田口章太郎「松井秀喜の五打席連続敬遠。一九九二年八月十六日、夏の全国高等学校野球選手権大会で、星稜の松井に対して明徳義塾が一度もバットを振らせない作戦を敢行した……いやぁ、あれは酷い! 酷過ぎる! だって、敬遠はルールに則った立派な戦術でしょ? 頭に来ましたよ。『全打席敬遠してまで勝負に拘るのは教育上考えられない』。将又『教育上、高校生なら正々堂々と戦うべきだ』なんて……だったら、最初から敬遠をルールとして認めなきゃいい話じゃないですか。全力で逃げる戦い方だってある筈だ。『教育上』といえば、そのルールさえオカシイことになってしまう」
先日発表した上半期ベスト5入りを惜しくも逃した『やけ弁』。第一話冒頭の神木君の長台詞。『教育』を『フェアプレー』に言い換えると、色々と思うところがある今日この頃です。そういや、グループリーグ直前に『今まで日本代表が勝ったのは数字のナントカとナントカがついた日なので、今回は勝てるかも!』という一部マスコミ報道もありました。
「敵要塞への総攻撃は二十六日! 理由? 二十六は偶数だから割り切れる! つまり、要塞を割ることが出来る!」
という明治時代の発想からまるで成長していない……そりゃあ、司馬さんも兵も死ぬであろうとか火の玉ストレートの文章を書きますよ。あらゆる意味でフットボールは国民性がダイレクトに出るスポーツ。はっきりわかんだね。今回の話題は二つ。
1.『西郷どん』第二十五話『生かされた命』簡易感想(ネタバレ有)
深夜にツイッターで録画実況している『西郷どん』。私の帰宅時間の影響で何時に始まるか判らないのですが、毎回、天河真嗣さんやMasaさんやRIE-BOHさんにおつきあい頂いております。皆さん、一度本編を御覧になっているにも拘わらず、初見の私に話をあわせて下さいまして、本当に感謝に堪えませんが、今回は幕末薩摩大河で薩英戦争完全スルーという悪夢の如きオチを既に御存じであった訳で、確実に絶望のズンドコに叩き落されるに違いない私の、それも、砲撃で部屋が吹っ飛ぶ予告動画に釣られて投稿した『西郷大河で薩英戦争をやらないなんてあり得ない』なんてツィートを如何なる目で御覧になっていたのかと思うと、些か複雑な心境ではあります。これでは道化だよ。まさに、
与力「汚いぞNHK! 卑怯だぞNHK! 薩英戦争なんかなかったんだ!」
天河真嗣さん「でも、僕観ていて途中で分かっちゃった。薩英戦争ないなって(諦めの境地)」
を地で行く展開。この『おやきネタ』を振って即座に返信してくれた天河さんって凄い。
さて、冒頭で触れたように幕末薩摩大河で薩英戦争完全スルー(大事なことなので二回赤字で書きました)という暴挙に出た『西郷どん』ですが、その陰に隠れて、
馬関戦争
八月十八日クーデター
参与会議体制崩壊
一会桑政権誕生
などの重大事件もクソミソにスルーされたのを見落とすべきではないでしょう。これに比べたら、本作の生麦事件の描写がショボ過ぎたことなんぞ、大した問題ではありません。特に、
一橋慶喜「酔って叫んで何が悪い! ジゴロー! ジゴロー!」
というラストタイクーンの暴言に端を発する参与会議体制崩壊&一会桑政権誕生を描かないと、何で吉之助サァが沖永良部島から召還されたのか、その理由が全然判らないと思うのですが……そして、八・十八クーデターをスッ飛ばしたら、近々に放送されるであろう禁門の変で薩摩と長州が戦う理由も不明なままではないでしょうか。前々回の放送で吉之助サァと久坂玄瑞は仲よく酒を酌み交わしていたのに……その彼らが何故、ドンパチすることになったのか、その原因を全く描かないのは控え目にいって異常です。まぁ、次回の放送で回想的に描く可能性も微レ存なので、迂闊に突っ込むのは控えますが、そもそも、薩英戦争も『異国の文明や技術を習得すべし』と説いていた斉彬の偉大さを回顧するのに好適の事案であったのにも拘わらず、何でスルーしたのか。本作は登場人物の有能さをモブキャラに褒めさせるだけで描いた気になっているんですよねぇ。そして、それらの重要案件をガン無視した代わりに何を描いたかといえば、
うーん、この変態クーデリア仮面。次回は『革命篇』に先駆けての特番とのことですが、重要な政治劇の要素を削ぎ落したガリガリの本編を、明治維新というゴールに持っていくほどの凄い内容なのでしょう。身体の震えがとまりません、悪寒で。ついでに、今回も無駄に愛加那とのイチャラブをゴリ押ししておきながら、吉之助サァとイトサァをどう結びつけるのか、その展開も楽しみで仕方ありません、悪い意味で。
2.『銀河英雄伝説 Die Neue These』簡易総評(ネタバレ有)
先日、甥っ子と話す機会がありまして、丁度いいから新銀英伝の感想を尋ねたところ、
「お父さんは『新版のキルヒアイスは内面から滲み出る優しさが表現出来ていない』っていっていた」
と答えたのを聞いて、大爆笑してしまいました。いや、判るよ! 俺も全く同感だよ! 新版のキルヒアイスの優しさはラインハルトとアンネローゼにしか向けられていない感が半端ないよ! でも、自分の兄貴の口から内面から滲み出る優しさなんて道徳の教科書みたいな言葉が出るとは思わなかったよ! 甥っ子には私が笑った理由を口止めしておきましたが、個人的に今年一番のネタなので、ブログで書いちゃった。すまん、兄貴。子供の頃、俺の手をエアガンのマトにした件はチャラにするから勘弁して下さい。
