ここ一月ほど『来週こそ更新を休むと言ったな、あれは嘘だ』的な休む休む詐欺を繰り返している気がしますが、無理に更新しなくてもいいという心の余裕が物事を気楽に眺めることに繋がるのか、逆に色々と書きたいネタが目に入ってしまう今日この頃。今回の話題はこちらです。
既に人生で何度目かの紙幣のデザイン変更。私の記憶では毎回『今までのほうがよかった』『ありがたみがない』『安っぽい』という類の文句が囁かれたのを覚えていますが、それを理由に新札を使わない人はいませんでしたし、そのうちにデザインに慣れて文句をいう人もいなくなったのも確かです。新札政策に関しては絶対にタンス預金を許さない&意地でも相続税をかっぱいでやるという財務省のセコい思惑が透けて見えるほうがイヤ。他国の紙幣は過去の反省を踏まえた人物を採用しているのに日本は……という論調を見ますが、汗水垂らしながら爪に灯した火で漸く稼いだ雀の涙の給料を見て、更に反省までしなくてはいけない社会というのも正直、ゾッとしないものがあります。負の歴史と負の遺産は学問と司法の世界で解決するべき問題ですね。上記の思考は差別用語さえなくせば差別もなくなるという言霊思想の裏返しではないでしょうか。
まぁ、この話は深入りすると生臭くなるので話題を変えると、私のツイッターで先日、
#お前らの都道府県で新札発行したら誰の肖像画になるか予想しろ
という御気楽なハッシュタグ大喜利を放り込みました。知る人ぞ知る内閣総理大臣織田信長でも描かれた漫画ネタですが、これが当初の想像以上に多くの方に御参加頂きまして、非常に驚きました。皆、歴史好き過ぎ。三英傑の誰をどの金額にするかで意見が分かれる愛知県の贅沢過ぎる悩みから、津軽為信をチョイスしたら弘前と南部で戦争になるという青森県の歴史まで御紹介頂きました。本当にありがとうございました。個人的に最もツボッたのは北海道の、
一万円…鈴井貴之 五千円…大泉洋 千円…安田顕
そして、嬉Cが二千円で藤村はデブでヒゲが生えているからボツというオチつきの奴。笑い過ぎて屁が出そうでしたよ(魔神感)。
御参加頂いた皆様の投稿を見て改めて思ったのは県単位でも万人を納得させるチョイスはほぼ不可能ということでしょうか。同じ県内でも結構人選が分かれたうえ、他県の目で見ると『ソイツはウチに喧嘩売ったじゃねーか』とか『ソイツがアリなら他にもアイツとかおるやん』とか思えそうな事例も多々あり、一つの県に限定しても全ての方向から異論を挟まれない選択はいい意味で絶望的な訳で、これが国家規模の紙幣の肖像ともなると結局は『悪名に勝る実績』と『相応の知名度』の二点で手を打つのが現実的ではないかと実感した次第……また話が難しくなりかけたので、残りは私が投稿した内容の紹介と解説です。
一万円札……上杉謙信
誰が何といおうとウチの御屋形様しかいません。県外に出て実感したのですが、初対面で歴史好きな人に出身地を尋ねられて『新潟です』と答えると大抵『ああ、上杉謙信の! いいですねー!』と仰って頂けるのですよ。相手が筋金入りの山梨県人でなければ、基本的にフレンドリーなリアクションが返ってくる有難さ。実際の人間性は色々とアレなところのある御屋形様ですが、後世の新潟県人のイメージへの貢献度は計り知れません。更に謙信女人説を採用すると一万円札初の女性の肖像になる訳で、ジェンダーへの配慮もバッチリのチョイスに思います。思えない? 対抗馬は山本五十六と田中角栄ですが、この二人は余りにも功罪が大き過ぎるからなぁ。向こう百年くらいは難しいと思います。ちなみに上杉景勝と直江兼続は山形県勢にガッチリとガードされそうなので敢えて外しました。
五千円札……ジャイアント馬場
