田臥准慈「女将さん、御勘定をお願いします」
月本幸子「ありがとうございました」つ『¥2850』
田臥准慈「とても美味しかったです。お釣りは結構ですから」つ『¥3000』
うーん、これは微妙なイケメンぶり!
福沢翁とはいかないまでも、せめて、一葉さんを出してもおかしくない雰囲気の田臥検事でしたが、金之助三枚という微妙さゆえに台詞のカッコよさとの落差が際立った感があります。意外と庶民派? まぁ、今回の『花の里』訪問は特命係の身辺調査がメインなので、度の過ぎた『ココロヅケ』は収集した情報の信憑性に疑問を抱かれる危険があると判断したのかも知れません。流石は日下部法務事務次官の懐刀。万事に慎重な性格のようです。恒常的に法律スレスレ……というか、完全なる違法捜査をやらかし過ぎた所為で、日下部事務次官や青木君の報復を招いた杉下とはエライ違いです。日頃の行いって大事だよね。
他に気になったのは『花の里』の御勘定。ビール瓶を一本空ける間に杉下や冠城の為人を聞き出すとなると、田臥検事は小一時間近く滞在していたと思われます。料理も2~3品は注文したと推測できますが、それで2850円というのは立地や料理の内容を考えると些か良心的に過ぎる価格設定ではないでしょうか。月本さん、ちゃんと生活できているのかな……などと、本編とまるで関係のないことが一番気になった今季『相棒』の第一話。まぁ、事件そのものの構図が殆ど描かれなかったうえ、特命係の違法性という今更感満載のネタで『次回に続く』のでは、内容に関する感想が出てこないのも道理でしょう。このレベルの策謀で陥れることが可能でしたら、とうの昔に杉下は塀の中で羊たちの沈黙ごっこに興じている筈です。田臥検事は元より、日下部事務次官もまだまだ杉下という存在の異常性・怪物性を理解していない。尤も、カイト君や瀬戸内元大臣、テーラーの古谷さんに時計職人の津田さん、ブロガーの毒島さんといった面々が揃っている塀の中のほうが、或いは杉下にとっては有意義な時間を過ごせそうに思います。よし、本人のためにも何とかムショにブチ込もう。頑張れ、田臥検事。
上記のようにストーリー的には色々と不満のあった内容でしたが、見るべき点も多かったかな。まず、特命係の捜査権に関する解釈。刑事部長の日々の御説教を聞くまでもなく、特命係には公式の捜査権は存在しませんが、捜査権のない二人が立件した事案で公判を維持できるのかという疑問が常日頃からありましたので、
田臥准慈「警視庁では総務部や警務部には事務分掌上、捜査権は認められていませんが、仮に所属部員が上司の命令で捜査を行えば、それは司法警察員としての行為と見做されて、違法捜査にはならない……」
という解説には納得してしまった。そういう解釈もアリなのね。
次に取り調べの録音録画の任意性。
芹沢慶二「記録していませんよ、被疑者自身が記録を拒みましたから。御存じかどうか知りませんけれども、被疑者が拒んだら記録しなくていいことになっています。全面録音録画の例外措置としてね」
『え? そうなん?』と思わず、突っ込みの言葉が出てしまいました。確かに取り調べの録音録画の全てが被疑者に有利に働くとはかぎらないので、一種の黙秘権としての選択肢は用意されるのは当然でしょうけれども、
伊丹憲一「敢えて言う。『編集された映像に真実はない』」
芹沢慶二「なまじ、録音や録画なんか残すと後悔するよ?」
などと狡猾さを差し引いても充分に悪党っぽく見えるイタミンに凄まれたら、普通の人はホイホイ署名捺印してしまいそうです。実際にも起こり得る事案だよなぁ、これ。このネタ一つで普通に一話出来そうな感じです。特命係の危機と並行で描くには惜しい題材。
そして、中村俊介さん演じる平井陽。現時点での動機は不明瞭ですが、個人的には用済みになった妻を殺して焼くのではなく、焼きたいために妻を殺すという目的と手段の倒錯したキャラクターのようです。この壊れ加減は私好み。これもコイツ一人で一話作れそうなネタなので、本当に惜しい。しかも、それを爽やか系イケメンの中村さんが、それも、浅見光彦と変わらないテンションで演じるのがいいですな。ガリレオ二期で大沢たかおさんが演じた宗教家といい、イケメン俳優は胡散臭いキャラクターを演じたほうが味わい深いですよね。歴代の浅見光彦って中村さんといい、榎木さんといい、辰巳さんといい、クセのあるキャラクターのほうがシックリくる人が多い気がします。勿論、代表はエロ男爵でしょう。『お〇ぱいで大事な点は?』と聞かれて味と答えた話、ほんとすこ。そういや、杉下の中の人も浅見経験者でした。是非、サイコパス系の犯人役とか演じて欲しいですが、本作が続いているうちはイメージ的に難しいかなぁ。まぁ、杉下は犯罪にこそ手を染めないものの、自身の価値観を貫くために法を犯すことを厭わない点で、充分にサイコパスの素養があるといえますが。
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