない物語を如何に描くのか、原作未見の身としては楽しみです。

尤も、これは『ゴールデンカムイ』を見た時も思ったのですが、本作の主人公である朽井迅三郎のキャラクター設定がイマイチ、ピンと来ないのも事実。原作で何処まで描かれているか判らないんですけれども、少なくとも、現時点のアニメ視聴者の大半にとっては、主人公に感情移入するに際して必要な二つの要素が完全に抜け落ちているのですよ。即ち、

 

『何故戦うのか』と『何で強いのか』

 

ですね。片方だけでしたら、物語の展開と共に次第に明らかになるのもアリですが、両方共というのは頂けません。そこをハッキリさせずに主人公を無双させるとなろう系の勇者と大差がなくなってしまいます。『ゴールデンカムイ』の杉元も『動機』が弱いうえ、不死身と称される程の戦闘力の『理由』も描かれていないからなぁ。『動機』と『理由』をキチンと描くことがバトル作品の成功する必要条件であることは、或る名作で証明可能です。

 

 

御存じ、不朽のSF歴史劇ですが、この作品では主人公の『戦う動機』と『強さの理由』が開劇と殆ど同時並行で描かれているんですね。『戦う動機』はラインハルトの『俺の姉貴を奪ったゴールデンバウム王朝許せねぇ!』というシスコン極まる復讐劇。ヤンは『エル・ファシルの脱出行』という戦場の卓越した心理学者という『強さの理由』を受け持っている。今年放送された新版アニメでは、ヤンが敢えてレーダー透過装置を用いないことで、帝国軍の心理的陥穽を衝く描写がカットされたことに苦言を呈する古参ファン(含む私)が続出したのも、それこそがヤンの、そして、本作の描く強さの理由づけであるからでしょう。逆にいうと、そうした物語の基本論がキチンと押さえられているからこそ、発行から三十年以上も経過した現在でも、

 

作品に興味を抱いた人がいると知るや、別にアフィリエイト収入が入る訳でもないのに夢中になって紹介してしまう

 

程に読者を惹きつけているのでしょう。このブログのコメント欄で、ハカセさんが電子書籍で『銀英伝』を読もうかなぁと仰った途端、私も含めて多くの方々が詳細な返信を投稿するという流れ、ほんとすこ。いや、あれを契機に『銀英伝』を読み直したのですよ。いい加減な紹介文を書いて、ガッカリされるの嫌ですしね。今、読み直すとフレデリカさんの闇の深さが読み取れて、結構怖かったりする。ユリアンのフェザーン出立の際、同じ実務家のキャゼルヌがヤンと同レベルの役立たずであったのに対して、フレデリカさんがイゼルローン一の賢者と称される程の辣腕ぶりを発揮したのって、要するにキャゼルヌは娘婿の候補を手元に引き留めておきたかった&フレデリカさんはユリアンの不在時にヤンの正妻の座を射止める好機と思ったからですよね? 怖ッ! フレデリカさん、怖ッ!

あ、あと、ヤン艦隊をあんこうチームに喩えると、

 

みほ=ヤン

優花里=フレデリカ

沙織=キャゼルヌ

麻子=フィッシャー

華=シェーンコップ

 

になるんじゃあないかと勝手に想像して悦に入っております。実際、麻子がいなかったら、あんこうチームは簡単に走行不能に陥り、西住殿の作戦の多くは計画倒れに終わったと思う。

 

 

 

 

 

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『西郷どん』第三十一話『竜馬との約束』簡易感想(ネタバレ意味なし)

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坂本竜馬「西郷さん、おまんは信用も義理も人情も何もかも失うたぜよ」

 

本作の吉之助サァには最初から信用も義理も人情もないからセーフ。

 

西郷がヅラとの約束をすっぽかした下関会談ドタキャン事件ですが、本作の吉之助サァは他人との約束を何度も反故にする&戦災地で人間よりも犬の救助に感涙する&奄美の黒糖地獄で搾取した金銭を賭博でスるといった具合にナチュラルボーン畜生のイメージしかないので、竜馬の叱責の言葉も視聴者の耳を上滑りしてゆく感が半端ありません。むしろ、本作の吉之助サァの言葉を信じた竜馬やヅラのほうがどうかしているようにさえ思えます。下関会談ドタキャン事件という、どう足掻いても薩摩外交の腹黒さ(要するに焦らして有利な条件で同盟を組もうとする発想)を拭えない事案を如何に描くかは幕末大河を測る試金石の一つですが、まさかの畜生過ぎる主人公の口車に乗ったほうが悪いみたいな流れで解決するとは思いませんでした。勿論、イヤミです、念のため。尚、作中では俊斎坊がドタキャンの理由を隠蔽したのも悪いみたいな描かれ方でもありました。はいはい、全部俊斎坊が悪い。桂に待ちぼうけを食わせたのも、西郷が二度目の島流しに処されたのも、薩英戦争になったのも、大村益次郎が暗殺されたのも、加藤弘之が国家主義に転向したのも、全部俊斎坊が悪い……って珍しく大体あっているな。有村俊斎とかいう史実が創作よりもsage描写で埋め尽くされる人物、ほんとすご。

 

そんな訳で今週も順当につまらなかった『西郷どん』。まぁ、作品が面白いかつまらないかは畢竟、個人の感性に委ねられる要素が多いのですが、本作がつまらない理由は論理的に説明可能です。一言でいうと主人公の西郷&大久保がバカだからです。勿論、史実の両名ではありません、念のため。最近、本作の出来の悪さをアンチ薩長史観に敷衍する論調を頓に目にしますが、私個人は佐幕派のスタンスながらも幕府の封建体制の崩壊は経済的&外交的に不回避であったとも考えています、悪しからず。

それはさて置き、本作の西郷&大久保の頭の悪さは異常ですよ。西郷については何度も触れてきたので今更説明は省きますが、今回の大久保の頭の悪さにも開いた口が塞がりませんでした。

 

岩倉具視「中川宮は曲者だから気をつけるんやで」

大久保一蔵「おかのした」

中川宮「麿も出来るかぎりの御力添えはさせて貰います(企み顔)

大久保一蔵「やったぜ。何が曲者だ。岩公とは月とスッポンだぜ」

一橋慶喜「お前らのやっていることは中川宮を通じて全部全てまるっとスリっとゴリっとエブリシングお見通しだ!」

大久保一蔵「あああああああああああああああ!(ブ【略

 

こんなのタダの馬鹿野郎でしょ?

 

これを見た視聴者が『まーァ! 慶喜や中川宮って何てあくどい人間なのッ? こーんな人間が世の中を治めるなんて、絶対に間違っているわッ! 早く幕府なんか滅びればいいのよッ!』と思うと、制作陣は本気で考えているでしょうか。むしろ、この程度の裏も読めない西郷や大久保に政権を握らせるほうが余程不安ですよ。そのうえ、

 

西郷大久保「俺らの計画を潰した連中が許せないンゴォォォ! やっぱり長州と組んで幕府を倒すンゴォォォ! チェストぉぉぉ!」

 

こんなのタダの逆ギレでしょ?

 

主人公コンビが逆ギレバカなんて、物語として最悪ですよ。やはり、本作は西郷&大久保を意図的に貶めていると考えるのが自然ではないかと思われます。少なくとも、西郷&大久保が好きでしたら、こんなド低能に描くなんて絶対にやらないよね。

 

あとはイトサァがものっ凄くウザいのが見ていて不快しか覚えない。

 

西郷イト「すぐに京に行かれるのですか? 今度は何時、お戻りになりもすか? 帰ってこられもすか?」

 

おぉう、これは初期きりちゃんがマシに思えるレベルのウザさ。

 

イトサァの前世に源二郎の【初めてのチョメチョメ】を奪われたきりちゃんですが、作劇的にはリベンジに成功しているのでセーフ。現世に生まれたら、五分おきにメールしないと発狂するタイプの奥さんですね。同じ黒木華さんが演じているのに腹黒梅ちゃんのほうが余程魅力的でしたよ。何処に出かけるのかとか、何時帰ってくるかとか、ウダウダウダウダと……。

 

帰蝶「さっき、私は『御武運をお祈りしています』と言いましたよね。『勝って』とはいえないんです。戦略上、退いたほうがよい時もあるので。そして、武士は死に様を大事にしますから『死なないで』ともいえません。だから妻たちは『御武運をお祈りします』としか言えないんです。それに思いの全てが詰まっているのですよ……」

 

苟ももののふの妻に、これくらいの台詞をいわせないでどーするよ。四コマ漫画&深夜の5分枠アニメに負ける大河ドラマって、控え目にいって存在価値ないよね。今週は色々と疲れているので、この辺で。

 

 

 

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徒然八周年日記

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『Literacy bar』は開設から八周年を迎えました。

皆様の日頃の御愛顧に篤く御礼申しあげます。

 

現在の心境をアリテイに申しますと、八年もブログが続いたこと以上に@二年で十年に手が届くことに我ながら、驚きを禁じ得ません。再来年の大河ドラマは『麒麟が来る』なので、何とか十年目までは頑張りたい。逆にいうと『麒麟が来る』がポシャった時はブログの存続自体を見つめ直す契機かとも考えております。

それにしても、八年前というと『修羅の門第弐門』の連載が開始されて、劇場版で官房長が殉職して、半年に一度のペースで『ガンダムUC』が発売されると信じ込んでいた時期でした(遠い目)。そんな当時の私に、ブログを継続していることを含めて、今現在起きていることを伝えたら、どんなリアクションをすることでしょうか。そんな訳で今年の開設記念記事は、

 

「今年の出来事で八年前の私に教えても絶対に信じないこと」

 

を中心にお送りしようと思います。尚、今週の『西郷どん』の感想は開設八年目突入の自分への御褒美としてお休みします。薩長同盟締結の鍵が英国にいる薩長の留学生の交流とかいう絵に描いたような幻の味噌汁展開に草も生えない。こんな大事な場面で使うのでしたら、事前に長州ファイブとかディーン才助とかをキチンと描いておけよ。そんなポッと出の話を持ち出されて、

 

西郷吉之助「桂どん、こん若者たちはもうとっくに助けおうちょります!」

坂本竜馬「遠い異国で手を取り合うちゅう若者らぁを見習うて、手を組みぃや!」

 

とか言われても全く説得力ねぇよ。『逆境長州』真っ只中のヅラも、

 

桂小五郎「それはそれ! これはこれ!」

 

と断ればよかったのにね。『篤姫』以下の幕末薩摩大河が放送されているってことも八年前の私は信じないだろうなぁ。今年のオフ会は10~11月くらいに考えていますが、仕事の都合もあるうえ、肝腎の大河ドラマがこのテイタラクではなぁ。現時点でオフ会の開催は五分五分ですが、その頃は予定は空いているよという方がおられましたら、こちらの記事にコメント頂けると嬉しいです。宜しくお願い致します。

 

それでは、まずは何よりも一番に伝えたいことから。

 

 

1.ブログの更新頻度が半分以下に落ちていること

 

 

 

 

只今、不適切な事実が流れました。都合が悪いのでスルーします。

 

では、気を取り直して、まずはこちらから。

 

 

1.『新九郎、奔る!』第一巻感想(ネタバレ有)

 

 

 

 

伊都「何よ、これ?」

千代丸「あ、姉上には理解りません。男のロマンです」

 

どう見てもアイスラッガーです。

本当にありがとうございました。

 

それはさて置き、これが一番信じて貰えなさそうな事案。八年前の私に『ゆうきまさみによる北条早雲の漫画が連載されて人気を博している』と伝えてもそんなの銀英伝のアニメがリメイクされるレベルでねーよとヘソで放課後ティータイムしたことでしょう。

