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徒然日記 ~2021/11/22~

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今更ながら『鬼滅の刃』への印象とか、吹き替えのストレートウォッシュ論争に関する見解とか、諸々語りたいことはあったのですが、善くも悪くも煮詰まってきた『青天を衝け』の総評執筆への集中&或る理由(後述します)で更新を休んだ先週の拙ブログ。休むと決めた際は会社に病欠の電話を入れた後に体調が戻った時に似た後ろめたさを感じないでもありませんでしたが、今週の更新までに書きたいネタがゴロゴロ見つかったので、結果オーライの休載であったと思います。ちなみに来週もお休みする予定。その分、今回は力を入れた内容にしたいです。テーマは大きく分けて2つ。前半は諸々のドラマの感想&予想、後半は上記した先週の更新を休んだ理由について語ります。

 

 

 

渋沢千代「お前さまは昔から欲深い御方でしたよ。正しいと思えば、故郷も妻も子も擲って何処へでも行ってしまう。働いて得たお金を攘夷のために使ってしまったこともある。思う道に近づけると思えば、敵だと思っていた御家にでも平気で仕官する」

 

もうやめて! 栄一さんのメンタルはとっくにボロボロよ!

 

今週で退場ということもあってか、脚本家が千代さんの言いたかったことを全部言わせてあげた感あるワンシーン。深い笑みを浮かべながら、栄一さんの黒歴史を丁寧に数えあげる千代さんマジ夜叉の極み&栄一の下半身ネタには敢えて触れない千代さんマジブッダ。私なんて、栄一が『若い二人が羨ましい』と零した瞬間、お前の下半身は若いままだろうが、と画面に突っ込んでしまいましたよ。

さて、久しぶりの『青天を衝け』の感想ですが、今まで以上に短所と長所の落差が広がっていて、色々と収拾がつかなくなっている感じ。特に政治パートの薄さは致命傷レベル。大隈重信と五代友厚と伊藤博文をメインキャラに出しておいて、開拓使官有物払い下げ事件&明治十四年の政変をほぼほぼスルーとか、戦国大河で例えると織田信長と明智光秀と帰蝶を登場させたのに本能寺の変をやらないようなもの。特に払い下げ事件は渋沢と並ぶ本作のキーマンである五代才助に関わる案件なのに……私個人は全く支持しませんが、本案件では五代冤罪説(つーか、黒田のガバガバ勘定のほうが問題だろ)もあり、本作もそれに準じたストーリーになっている以上は通説を覆すに足る内容が求められた訳で、そこで結果を出せなかったのは非常に厳しい。主人公パートは面白いが、主人公が関わらないパートはガバガバになりがちという本作の短所がモロに出た感じですね。

ただ、今までの所謂スィーツ大河に対しては『余計な家族パートに使う尺があったら政治劇をやれ』の一言で批判出来たのですが、本作は家族パートのクオリティがめちゃくちゃ高いので、どうにも評価に困っているんですよねぇ。序盤のうたの見合いでは嘗ての大名であった伊達宗城と百姓あがりの渋沢夫婦が対等の立場で会席するシーンで武士という身分が消滅したことを無言で如実に表現する一方、終盤の千代さん御臨終では室内に駆け込もうとして制止されるうたと育ての母親の死に際しても更に離れたポジションに留まらざるを得ない妾腹の子という残酷な対比が共存する秀逸な回であったと思います。特に、

 

渋沢うた「何故、母さまが亡くならなくてはならないのですか? 母さまはどこをとっても素晴らしい御方でした」

 

という台詞には殆どの視聴者が共感出来たのではないでしょうか。実際、本作の千代さんは苦境にあっても人を怨まず、順境にあっても人に驕らない為人として丁寧に描かれていました。誰からも好かれた人物像というのは描き方をしくじると八方美人のサイコパスか、周囲の人間に盲崇されるだけの薄気味の悪いキャラクターになりかねないのですが、千代さんはいい意味での完璧超人でしたね。これはキャラクターランキングの変動ありそう。

 

次はこれ。

 

 

 

福山光一郎「美味い店だ……今度、私の小説に出してやろう」

 

