京都弁フィルターを通すとドス黒さが際立つ台詞。『翔んで埼玉2』に出てきた京都弁専用ポケトークがあったら、是非、このシーンで使って見たい。ぶぶ漬け食えよ。黒木華さんは前作の『真田丸』でもきりちゃんに先んじて源二郎をハメる(性的な意味で)腹黒系いい子ちゃんキャラが光っていたので、本作でも同じ路線を期待したい……え? 『西郷どん』? 知らない作品ですね。
さて、1クールのアニメでも1年の大河ドラマでも作品の方向性と支持層の確立を左右する節目の第3話を迎えた『光る君へ』。今までは取り立てて目を引くシーンはないけど、地味に静かにジワジワくるタイプの作品として、大河未踏の時代をスタッフも役者も視聴者も慎重に開拓している印象を受けましたが、ここで主人公のKYキャラ設定のカードを切ったのは巧かった。トメクレ俳優が牽引するケースが多い大河ドラマの序盤を、今年は玉置玲央や本郷奏多という中堅や若手が視聴者の支持を得ているのはなかなかに新鮮な構図とはいえ、流石にそろそろ主人公が何らかの爪痕を残さないといけないので、まひろの人間性の一端が提示されたのは大きい。
一方、現在の最大の問題点は道長のキャラがしっかり提示されてないことかな。まひろは今回の件でキャラが提示されましたが、もう一人の主人公である道長はこれといった特徴がなく、彼のメインパートは見ていて話が弾まない。或いは道長のキャラは意図的に抑え目にしているのかも。今回、まだ若くて汚れを知らない道長と定子や伊周を絡ませることで後年のアレコレの布石にするであろうことは、鎌倉殿序盤のピュアピュア小四郎を描くことで中盤以降の血溜まりスケッチ展開との落差を強調したのと同じ狙いがあるのかも知れませんが、小四郎はキノコやストーカーなどの一発で視聴者に判るキャラづけがあり、更に頼朝という主人公の代わりに物語を牽引する存在がいたからなぁ。
実際、本作で一番話が停滞するのは道長とまひろが絡む場面なのよ。今回の『来るな、俺は大丈夫だ!(心の声)』とか、テレパシーでも使えるんかいと突っ込んでしまいました。そこは芝居と演出で表現せえや。そんで、あっさり釈放されるし。今後は『謎の男』を触媒にして両名の関係がもっと面白くなることを期待。
ただ、本作って意図的に視聴者を罠にハメるような構成をするので、迂闊に突っつくとエライ目に遭いそうなんですよね。初回ラストでまひろマッマが道兼に刺されるシーンに『当時の貴族が自身で手を下す筈がない』という批判が湧き起こりましたが、次の回で、
パッパ「お前、手ずから人を殺めたじゃん。汚らわしい。一生汚れ役確定な」
道兼「
という道兼の人生の方向性を決定づける要素としてキチンと回収されましたし、冒頭で触れたサロン赤染衛門での『偏つぎ』とかいう脳トレ感溢れるゲームで、まひろが空気も読まずにバカ勝ちしてしまうシーンも、史実の紫式部が職場で『教養を鼻にかけた女』と陰口を叩かれてメンタルを病んで休職して、復帰後はイジメを避けるために『あたしぃ、漢字読めないからぁ』みたいな不思議ちゃんキャラを演じざるを得ないハメに陥った逸話を知らないとピンと来ないかも知れません。私自身、平安時代や源氏物語はほぼほぼ判らない人間なので、感想記事で変な解釈があったら『ここはこういうネタがあるんですよ』と御教授頂けると幸いです。しかし、サロン赤染衛門の初手から父親の官職でマウントを取りに来る悪しきシスターフッド社会……実にオソロシス。演じているのがロバート秋山なのに本作で一番マトモな藤原実資を女官たちが物言わぬ同調圧力で追い落とすシーンも、当時の宮中における女性の隠然たる発言力&今日の痴漢冤罪騒動を思わせますね。ただ、女性の影響力の強い時代と男女平等の社会は似ているようで違うんよ。その違いを描けるか否かがカギになりそう。
次回は皆大好き&ワイのイチオシ花山天皇の即位式。大河名物のゲッスい帝役がドハマりしている本郷奏多、高貴なクズを演じるのがホンマ巧いわ。クズ中のクズを演じる藤原竜也、インテリクズを演じるハセヒロと共に現在のクズ役イケメン俳優の三羽ガラスやね(最大級の賛辞)。次回、高御座の中から、
こんな物音が聞こえてきても俺は意外に思わん。つーか、やれ。俺が許す。