ちょいと真面目な話をすると歴史漫画は多かれ少なかれ、劇画的演出に拠ることが多い。劇画的演出というと堅い表現ですが、要するにエログロナンセンスです。ヒロインがババーンとおっぱいを出したり、簡単に首チョンパしたり、主人公のキメ台詞が全く意味不明であったり……歴史漫画の魅力は区々たるネームではなく、画力とシチュエーションのダイナミズムにあるという考え方ともいえる。実際、歴史劇は現代と異なる時代&社会&価値観が舞台なので、それらを一つ一つ解説していくと、物語のリズムが悪くなりやすい。これはこれで正しい手法なんです。

この劇画的演出の典型は『蒼天航路』の序盤で、普通に読む分には途轍もなく面白いんですけれども、冷静に読み返すと『コイツら何をやっているのか』というツッコミどころも満載なんですね。青州兵のという女性が曹操に『自分たちを解放して欲しい』と願い出る場面があるのですが、この会談の間、曹操はずっと真顔で汎のおっぱい吸いながら話しているんですよ。流石はエッチ大好き。意味が判らない。でも、この見た目のインパクトで何となく凄そうなのは伝わってくる。あと、徐州に攻め入ることを諫める家臣たちに向かって、

 

曹操「曹操はなにゆえ曹操であるか! 曹操孟徳は天下のものである! 曹操に天下を見るならば、曹操のもとにおれ!」

 

と宣告する場面もありましたが、これも物凄くカッコいいけれども、よくよく考えると『俺の命令に従え』以上のことは言っていないんですよね。こういう言葉の意味は判らんが凄い自信のある台詞や表現で、読者を何となく判ったつもりにさせるテクニックが歴史漫画のおける劇画的演出の典型といえるでしょう。『蒼天航路』も後半の合肥視察以降は劇画的演出が激減して、破天荒な『名作』から、独自の解釈に基づく史実と創作のバランスが取れた『良作』になるのですが……現在連載中の作品では高橋のぼる先生の『劉邦』が脱ぐ・斬る・ヤるの三拍子揃った典型的な劇画的歴史漫画でしょうか。別にエログロナンセンスが悪いという意図ではありません、念のため。如何なる手法であれ、最終的に読者を楽しませることが絶対の正義ですからね。

しかし、この『新九郎、奔る!』は劇画的演出を殆ど排除した作品ですね。女の裸もグロ画像もキメ台詞もない代わりに必要な情報は全て描かれているという、珍しいタイプの歴史漫画です。本作について『当時の時代背景を判りやすく描いている』という評価を見ましたが、これは微妙に違う。正確には『キチンと読んだ人にはキチンと判るように描かれている』というべきでしょう。上記のように今までの歴史漫画は、読者にとってハードルの高そうな場面は『物凄くカッコいいけれども、何がいいたいのか判らない主人公のキメ台詞』で何となく読者を判った気にさせることで解決するのがセオリーですが、本作はそういう場面が一切ない。必要な情報は細部に至るまで御丁寧に描かれているので、キチンと読んだ読者には作者が描きたいことは全部伝わるのですが、逆にいうとキチンと読まないと判らない。つまり、判った気になって先に進めない漫画なんです。ノリとイキオイとダイナミズムがメインの今までの歴史漫画と同じつもりで読んだ人間(主に私)には意外とハードル高いように思いました。

勿論、これほどの情報量を詰め込みながらも物語のリズムを保ち、破綻を来さない精密な構成、特に実写も顔負けのカメラワークも本作の魅力の一つでもありますが、こうした作品が読者の支持を得ている理由は描き手側以上に受け手側、つまり、読者の質が変わったのも大きいのでしょう。劇画的エログロナンセンスに重きを置く従来型の作劇に囚われない、新しい歴史漫画を求める読者層が増えているのかも知れません。この辺、呉座先生の『応仁の乱』の購読層と被っているのではないかと思います。本作唯一&最大のネックはこのクオリティを維持したままで早雲の生涯を描き切ることが出来るか否かでしょう。何せ、早雲は長生きですからねぇ……というか、第一話冒頭のシーンに戻るだけでも大変そう。まぁ、これも描き手側のみの課題ではなく、こうした作品を支持する読者層が今後も継続的に存在し得るかという課題でもあると思いますが。取り敢えず、今年のランキングツートップの『風雲児たち』&『よりもい』の牙城を突き崩す最有力候補。久しぶりの三作同率一位あるかも。

 

 

2.吉報はひとりでしか来ないが、兇報は友人をつれて来る

 

 

 

 

前項でチョロッと触れた銀英伝。言うまでもなく、本作の主題は『最良の専制政治と最悪の民主政治のどちらを選ぶか』であり、その意味で『銀英伝』の主人公はラインハルトとヤンではなく、ラインハルトとトリューニヒトであるという某作家先生の解釈は『真理など滅多に存在しない人間世界の数少ない例外(byヤン・ウェンリー)』といえるでしょう。人気投票では常にヤンに水をあけられるラインハルトですが、ひょっとすると、コアな銀英伝ファンの間ではトリューニヒトよりも人気がないかも知れません。実際、私の周囲では銀英伝について語ると、ラインハルトよりもトリューニヒトのほうが話題になる機会が多い。

これは銀英伝の不可解な点の一つで、友人が本作を読み始めたばかりゆえ、具体的なネタバレは控えますが、作中でトリューニヒトが読者の支持を得る要素は全くないのですよ。オーベルシュタインのような筋の通った憎まれ役でもなく、ラングのように職務上はアレでもプライベートでは妻にも子供にも優しい理想的な家庭人でもない。トリューニヒトは法律的な責任問題は措くとして、能力的にも道義的にもフォーク准将が裸足で精神病院を脱走するレベルの失態&悪手を繰り返しているにも拘わらず、フォークのみが読者に蛇蝎の如く忌み嫌われる一方、トリューニヒトはカルト的人気を誇っている。私自身、好きな銀英伝のキャラクターランクではジャスパーの下、カリンの上の第七位に列しております。

この理由として考えられるのは二つありまして、一つにはトリューニヒトは純粋な人気というよりもネタで楽しんでいるケースが多いからでしょう。本心からラインハルトよりも好きという方は決して多くはないと思います。じゃあ、何でトリューニヒトが斯くもネタとして読者に愛でられるかというと、トリューニヒトにはラインハルトやヤンと違い、社会制度上、我々の世界に現れかねないというリアリティがあるからです。別に具体的に実在する誰がどうこうの話ではなく、オート式の拳銃にジャムるリスクがあるように、民主共和政体というシステムを運用する以上、ポピュリストが出現する危険は絶対に避けられないんですね。そこを深く考えるのは精神衛生上、極めて芳しくないのですが、全く考えないのもマズイなので、ブラックジョークのネタのように心の片隅にチョコンと置いておく。往古の権力者が道化師を傍に置いて身を糺した発想に似ていますが、これがトリューニヒトのカルト的支持層の正体ではないかと。逆にいうとトリューニヒトをネタにして楽しめない社会になったらおしまいともいえます。

そして、もう一つの理由はいわずもがな、トリューニヒトを演じた石塚運昇さんの魅力でしょう。張りと色気と渋さを兼ね合わせた朗々たる声量と確かな演技力はトリューニヒトに嵌り過ぎでしたよ……その石塚さんの訃報は『信じない』というよりも『信じたくない』話でした……というか、八年前の私だけでなく、現在の私も信じたくない。『相棒』ファンとしては津川さん。『銀英伝』ファンとしては石塚さん。今月は訃報が相次ぎました。これ以上、兇報が友人を連れてこないことを祈ります。

 

 

3.エディットレフェリーはマーサ茨木

 

話題をガラリと変えて、こちら。

 

 

発売日には事前に会社に休暇届を出してプレイを待ち焦がれていたファイプロ最新作ですが、当日は熱中症と思しき症状で一日中寝込んでいました。ちなみに翌日は以前、記事で書いたように『イベント前日になっても依頼しておいた業務が半分残っていた』&『片づけたと報告のあった業務の半分がリテイク案件』&『現場責任者が残業せずに帰宅』という恐怖のトリプルコンボに見舞われた日です。日の出と共に帰宅した時には地獄に堕ちろと吐き捨てたくなる程の清々しい気持ちで胸が一杯でしたが、そのままファイプロをプレイ出来たので全て許した。でも、絶対に忘れない。

それは兎も角、これも八年前の私の私に聞かせても、恐らくは信じなかった事案。実際、2006年に発売されたハードのPS3では『ファイプロシリーズ』は出ていない筈です。よく『諦めなければ夢は叶う』とかいいますが、今回のファイプロ続編発売に関しては、

 

与力「もうとっくの昔に諦めていましたよ、正直! それまでは遅くとも三年周期で出ていたシリーズもパッタリと続編が発売されなくなって、何年も経ったら……普通、諦めますよ! 諦めない奴のほうが変でしょう?」

「諦めて当然です! 当時はプロレス冬の時代真っ只中ですから! 確かにひとかけらの希望もありませんね!」

与力「諦めていたよ! 諦めたら叶っちゃったんだよ!」

 

というのがかぎりなく現実に近いシチュエーションでした。いいかい、全国の少年少女よ……非常に言いづらいことなのだが、経験者として言おう! 夢があったら諦めろ!

まぁ、冗談は兎も角、十年越しの夢が叶ったファイプロの感想は点数で表すと、

 

かぎりなく90点に近い50点

 

でしょうか。90点に近かった理由はエディット機能が想像以上に充実していたため。技といい、パーツといい、スキルといい、事前に期待していたものは概ね実装されていましたからね。惜しむらくはランニング式ダイナマイトニーリフトとキャトルミューティレーションとクランチループと曼荼羅捻りとスタンディングからのスクールボーイと【略】がなかったことですが、その辺は今後DLで実装して頂けたらと思います。

50点の理由は実装されているレスラーの絶対数が少ないこと。現在の新日本のレスラーは充実しているけれども、他団体や往年の名レスラーがいないのは寂しい。新日本の選手としか対戦出来ないのはなぁ。勿論、エディット機能で幾らでも作ることは出来るんだけれども、彼ら全員となると、どれ程の時間がかかることやら……氷川光秀とか田神朗とかパチモン臭い名前でいいから、他団体や往年のレスラーを入れて欲しかった。まぁ、今は本名でなくても肖像権とかがうるさいのかなぁ。その代わりなのか、SWAとかいう本作オリジナルの団体とレスラーが登録されていますが、

 

スパイク・チュンソフト「オリジナルレスラー……いっぱいいます(ドヤァッ

与力「違う違う、俺は別に見たことも聞いたこともねぇオリジナルレスラーと戦いてぇ訳じゃねぇんだ。そんな『楽しみにしてろ』みたいに出されても」

 

との思いは拭えませんでした。

それでも、発売日以降は十年以上も脳内に貯め込んでいた自作のオリジナルレスラーのエディットに夢中です。取り敢えず、現時点で12人作りました。お気に入りは顔面掻きむしりB~毒霧~飛びつきコンプリートショット~外道クラッチのコンボを決めるヒールのマスクマン。テクニカルのクリティカル属性持ちなので、ヘタすると最初のYボタン技が入った時点で勝負が決まるかも。小川良成のようにクイック技の巧いレスラー好きなのよー。尤も、当初の予定では@4人は作る筈でしたが、途中でボツになりました。これは歴代のファイプロエディットで共通しているのですが、Bボタン技で特色を出せないエディットレスラーは作っている途中で必ずボツになります。決め技よりも繋ぎ技で魅せるのがプロレスの神髄。つい、現在活躍している選手も何人が名レスラー足り得ているかということに思いを馳せてしまいますね。

 

これからも、当ブログをよろs……ん? 何? まだ他に『教えても信じないこと』が残っている?

