来週の日曜日は午前様が確定している＆再来週は決算処理で身動きが取れないので、今週のうちに軽目の更新をかけることにしました。諸事情で短めの寸感＆暫くは更新が難しくなるかも知れませんが、御了承下さい。
渡辺守綱「わしの槍さばきがあれば、仏敵共を一網打尽じゃ！」
両脇に遊女を抱きながら豪語する槍の半蔵。わしの槍さばき（意味深）。その流れで空誓がしゃぶれよとばかりに半蔵の口へ握り飯を捻じ込むのも大概ヤバい暗喩に思えてしまいました。思えない？ 性に奔逸なカルト教団特有の闇を見てしまった心境ですが、それに対する主人公サイドも、天罰を欲しがる小平太＆戦場で緊縛プレイに溺れる小平太＆ハニトラに心が揺れる小平太となかなかの変態っぷりでした。争いは同じレベルの者同士でしか発生しないってことがはっきりわかんだね。事前告知では『若き貴公子』と紹介されていた榊原康政の、想定外のひどい扱いに狂喜する準地元民のワイも相当頭がおかしいという自覚はあります。悪名は無名に勝るからね、多少はね。
さて、遂に本格化した三河一向一揆。時代考証の平山センセの『三河一向一揆は家康にとっても門徒にとっても事前に予期しえなかった闘争』という説に則った、なし崩し的に泥沼に嵌ってゆく様子が上手く描かれていたと思います。あくまでも結果論になるとはいえ、総本部の石山本願寺の介入のない、地方支部レベルの暴発に留まる一向一揆を経験したことは家康の生涯最大級の不幸中の幸いといえるでしょう。ここで家臣団が一向宗への抗体を得たからこそ、後年の信長のような全国規模の叛乱に見舞われることがなかった訳ですからねぇ。まぁ。そうはいっても、夏目さんやら槍の半蔵やら頼りにしていた家臣団に軒並み一向宗サイドに奔られた若き家康さんの苦衷は如何ばかりか。VS宗教の戦争という奴は相手の動きを現世利益で測れないため、誰が敵か味方か判らなくなる傾向がありますが、その辺の価値観を劇中の一向宗が唱える歌を中心に判りやすく描かれていたと思います。紫禁城リスペクトな清洲城といい、時にやり過ぎ感が否めない本作の演出ですが、ハマると強いのは確か。
何より、基本的に『来世の救済>>>>>越えられない壁>>>>>現世の忠誠』として描かれがちな一向一揆について、土屋長吉が戦場で発作的に一向宗から家康側に鞍替えした逸話を通して、門徒の中にも信仰と忠誠の狭間で懊悩していたことを表したのは非常にベネ（ヨシ）。しかも、更にエゲツナイのは『重臣の中に裏切り者がいる』という長吉の末期の贖罪の言葉が、逆に家康の疑心暗鬼を生ずる展開は脚本家に対して、
人の心とかないんか？（激賞）
と白目を剥いてしまいましたよ。いい話をいい話で終わらせず、更なる地獄へと繋げるのが『どうする家康』のスタイル。あの場面は家康が瀬名の手を取って逃げるのが唯一の救いでしたね。少なくとも、嫁のことは疑ってないのがホンの少しだけホッとしました。尚、築山事件【略】。そういや、今回は信康と槍でないほうの半蔵の絡みもあったりして、中盤最大の地獄絵図のフラグも着々と積み重ねているんだよなぁ（白目）。
あと、何気に得心したのは今川義元の扱い。死んでからもちょくちょくトメクレ＆視聴者の注目を集める役割を担っていることに関して戦国の嘉納治五郎という異名があるとかないとかいう話は措くとして、今回の冒頭で家康の回想の中で『民こそ天下』と説く件を見た私は、本作に太原雪斎が出ない理由が漸く理解出来ました。本作の今川義元は滝田版『徳川家康』の太原雪斎ポジションなんですよ。家康の幼少期に基本的な価値観を叩き込み、成人して以降も自身の鑑としてあり続ける存在、それが滝田版『家康』の雪斎であり、その究極系が、
家康と伊賀越えをする雪斎の幻影
で、あのシーンはクッソ真面目に描かれた場面だけにヒネクレモノの私は逆に大爆笑してしまったのですが、本作では義元がその役割を担っているのでしょうね。全体の構成を鑑みて、竹千代時代をほぼほぼカットしたため、雪斎の出番もなかったのですが、それは構成の問題だけでなく、家康の心の師というポジションで雪斎と義元がキャラ被りしないように敢えて出さなかったのではないかと思いました。否、確信しました。今川義元フリークにとっては本人が死んでから再評価パートが始まるのも歯痒い話かも知れませんが、これはこれでアリかなと。死んでから出番があるほうが何かと話題性も高いでしょうからね。