今年、管理人が触れた諸々の作品の中で特に印象に残ったものを列挙する年末恒例企画……であるが、今年も昨年同様に上半期で一度、ランキングをまとめてみたいと思う。理由も昨年と同じく、単純に今年の上半期も印象に残る作品に触れる機会が沢山あったため&8月に発売されるファイプロ最新作に全てのエナジーをぶつけるべく、今のうちにランキングを整理して、年末の記事に備えるため。その場飛びカンクーントルネードと剛腕スリーパーとリバースゴッチ式パイルドライバーとネック&アームブリッジとスウィングスリーパーとローリング式トライアングルランサーとリバースネルソンデスロックと【以下略】が入っていないのが少し物足りないが、立ち技Aボタンに強ローキックがあるのが地味に嬉しい。これで皇帝ミカエル・ビーゴルストを作れるやん!
尤も、上半期と下半期で全ての作品が総入れ替えとなった昨年と異なり、今年のランキングは、
梅ちゃん「抜けた実力馬二頭が長手綱で先頭走っとるんやで! もう、どっちかが勝つのは決まったみたいなものやないか!」
という大穴狙いの馬券職人の嘆きが聞こえてきそうなほどに強力な二作品がレース開始早々、三位以下を六~七馬身くらい引き離している状況。オッズに換算すると1.0倍くらい。菊花賞のディープインパクトか。余程のダークホースが現れないかぎり、この二作品のワンツーフィニッシュを覆すのは難しいかも。
尚、6位から10位は順不同で以下の通り。
『岸辺露伴は動かない ザ・ラン』(漫画)
『慶喜のカリスマ』(書籍)
『室町幕府将軍列伝』(書籍)
『やけに弁の立つ弁護士が学校で吠える』(TVドラマ)
『二人の女王 血の争い~メアリーとエリザベス~』(ドキュメンタリー)
『慶喜のカリスマ』は不遜な表現が許されるとしたら私の別人格が書いたんじゃあないかと思えるレベルの完全同意内容で、頁を捲る度に『そうそう! そうなんだよー!』と声をあげながら読んでしまった。『西郷どん』もやったことだし、今度は本作準拠で徳川慶喜の大河をやらないかなぁ。『室町幕府将軍列伝』は何気に足利義政が一番読み応えあった。井沢元彦氏に懶惰の帝王と評された義政であるが、少なくとも前半生においては非常に政務や軍事に積極的であったことが驚き。義政と共に無責任な文化人系指導者と同一視される傾向が強い北宋の徽宗も、実は官僚主導の政治体制から皇帝親政の社会を目指していたそうで、その意味で両名は一周回って似た者同士といえるかも知れない。この両著をお貸し下さった装鉄城さんと江馬さんに厚く御礼申しあげます。ちなみに次点は『ひそまそ』。ストーリーは面白いけれども、ひそねのクズッぷりが自分の欠点を見ているようで辛過ぎるのよ……。
それではランキングの発表に移りたい。
第5位 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(TVアニメ)
ヴァイオレット「知りたいのです……『愛してる』を知りたいのです」
のっけから管理人のイメージとかけ離れた台詞で始まったランキング第5位。キモイ。自分のキャラを考えろ、俺。
それはさて置き、無垢なるキリングマシーンが人間の愛情を学ぶ過程で、自らの犯してきた所業に煩悶しながらも、それを乗り越えてゆくというストーリー自体は非常にスタンダードで、逆刃刀をタイプライターに置き換えた『るろうに剣心』(或いは黒歴史に苦しむもこっち)と評せなくもないが、本作は兎に角、映像的なクオリティがズバ抜けていた。繊細で緻密なデザインと背景、直接・間接を問わない比喩表現、キャラクターの演技力……アニメとは何よりもアニメーターの表現力・演技力が試されるジャンルであることを再認識させられた作品。