 

 

4.歴史記事が全く更新されていないこと

 

 

 

 

これからも当ブログを宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『西郷どん』第三十三話『糸の誓い』簡易感想(ネタバレ意味なし)

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西郷吉之助「視聴者の皆さん、じゃあ聞いてくださいよ。今ここで何が起こったのかをね。

僕は今日、あれですよ、皆さん御存知の生き地獄ドラマ……じゃない、今年の大河ドラマに登場した訳ですよ。皆さん、もう御覧になったでしょう? 僕は英国艦でパークスと交渉した西郷ですよ。薩摩の西郷吉之助ですよ。 あの後、僕はやっと自宅に着いたわけですよ。もう時間もなくて、急いでお風呂に入ってお食事をして、その後、僕は家族にナマコを配って回りました。今週も全然歴史と関係ないホームドラマのノルマの消化で、スケジュールはイッパイイッパイですよ。

すると、現れたのがこの嫁なんですよぉ! 何の気か知らないけども、嫁が現れて、僕も視聴者も別に何も思ってないのに、

 

愛加那について腹を割って話そう!

 

と、この嫁は僕の部屋に乱入してきたわけですよ! 僕も視聴者も今更、愛加那と嫁の関係に蟠りも何も持ってない。仲がいいですよ。二人とも愛する女房だ。別に嫁と腹を割って話すことなんて何もないですよ。ところが、嫁は僕に、

 

愛加那について腹を割って話そう!

 

といって、何を話したいのか知らないが、僕の部屋に居座って、もうかれこれ嫁は半刻も僕の部屋を離れようとしないんですよ!

どうですか、視聴者の皆さん! おかしいでしょう、この嫁は! 僕は話を進めさせてくれっていっているんですよ! 視聴者の皆さんは御存じの筈ですよね! 僕が@何回で西南戦争を起きなきゃいけないか! 僕が十二月初旬の最終回で死ぬには最低でも一カ月前には熊本城を攻めなきゃいけないんです! この時点で開戦までに残された時間は@二カ月だ!

もう一つ言いましょう、僕はまだ髷を結っています。散切り頭になっていないんだ。戊辰戦争どころか、大政奉還にも到達していないんだ。九月中には江戸城を無血開城しなくちゃいけないのに、この嫁は至極神妙な顔つきをしながら、まだ僕と、

 

愛加那について腹を割って話そう!

 

としているんですよ! この状況を視聴者の皆さんはどう思いますかぁ!」

 

 

 

 

二年振り二度目の登板となった腹を割って話そうネタ。東北二泊三日生き地獄ツアーならぬ、薩摩西郷邸引き延ばしツアーともいうべきでしょうか。いやね、西郷とイトサァと愛加那の関係性なんて、この段階でやらなきゃいけない話じゃあないでしょ? 結婚の回でまとめてやっておきなさいよって話ですよ。そもそも、やらなくても何の問題もないよね? それを何で今更、そんなことを蒸し返すために一話まるまる費やさなきゃあいけないのですか? 今月限定でも四境戦争~家茂病没~将軍慶喜~孝明帝崩御~山川帰国~四侯会議~薩土盟約~倒幕密勅~ええじゃないか~大政奉還~龍馬暗殺~岩公復権~王政復古~錦旗捏造~小御所会議~江戸薩摩藩邸焼討~鳥羽伏見会戦~慶喜遁走~山川憤怒~五箇条御誓文~赤報隊無惨~エトセトラエトセトラ……と江戸無血開城に至る歴史イベントが山積している訳ですよ。そして、そのどれ一つ取っても、西郷とイトサァと愛加那の関係性の清算に優先度で劣るとは思えないのに何故、本作はイトサァの妊活というニッチなニーズに応えるストーリーに奔ってしまうのか。そんな今回のポイントは2つ。

 

 

1.【手紙映え】女人禁制の霧島山に男装させた嫁と登って天之逆鉾引っこ抜いたなう【炎上】

 

西郷吉之助「坂本さんは薩摩で匿ったほうが安全かち思うての」

 

寺田屋襲撃事件を受けて、龍馬を薩摩本国で匿おうとする西郷。西郷の申し出を快く受け入れた龍馬ですが、同じようなシチュエーションで月照どんを匿おうとして失敗した挙句、相手と入水したことを知っている視聴者的には不安しかありません。まぁ、製作者サイドはとっくに月照どんや橋本佐内のことを完全に忘れているのかも知れませんが……そもそも、今回の襲撃事件の舞台となった寺田屋で精忠組の凄惨な同士討ちがあったことさえ、登場人物の誰一人触れない段階で色々と御察しです。やんなるね。

久しぶりに吉之助サァが帰ってくるということで沸き立つ西郷家ですが、ほぼほぼ毎週のように家に戻っている&必要のないホームドラマパートがダラダラと続いている影響で、全く久しぶり感がないのも失笑を禁じ得ません。挙句におりょうを吉之助サァの愛人と思い込んだ吉二郎と兄弟喧嘩になりかけるとか…………こんなシーンの何処にニーズがあると思っているのやら。

一応、お断りしておきますけれども、俳優さんの演技や熱意にケチをつける意図は毛頭ありません(ただし大久保、テメーはダメだ)。少し話は逸れますが、先日、我がJE市でこういうニュースがありました。

 

『大河ドラマ「西郷どん」西郷弟役の渡部豪太さん 金谷山の「薩藩戦死者墓」を墓参り』

 

このニュースで一番嬉しかったのは『渡部さんはこの後、同じ金谷山にある戊辰戦争で敗れ高田藩に預けられ命を落とした会津藩士らが眠る「会津墓地」も訪れた』という最後の一文です。吉二郎役の俳優さんなのですから、薩摩藩士の合葬墓で手を合わせて下さるだけでも充分なのに会津墓地にも足を運んで下さったのですよ。サンキュー基盛。フォーエヴァーフルチン。会津墓地は江馬さんと装鉄城さんがお越しになった際に私も案内しましたが、薩摩藩士の合葬墓の規模に比べると慎ましやかで、地元でも知らない人が多いのに……ありがてぇ、ありがてぇ。案内した学芸員の方と案内された俳優さんの心配りには感謝の言葉しかありません。敵味方の区別なく、時代に殉じた人々に敬意を払うのは歴史劇に携わる人間の理想的な姿勢ですね。

 

問題は製作サイドに敬意が微塵も感じられないことです。

 

上記の渡部さんの墓参には本作のCPが同行したとのことですが、全部会津が悪いみたいな禁門の変を放送したあとで会津墓地に足を運んで心が痛まなかったのかと小一時間問い質したい。

 

 

2.ぐらんぶる的薩摩隼人(だいたいあってる)

 

パークス「何故、宴会ばかりで重要な話をせんのか? 君らは何を求めておるのか?」

 

『西郷どん』に対する視聴者の感想を代弁したパークス。司馬さん作品の傲岸不遜なキャラクター設定の影響でイマイチ好きになれずにいたパークスですが、この台詞で好感度200%UPです。何かというと飲んで騒ぐ薩摩隼人しか描かれない本作への痛烈な皮肉、或いは自虐ギャグに聞こえてしまいました。

それにしても、吉之助サァとパークスの会談は本当に酷かった。まず、本編のみならず、予告でも放送された『吉之助サァがエゲレスの軍艦に捕まった』という話がデタラメ。捕まったのではなく、交渉に乗り込んだのを周囲が勘違いしたというストーリー展開ですが、この作品は同様の手段で視聴者の興味を煽る姑息さが目に余ります。ナベケン斉彬に無礼を働いて投獄された~実はジョンマンから情報を聞き出すように命令を受けていたとか、沖永良部島にエゲレス艦隊が砲撃を仕掛けた~実は吉之助さんの夢でしたとか……このように意図的に視聴者の誤解を招く方法で興味を煽り、しかも、その真相が絶望的に面白くないという、姑息さに無能さを上塗りする作劇をドヤ顔で披露する厚顔無恥ぶりには草も生えない。嘘、大袈裟、紛らわしい。吉之助サァの再婚劇の熊吉の物言い同様、充分にJARO事案です。

更に交渉の内容も酷い……というか、そもそも、交渉になっていない。

 

① パークス「何で宴会ばっかしているの? 本当は何がしたいの? そもそも、この国は天皇と将軍のどっちが実権を握っているの?」

 

② 西郷吉之助「天皇から政治を任されている筈の幕府は腐り切っています。民を蔑ろにする幕府の命令なんか誰も聞きません。その過ちは薩摩と俺が糺します!」

 

③ パークス「私は貴方を信用します!」

 

おかしいでしょ? どうして、こういう結論になるの? 普通は②と③の間に何か入るでしょ? パークスが『幕府はどう腐り切っているのですか?』とか『貴方と薩摩が日本を仕切るとして、その方法論をお聞きしたい』とか『我々が薩摩に肩入れするメリットは何でしょう?』とか、具体的なことを尋ねて、それに吉之助サァが理路整然と返答をして、初めて『貴方を信用します』という言葉が出てくるものじゃあないのですか? 何でそういう話なしで無条件に吉之助サァのいうことを信じるの? 陰謀劇のみならず、交渉劇もマトモに描かずに幕末大河を描いた気になるなよ。

まぁ、仕方ないっちゃあ仕方ないともいえなくもありません。そもそも、吉之助サァの言い分は、

 

幕府は腐りきっている⇒具体的な描写は一切なし

誰も幕府のいうことを聞かない⇒お前らの陰謀だろ

民を蔑ろにする政治では国は立ち行かない⇒つ『奄美黒糖地獄』

 

と全部ブーメランになってしまうのですから。この辺、幕末独特の政治劇や時代背景をガン無視して、チャカポンと慶喜を安っぽい悪役に描いてきたツケがモロに表面化している感じで、初期段階から警鐘を鳴らしていた身としては『それ見たことか』という昏い笑みが零れるのを抑えきれません。いっそのことノーモアナマコという大河史上空前絶後のパークスの台詞をクローズアップして、

 

西郷吉之助「やれやれ、この程度の料理でナマコを不味いと決めつけるとは……パークスさんを見て『英国人は皆、偏屈で傲岸な国民』と決めつけるようなものだぜ」

パークス「何だと、この無礼者! ナマコなど美味い筈がない!」

西郷吉之助「一カ月後にもう一度、此処に来て下さい。本当のナマコ料理を御馳走しますよ」

 

龍馬に能登から輸送させたコノワタとクチコの味でパークスを改心させるというギャグ展開に振り切ったほうが、まだしもマシであったのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

徒然日記 ~2018/09/11~

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最近、頓に疲労が蓄積するようになりまして、腰痛や目の霞みといった身体的なものもありますが、一番愕然となったのは『ザ・ウォーキング・デッド』の最新シリーズを一気見出来なくなっていたことでした。昔は平気で一気見していたのに、今は一日一本見ただけでメンタルの疲労度がヤバいことになるのよ。今回リリースされたのは8期前半の8話分ですが、@2話残したまま、最終巻に手をつけられないでいます。明後日には返却しないといけないのに……でも、リックが立てた聖域封じの作戦は以前から私も考えていました。ワイ、リックの軍師になれるかも?