ベストセラー作家になれたら一度は言ってみたい台詞。尤も、私は味覚にも食レポにも全く自信がないので、運よく作家になれたとしても、煉獄さんのように『美味い! 美味い!』とガンギマリ顔で叫ぶ&そのまま文章にするしかないでしょう。この貧弱な感性と貧弱な表現力では作家になれないのも道理かも知れません。料理を食べずに皿の外にポイ捨てしながらも美味い店と断言出来る作中の福山氏とは雲泥の差ですね。流石はベストセラー作家(違)

無駄話はさて置き、今週の『相棒』は……終盤まではメチャクチャ面白かったたんだけどもなぁ。福山氏による『法律に抵触しないギリギリの範囲でジワジワと娘の仇を追い込む』というペンの力に基づく復讐方法は凄くよかったのよ。子供が殺された親が、刑期を終えて人並みの社会生活を営んでいる元受刑者の職場や近所で『コイツは私の子供を殺した殺人者です!』と声をあげるのは正義か否か、という思考実験はあるらしいので、それにネット社会で生まれた特定厨&考察厨という補強を加えて、ドラマにアレンジした感じですね。カネとヒマとコネがあれば、実際にやれそうなのが怖い。元受刑者があからさまに罪を認めている様子でしたので、最初は嫁さんが犯人かと思いました。あの状況で庇うとしたら、旦那の罪も共に背負うと宣言した覚悟ガンギマリの嫁しかおらんよね。まぁ、真犯人は別にいた訳ですが、それもそれでええ。一応、動機もあったしさ。

 

問題は『運命の来たる日』の結末ですよ。

 

アンノウンの正体は明かされないまま、謎のカルト集団の本部に火を放って主人公と共に死亡って……福山氏本人は復讐の感情を昇華出来たから満足なのかも知れませんが、あんなの読者ドッチラケの結末じゃあないですか。主人公の相棒がダークカイトというオチのほうがマシなレベル。一応、物語としてオチてはいるからね、最悪の着地だけどさ。

 

「どんな天才作家でも100回の連載のうち、1回はつまらない話はある。しかし、天才はその1回を最終回に持ってくる。99回楽しませてもらっておいて、最後が少しショボいくらいで文句をいう奴がどうかしている」

 

というボタQ理論も一理あるものの、今回はドラマ内で作家本人が殺されていたから誰も表立って文句を言わないだけで、生きていたらボロクソに叩かれていたラストではないかと思いますよ。如何に急遽ラストの改編を余儀なくされたとはいえ、あれ程までに作中で激賞されている作家が書くとは思えない御粗末なオチは流石に無理がある。要するに制作陣は『福山氏が殺されなかった未来』をキチンと想定していなかったのではないかと思われます。登場人物の生殺与奪は作者の筆先一つとはいえ、ハナから殺すことを前提にした本編ストーリーの練り込みの甘さに興を削がれてしまいました。掲げた主題を畳み切れずに強引にいい話の雰囲気で終わらせた感が半端なかった。色々と惜しいぜ。

 

続いて、これ。

 

 

 

タイトルは聞き覚えがあったものの、主人公が明の孫皇后であることを最近知って、俄然興味が湧いてきた作品。私が何度かブログで触れたことのある英宗の母親なんですよ。英宗の父親の宣徳帝は男子に恵まれなかった胡皇后を追い払って、孫氏を後釜に据えました人物です。宣徳帝は胡皇后を廃する際に家臣たちの上奏という形を取らせたくせに、彼らによる皇后批判文に『ちょっと言い過ぎやろ』と難癖をつけるというアレな性格で、陳舜臣さんが『自分でやらせておいていい気なものだ』と手厳しく批判しておられました。明の歴代皇帝は有能で人間性がクソなタイプと、善良な人柄なのに為政者としては無能の二種類に大別されますが、宣徳帝は前者であったようです。英宗はいわずもがなの後者ですな。まるで似たところのない親子ですが、父親は兎も角、実は英宗と母親の孫皇后は血の繋がりがないという説があります。史書には、

 

