お詫びといいますか、言い訳と弁明から入らせて頂きますが、今年の『おんな城主直虎』の総評記事は年明けのUPになりそうです。十日ほど前の職場でのムリが祟った所為か、ここ数日は仕事から帰ると殆ど寝たきりの状態が続いておりまして……現在は概ね快癒に向かっているものの、リアルでもブログでも予定がキッツキツの状態。今月中旬にも一つ、大きなイベントを控えており、何かを後回しにしないと身動きが取れなくなってしまうのは必至なので、仕事の次に一番時間と労力を要する大河総評記事を先送りすることに致しました。一昨年のように書くことがない訳ではありません、念のため。むしろ、いい点も悪い点も含めて、書きたいことが多過ぎる所為で収拾つかなくなっている程です。毎年の総評恒例の大河ドラマを料理に例える企画も、
調理実習大河
シェフ大泉大河
楠公飯大河
と候補が乱立して困っているんだよなぁ……取り敢えず、共通点は作り手の努力と作品の出来が比例していないということでしょうか。
尤も、今回は美味しい時も不味い時もビミョーな出来栄えになることが多い本作にしては珍しく、外連味の利いた筋書きでした。家康の上洛は信長による暗殺計画の一環というのは稀に歴史バラエティ番組で取りあげられることがあるとはいえ、現時点では主流とは言い難い説なので、これを大河で描こうとするチャレンジ精神は大いに評価したい。ただし、このネタを描き切るには残り2話しかないというのがヤバ杉内。盛りあがりに欠けることが全編を通じてのネックとなっていた本作の逆転タイムリーになるのか。それとも、ブービーから一発逆転を狙った挙句の貧乏農場行きとなるのか。8:2で後者になりそうな気がするなぁ……。そんな今回のポイントは4つ。サブタイは『キンカン、謀叛起こすってよ』のほうがよかったと思う。
1.ねんがんのするがをてにいれたぞ
石川数正「次は穴山、その次は北条にございますかなぁ!」
穴雪が聞いたら『え? ワイも武田みたいに滅ぼされるんですか?』と絶句するであろう、イケメン数正の発言。オワコンの武田と縁を切ってまで御家の安泰を図ったと思ったら、徳川には次の標的と思われていた模様。一応、この時点では織田家の従属国衆として、徳川の与力扱いされている筈ですが……まぁ、国衆や与力というのが如何に信用できない存在であるかは昨年の大河ドラマでも描かれていたので、穴雪の領地を奪い取ろうという発想は必ずしも不自然とはいえないでしょう。次回か次々回で描かれると思いますが、穴雪の横死で結果的にそうなったからね。
その武田を殺してでも駿河を奪い取った祝勝会での騒動。
井伊万千代「まずは、ありもせぬ言い掛かりをつけましょう! そして、織田の嫡男・信忠さまの首級を差し出させるのです! 織田が皆殺しにするという敵を救い出し、丸抱えにし、織田の首級、一族郎党の首級を罪人として、三条河原!」
徳川家康「……飲み過ぎじゃの」
この酒癖の悪さは直虎の影響。はっきりわかんだね。
2.よくも騙したアッー!
今川氏真「ここのところ、上様におかれましては、こと相撲をお好みと伺いまして……三河の美丈夫どもを集めて参りました」ポロロロロロローン♪
明らかにチョイスのおかしいSEと共に登場した三河の美丈夫たち。何遍聞いても姫様や奥方さまの初御披露目の際につけられるSEとしか思えないのですが、ノッブの性癖を鑑みると強ち間違いとはいえないのかも知れません。どう考えても美丈夫ではない奴が混じっているように見えたのも私の気の所為でしょう。実際、饗応される側は、
織田信長「よいのではないか」
と満更でもない御様子。流石は蘭丸、犬千代、竹、弥助とストライクゾーンの広さに定評のあるノッブです。
3.確か山路さんが被害者
明智光秀「共に信長を殺しましょうぞ(殺しましょうぞ
大事なことなので二回いうキンカン。このテの演出って、完全にネット実況での突っ込み待ち前提で作られている気がします。いい悪いは別として。
さて、今回最大の目玉となった家康暗殺計画を逆手に取った信長暗殺計画。本能寺の変は日本史上最大級のミステリで、特に何故、光秀があのタイミングで兵を挙げたかに関する点が議論の争点になることが多いのですが、上記のように家康暗殺計画を逆手に取った信長暗殺計画と考えると、その是非は措くとして、一応の説明はつきます。自分を殺そうとしている側の計画を逆用した殺人事件という構図は、現代のミステリ作品でも不可能犯罪を成立させる要素として好んで用いられますからね。例えば、島田荘司の……おっと、ネタバレはイカンですね。
尤も、これほどの重大事を現役引退したおとわの耳に入れる展開は如何かと思いました。一応、光秀~ファンタジスタ~自然~おとわと間に何人かクッションを挟むことで、物語に無理を生じさせない作りになっているものの、そこまでしておとわを絡ませて、話が面白くなったかといわれると労力の割に結果に結びついていなかったのも事実。それに計画を織田にチクるといっておきながら、一方で徳川に天下を取って欲しいと希望するおとわの言い分も矛盾していませんかねぇ。更にいうと家康がファンタジスタ経由で耳にした又聞きレベルの光秀の言葉の裏を取らないのもどうかと思います。これでは影武者徳川家康にハメられたサイコパスと変わらん。それほどに家康も追い詰められているということでしょうか。
![]() | 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 (光文社文庫) Amazon |