上記の理由により、半ば自業自得でメンタルをやられているため、今回も短めの記事がメインの徒然日記です。

 

まずは今週の『西郷どん』感想。

第二次長州征伐が具体的な戦闘描写なしで終わったことについて、

 

岸静江「今年も俺は出番なし!」

 

という声が聞こえた気がしましたが、村田蔵六や山縣狂介や井上聞多といった既に配役が発表されている人物でさえも登場していないので、これを期待するのは高望みというものでしょう。それにしても、聞多が忍成さんで狂介が村上さん……相変わらず、キャスティング『は』素晴らしいのですよ。キャスティング『は』ね。この山縣は眉一つ動かさずに、

 

山縣有朋(山城屋事件がバレないうちに野村を)斬り捨てますか」

 

と即断しそう。キャスティングといえば、

 

『松田翔太「幕末は“全員正しい”からこそ面白い」『西郷どん』慶喜役で』

 

でヒー様の中の人がナチュラルに脚本をdisっていたのがツボ。松田さんにはリアルでゴッシーやヒー様の素質ありますわ。この一事のみを見ても本作のキャスティングは神レベルと評して差し支えありません。逆にいうと本作の問題点がキャスティング以外にあることの傍証ともいえます。

実際、先回&今回のストーリーは幕府が仏国の援助を受けるのであれば、薩摩は英国の支持を取りつけるといった具合に、

 

 

を地で行く展開にも拘わらず、西郷は絶対的な正義の体現者として描かれる一方、慶喜が売国奴的な扱いを受けるという容保公でさえ慶喜に同情するレベルの偏向描写に草も生えない。幕府と仏国の連携を批判することは薩摩と英国の紐帯へのブーメランになることに制作陣は気づかないのでしょうか。幕府と仏国、薩摩と英国の繋がりとは、諸外国のバックアップを受けつつも、如何に内政干渉をさせないうちに相手を叩き潰すかというチキンレースな訳で、その辺の事情をガン無視して、一方的に慶喜をヒールに仕立てあげるとか、制作陣の幕末に対する理解と愛情の欠落を指摘されても仕方ありません。

ブーメランといえば、慶喜の大政奉還に対して、

 

西郷吉之助「慶喜公はうまく逃げただけじゃ。大政奉還の真の狙いはオイたちが振りあげた拳を躱すこっちゃ。タダの詭弁じゃ。あん頭のよか御人は判っちょる。政権を返したところで今の朝廷にはないもできんち。すぐにまた政権が手元に戻ってくるち」

 

と主人公がボロクソに貶すシーンがありましたが、

 

徳川慶喜「ほならね? 薩長が新国家の青写真を用意しておけって話でしょ? そう私はいいたいですけどね?」

 

との思いを禁じ得ません。いや、別に西郷が『慶喜にハメられた』と悔しがるのはOKなんですよ。でも、それを慶喜への人格攻撃や新国家の道義的優劣論に持っていく姿勢が本当に我慢出来ないのよね。取り敢えず、制作陣は松田翔太さんのインタビューを百遍読んでから出直すべし。

 

次はこれ。

 

 

 

 

公開時には各局で放送された宣伝番組を結構見た記憶がありますが、今でも本編は視聴していません。理由は単純明快で、

 

原作の情報量を三時間弱の映画に圧縮するのは物理的に不可能

 

と判りきっているからです。情報を直接ダウンロードする電脳化の技術でもないかぎり、原作を名作足らしめている要素を劇場映画の制限時間内に第三者に伝達するのは無理。原作と別物の面白さを作ることは不可能とはいいませんが、原作の面白さを再現するのはインポッシブル。これは監督の力量とか脚本家の腕とかではなく、単純に現代の科学技術の問題ですので、別に作品への批判ではありません、念のため。まぁ、企画した人間は何を考えていたのかとの疑問は残りますが。

それでも、この『関ケ原』は序盤から太閤秀吉の死や左近の暗闘、三成と初芽のエチィシーンといった見せ場があるので、終盤の合戦シーンまで観客のハートを引っ張れなくはないと思わないでもありませんが、先日発表された、

 

『司馬遼太郎の名著「峠」映画化! 役所広司、松たか子、仲代達矢ら豪華キャスト結集』

 

このニュースを聞いた時は、正直なところ、

 

 

と思いましたよ。いやね、この作品は全三巻のうち、後編の中盤に発生する北越戦争まで特に目立ったイベントはないのよ。河井継之助という合理主義のカタマリのような人物が何故、北越戦争という無謀な戦に出たか。その理由や動機づけに全体の八割が費やされる異端の作品なのよ。特に上巻は継之助の吉原通いがクローズアップされたり、自身の政治思想を確立するために全国の名士を訪問したり、小田切の勘定だけ断ったりと致命的に映像化に向かないのよ。しかも、タチの悪いことに、そうした継之助のグータラ書生生活のほうが、肝心の北越戦争よりも遥かに面白いのよ。歴史劇というよりも継之助の日記に基づいたエッセイに近い内容なのよ。それが最大の魅力の作品に『最後のサムライ』というサブタイつけちゃうセンスの持主が映像化に携わるというのは不安要素しかねぇ。

ついでにいうとキャスティングも……主演の役所広司さんは大好きですけれども、正直、大御所過ぎるといいますか。『八重の桜』の感想記事でも述べましたが、今、河井継之助を演じて欲しいのは兄つぁまこと西島秀俊さんなんですよね。今回の出演陣の中から選ぶとしたら佐々木蔵之介さんでしょうか。幾ら何でも佐々木さんの良運さんは違うやろぉ。

 

最後はこれ。

 

 

昨年上半期のベスト1作品『帰ってきたヒトラー』以来の洋画鑑賞。あれから一年以上経過していますが、これほどの短期間で洋画を立て続けに見たのは私の人生で初めての経験。多分、@二十年は洋画を見なくてもいいと思います。例外は『ダウントン・アビー』の劇場版。上映されたら必ず行く。でも、ローズが出ないってどういうことなの……?

それはさて置き、この『レディ・プレイヤー1』。冒頭で触れた『ザ・ウォーキング・デッド』4本と新作5本セットの数合わせで手を伸ばしたのですが、八十年代サブカルネタとVRMMOが融合した世界観がツボにハマったのか、メチャクチャ面白かった! サブカルとMMOのどちらか一方でも好きな方は見て損はないでしょう。版権の煩いアメリカで、よくもまぁ、これほど多くの作品のネタを映像化出来たものです。その労力だけでも充分凄いのに、純粋なアクションアドベンチャーとしても面白かった。多重債務者にゲーム内での労働を課す企業『IOI』も、ネットゲームでの悪質なRMT業者の延長線上にあると思うと妙にリアリティあったなぁ。まぁ、一番ツボったサブカルネタは作中ではなく、メインカップルの吹き替えがギーヴとファランギースということでしたが。

そんな訳で久しぶりに頭をカラッポにして楽しめた作品で、純粋な面白さでは今年ダントツのクオリティと評して差し支えありませんが、単純に『面白い』と『好き』がイコールで結ばれるとはかぎらないのが私のハラワタのねじくれさの証明といいますか。『好き』か『嫌いか』と聞かれると『好き』とは言い難い作品でもあります。理由はVRMMOを題材としているにも拘わらず、作中の価値観がかなりの比重で現実に置かれていること。開発者がゲーム内に残した莫大な遺産を探すという作品の性質上、ゲーム内での成功が現実社会の成功に直結するのはやむを得ないとしても、主人公もゲームの開発者も最終的には、

 

「やっぱり現実世界が唯一のリアルだよね」

 

という価値観に落ち着いちゃっているんですよ。そういう結論に落ち着くのでしたらVRMMOを舞台にする必然性ないやろと思ってしまうのよ。第一、そんな結論下す人間がVRMMOにハマったり、開発したりする訳がない、と嘗て某MMOで猫耳ネカマスペルキャスターで語尾に『にゃー』をつけていた私などは考えてしまうのよ。この辺、同じVRMMOを舞台にした作品でも、

 

 

こちらは現実世界と仮想空間を『=』とまではいかなくても『≒』で結んでいます。キリトさん曰く、現実世界と仮想空間の違いは情報量の多寡に過ぎないし、何時か仮想空間は現実世界と同等の情報量を再現出来るようになる。『SAO』はヴァーチャルからリアルに回帰するのではなく、ヴァーチャルからリアルを変えることがメインテーマなのですね。アニメ二期のシノンのトラウマ克服、ユウキのメディキュボイドが典型でしょうか。巷では典型的な俺TUEEEEE系ウハウハハーレムものと囁かれており、私自身も全く同じ評価を下している『SAO』ですが、上記の『ヴァーチャルからリアルを変える』という作品の主題においては、胸を張って『好き』といえる作品です。その『SAO』3期も近日放送開始。今回は4クールとか……流石に2クール分割になると思いますが、正気の沙汰じゃないな、これ(誉めています)

まぁ、繰り返すように好き嫌いは個人の問題であって、純粋に『レディ・プレイヤー1』がエンタメ作品として飛び抜けて面白い事実は揺るぎません。興味を抱いた方は絶対に見て! 損はしないから!

 

 

 

 

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『西郷どん』第三十五話『戦の鬼』簡易感想(ネタバレ意味なし)

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以上、今週の『西郷どん』でした。

 

 

昨晩のツイッター録画実況中にMasaさんが繰り出した究極にして至高のネタ画像。今週の『西郷どん』を見逃した視聴者の皆さま。週末の再放送も深夜の『5分で分かる西郷どん』も見る必要はありません。上記のMasaさんの画像を御覧頂ければ、それで充分です。この『オッカムの剃刀』の理想的見本を思わせるエレガントな解法に比べたら、冗長極まる文言が目につく私の感想文なんぞは、旧型パンチカードシステムを用いたゴリ押し演算によるエレファントな解法と評するしかありません。嗚呼、自己嫌悪。今週はMasaさんの画像の凄味に敬意を表して、余計な解説は極力控えた簡易感想でいきます。ポイントは1つ。

ちなみに今年のオフ会に関しては一両日中にブログで御報告致しますので、今暫くお待ち下さいませ。

 

 

1.ちょっと何言っているか判らない

 

西郷吉之助「慶喜は日本を自分のもんじゃち思い込んじょっとじゃ。そいは人の上に立つ将として、一番相応しくなか了見じゃ」

 

おう、ソースあんならすぐ出せよ。

 

西郷吉之助「江戸に降って浪士を五百人程集めろ。ほいで市中の商家を襲って火をかけろ。出来るだけ大きか所にせぇ。小さか所じゃ焼けると潰れてしまうでの。そん時、こいが一番肝要じゃが、薩摩の仕業じゃち判るようにすっとじゃ。連中を怒らせれば、それでよか」

 

これが少し前まで『攘夷か開国か、それを考えるためにも、まずは民の暮らしを守ることを考えてたもんせ』と慶喜にドヤ顔で宣っていた男の台詞である。

 

西郷吉之助「慶喜公は日本を異国に売り払おうとしちょる。生かしておったら民が苦しむこつになる」

 

薩摩の指示で店を焼き払われた江戸の商家は黒糖地獄に苦しむ奄美の人々と同じく、日ノ本の民じゃないんですか。そうですか。

 

ダブルスタンダードどころか、トリプルスタンダード、クアドラプルスタンダードと評してよい主人公のブーメラン発言が連発した今週の『西郷どん』。今週は珍しく、巷説(≠史実)準拠の描写が多かったものの、物語自体が『慶喜は日本を異国に叩き売る売国奴! それを阻止する西郷は絶対の正義!』という論拠のない捏造三流の勧善懲悪を基幹としているので、多少の小細工があったところで、全体のクオリティに影響はありませんでした。やんなるね。

いや、別に西郷が悪辣な策謀を巡らすのは問題ないのですよ。近年の研究では薩摩主導による江戸擾乱計画は公的には中止命令が出ていたのに益満や相楽への連絡が間に合わなかったとの見方もあるそうですが、王政復古の大号令と共に急速に終息した『ええじゃないか騒動』と同じで随分と薩摩にとって都合のいい話ですねとの思いは禁じ得ませんので、個人的には江戸擾乱計画を西郷主導で描いたこと自体は評価したい程です。