特に第五話のラスト、他国に嫁ぐシャルロット姫の髪にヘッドドレスを添える侍女アルベルタの節くれだった手と、その手を押し頂き、深い感謝の念を表すシャルロット姫の繊細な手の描写はまっさんの『秋桜』が流れてもおかしくないレベルの、双方の立場と心情を台詞なしで表現した場面であったように思う。また、10話の冒頭でアンが母親の部屋に入った瞬間に親戚の女性が浮かべた微妙な表情も、この回の不吉さと不安さをコンマ何秒のレベルの演技で描いていた。10話の内容は簡単にいうと天国からのビデオレターなのだが、それをメインに据えるかと思いきや、ヴァイオレットの人間的成長を描くための素材として使ったのも巧かったなぁ。
惜しむらくはストーリー面でのクオリティの落差が激しかったこと。後述するツートップ作品は一発勝負で100点を取った作品&毎週毎週コンスタントに90点を取り続けた作品であったのに対して、本作は1話&5話&10話で150点をマークする一方、他の回は30点といった具合に平均値で伸び悩んだ作品といえる。逆にいうと1話&5話&10話の出来栄えは半端なかった。特に10話の、
![]()
の瞬間は涙と鼻水が手元のマグカップに滴るのをとめられなかったよ……。
第4位 『SAOオルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(TVアニメ)
SJ参加者「抵抗出来ない相手をいたぶって楽しいか? ぁあ?」
ピトフーイ「三十人で六人をいたぶるって楽しいぃ?」
SJ参加者「……ぐっ」
ピトフーイ「YES! 答えは『両方共楽しい!』 アナタも私の立場にいたら、きっと同じことしているわよ!」
アニメ版ではバトルシーンとデス・ガンの謎解き描写を除いて、地味で微妙な出来となった『SAO2』前半の舞台『ガンゲイル・オンライン』の世界をフィーチャーしたスピンオフ作品。ガンマニアの作家・時雨沢恵一&ガンダムビルドファイターズの監督・黒田洋介という原作の面白さを抽出することに特化した最強タッグがガッチリと噛み合ったのか、善かれ悪しかれ、何らかのテーマ性を絡めて描かなければいけない縛りがあるSAO本編よりも、VRMMOの魅力が純粋に伝わる内容になっている。
『自分は女だからという理由で男同士の休戦協定を一方的に破棄&虐殺』
『仲間を救うために身動きが取れない相手をジワジワと嬲り殺す』
『撃ち抜いた敵の手を勝手に操作して、ストレージから予備の弾倉を奪う(未遂)』
『味方を殺して破壊不能オブジェクト化してから、ライフルの銃座にする』
といった現実のゲームやスポーツでは物理的&倫理的に許されないことも、VRMMOでは(誰もリアルで困らないから)許されるという姿勢を貫く本作の価値観は理屈抜きで見ていて楽しい。ヘタに説教臭いストーリーに流れることなく、このテンションを最終回まで維持して欲しい。『登場人物がイキり過ぎてイタイ』との批判もあるがゲームの中でイキらなくて何処でイキるのかと某ネトゲで猫耳♀キャラで語尾に『にゃ』をつけて会話していた黒歴史を持つ私が弁護してみる。尚、ヲタクの割にアニメキャラクターに色気を覚えることの少ない私が久しぶりにエロスを感じたのがピトさん。対魔忍アサギといい、ピッチリ全身スーツがツボにハマるのかも。
第3位 『宝塚版ルパン三世~王妃の首飾りを追え!』(舞台)
マリー「籠の中に閉じ込めておいて『何にも知らない』と批判するのは酷いわ。もっと色んなことを知っていれば、こんなに嫌われることもなかったかも知れない」
ルパン「被害者ぶるのはみっともないぜ。その気になれば、何だって知ることは出来た筈だ」
