Quantcast
Channel: ~ Literacy Bar ~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 909

『西郷どん』第十話『篤姫はどこへ』感想(ネタバレ有)

$
0
0

 

 

 

個人的に実写ドラマ化して欲しかった漫画ナンバーワン作品。

 

織田信長「『どる』ってなんじゃい?」

 

の一言で円高が解消する馬鹿話や、都道府県別の紙幣発行や年齢自由化法案のように『実現は難しいけれども、あったらあったで面白そう』な政治ネタ……他には元英国王妃の離婚とか、今考えると随分とヤバいエピソードもあったりします。都道府県別の紙幣デザイン選挙で信長がダークホースに敗れる話、ほんとすこ。『国民はケーハクだ!』という信長の捨て台詞が印象的でしたが、その後の彼の活躍を考えると実際に投票が行われてもガチで信長が負けるかも知れません。志野靖史さん未来人説に一票。

冒頭から『西郷どん』と全く関係なさそうな話で恐縮ですが、実は本作の第一巻に『大西郷伝』という短編が三本収録されています。江戸城明け渡しの時も西南戦争の時も、吉之助サァが疲労と寝不足でコックリと船を漕いだのを見て、相手が承諾の意志と勘違いしてしまうというオチなのですが、今年の大河ドラマを見ているとガチでそうなってもおかしくないほどに吉之助サァが無能過ぎて草も生えない。正直、あまりの無知無能ぶりを橋本佐内にドンびきされる吉之助サァは見たくなかった。ひょっとしたら、志野さんの『大西郷伝』は本作がモデル? やはり、未来人か(確信)

尤も、吉之助サァが無能というよりも『そんな吉之助サァが周囲の人間に評価されている理由が判らない』というのが正確な表現でしょう。現時点での作中の吉之助サァには水際立った周旋の器量がある訳でもなく、時勢に対する洞察力がある訳でもなく、江戸の地理に詳しい訳でもないのに、斉彬が己の懐刀として重用している点に違和感を覚えずにはいられません。才能も人脈も土地勘もない部下を密偵に使う人間が作中随一の賢侯として描かれている訳で、本作の問題点は吉之助サァよりも斉彬に多くの要因があるのではないでしょうか。或いは本作の斉彬は吉之助サァをいいように顎で使って、自らの責任問題に発展した時は『全部部下がやったことです』とトカゲの尻尾にするダーク政治家なのかも知れません(幕末の薩摩外交にはそういう側面があるのも確かです)が、そんな斉彬はもっと見たくなかった。この辺はナベケンオーラで序盤の描写不足をカバーしてきたツケが回ってきた感じです。今回はスケバン幾島とか又吉家定とかストーリーと関係ないネタで楽しめたものの、今後の展開が思いやられますね。まぁ、吉之助サァに関しては沖永良部島での確変の可能性が残されていますが、それもどうなることやら……そんな今回のポイントは2つ。今回も内容がなさ過ぎて、序文のほうが分量多くなってしまったんだよなぁ。

 

 

1.駝鳥問答

 

一橋慶喜「俺は将軍になどならぬ! 色々動かれて迷惑していると、そう伝えておけ!」

西郷吉之助「……ないの話でごあいもんそか?」

一橋慶喜「俺の言った言葉をそのまま伝えればよい」

 

『将軍にはならないぞ! 絶対にならないぞ!』と吉之助サァに念を押すヒー様。後年の投槍な政治姿勢や慶喜個人の高い先見性を鑑みるに、幕府の行く末が決して明るくないことを見越したうえでの本心であったと思いますが、念を押された斉彬や阿部正弘といった面々は何故か、

 

一橋慶喜「推すなよ! 絶対に(将軍職に)推すなよ!」

 

と受け取ってしまったようで、今後も慶喜擁立に奔走することになります。『押すな』を『押せ』と解釈する風潮は幕末には既に存在していたようですね。それに加えて、慶喜は言っていることとやっていることの客観的整合性が皆無の御方なので、周囲が真逆の解釈をしてしまうのは無理もありません。

 

 

2.みなもと太郎「おっ、せやな!」

 

篤姫「義父上さまほどの御方が何故、これほど下なのじゃ?」

幾島「それは関ケ原の合戦まで遡らなければなりません」

 

今回のエピソードの主軸を担った篤姫と幾島……ですが、正直、この二人の場面は殆ど要らなかったよね? 特に篤姫脱走の件は全く物語に影響していないのよ。あってもなくても変わらない。父親亡くした者同士のシンパシーで両名を結びつける意図と解釈出来なくもない……というレベルに留まっています。幾島関連も、概ね『篤姫』で類似するシーンを見たものばかりでした。ぶっちゃけると『篤姫』の下位互換という印象は拭えません。勿論、同じ時代&同じ組織に属する題材なのですから、似たような場面になるのは仕方ないとしても、主人公そっちのけで尺を割く以上は、その作品でしか見られないワン&オンリーの要素を描いて欲しいじゃあないですか。でも、篤姫の後頭部で【自主規制】は下らな過ぎて逆に草生えた。個人的なツボポイントです。

 

 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 909

Trending Articles