 

問題は西郷の闇堕ち描写が今までの言動と全く整合性が取れていないことなのですよ。

 

口では『民のため! 新しい日本のため!』といいながら、民の暮らしを踏み躙り、国を危うくする戦を引き起こそうとしている筋金入りのサイコパスにしか見えないのですね。

これ、実はキチンと筋道立てた物語を心掛けていれば、普通に視聴者の賛同を得ることが出来た筈なのですよ。幕末の情勢、就中、金銀の為替相場の不均衡から生じた経済恐慌、そして、開国以前から失策続きの徳川幕府の外交音痴という負のレガシーの所為で、諸外国に対する日本の信用度が回復不可能な水準にあったことを踏まえたうえで、

 

「不平等条約や為替レートの改正は愁眉の急であるが、タダでさえ、外交音痴で信用度ゼロの徳川幕府に早期の条約改正が出来るとは思えない。幕府と仏国との連携も一歩間違えると西欧列強による内政干渉の呼び水となる危険がある。この際、薩摩も英国の援助を受けて、短期間に幕府を屠るしかなさそうだ。そして、ダラダラと内戦を長引かせないためには一戦で慶喜の首級を獲る。多分に賭けの要素が強いが、これしかない」

 

史実の倒幕運動の内実は措くとして、この程度の解説をしておけば、視聴者は西郷に感情移入出来る筈なのですよ。その労を惜しみ、慶喜を売国奴に貶めて、相対的に西郷を正義に仕立てるというやっつけ仕事で片づけようとするから、その場その場の西郷の言動に全く一貫性がなく、昨年の井伊直親も裸足でトンズラするレベルのサイコパスになってしまうのですね。今回、他にも色々と触れたい点はありますが、結局のところ、本作の欠点の全ては上記した理由に帰結すると思うのですよ。それこそ、先述したように本作にしては巷説準拠の描写が目立ったものの、それらが心に全く響くことなく、逆にあざとい印象を残してしまったのも、そういうところなんじゃあないでしょうか。

 

次回予告で藤本隆宏さんが演じる山岡鉄舟が登場しましたが、これ以上ない神キャスティング&西郷VS『JIN-仁-』の西郷という、このうえなく心躍るシチュエーションにも拘わらず、全く心に響かないんだよなぁ。純粋に勿体ない他の作品で見たかったという思いしか抱けない。最高級の配役にハチミツをブチ撒けるが如き作品です。ピュア勝ならぬ、ダーク勝の、

 

勝海舟「アンタ、徳川の恥だよ!」

 

という台詞も、慶喜の苦衷に少しでも思いを致せば、おいそれと書くことなんて出来ないよね。まぁ、

 

福沢諭吉「降伏した勝や榎本のほうが恥知らずだぞ」(@『瘠我慢の説』)

榎本武揚「私と一緒に降伏した大鳥君は何でセーフなんですかねぇ」

勝海舟「適塾の同窓生だからだろ(ハナホジー)

 

こんなことをツイッターで呟いてしまう私も大概ですが。

 

 

 

 

 

オフ会のお知らせ

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先日の感想記事で予告していたオフ会の予定が立ちましたので、発表させて頂きます……と、その前に、

 

 

 

 

 

以上、今週の『西郷どん』でした。

 

いやぁ、今週の感想記事で使わせて頂いたMasaさんの画像が余りにもクオリティが高く、オフ会の連絡記事の影響でスクロールしないと見れなくなってしまうのが勿体ないので、冒頭に添付致しました。画像とオフ会の内容とは関係ありません。悪しからず。

 

オフ会募集の詳細は以下の通りです。

 

 

▽日付:11月10日(土)

▽時間

・集合時間:17時15分(開始時間によって変動あり)

・開始時間:17時30分(予約状況によって前後30分程度の変動あり)

・所要時間:最大2時間(混雑状況によって変動あり)

▽会費:会費:4000~5000円前後(コース)

▽場所

・集合場所:JR新宿駅東口側(詳細は後日)

・開催場所:シークレット(詳細は後日)

▽募集〆切:9月30日(日)24:00迄

 

 

一次会終了後、途中退席可の二次会も予定しておりますので、こちらの参加希望も併せてコメントを頂けると幸いです(最大二時間の予定。場所は一次会会場から徒歩で移動出来る距離です)。また、先回の告知で参加希望のコメントを御投稿頂いた方も、改めてこちらの記事へ参加の可否を御伝え頂きますようお願い致します。皆様の御参加をお待ち申しあげております。

尚、当方がメアドを存じあげている方へは昨晩のうちに直接メールやメッセージなどで御連絡致しましたが、メアドの変更等の理由で届いていない場合があるかも知れません。その場合は大変御手数をお掛け致しますが、こちらのコメント欄に御投稿頂きますよう、宜しくお願い致します。

 

皆さまの御参加をお待ちしております<m(__)m>

『西郷どん』第三十六話『慶喜の首』簡易感想(ネタバレ意味なし)

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松平容保「この開陽丸は日ノ本一の軍艦にござりますれば、砲撃も浴びておらぬのに沈むなどということは!」

 

榎本武揚「容保ちゃん、それ以上やめて! 本当に沈んじゃう!(哀願)

 

江戸への逃避行中、時化に巻き込まれた開陽丸で天にも届く高きフラグをぶっ立てた我らが会津中将。蝦夷共和国の致命傷となった後年の開陽丸座礁沈没事件を思うと、松平容保というマイナスの意味での逆張りの名人の台詞にオカルティックな想像を巡らさずにはいられません。勿論、史実ではフラグでも因縁でもなく、開陽丸の沈没は単純に榎本を筆頭とする旧幕府海軍首脳部の艦隊維持能力の低さが原因。本作でも『海軍が踏ん張れば、薩長に勝てなくもない』と評されていた旧幕府海軍ですが、実は戦場以外での移動中の座礁や拿捕が多過ぎるのよ。榎本の艦隊維持能力では幕府が陸海両軍による大規模な包囲戦を試みたところで、計画通りに戦力を展開出来ず、作戦が画餅に帰したのは間違いないでしょう。榎本はマルチタレントとも評すべき多彩な才能の持ち主でしたが、恐らくは『政権の首班』と『艦隊の司令官』と『戦艦の艦長』の素質はなかったのではないかと思います。

ともあれ、本作では珍しく、歪んだ幕末視線でドラマを楽しむ人間にはツボにハマった場面があった今週の『西郷どん』。書いているほうも開陽丸が嵐で沈むことは把握しているようですね。ここはナベケンが唐突に諸肌脱いで相撲を挑んで来るという序盤の馬鹿話と同じレベルで素直に評価したい。

 

尤も、この場面以外は相変わらずの『西郷どん』で、今週の放送分を見た率直な感想は、

 

 

という、いつも以上に厳しい状況。尚、脳内で刺したのは物語に登場する人物・団体・名称等であり、実在のものではありません、多分、恐らく、念のため。上記の画像といい、ツイッターでの深夜録画実況の内容といい、あまりにも『西郷どん』を敵視し過ぎているんじゃあないかとの御指摘を受けることもありますが、

 

『西郷どん』のほうが私の好きな時代や人物を敵視している

 

としか思えないので、こちらも相応の態度で応じるしかないというのが正直な心境です。目には目を。歯には歯を。立派な制度だ。冒頭で褒めるべき点は褒めたので、ダメな箇所はキッチリと叩かせて頂きます。決してビデオデッキの不調で『あそびあそばせ』の最終回の録画に失敗した腹いせではありません。しかし、ラスト1話で録画をミスるとは……『西郷どん』を録画する時に不調になって欲しかった。今回の刺し傷……じゃない、ポイントは4つ。

 

 

1.一刺し目(初太刀で相手の抵抗力を奪う)

 

フキ「この船はきっと沈みます。罰が当たったのですよ。慶喜様にも、この私にも。もうすぐ、海の藻屑とやらですね。天下の将軍様が、こんなふうに死んでいくのかと思ったら、何だか可笑しくて……( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

 

冒頭の会津公の台詞に前後して唐突にブッ込まれたフキちゃん発狂イベント。罰といわれても何の報いに対する罰なのか……部下を置き去りにして逃亡転進したことに対する報いでしたら、将兵に対する責任のないフキちゃんは関係ないでしょう? 恐らくは西郷に敵対する側に与したこと自体が罪という華子のハレンチ裁判レベルのガバガバ判定と思われます。それなら、フキちゃんも罪人認定されそうですからね。

それにしても、現実的な罪状の有無や政治的判断の是非ではなく、主人公と敵対すること自体が罪って……何なの? 主人公に異を唱えると天罰が下るシステムなの? そういや、今週は西郷の追撃命令に異を唱えた信吾が被弾していたからなぁ。そんな祟り神みたいな西郷は嫌だ。百歩譲って、西郷への敵対が絶対的悪という認識がアリとしても、苦界にいたフキちゃんを身請けして、今の暮らしを保障したのは慶喜でしょ? そこんところを少しでも考えたら、上記のような台詞は絶対に出てこないと思うよ? フキちゃんがメシアの如く崇める西郷は何をしてくれた? アイツはフキちゃんが苦界に身を沈めるのを指咥えて見ているしかなかった男だぞ? そんなこんなの事情を考えると、皆が必死に嵐を耐えているところで『この船は沈むのよ! 天罰が下るのよ!』とか騒ぎ立てる人間のほうが罪な存在ではないでしょうか。正直、

 

嵐を鎮めるための生贄として海に放り込まれなかっただけでもフキは感謝すべき

 

ではないかと思います。『平清盛』の『平家納経』の回の西行よりもタチが悪い存在でしたからねぇ。そして、特に物語の進行に何の影響を及ぼすでもなく、開陽丸は無事に江戸に到着。フキちゃんも正気に戻ります。この遭難シーン、必要なかったろ。

 

 

2.二刺し目(クリティカルヒット)

 

松平定敬「この匂いは!」

松平容保「おお、待っておったぞ!」

板倉勝静「上様、ウナギが参りました!」

 

絶対に許さない! 絶対にだ!

 

先述&後述する、自分を身請けしてくれた慶喜に理由も述べずに『西郷に詫びろ』と頭ごなしに怒鳴りつけるフキとか、薩長軍にしか日本の行く末を担う若者は存在しないかのように語る西郷とかの描写は既に半分諦めている(キッチリこき下ろすけどね)。しかし、会津中将にまで本作のクソくだらないウナギノルマを消化させた罪を俺は未来永劫忘れない。

いや、江戸に戻った慶喜一行がウナギを所望したのは史実としても、それを何で下衆に描くの? 何で容保・定敬兄弟やウチの継サァの師匠の主君の板倉さんが慶喜の幇間みたいなの? 慶喜や容保が置き去りにした部下に慚愧の念を抱くシーンとか描けないの? こんなものを見せつけられた視聴者が歴史を好きになると思っているの? 西郷に盾突く人間の描写はトコトン下衆く描くうえ、それを愧じることなく、ドヤ顔で見せつけてくる本作の姿勢、ホントクソ。これ、今は幕府側を絶対悪に描いているけれども、明治編になったら、誰が下衆の役回りを担わされるのやら。本命・江藤。対抗・大久保。大穴・山縣。三郎? 出番すら危ぶまれると思いますよ。

 

 

3.三刺し目(致命傷)

 

フキ「謝ればいいではありませんか? あの方は心根のお優しい方です! 貴方が心から悔い改め謝れば、必ず許して下さいます!」

 

お前は何をいっているんだ?

