作品完結自体が越年した昨年を除くと、毎年年末ヒーヒーいいながら執筆している大河ドラマ総評ですが、今年は我ながら驚くほどにスムーズに進行中。現時点で全体の50%以上は到達していると思います(当社比)。少なくとも、今まで放送された内容の総括は達成済み。残りは実業家編の評価とキャラクターランキングですが、後者がなかなか確定しない。今年の登場人物は軒並み高品質とはいえ、全体的に小粒の印象もあり、TOP10の面子はほぼほぼ確定しているものの、順位づけに頭を悩ませています。あとは意外な人物がランクインしない可能性もアリ。猪飼さんじゃないよ? まぁ、脱稿前にビッグマウスを叩くと思わぬアクシデントで総評が越年するフラグになりかねないので、この辺にしておきます。
今回の話題は短めの二つ。まずは大河ドラマの感想から。
渋沢栄一「ん……これは?」
渋沢琴「かっさまが毎日読んで下さいます」
渋沢栄一「そ、そうか……懐かしいのう」
渋沢千代「そういえば、昔よく兄たちと八犬士や三国志の遊び事をなさっていたねぇ」
一見、ほのぼのとした一家団欒のシーンですが、若き日の栄一が八犬伝ベースの高崎城乗っ取りを計画していたことを鑑みると、千代さんが旦那の黒歴史バイブルを子供たちに読み聞かせることで、浮気の腹いせをしているようにも思えます。思えない? 浮気相手に朱糸で足袋を繕われるという匂わせ行為を食らった千代さん、栄一に貴様の黒歴史を子供たちに暴露する準備は整っているぞという類似の匂わせ行為に出ることで、旦那の制御不能な下半身を牽制しているのかも知れません。自業自得だからね、仕方ないね。視聴者は全員千代さんの味方だよ。
さて、久々の大河ドラマ感想ですが、実業家編以降はクオリティに微妙な回が続いているのが残念なところ。悪くはないんですけれどもね。冒頭で栄一が批判するところの不換紙幣の乱発に関しても、大隈の『弊害は承知しているけれども他に名案もないから仕方なくやっている感』はありましたし、何よりも、
前島密「渋沢は私ほどではないが、なかなかのやり手です」
と何気に自己評価の高いヒソカさんも再登場してくれましたので。正直、あのままフェードアウトも覚悟していた。ただ、ここ数回は各話の主題が絞り込み切れない&不完全燃焼なのが痛い。今回は栄一VS弥太郎の第一ラウンドがメインテーマでしたが、サブタイに掲げられた弥太郎の伝説の商人感が出し切れなかったのと、栄一との対立構造をロジック面で提示出来なかったかなぁ。今後の両名の因縁を思うと弥太郎がヒールになるのは当然の展開とはいえ、自由競争で日本経済を世界レベルまで引き上げよう派の弥太郎と、合本で日本の国力自体の底上げを図ろう派の栄一の、
完全自由主義経済 VS 公益資本主義経済
というイデオロギーの相違点の詳細よりも、人間的な相性の悪さが前面に出てしまった感じ。田舎とはいえ豪農で恵まれた家系の栄一と、その日喰うメシにも事欠く貧乏郷士の弥太郎といった具合に両者の生い立ちの比較もされていたとはいえ、それらの情報は尺の中で均等に配置するのではなく、二人の直接対決にギュッと絞り込んで欲しかった。それらは今後の展開で徐々に描かれる可能性も否定出来ませんが、これも何度も繰り返すように残りの話数がね……。
次はこれ。
先週、BS12で放送された私が最も好きな『邦画』作品。裏番組(主に地上波)では総選挙の開票特番が各局で組まれていましたが、私は銀行強盗をしたらアジトで奪ったカネを数えるよりも翌日の新聞記事で概算が判ればいい派なので、各党各候補者の悲喜こもごもを余所にどっぷりと作品の世界観に浸っておりました。ベイブリッジ破壊とか自衛隊機のスクランブルとか特車二課襲撃とか、実写でやろうとしたら社会的にも予算的にもエグい場面を表現出来るのがアニメの強みと再認識した次第。プロローグで泥濘にレイバーの足を取られた柘植さん、中の人が根津甚八さんということもあって、藤島の戦いの新田義貞感あったな。後藤と荒川による戦争と平和論、昔は台詞に聞き入っていたけれども、最近はロケハンの背景をメインに動きの少ない場面で巧く時間稼ぎしてやがるなという目で見られるようになったのは大きな変化でしょうか。最終段階での米帝の介入の危機という展開も、作品発表当時は『沈黙の艦隊』と同じようにアメリカが日本を再占領する作戦に価値を見出し得た幸福な時代であったことを考えると、現在の世界情勢との違いに色々と思いを馳せてしまいました。経済面の優位性の変化は勿論、純軍事的にも米帝さんに最前線を下げると腹を括られたら本邦の存在価値も大きく変わるでしょうし、その選択肢も考えられる状況ですからねぇ。作品が掲げた主題の普遍性と差異性、両者を含めて、恐らくは選挙速報見るよりもこの国の未来を考えさせられた日曜日でした。
尚、今回の選挙結果を、
国民の政治意識が低いから野党が負けた
と宣う方々を見かけましたが、理論の成否は別として、その思考回路は邦画がヒットしないのはアニメが売れ過ぎて俺たちのパイを食い散らかしたからと評した映画関係者に通じるものがあるように思いました。まぁ、私自身、新潟5区の結果を見ると同じことをボヤきたくなるので、その気持ちは判らんでもありませんが、私の不満はハッピーさん本人の政治家適正以前にあの嫁が代議士夫人になるのが嫌という政治意識の欠片もない個人的感情に拠るものなので、他人様の投票をドーダコーダいう資格はないとも自覚しております、以上。