財布に入りきらない錯覚に見舞われそうな圧倒的ジャイアント感。五千円札で七千円くらいのお買い物が出来そうに思えます。思えない? 五千円札は文化人や科学者といった政治と一定の距離を置いた人物のイメージを抱いているので、そちら方面の人材の中では三波春夫や山岡荘八と悩みましたが、戦後すぐのアメリカで通用した数少ない日本人という点では両名に勝ると思い、個人的なプロレス好きも相俟ってジャイアント御大を推薦。抜群の知名度に加えて、実に紙幣映えしそうな味のある容貌ですからね。絶対に葉巻を咥えていて欲しい。ホログラムで煙が動いたら最高やん。このランクでは河井継之助と小林虎三郎も思い浮かびましたが、どちらかを選ぶと必ずもう片方から文句が出るのが目に見えているので、この二人ももう少し歴史の評価が定まるまで大人しくしてろ。
二千円札……良寛
昔、友人がセルフレジに入れられるとレジ締め時に面倒臭いと文句を垂らしていたのが印象的な二千円札。なかなか使いどころの難しい紙幣ですね。現在は守礼門と『源氏物語』の意匠が施されているので、こちらも万代橋と山下清の『長岡花火』といきたいですが、今回は人物限定企画ということで良寛さんをチョイス。本来は文化人枠の五千円札向きの人材ですが、後世に伝わる人柄を思うと高額過ぎるのも違うかなと考え、このポジション。尤も、個人的に良寛さんはヤバいタイプの人間と思っているのも事実でして……そもそも、彼が出家したのは『名主見習時代に代官と漁民が対立した際、代官には漁民からの悪口を、漁民には代官からの罵声をそのまま伝えて両者の怒りを買ってしまい、真実より嘘が喜ばれる俗世と決別したくなったから』というマジレス蛮族な動機が契機。他にも色々と逸話を探ると仏門へのとらばーゆは彼自身にも周囲の人たちにもwin-winな必然やったんやねと思えてきます。俗世の雑用に向かないレアキャラという点でも二千円札にピッタリ。
千円札……前島密
大久保利通、或いは明治政府の懐刀……というか十徳ナイフのイメージがある前島密。医術・英語・蘭学・兵法に通じ、最も大きな功績とされる日本郵政事業の創設の他にも東京遷都の建白、現代のスポーツ報知の創業、自由民権運動への参加、早稲田大学の校長と何でもこなせる軽自動車的小回りの良さは最も庶民の手に触れる機会が多い千円札に相応しいチョイスでしょう。既に一円切手で顔出し経験豊富な前島さんですから、写真映りの心配もありません。安牌オブ安牌。四枚目の字牌レベルの安牌。一円切手はヴァイオレットちゃんに任せて、今からでも千円札に就任して欲しいですね。他の候補者では新潟県上越市で日本に初めてスキーを伝えたテオドール・エードラー・フォン・レルヒ少佐でしょうか。上越市で少佐といえばシャアでも素子でもなくレルヒさんです。先のハッシュタグでも北海道でクラーク教授を挙げる方が多数おられましたし、国際性や多様性を尊重する意味でもアリだと思いますが、レルヒさんは北海道でもスキーを伝えているので(あちらでは中佐)、取り合いになる前に前島で手を打つのが最適手かと。
ざっと並べると戦国大名、アスリート、僧侶、テクノクラートと結構バランスのいい構成になったと自画自賛してしまう選出ですが、このドヤッと出した自慢の投稿よりも、数時間遅れでフと思いついた、
一万円札…水島新司 五千円札…魔夜峰央 千円札…高橋留美子
※デザインは本人に描いてもらう
とのツィートのほうが遥かにリプ多いんだから、ツイッターって奴は判らねぇぜ。宜しかったら皆さんもコメントやツイッターで御自身のチョイスを御紹介頂けると嬉しいです。あ、それと来週こそ休む……と言いたいけど、漸く『青天を衝け』が再開される週だからなぁ。更新の予定は未定です。