 

深夜実況中にガチで数瞬の間、意識が飛んだフキちゃんの発言。いや、謝れっていっても、何を謝るんですか? 慶喜は大政奉還で幕府の失政の責任を取ったでしょ? 鳥羽伏見の戦いで先に手を出したのは薩長でしょ? 錦旗に逆らうことなく部下を置き去りにして大阪城から撤退して、戦意がないと示したでしょ? これ以上、何を如何謝ればいいの? そもそも、心からの謝罪なんて抽象的な概念をどうやって相手に伝えるの? 『焼き土下座しろ』って意味なの? それとも『死ねってことだよ! いわせんな恥ずかしい!』って意味なの? ホント、この場面のフキちゃんの言い分ワケワカメ。現実世界でもいますよね、クリア条件を提示せずに、

 

「謝れよ! 兎に角、謝れ!」

 

と繰り返す奴。そして、そーゆー奴は謝っても許してくれません。一度頭を下げたら、あとは当方が謝ったことを嵩に着て、マウントを取りに来ます。実体験から判ります。間違いない。百歩譲って、慶喜が西郷に心からの謝罪をすれば万事丸く収まるとして、それはそれで戊辰戦争そのものが西郷の私戦に貶められてしまうことを製作者は気づかないのでしょうか。流石にブチギレたヒー様は、

 

徳川慶喜「出ていけ! 二度とそのツラを見せるな! 俺の前から失せやがれ!」

 

と三行半を叩きつけますが、当の本人は、

 

フキ「いいんですね? 私、本当にいっちゃいますよ? いいんですね?(|д゚)チラッ

 

と引き留めて欲しいアピール満載で凄くウザい。典型的なクレーマーあるある。今まで本作のキャラクターは大久保以外、俳優さんの熱演もあって、嫌いになれませんでしたが、今週でフキちゃんの心証最悪になりました。『軍師官兵衛』でいうとミツ&ダシ&イトを一人で兼ね備えた存在。おぉう、これはウザい。

 

 

4.四刺し目(死体損壊)

 

西郷吉之助「日本国の行く末を担う者たちの生命を一人でも多く救いたいのでございもす!」

 

ああ、そうか、わかったわかった。

じゃあ、戦止めよう。

 

旧幕府側はおろか、新政府側からもテキトーなところで手打ちにすればいいじゃんという意見が出ているのに慶喜討伐を強行する一方、瀕死の弟の生命を救いたいという完全な私事から発した外国人医師の登用を『日本の行く末を担う若者の生命を守りたい』という曖昧なオブラートに包んで、ドヤ顔で進言する西郷。いっていることとやっていることに全く整合性がありません。どう考えても矛盾しています。本作の序盤の感想記事で大西郷という『矛盾の人』を表現出来たら凄いと書いた記憶がありますが、こういうことじゃあない。これでは単なるサイコパスです。百歩譲って(今回譲ってばっかりだな)日本国の行く末を担う者たちの生命を一人でも多く救いたいというのが本心としたら、戊辰戦戦そのものを止めろよって話ですよ。林董、山川健次郎、秋山兄弟、原敬……新時代の日本を支えた人材が新政府の恩恵を受けられない地域や組織から輩出されなかったとでも思っているのか。

別にイクサハイヤデゴザイマスルという西郷を見たい訳ではありませんよ。それは阿房のすることです。主人公の思考と言動に整合性を持たせろといっているだけです。西郷隆盛という人物に対する歴史解釈の難易度は頗る高いとはいえ、戊辰戦争や西南戦争が起こるのはハナから判っているのに、それに合わせた人物設定をしてこないから、こういう憂き目に遭う。それだけのことです。

 

そんな訳で無事死亡と相成った今週の『西郷どん』。本編終了後の紀行で、

 

紀行ナレーション「鳥羽で始まった戦いは京から江戸、東北へと舞台を移してゆくのです」

 

と語られていましたが、恐らく、否、確実にキチンと描かれることはないでしょう。そちらはチャンネル銀河で再放送中の『八重の桜』を御覧下さいませということか。

 

 

 

 

 

 

 

 


『西郷どん』第三十七話『江戸無血開城』超々々簡易感想(ネタバレ意味なし)

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『台風報道で休止の「西郷どん」、1週延期し放送』

 

台風二十四号の臨時ニュースで地上波放送が延期された今週の『西郷どん』。当方はBSで録画をかけておいたため、視聴に影響はありませんでしたが、地上波放送は来週に順延するようですね。尚、BSは今週分を再放送して、地上波とスケジュールを合わせる模様。穏当な判断とはいえ、本作を二度も放送することに関して恥の上塗りという言葉を思い浮かべたのは私一人ではないでしょう。奇しくも一九九〇年の同日に放送された『翔ぶが如く』の『両雄対決』を再放送したほうが、喜ぶ視聴者も多いのではないでしょうか。

地上波で本編を追いかけている方もおられるので、今回感想をUPするかどうか多少迷いましたが、見所が全くないうえ、上記のようにネタバレしても何の問題もないレベルの内容なので、ササッと片づけてしまいましょう。今回のポイントは2つ。江戸無血開城の回で語るべきことが悪い意味でも二つしかないって、ある意味凄いよね。

 

 

① 徳川の空気嫁№2

 

シリーズ序盤で猛プッシュされていた天璋院が、今回の江戸無血開城では屁の突っ張りにもなりませんでした。確か、番組では『西郷と篤姫の絆が江戸無血開城に繋がる』と予告されていた筈なのに……何のために『篤姫』の再放送レベルと見紛うレベルの時間を割いて、天璋院の描写に時間を割いたのやら。まぁ、西郷と篤姫の絆で江戸無血開城が成立するなんてストーリーは慎んでノーサンキューなのも確かですが、事前に『やる』といっていたことを『やらない』制作陣の姿勢には疑問を呈さざるを得ません。実際、新政府のダークサイドを描くに欠かせない赤報隊のエピソードを『やる』といっていたにも拘わらず、完全にスルーしていますからね。出来もしないことをブチあげて、やらずにテキトーに誤魔化す。無能のうえに不誠実。何処かで見た人物像と思ったら、

 

「民を見捨てることはオイにはできもはん」

「守るべきものは民でございもす。誰よりもまず、か弱き民でございます」

「オイは民を救うっとが薩摩武士の本懐ち心得ちょりもす」

 

とか言いながら、

 

 

とか宣う某主人公と同じですね。作品の影響力を侮るなかれ。真っ先に作品の影響を受けるのは作者自身だからな。しっかし、Masaさんの画像の使い勝手が良過ぎる。総評記事もこれ一枚でいいんじゃないかな。

 

 

② メロスとセリヌン

 

フキとサトウから耳にした『慶喜、薩摩をフランスに売り払うってよ』という出所も判然としない又聞きレベルの噂を真に受けて、唐突に慶喜絶対殺すマンになった西郷ですが、勝の勧めで慶喜と直接会談することに。そこで慶喜の口から『ロッシュからフランスの支援の口約束があったが、日本を英国と仏国の食い物にする訳にはいかないから鳥羽伏見の戦場から逃げた』と聞いた途端、

 

西郷吉之助「僕とヒー様はズッ友だよ……(意訳)

 

と呆気なく掌を返す西郷。控え目にいってワケワカメ。いや、ホント、このシーンは何で感動的なシーンみたいに描かれているのか全然判らない。これって、フキとサトウに騙された西郷が勝手に被害妄想を拗らせて、慶喜を大政奉還に追い込んだ挙句、鳥羽伏見の戦いを引き起こしておきながら、今になって、それらが全部勘違いと気づいたってことですよね?

 

じゃあ、まずは『ごめんなさい』だろ?

 

又聞きを信じてすみません。勘違いで戦争起こしてごめんなさい。戦死者を弔うために腹を斬って詫びます。これが普通の反応でしょう? それが何でサスガサイゴージャみたいな話になっているの? 本当に気持ち悪い。今時、カルト宗教のPVでもこんなんやらないよ。ううん、知らないけど絶対そう。

 

そんな訳で教科書レベルの江戸無血開城の知識さえあれば、何一つ見る必要性のない内容で終わった今週の『西郷どん』。来週の地上波も何食わぬ顔で一回飛ばしても誰も困らない気づかないんじゃあないかな?

 

 

 

 

荒川弘版『アルスラーン戦記』第62章『亡国の王女』&第63章『盗賊の仕事』感想(ネタバレ有)

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ダイラム領民A「他にお前が持ってる情報は?」

ルトルド侯爵騎兵「ない!」

ダイラム領民B「本当か? まだ何か隠してないか?」

ルトルド侯爵騎兵「やめろ! その絵を見せるな! 本当にもう何も知らん、知りません!(gkbl

 

これぞ、まさに『地獄絵図』である。

 

公式では未遂に終わったナルサスの画による拷問。アルフリードの『相手が白状したのはナルサスがいたおかげ』というフォローは、田中センセからも贔屓の引き倒しと揶揄されていましたが、荒川版では引き倒しどころかどてっ腹に風穴を開けるレベルで正鵠を射ていたことが証明されました。やったね、アルフリード。ついでにダイラムの領民は完全にナルサスの画に対する耐性を備えていることも証明されました。前回の感想でも述べたように、ナルサスの画を陣頭に掲げて突撃する特殊部隊の編成も夢ではなさそうですが、流石に元領主の画を拷問の道具に用いたと伝えることは出来なかったのか、この事実をパルス軍首脳部は最後まで把握していなかった模様。この特殊部隊さえ編制出来ていたら、後年、ナルサスもアルフリードもあんな目に遭わずに済んだかも知れないのに……嗚呼、灯台下暗し。

今回も二カ月分をまとめた変則型の感想記事。ダイラム編の完結まで待っていただけで、モチベーションやスケジュールの都合ではないと強弁してみる今回のポイントは5つ。

 

 

1.誠意は金額でなく素顔

 

メルレイン「自分を守ってもらおうってのに、この期に及んでも顔も見せようとしない姫さんに、指一本でも動かす気になれると思うか?」

 

荒川版のオリジナル台詞。メルレインVSイリーナ(?)では絹服を着ている貧乏人なんていないという台詞が有名ですが、絹服を着ている人間からの略奪を生計の術にしているゾット族の言い分としては、些か説得力に難があるのも事実です。その辺、荒川センセはメルレインとイリーナの対立を経済的格差ではなく、

 

「自分の生命を守ってくれる相手に顔も見せられないのか? どこまでお高くとまっていやがる?」

 

という人間としての資質を問う形で描いてきました。まぁ、盗賊が人間としての資質を問うのもどうかと思いますが、後述するようにゾット族は略奪暴行も常に素顔で行っているので、本人的にはOKなのでしょう。勿論、現代でも作中パルス世界でも法律的にはどっぷりとOUTですが。

 

 

2.やだもーなんていわない

 

イリーナ「ご無礼をお許しください、パルスの勇者様。生まれつき、目が見えないのです」

 

一目で茅野愛衣さんヴォイスでの脳内再生が余裕な癒し系御姫様キャラ、イリーナ。メルレイン同様、アニメ版では殆ど出番がなく終わったイリーナですが、これもメルレインと共に漫画版では結構美味しいところを持っていきました。メルレインがマルヤム王室の塩対応をdisる件は本来、ナチュラルに民衆を足蹴にしている自覚のない権力者を論破する『スカッとジャパン』な場面なのに、そこを敢えて逆手に取り、イリーナの盲目設定を前倒しにすることで、メルレインのほうが他人の心情に思い至らなかった己に気まずさを抱く。メルレインがイリーナの要請を容れたのは原作のようにいいたいことをいってスッキリしたからではなく、メルレインなりの彼女への罪滅ぼしなのでしょう。初対面の、しかも、ゾット族の『天敵』である王族の要請を引き受ける動機としては、漫画版のほうが納得出来ます。勿論、キチンとした原作があってこそ、こうしたアレンジが輝く訳ですが。