以前も記事にしたようにただのルパンTVSPかという最大級の賛辞の言葉しか思い浮かばなかった宝塚版ルパン三世が第3位。この脚本で金ロー枠のルパンTVSPを作って欲しいと何度思ったことか……というか、今でも切望している。あ、ゲストキャラの中の人は同じでお願いします。しかし、今回、ランキングの作業のために改めて見直したけれども、抜群に面白ぇな。これも以前書いたように、
銭形のとっつぁんがロベスピエールとラインダンスを踊る
場面はいい意味で頭おかしい。それでいて、上記のルパンとマリーの台詞のように、マリーアントワネットの心情に沿う従来的な宝塚の価値観とは一線を画す、冷徹な歴史観もしっかり入っていたりするのが凄い。最後の最後のコーラスで主題歌のサビのキーを下げなければ、こちらも『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と同じく、充分に一位二位の作品を脅かす存在になったと思う。惜しい。
第2位 『宇宙よりも遠い場所』(TVアニメ)
小淵沢報瀬「七索ロンです。リー即純チャン三色ドラドラ……すいません、裏々で三倍満です」
シラセ、南極に降り立ったポンコツ。
味方にするとポンコツ極まりないが、敵に回すと恐ろしい女、小淵沢報瀬の真骨頂。この子はバイトなんかしなくても、雀荘に入り浸るだけでしゃくまんえん稼げたんじゃないかと思う。『スジを信じるな』というかなえさんの戒め、ほんとすこ。
さて、今季の圧倒的ツートップ作品の一つ目は『よりもい』。以前、記事にしたように本作は『南極料理人』の合わせ鏡であり、四人の主人公が死体探しの旅に出る『スタンドバイミー』のオマージュであり、ED二番の『サイコロの目のままに~』というフレーズや、目的地よりも道中のトラブルにスポットを当てる構成は『水曜どうでしょう』を彷彿とさせた。ストーリー的にも、親友の裏切り、南極まで追いかけてくるトラウマ、長年目を背け続けた悲しい現実との対峙……といった具合に、よくある『ゆる系アニメ』とは一線を画した作品といってよい(ゆる系アニメの否定ではありません、念のため)。
本作に対して、一部の視聴者から『彼女たちは自力で南極に行った訳ではない。他人の企画にタダ乗りしただけだ』との批判があがったが、それは南極の縦縞19と恐れられた藤堂隊長ばりの、マト外れのビーンボールであろう。本作はそうした『他人のやることを批判するばかりで、自分では何も行動を起こさない』傍観者(含む私)へ『何であれ、批判を恐れずに一歩踏み出した』実践者が叩きつけた三行半代わりのメッセージ作品なのである。報瀬の『ざまあみろ!』や『今更何よ! ざけんなよ!』という啖呵が、その証左であろう。到達点が何処か、その過程が如何なるものかは問題ではない。最初の一歩を踏み出したことが大事なのだ。更につけ加えると、誰かの力を借りて遠くに行くことも別に卑下されることではない。
リキエル「1969年7月、アポロ11号のアームストロングが人類初めて月面に立った歴史的事件……オレは今までそれのどこが偉いのかさっぱりわからなかった。なぜならロケットってのは科学者とか技術者が飛ばすものだろう? サルだって行けるわけだからな。だがオレはあそこにいる『ロッズ』たちを初めて見れたとき……その意味がわかったんだ……。月面に立ったのは人間の『精神』なんだってなッ! 人間はあの時、地球を超えて成長したんだッ! 価値のあるものは『精神の成長』なんだッ!」
というDIOの息子の台詞通りである。
あと、本作は一気見には向かないと評したが、繰り返しの視聴には向いていることが改めて鑑賞したことで理解できた。『ようこそドリアンショーへ』のCパート。藤堂&かなえの横に望遠鏡が置かれているんだけれども、これって貴子の代わりなんだよね。後から見返すことで色々と判る描写が多いのよ。飽きのこない、耐久値の高い作品である。ちなみに今夜が再放送の最終回です。皆で見てね!