「英宗ノ生母ハ、人、卒ニ之ヲ知ル無シ」

「陰カニ宮人ノ子ヲ取リテ、己ノ子トナス、即チ英宗ナリ」

 

と記されており、要するに父親は宣徳帝には違いないが、どの宮女が生んだか判らない子を孫皇后が引き取ったと言われています。三国志の曹芳のように『誰の子か不明だが、取り敢えずは曹一族』という理由で皇帝になった人物もいましたが、ともあれ、孫皇后は『自分の子』を次の皇帝の座に就けることに成功。孫一族は外戚として権勢を奮い、あの佞臣・王振でさえも迂闊に手が出せない存在となりました。目の付け所がシャープ過ぎる。

英宗が土木の変でオイラートの捕虜となった際、孫皇后は息子(?)の異母兄である郕王・朱祁鈺を監国(皇帝代理)に、英宗の庶長子・朱見濬(二歳)を皇太子に定めます。一見すると幼沖の甥を叔父が支えるという好適な人事に思えますが、実は孫を皇太子に据えることで、息子(?)の英宗の生死に拘わらず、今後も孫一族が皇統の外戚を占め続けるように布石を打ったのです。最も皇帝に相応しい年齢にも拘らず、監国という役職に棚上げされた朱祁鈺こそ、いい面の皮ですね。これに反発した朱祁鈺は名臣・于謙と手を組んで孫皇后派と対立。英宗の身柄返還を巡り、エセン、孫皇后、朱祁鈺&于謙の三つ巴の泥沼バトルが繰り広げられる訳で、孫皇后が一筋縄ではいかない為人であることはお判り頂けたかと思います。

まぁ、兎も角、私は土木の変を巡るあれこれが大好きなので、いつかは見たいなと思っていた作品でしたが、来月BS12で放送予定との情報をGET。ドラマで于謙やエセンを見られるとは……いい時代になったものです。しかし、全62話で平日放送……楽しみだけど、定期的に消化していかないとHDDの容量がヤバそう。あと、先述の胡皇后が実は孫皇后の生き別れの姉妹というオリジナル設定をはじめ、大胆なアレンジについていけるかという不安もあり。『蘭陵王』もラブロマンスメインの展開についていけずに脱落しちゃたからなぁ。

 

ドラマ関連の話題はここまで。次はこれ。

 

 

 

『働く女の子作品』に定評があるPAワークス制作の水族館を舞台にしたアニメ。現在、2クールの終盤に差し掛かりつつありますが、正直に申しあげると今年のラジー賞候補にノミネートされる可能性が出てきました。原因はヒロインが勤める水族館ティンガーラの副館長にして、直属の上司でもある諏訪哲司。コイツの言動がどうしても耐えられないのよ。一言でいうと超絶無能パワハラ上司。コイツに比べると『SHIROBAKO』のタローや平岡や変な話さんが大天使に思える程です。具体的には、

 

新入社員を他の従業員の前で侮蔑的な意図でつけた仇名で呼び続ける

 

新入社員に他部署の協力が必要な仕事を振るのに全く調整に動かない

 

新入社員に残業・完徹・早朝出勤しても終わらない仕事を押しつける

 

これらの描写がギャグに昇華されることもなく、クッソ生々しい様子で毎回のように描かれており、今週の放送ではヒロインは悪夢に魘されて眠れなくなるまで追いつめられたうえ、実家の水族館の解体やら友人との約束を忘れていたショックやらも重なり、遂にラストシーンで無断欠勤に至ってしまいました。ティンガーラにはコンプライアンスとかないんか? これで副館長が『有能ゆえに仕事に厳し過ぎる人』というのであれば、まだしも理解出来なくもない(同意や共感は出来ん)のですが、これも今週の放送でオーバーワーク気味のヒロインに新たな企画を推しつけたうえ、営業先でのプレゼンが練り込み不足で却下されるのを横でボーッと眺めながら一切フォローせず、失敗に終わってから、

 

諏訪哲司「あの反応は想定内だ(キリッ

 