 

 

3.MMT

 

ミリッツァ「イアルダボード神よ、妹をお守りください」

 

結構な尺で挿入されたマルヤム陥落編ともいうべき回想シーン。何気にウルッと来るレベルの話を平然と盛って来るなぁ。これがなければ、ジョヴァンナさんは単なる腹黒女官で終わったでしょう。実写化の際には峯村リエさんでお願いします。BGMは『暁の車』で。それにしても、神への最期の祈りが己の魂の救済ではなく、妹の守護とは……『獣の奏者エリン』のソヨンを思い出してしまいました。ミリッツァさんマジ天使。そして、傍目にも脱出経路と判る城下の洞窟に封鎖網を敷かなかったルシタニア軍マジ無能。これは(ボダンによる)教育やろうなぁ……でも、ボダンが作戦に容喙して、不手際が生じた可能性も高そう。

 

4.魂・閃き・集中・激闘・直撃・挑発(予想)

 

クバード「惜しいな。勇気に技が伴わなかったか(ズバー

 

いや、完全に力押しですやん。

 

技とかテクニックとかいう以前に、完全なるパワー押しでルシタニア騎兵の顔半分を持っていったクバードさん。今回の犠牲者に足りなかったのは技ではなく、クバードに負けない腕力と斬撃を受け止める剣の硬度であったと思うのですが……いずれにしても、クバードさんは容赦がなさ過ぎる。『スーパーアルスラーン大戦』が作られたとしても、クバードの精神コマンドに『手加減』が入ることはないでしょう。まぁ、それをいうたら『手加減』を覚えそうなキャラクター自体、思い浮かばないのですが。技量的にはキシュワードが覚えてくれると助かる。

そして、自称『パルスで二番目の弓の腕』を披露したメルレイン。原作では射落としたルシタニア騎兵が不意討ちを仕掛けてきたのを返り討ちにする描写がありました。『殺されたのが悔しいなら、何時でも化けて出ろ』というキザな台詞と共にトドメを刺すのですが、ギーヴやファランギースでしたら、弓での攻撃の段階で綺麗にヘッドショットを決めていそうですから、この手の台詞を口にすることさえないでしょう。カッコよさそうに見えて、実はメルレインの技量が両名に及ばないことの暗示でもありそうです。

 

 

5.痘痕も靨

 

クバード「ヒルメス王子の人となりはご承知か?」

イリーナ「烈しい方です。でも、私にだけは優しくしてくださいました。それで充分です」

 

ヒルメスの為人を端的に表現したイリーナの名言ですが、ペシャワール城でアルスラーンに向かって放った、

 

ヒルメス「すぐには殺さぬ。まず、小せがれよ、きさまの右手首を斬りおとしてくれよう。このつぎ会ったときは、左手首をもらう。それでもなお生きていたら、右の足首でもちょうだいするとしようか」

 

というショタ系リョナ性癖丸出しの言葉を知っても、尚、ヒルメスを好きでいられるか、些か疑問ではあります。尤も、思い込みの激しさではヒルメスに負けず劣らずのイリーナのことですから『そこに痺れる憧れる』とばかりに、アルスラーンを斬り刻もうとするヒルメスに熱烈なエールを送る可能性もアリ。逆にヒルメスのほうがドン引きしそうです。のちにイリーナはザンデを始めとする部下やメルレインの目前でヒルメスの乙女チックな黒歴史を暴いてしまうことからも判るように、思い込みが激しいうえに周囲の目を気にしない性格なのよね。暴かれたほうは銀仮面の下で、

 

ヒルメス(イリーナ、それ以上やめて! 死んじゃう!)

 

と顔色を赤と青に忙しく変化させていたことでしょう。クバードやメルレインからdisられたヒルメスの仮面ですが、この一事にかぎってはナイスな判断であったと思います。流石に本編では難しいと思いますが、単行本のカバー下でヒルメスの仮面を『取る&取らない』のドリフネタをやった荒川センセなら、上記の場面も描いてくれるって、私信じてる!

 

 

 

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徒然日記 ~2018/10/09~

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御存知のように今週の『西郷どん』は台風報道による順延のため、先週BSで先行放送された『江戸無血開城』と同じ回でした。流石に同じ回の感想を二度書く気にはなりませんが、昨晩、ツイッターで二度目の録画実況を行ったところ、初回視聴では気づかなかったツッコミどころがボロボロ出てきて、思っていた以上に白熱した内容になったものです。

 

炎尾燃「本当にいいものは一度ではわからないものなんだよ!」

 

といいますが、逆に本当に悪いものも一度では判らないのですね。よっしゃ! こうなったら、土曜日の再々放送も録画実況したろ!(嘘です、勘弁して下さい)

そんな訳で今週は『西郷どん』の感想ではなく、久しぶりの徒然日記。オフ会とか年末業務とか大河総評とか下半期ベスト10とかのスケジュールを思うと、今年最後の徒然日記になる可能性も否定出来ません。まぁ、そんなことをいいつつも、来週の『西郷どん』のクオリティ次第では感想書く気なくなって、素知らぬ顔で日記にするかもですが。今回の話題は2つ。

 

 

1.ボバン「サッカーを戦争だと言う者は本当の戦争を知らない」

 

小松原道太郎(一八八六~一九四〇)

旧日本陸軍の中将で、この夏、NHKで放送された『ノモンハン~責任なき戦場~』にも登場していたので、御存知の方もおられると思います。番組で紹介されていたように、二十倍のソ連兵相手に五日間も戦線を維持しつつも、甚大な損害と補給の途絶のためにフイ高地を放棄した前線指揮官に敗戦の責任をおっ被せるため、軍法会議に拠らず、組織の圧力で自決に追い込み、遺族には『俺は止めたけどね』とのうのうと宣い、自身は予備役への編入で生命を永らえるという一周回ってもムカッとするレベルの胸糞エピソードの持主です。近年の研究ではソ連のハニトラにひっかかって、日本軍の情報をボロボロ漏らしていたとか、むしろ、積極的にソ連側のスパイ活動に従事していたとかいう説が出ているそうですが、何れが真実であっても、戦死者や遺族の慰めにならないのは確かでしょう。

この小松原閣下のことは番組放送以前、それも、前世紀から存じておりまして、

 

 

今から二十年前に発刊された司馬さんのエッセイに彼の逸話が記されています。ノモンハン事件の終盤、圧倒的劣勢に立たされた日本軍の本営に居た軍医長が小松原閣下の、

 

「もうこれはどうしようもない。しかしながら、日本の兵隊さんは強いと聞いているから、なんとかなるだろう」

 

という呟きを耳にしていたそうです。事実としたら、一軍の指揮官の言葉とも思えないシュールな発言ですが、これを日本軍の無責任体質と捉えるのは少し違うと思います。小松原閣下は日露戦争直後に士官学校を卒業した『戦後世代』です。日露戦争の終結が一九〇五年。ノモンハン事件が一九三八年。要するに日本の兵隊さんは強いという思想と共に軍歴を重ねてきた訳ですね。つまり、

 

どんなに荒唐無稽な話でも四半世紀も繰り返すと唱え始めた側に信じる人間が出るようになる

 

という典型事案ではないかと私は解釈しております。小松原閣下は無責任人間でも、ソ連のスパイでもなく、ガチンコで『日本の兵隊さんは強い』という思想をベースに戦略戦術を構築していたのかも知れません。勿論、これもこれで何の慰めにもならない話ですが。

尤も、最近は四半世紀どころか十年に満たない、しかも、政治家でも軍人でもない一スポーツ選手の発言に端を発した問題が国家間の軍事・外交に多大な影響を及ぼしているようですね。時代の潮流が加速しているのを感じますが、これが契機で最悪の事態に発展した時、後世の世界史の教科書は事件の発端を如何に語り継ぐのか、些か意地の悪い興味があります。願わくば、百年後の子供たちが、

 

「そんな漫画みたいな話は信じられない。だから、歴史の授業は苦手だ」

 

と勉強を嫌がらないで欲しいものです。まぁ、近現代史にもディナモ・ザグレブVSレッドスター・ベオグラードという悪しき先例もあるので、まるきり荒唐無稽な話として認識されることはないとは思いますが。

 

 

2.アニメ『アンゴルモア ~元寇合戦記~』感想(辛口&ネタバレ注意!)

 

二〇一八年夏の覇権アニメは問答無用で『あそびあそばせ』を推す私ですが、純粋なナンセンスギャグ作品の感想なんか書ける訳もないので、理由の是非は別として、最終回が最も印象に残った『アンゴルモア』の感想でも書いてみようかと思います。かなり辛目の内容になるので御注意下さい。尚、原作漫画は未見。あくまでもアニメ限定の感想です。

まず、最終回を見た直後は、

 

「コクがなく、ただ後味辛い」

 

というピストル大泉のエビチリをお見舞いされた気分になりました。いや、食べたことはないけれどもね。何せ、登場人物の殆どがボッコンボッコン死んでゆく割に、誰の死も悲しめなかったのよ。各キャラクターの掘り下げが圧倒的に不足していたのは否めません。勿論、対馬の敗北は史実として揺るがないものとはいえ、あれじゃあ、銀英伝のアムリッツァ会戦でヒューベリオンが撃沈されて、シェーンコップやポプランやムライやパトリチェフが何の見せ場もなく退場するようなものです。戦死した連中を登場させる必要性が全く感じられなかった。以前の感想で述べた主人公の『強さの秘密』と『戦う理由』も描かれないままでしたし……アニメ的にも合戦シーンがメインになるに従って、画のぷるんぷるんさが半端なかったなぁ。このストーリーをアニメとして成立させるのに必要な時間、技術、労力の全てが足りていなかったというのが正直な感想です。

ただ、こうしたジャンルの作品は今後も製作して欲しいという思いはあります。結局、実際に作らないと技術は蓄積されませんし、大河ドラマやテレ東の年末年始時代劇じゃあるまいし、毎年毎年飽きもせず、戦国と幕末をループしていては幾ら耕そうとも土地は痩せ細る一方。技術の蓄積とジャンルの開拓という意味で、今までアニメで取りあげられることのなかった時代や分野を題材とする作品はやめて欲しくない。それこそ、原作は一段落したという話も耳にしましたから、ハガレンのようにリトライのチャンスを……と思いますが、グッズ展開の難しそうな作品なので、純粋に円盤が売れないとダメだろうなぁ。

 

尚、先述の『あそびあそばせ』と『信長の忍び~姉川・石山編~』が完結して、漸く深夜のCMカット作業&DVD焼きが一段落する……と思っていたら、

 

『ジョジョの奇妙な冒険 ~黄金の風~』

『SAO アリシゼーション編』

『SSSS GRIDMAN』

『色づく世界の明日から』

 

とクロマティ高校のゴリラのように増加の一途を辿る録画作品の数々……俺の(DVDデッキの)腹ン中パンパンだぜ。『ジョジョ』と『SAO』の鉄板二作品に『SSSS GRIDMAN』と『色づく世界の明日から』がどこまで食い込めるか楽しみでもあり、CMカット&DVD焼きの手間を思うとシンドくもあり。後者二作品は純粋に映像や緩急の演出のつけ方が巧いんよ。ただ、序盤から作画・動画でトバし過ぎな気もするので、息切れしないか心配。

 

 

 

 

 

 

 

