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『西郷どん』第八話『不吉な嫁』感想(ネタバレ有)

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伊勢殿「神仏を篤く敬う貴方様が、斯くも人の心に無知であったとは……お笑い種と申すほかございませぬ。神仏が人を手討ちになどなさりましょうや? 天罰などというても、所詮は人間の驕りに過ぎますまい。私は、神仏にあらざる然様な人間に討たれましょう」

 

うーん、これは火の玉ストレート!

 

八幡太郎義家の頃より、馬上での挨拶を許されてた成田氏を公衆の面前でボコボコにしたため、関東の国人衆に離反されてしまったガックン政虎。今回、家臣たちの眼前で痛烈な言葉責めを受けるという因果応報に見舞われましたが、政虎は伊勢殿にバブみを感じてオギャっていたフシがあるので、或いは彼女による叱責は羞恥プレイ的な御褒美であったのかも知れません。

今回はウチの御屋形様が軍事的にも精神的にもフルボッコにされる内容でしたが、不思議と不快感はありませんでした。むしろ、通俗的な軍神・上杉謙信の正義をここまで論理的に粉砕できるのかという感動さえ覚えましたよ。私の中での上杉謙信という人物はルパン三世の石川五エ門のイメージで、二人とも二言目には修行・仏門・修行・仏門と辛気臭い言葉を口にするけれども、結局はバトルの誘惑を抑えることができず、自分の戦は神仏の聖戦とか、人を斬ることも修行の一環とか本末転倒な理屈をつけて、ズルズルと俗世の事情に流されてしまう印象なのよね。勿論、私の中での勝手なイメージですが、本作のガックン謙信は単純なカッコよさや程よい出落ち感に留まらず、そうした人間的な未熟さも描いてくれるのが嬉しい。長野業政の訃報に涙するスズムシパッパや伝兵衛とエロくのいちの結婚といった様々なエピソードを盛り込みつつ、物語は遂に最終決戦となる第四次川中島の戦いに向けて収束してゆく……いやぁ、今週も実に面白かったで……ん? あれ? 何かおかしいな?

 

あ、今年の大河は『西郷どん』だ!

 

いやぁ、うっかり、BSで再放送中の『風林火山』の感想を書いてしまうところでした(棒)。でも、しょうがないよね。クオリティに差があり過ぎるもの。今回の伊勢殿と政虎の遣り取りなんて100%嘘っぱちの創作パートなのに、双方のキャラクターが見事に描かれているのですよ。特に伊勢殿は前回&今回しか出番がないのに、作中でも屈指の存在感のある女性キャラクターとして、今でも記憶に残っています。多分、政虎と伊勢殿は別のシチュエーションで巡り会っていたら、恐らくは『何とかなった』と容易に想像できるのですが、その辺のことを全く台詞にもしないし、意図的に匂わせることさえ憚る凛とした雰囲気がある。それに引き換え、今週の『せご☆どん』は、

 

阿部正弘「はわわ、斉彬殿! 黒船が来ちゃいました!」

 

うーん、先週の感想で冗談半分に書いた台詞と殆ど変わらん内容とは……昨年もそうでしたが、番組最後の『紀行』のほうが遥かに面白いのはどうにかならないのでしょうか。曲りなりにも幕末大河で黒船来航が斯くもゾンザイな扱いでいいのか? いや、別に創作パートが面白ければ、それはそれで結構ですよ? でも、今回の創作パートは地味な金策でしかなかったじゃあないですか。しかも、今までに吉之助サァが世話をしてきた人々が貧者の一灯を持ち寄るのでしたら、まだしも物語として成立するのに、普通に家族や友人がコツコツと金銭を持ち寄るのみ……そんな起伏に欠ける要素を主軸に据えた話が面白いのか? どうせつくならデカい嘘をついて欲しいのよ。須賀さんが手切れ金代わりに足りない十両を工面する件は辛うじてよかったと思えたものの、これも直後に須賀さんの心情を御丁寧に解説するシーンが蛇足でした。

次回予告のヒー様も物凄く地雷臭満載。松田翔太さんということで、ゴシラ院的な型破りラストタイクーンを見せたいのかもですが、実際の徳川慶喜は(特に成年後の言動を慮るに)幼少期に人格が歪んじゃったんじゃないかと思えるレベルの超スパルタ教育を受けているので、ああいう徳田新之助的な振る舞いは似合わないと思うのですが……いや、繰り返すように面白くなれば全然OKですよ? でも、これも結局は今週の黒船来航と同じで史実≒紀行のほうが面白いというオチになりそう。

 

そんな訳で来週も本放送よりもBSの再放送の大河ドラマのほうが楽しみな今日この頃。『風林火山』も愈々、最終回が近づいており、次は如何なる過去の名作大河が再放送されるのかと楽しみにしていたところ、遂に正式発表となりました!

 

再放送情報『軍師官兵衛』

 

何という絶妙なチョイスでしょう! これで今年の大河ドラマはBSの再放送枠よりもクオリティが低いというクレームが出る可能性が激減しました! 『再放送枠にクオリティで勝てないなら、クオリティの低い作品を再放送すればいいじゃない!』というNHKの逆転の発想、ほんとすこ(憤怒)。まぁ、昨年来の小野但馬ブームに便乗したチョイスなのでしょうけれどもね。

 

 

 

 

 

 


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