第1位 『風雲児たち~蘭学革命篇~』(スペシャルドラマ)
平賀源内「あの者にとっては、きっと名を残すことなどどうでもよかったのです。畳に襖に障子……誰かが考えたには違いないが、その者の名前は残っておりませぬ。名とは虚しきもの」
田沼意次「そういった名もなき数多の者たちの手によって、時代は先に進むのだな」
『よりもい』と共に今季の圧倒的ツートップ作品の二つ目は『風雲児たち』。意外性がなさ過ぎるチョイスかも知れないが、正直、他に選びようがないのも事実である。寧ろ、これに食らいついている『よりもい』を褒めるべきであろう。現時点の順位はハナ差で『風雲児たち』が先行しているが、これは単純に『風雲児たち』が『よりもい』よりも一日放送が早かった分、私の一生の中で楽しめる時間が一日分多いという安直な計算の結果に過ぎない。今年は正月早々、いいものを見せて頂いたとの感謝の念で一杯である。来年の正月時代劇での続編を期待せずにはいられない。
本作は拙劣な解説を読むよりも、実際に見て頂くに如くはないので、内容には触れないが、三谷さんは本当に原作が好きなのだなぁと思ったのが冒頭の台詞。これ、原作では源内が言われる側なのよね。ドラマには司馬江漢が登場しなかったのもあるんだけれども、有り余る才能を持ち過ぎたが故に一点突破の結果に恵まれなかった源内の口から言わせるのが、非常に皮肉が効いているというか。
さて、こちらも御馴染みのラジー賞。昨年は上半期に一つ、下半期に二つの合計三作品が選出されたが、今年は上半期で二作品がエントリーとなった。好意的な残念賞の意味合いもあれば、完全無欠の駄作もありという、図らずも両方のニーズに応える展開。尚、次点は『NHK未解決事件ファイル 赤報隊事件』。なかなかに胸糞な構成であった。怖いので詳細には触れません。
ラジー賞① 『陰謀の日本中世史』(書籍)
サラ・ヒューズ「人々は科学の最新の研究や発見と、オカルトや疑似科学が放つ根拠のない派手な話のどっちに興味を持つと思う? どっちを信じたいと思って、どっちにお金を払いたいと思う? 化学はたしかに疑似科学を叩く力を持っている。どこが間違ってるか、何が正しいかを証明する力をね。でも、人々の心を惹きつける言葉は……とっくに失くしてるのよ」(QED~証明終了~)
まず、申しあげておくと本作は名著である。素人が陥りがちな歴史の陰謀論の特徴を懇切丁寧に解説して、その矛盾を衝く姿勢は本当に素晴らしい。歴史好きであれば、一度は目を通しておくべき書籍であろう。ただ、唯一にして最大の難点は、
読んでいてもワクワクしない
ことである。いや、学術書にワクワクを求めるのは筋違いと承知しているけれども、それでは陰謀論には勝てない。陰謀論に勝つには説得力ではなく、陰謀論に勝るエンターテインメント性が必要になるケースが多い。『トンデモ本の世界』シリーズが好例であろう。あれは陰謀論を論破しつつ、それを笑いに転化するセンスが読者の心を掴み、疑似科学やインチキ予言書への一定の耐性を植えつけることに成功していたが、翻って、本作は『変死体の検死解剖の報告書の死因を全て心不全で済ませている感』が半端ない。そりゃあ、そうだけどさぁ。学術書としては極めて優良ではあるものの、本来の用途である筈の対陰謀論兵器としてはパンチ力不足が否めなかったのがラジー賞ノミネートの理由である。
ラジー賞② 『西郷どん』(大河ドラマ)
ナレーション「西郷どん、チェスト! 気張れ!」
扱いは難しいものの、巧く用いれば無双の存在感を示す西郷隆盛という人物を題材にしていながら、控え目に評してウ〇コとしか言いようがない内容が繰り広げられる今年の大河ドラマがラジー賞第二作目。特に今週は酷かった。先週の寺田屋事件の直後なのに、吉之助サァが騒動の自己総括もせず、愛加那と南国イチャラブバケーションを楽しむ件は、魚津城陥落直後に嫁と乳くりあっていた『天地人』の直江兼続(勿論、イケボではないほう)を彷彿とさせるクズっぷり。こんな主人公が三郎を除く全登場人物にヨイショされるストーリーはカルト教団のPV的発想か、或いは三郎を再評価する近年の歴史研究に基づく演出かのどちらかに違いない。本作唯一の功績は、
私が第一話の感想で『そこそこいけるんじゃね?』と書いた大河ドラマは駄作になる説
を立証したことであろう。これ、マジで的中率高くて自分でも怖い。
さて、今年下半期の最有力候補は勿論、上記のファイプロ。十年以上も脳内妄想してきた自分の団体&エディットレスラーを再現するのに夢中になり過ぎて、ブログの更新が滞る可能性アリ。アニメは『SAO3』と最近発表になった『JOJO5部』が有望株。ガルパン最終章第二章が『風雲児たち』と『よりもい』の牙城を突き崩す期待値高いけれども、今年中に公開されるのかなぁ。