オフ会のお知らせ for スナコさん&『西郷どん』第三十八話『傷だらけの維新』感想

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まずはスナコさんにオフ会の詳細の連絡です。当日の予定が決まりましたので、以下の内容を御確認のうえ、御参加の可否につきまして、改めてコメント欄に御返信下さいますよう、宜しくお願い致します。諸般の事情で連絡が遅れまして、申し訳ございませんでした。

 

【一次会】

▽日時:11月10日(土)

▽時間:

・集合時間:17時15分

・所要時間:17時15分から19時15分

▽会費:4000円前後(コース価格)

▽場所:

・集合場所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-27―10 武蔵野会館6F

・会場:居酒屋『京町恋しぐれ 新宿 本館』https://kyoumachi-shinjuku.com/

※ 現地集合ですので、上記のアドレスから店舗位置の確認をお願いします。尚、集合場所はビル前となります。

 

参加人数はスナコさんを含めて7人前後(一昨年の丸会参加者もおられます)の予定です。来月に入りましたら、最終的な連絡記事をUPする予定ですが、一先ずは上記の事項につきまして、御報告致しました。

尚、事前のキャンセルにつきましては、開催日の前々日までにお願い致します。

 

 

それでは、今週の『西郷どん』の感想記事に移りましょう。まずは、この画像を御覧頂きたい。

 

 

西郷と大久保が何について話しているか、お判り頂けただろうか? この二人、何と戊辰戦争のことを語り合っているのだ。上野戦争をアバンタイトルで終わらせて、北越戦争はガトリング家老の遠景と吉二郎のネイマールアピールしか映さず、会津戦争と箱館戦争を【なかったこと】のように扱っておきながら、恰も戊辰戦争に充分な尺を費やしたかのような言い草である。控え目にいって、

 

何言ってんだ、コイツら

 

との思いを禁じ得ません。そりゃあ、私も色々と脛に傷を持つ身ですよ。今までの人生、他人様に全く迷惑を掛けずに生きてきたといえば、それは嘘になりますが、

 

戊辰戦争のクライマックス回で、西郷が実家の妹に『もっと家族を大事にしろ!』と説教されるシーンを見せられなきゃいけないほどの悪いことをしたのか

 

くらいの自問自答は許されると思うのですよ。しかも、そのホームドラマパートが全体の半分以上を占めていましたからね。他に描かなくちゃあいけないことが腐るほどにあるだろ? 尺の都合があるから、戊辰戦争の全てをやれとはいわんが、せめて、西郷の庄内藩始末は描くべきでしょう? 同盟国の会津の降伏で政治的に進退窮まった庄内藩の苦衷を察した西郷が、好条件での帰順を御膳立てした逸話。これこそ、史実に基づいた西郷ageの恰好の題材じゃあないですか。これがあったからこそ、のちに庄内藩が私学校に留学生を派遣して、西南戦争で兄弟が骨肉相食む戦いを繰り広げる悲劇に繋がる訳で……何故、そういうオイシイ逸話をガン無視して吉二郎のヘソクリとかいう心底どうでもエエ話を物語のクライマックスに持ってきてしまうのか。その吉二郎の扱いにしても、

 

西郷信吾「吉二郎兄サァは……どんなに苦戦しちょっても一歩退くことなく、皆を励まし、最期まで戦いもした……最期まで、薩摩の侍らしく、立派に戦いもした」

 

と言わせている割に、本編では手傷にのたうち回る姿ばかりで、信吾のいう立派な薩摩隼人らしさは全く描かれないままで終わりました。漸進的解幕論者の私ですが、同時に吉二郎が眠る金谷山で少年時代を過ごした身として、今回の雑な死亡フラグ&具体的な活躍ゼロ描写には強い嫌悪感を覚えましたよ。

 

そのうえ、冒頭で紹介した画像シーンに端を発する西郷と大久保の喧嘩別れの件もお寒いかぎり。

 

大久保一蔵「幼か頃から西郷吉之助の背中を追いかけ、やること言うことをただひたすらに信じてきた!」

 

とか……何だ、この西郷カルト教信者みたいな気持ち悪い物言い。自分が西郷にとって一番大事な存在と信じていたのに、西郷から斉彬との思い出の品を見せられたショックで嫉妬に狂うとか、どう考えてもおかしいだろ。西郷に裏切られた(と勝手に思い込んだ)一蔵の『( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \』からの机ドンが、仗助とのチンチロ勝負で嘘笑いからの小指詰めコンボを披露した露伴先生くらいにキチって見えましたよ。百歩譲って、それならそれでもいいけれども、じゃあ、それに基づいた西郷と大久保のおっさんずラブな関係性をキチンと描いておけよ。何で唐突に一蔵が亡君・斉彬への嫉妬の炎で地獄の釜の底を溶かして闇堕ちしているんだよ……と思っていたら、次回予告で大久保がゲスな笑みを浮かべていたので、全ての理由が判った。征韓論で西郷と大久保は対立するから、今のうちに一蔵を闇堕ちさせておかなくちゃあいけないんだね。征韓論争は西郷と大久保の国家像の対立ではなく、絶対的正義の西郷に盾突く悪の大久保という構図になるんだね。『西郷に敵対する人間は全て下衆く描かれる』という本作の理念を忠実に実行しているだけなんだね。クソだね。もう根本からクソだね。

いや、もう、自分でも相当汚い言葉を使っているとの自覚はあるのですが、

 

 

のよね。この分ですと『西郷どん』の総評も相当荒っぽい内容になるでしょう。本編は来週から最終章・明治編(笑)の開幕ですが、見なくても総評記事の執筆には大して支障を来さないであろうという予想に露伴先生の小指を賭けます。そんな訳で今年は早目の執筆に取り掛かれる模様。あ、でも、当初の想像よりも更に悪い方向に転がる可能性もあるから、その意味では油断禁物かもですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

『相棒17』第1回『ボディ』感想(ネタバレ有)

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まずは遅ればせながら、大木長十郎を演じられた志水正義さんの訃報に慎んで哀悼の意を表します。『相棒』の感想を書き始めた頃、志水さんのブログからアメンバー申請を頂きまして、本当に嬉しかったのを覚えています。大杉漣さんといい、津川雅彦さんといい、今年は『相棒』常連俳優の訃報が相次ぎ過ぎ。悲しい。その分、今季は浅利さんや芦名さんといったニュージェネレーションの活躍を期待するや切です。

 

 

さて、ここからは本編の感想。初回SPの割に『ボディ』というシンプルで即物的なサブタイが地味にツボりました。三原じゅん子さんの声で脳内再生されてしまうのは金八世代のサガというものでしょう。尤も、先季と同様、今季も『次回に続く』というオチであったので、突っ込んだ感想は差し控えさせて頂きます。二期連続で第二話に引っ張るとは思いませんでした。まぁ、オチは不明とはいえ、内容的にも微妙なダレを禁じ得ないクオリティでしたので、これで2時間SPをやらなかったのは賢明かも知れません。『杉下のクビが掛かっている』といわれても、長年のファンにはなんどめだナウシカという社課長の中の人繋がりのネタに近い感想しか抱けませんからねぇ。でも、よくよく考えると杉下のほうから進退を賭けるというケースは珍しいかも。ただし、ベットしたのは杉下ではなく、冠城君。入院中の花京院の魂を冷や汗一粒浮かべずにレイズした承太郎パイセン並みの鬼畜ぶりです。流石の杉下もリアクションに窮していました。杉下の意表を衝くという一点において、冠城君は亀山&神戸&カイトは勿論、官房長よりも上の存在といえるでしょう。意表を衝けばいいというものでもありませんが。

死体消失のトリックは……いや、次回に続くことが判明するまでは『刑事コロンボ』の【ネタバレ厳禁です】の二番煎じになるんじゃあないかとヒヤヒヤしていたのですよ。新築の建物を破壊して死体を探すというシチュエーションが似過ぎていましたからね。まぁ、そうなる可能性も否定出来ないので、油断は禁物か。実際、あの作品以上に死体の隠し場所に適したトリックはないからなぁ。

 

残りは雑感。

 

 

1.昨年の流行語大賞ではない

 

甲斐峯秋「君にとっては印象のよくない二人かも知れんが、間違いなく、役に立つ。それは太鼓判を押そう」

三上富貴江「とてもありがたい御言葉ですが……」

 

特権を利用したと思われたくないという口実で、夫が殺害した父親の捜索を差し止めておいたにも拘わらず、カイトパパの善意で、現時点で最も関わりたくない地球人二名を差し向けられてしまった三上女史。これが斟酌って奴ですか。カイトパパ、マジ天然系ド畜生。尤も、情報網と寝技に関しては官房長に引けを取らないカイトパパですから、ある程度の事情を察したうえで、三上女史の失脚を狙うべく、特命係を刺客に送り込んだ可能性も否定出来ません。情報源は鑓鞍兵衛……と思わせて、実は三上女史の愛人という展開になるのではないかと予想してみます。それくらいの意外性がないと面白味ないじゃん。

 

 

2.welcome to the 特命係

 

青木年男「ジジイが若い後妻を貰って長生き出来る筈がない!」

冠城亘「アホか!」

杉下右京「なるほど!」

冠城亘「『なるほど』って?」

青木年男「意外と僕と杉下さんはいいコンビかも知れない」

 

先季ラストで特命係に島流しとなった青木君。新シーズンでシレッとサイバー対策課に戻っている可能性も捨てきれませんでしたが、暫く異動はない模様です。青木君には不本意極まる人事でしょうけれども、私個人は大歓迎。以前から述べているように、冠城君は基本スペックが高い割に杉下との対立軸を持たない思想なき相棒なので、バディものの緊張感に欠けるのよね。その点、青木君には100%の逆怨みとはいえ、杉下に吠え面をかかせたいという対立動機があるので、この二人の絡みは純粋に面白い。今回も上記のような過激な推理で杉下を焚きつけて、巧みに事件に誘導。遂に杉下を辞職に追い込むことに成功しています。勿論、杉下は青木君の考えることなんぞ、全てまるっとゴリッとお見通しでしょうけれども、少なくとも、冠城君よりはバディものの王道的組み合わせなのは確かでしょう。昨年の記事で杉下をAとしたら、亀山はBで神戸はA´、カイト君はcという比喩を試みましたが、青木君は……キリル文字のДかなぁ。見た目は似てなくもないけれども、本質的全然違うという点で。

 

 

3.俺もよくやる

 

冠城亘「よからぬ連想をさせるよね。わざわざ、ああいう書き方は」

月本幸子「私もあれを読んで、ちょっと不謹慎なことを思い浮かべてしまいました。ああいうのって、人の心の邪悪な好奇心を刺激しますよね」

杉下右京「ええ、決して嘘を書いている訳ではないものの、読み手の邪な連想を喚起するという意図をもって書かれたことは明白で、だからこそ、悪意を感じると仰っていました」

 

暗に『遺体を新築の離れの床下に埋めた』と仄めかす風間女史の記事に苦言を呈する特命係&月本さん。このテの『連想を喚起するやり方』は私もブログの時事記事で用いることがあるので、耳が痛い話ですが、しかし、証拠もなしに『遺体を新築の離れの床下に埋めた』とは書けないからなぁ。その是非は別として、こうした指桑罵槐のテクニックは文筆に携わる者であれば、最低限習得しておくべきなのも確かです。

それでも、普段は捜査に関する会話に極力首を突っ込まない月本さんが苦言を呈したということは、風間女史の書いた記事がファウルラインを際どく掠める内容であったのでしょう。或いは殺した相手を床下収納にブチ込んで海外逃亡を図った過去を持つ月本さんのトラウマを刺激したのかも知れません。勿論、月本さんの場合は未遂に終わったんですけれども。

 

 

 

 

 

 

 

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