さて、先日TVシリーズの放送が終了した『銀英伝』。原作も旧版も大人気の作品なので、放送前は賛否両論が噴出するんだろうなぁと予想していましたが、意外なことに(少なくとも私が見聞きした範囲では)皆、概ね同じ場面で興奮して、同じ場面で残念がっているケースが殆どでした。勿論、私も同様です。上記のキルヒアイスの件を筆頭に、イゼルローンのキャゼルヌの執務室の手書き&セロテープ表札のシーンは『流石は実務の鬼! 無駄な装飾に割く時間と予算と労力を惜しんでいる!』と唸らされる一方で『何でクリスチアンとベイがつるんでいるんだよ~! コイツら、ヤンと相性が悪いだけで、軍部での立ち位置は全然違うじゃんかよ~!』と愚痴ったり、皆、考えることは同じだなぁということばかり。これって凄いことですよね。銀英伝という作品はキャラクターの造型が殆ど全てのファンの間で概ね並列化されているのですよ。これほどにパイの広い作品なのにファン同士のキャラクター解釈にブレがない。しかも、それが主人公級のキャラクターに留まらず、端役にまで及んでいる訳で、こういう作品はもう現れないんじゃあないかと確信できたのが、本作の放送の一番の収穫でした。最終回はアムリッツァに届かなかったのが残念ではありますが、十万隻の追撃戦が展開されるアムリッツァは劇場映えする戦いなので、続編の劇場版は冒頭からクライマックス待ったなしと思うことにしましょう。
最後は上記のキルヒアイス、キャゼルヌ、ベイ&クリスチアンの三つを含めて、本作で善かれ悪しかれ印象に残った場面10選で〆にします。
4 ルビンスキー役に手塚秀彰さん
第一部最後の大物を演じるのは誰か、長らく気を揉んでいましたが、ここでジンネマンの登板! ド嵌りにも程があるだろ! 手塚さんの相手役ということでドミニクは甲斐田さんかと思いましたが、こちらは予想を外しました。まぁ、甲斐田さんはヒルダ役ありそうだからね、仕方ないね。
5 ブルームハルト老け過ぎ問題
原作でシェーンコップに童貞を揶揄われた&旧作でイケメンキャラであったため、ファンの間でも童顔系の印象が根強かったブルームハルト。しかし、蓋を開けてみるとシェーンコップよりも老け顔というキャラデザに批難殺到。あれ、絶対に旧作のデア・デッケンのキャラデザの資料が何処かで入れ違ったんじゃあないかと思う。
6 トダさんイケメン問題
こちらは旧版とは真逆にイケメン過ぎる整備士となったトダさん。因縁の相手であるポプランよりもモテそうなのはどうかと思うんですけど……でも、ポプランとの乱闘を単なる個人的な喧嘩ではなく、アムリッツァ前哨戦の補給不足と関連づけたシナリオはGOODでした。ガンダムでもパイロット食とか特別でしたからねぇ。
7 レムラー少佐ぐう有能説
イゼルローン攻略戦でシェーンコップが持ち込んだ偽造ID。機器認証では問題なしと表示されているにも拘わらず、敢えて『贋物ではないのか?』とシェーンコップにカマをかけたレムラー少佐の慎重さに唸らされました。尚、初見ではドイツ語読めないから、何やっているのは一瞬判らなかったのは内緒だ。しかし、帝国の要衝にある認証機器を誤魔化すレベルのIDを用意したキャゼさん、何者なの……? この人、ヤンやシェーンコップとは違う意味で化け物だろ。
8 ヤンの一人称『俺』問題
過去編の一回のみの台詞とはいえ、本作で一番の痛恨事はこれ。ヤンも若かったということかも知れないが、しかし、ヤンが自分のことを『俺』というのは聞きたくなかった……何? 幾ら何でもクレームが細か過ぎる? ラインハルトの一人称がボクだったらおかしいだろ? それと同じことだ。
9 二代目オーベルシュタイン、先代に寄せ過ぎ問題
全編を通じて『これは塩沢さんの未公開収録分か?』という、絶対にあり得ない錯覚に囚われ続けた諏訪部版オーベルシュタイン。ここまで見事に先代のイメージを保持したキャラクター継承は滅多にありません。私の中で二代目ブライトさんに匹敵する事案です。流石はオクレ兄さん。これで軍務尚書は@100年戦える!
10 フォーク&トリューニヒトが一見マトモ過ぎる問題
パッと見はサンフォード議長と区別がつかなかったトリューニヒトと、同じく、一見するとヤンよりもマトモそうに描かれたフォーク准将。フォークは声優的に万死に値するというスタッフの隠れたメッセージがあったと思うことで自分を納得させられましたが、希代のアジテーターにしてポピュリズムの体現者であるトリューニヒトの、マトモそうなキャラクター造型に抱いた違和感は容易に晴れませんでした。しかし、或る友人から、
「そりゃあ、パッと見でアジテーターと判る政治家には誰も投票しないでしょ? あとになってから有権者が『こんな人を選んだ筈じゃあなかった』と頭を抱えるのが民主主義の恐ろしさなんですよ」
との解説を聞いて、すげー納得した。ひょっとすると、本作のトリューニヒトは中盤以降、一気に大化けするのかも?
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