と、こうなることを全部判っていたかのような有能しぐさをかます始末。新人に大量の仕事丸投げしてプレゼンの内容を事前にチェックもせず、現場で全く助け船を出さず、失敗してら『計画通り』と宣うとかタダの無能のクズ野郎ですやん。企画が却下されるのを想定していたのであれば、事前にチェックして修正しておけよ。営業先はお前の部下の新人研修の場ではないんやで。無駄な時間と手間を取らせる相手方にも失礼な話。本人はヒロインの成長を促している気になっているのかも知れませんが、実際には部下を心身共に追い詰めているだけ。副館長の中の人は煉獄さんなのにやっていることは無惨様のパワハラ会議よりも酷い。この先、ヒロインに救いのある結末が待っていようとも、副館長に何等かの報いがなければ、本作をプラスに評価するのは難しいでしょう。個人的にはメンタルをやられたヒロインが副館長とティンガーラをパワハラで訴えて、ブン取った賠償金で閉館した『がまがま水族館』を復興するくらいまでやってくれないと納得出来ませんが、そこまでやったら働く女の子アニメじゃなく、訴訟アニメになってしまうのよね。本作は一人のキャラクター設定の失敗が、物語全体の評価を落としてしまった悪しき見本といえるかも知れません。理不尽なパワハラキャラがウケた無惨様とは対照的ですね。

 

尤も、私は『諏訪哲司のヒロインへの対応は歴としたパワハラであり、許されるべきことではない』とは考えますが、彼を現実世界においてパワハラで断罪したいとも、パワハラ描写を理由に作品自体を消し去るべく、社会的圧力をかけようとも思いません。あたりまえだよなぁ? 本作はあくまでもフィクションであり、実際にパワハラが起きた訳ではありませんからね。私の本作への批判はキャラクター設定の失敗を指摘するもので、非実在的表現を現実の法律で裁くのはナンセンスの極みというものです。ところが、世間には全く異なる価値観をお持ちの方々も少なからずおられるようで、先月の記事で私は『二次元表現と現実の犯罪発生率の因果関係を立証するデータ』と『二次元キャラクターに現実の法律を適応する理論的法解釈』の二点が用意されないうちは当該議論に関するボールは規制派サイドにあると申しあげましたが、あちらさんはボールどころか有刺鉄線バットを投げ返してきた模様。例の観光関連のキャラクターを巡る一連の騒動の何が恐ろしいって、

 

現実の『性差別』『性搾取』との客観的で具体的な関連性を立証する被害者も加害者も証拠もデータも法的規定もないコンテンツを存亡の危機に追い込んで快哉をあげる輩がいる

 

ことですよ。『白い砂のアクアトープ』でのパワハラ描写もフィクションである以上&被害者が実在しない以上は規制や断罪の必要はない訳で、況や今回の事案の何処が現実の性犯罪との地続きなのか全く理解出来ないのですが。ソースあんならすぐ出せ。更に『R18絵師が名義を変えずに参加しているのは問題』とナチュラルに職業差別発言をブチあげるダブスタスタイル&『萌え絵がどうこうではなく、TPOの問題』とガッツリとゴールポストを動かす姿勢には人工芝も生えません。まぁ、先日の別件で『民間企業ではなく、行政機関の警察がやったのが問題』と仰っていた舌の根がぐっしょりと唾液で湿っているうちにバリンバリンの民間企画に噛みついた段階で、論点&ゴールポストずらしは向こうの御家芸と認識してはいましたけどね。

表現規制派の厄介な点は基本的に『騒げば勝ち』であると同時に『負けても直接的なダメージを負わない』ことですね。成功するまで何度でもトライするのは究極の勝ちパターンであり、これはゾンビアタックとの相性抜群のコンボ。攻撃側は対象を変えて何度でも仕掛けることが可能ですが、守備側は全ての戦線を維持しないと突破された点から一気に押し込まれてしまう訳で、根本的な対応策がないのが現状です。御察し頂けたと思いますが、これが先週の更新を休んだもう一つの理由。正直、色々とやる気を削がれた。取り敢えず、前回も使った画像を張って〆ます。

 

 

 

 

 

 


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