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『おんな城主直虎』第四十一回『この玄関の片隅で』超簡易感想(ネタバレ有)

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井伊万千代「もしや、殿はあそこ(草履番)を掃きだめにするおつもりなのでは?」

 

米沢さんが足しげく通う部署は人材の墓場。はっきりわかんだね。

 

今週水曜日から始まる『相棒16』のステマと思えなくもない万千代の台詞。草履の鼻緒を斬る小細工で家康に接近を図る件も、法律ギリギリ(時にはOUT)のトラップを好んで用いる杉下に通じるものがあります。井伊直政や本多正信という、才能とは裏腹に身内ウケのよろしくない人材が揃っている点でも特命係に通じるものがある……思ってしまうのは大河ドラマ&相棒好きの身贔屓(或いは偏見)というものでしょう。しかし、初回SPでは榎木孝明&中村俊介という新旧のダブル浅見が揃って敵役&仇役とは……今季の初回SPは一時間半という短目の尺なので、あんまり期待していなかったのですが、このキャスティングに釣られて見てしまいそう。そういや、杉下の中の人も浅見経験者でしたね。朝比奈周平? シー! それいうたらアカンことや。

今回もストーリーと関係ない話題から入りましたが、本編もそんなに動いている訳ではないのでしゃーない。いや、丸太の調達を巡るおとわの言動(或いは蠢動)は、本作特有の超々ロングスパンでの伏線回収&主人公の成長が窺える地味にいい場面でしたが、先回の感想でも述べたようにもうそんな微妙にいいネタをやっている場合じゃないだろという思いを禁じ得なかったもので……ぶっちゃけると先回&今回で漸く一話分の内容ですよね。このスローテンポな展開でキチンとオチがつくのか……いや、待てよ。この時期になっても、明明後年の大河ドラマの制作発表がないのは、もしかすると大河ドラマ『井伊直政』に続くのかも? 本作では気が遠くなるほどのロングスパンの伏線回収が恒常化しているうえ、柴咲さんも『もう一年やれそう』と発言しておられるので、この発言自体が新大河発表の伏線という可能性もあるで。そんな今回のポイントは3つ。

 

 

1.人的補償枠

 

おとわ「ここは『中野から一人出すが、松下から一人貰う』とお考え頂けぬでしょうか?」

近藤康用「……これからの若武者と、草臥れた守役では、こちらが貰い損な気がするがのぅ?」

 

中野直久と六左衛門の交換という微妙に損な気持ちにさせられるトレードを提案するおとわ。眉毛にとって、井伊谷の面々でさえ(都合の&どうでも)いい人という他に美点を挙げられないレベルの六左衛門なんぞ、自軍にいてもウェイバー公示か無償トレードか戦力外通告の対象でしかありませんが、代わりに放出させられる中野ブラザーにも『若さ』以外のアドバンテージが皆無なのも事実。使えない人材の循環に経費が嵩むという、万年Bクラスの球団が陥る典型的なドツボに嵌った眉毛。彼の苦労が偲ばれますね。尤も、

 

高瀬「馬の世話が御上手にございますよ。馬に御人柄が伝わるのか……」

 

という人間相手には役立たずとも取れる皮肉を看破できなかったのか、或いは高瀬の健気さにほだされてしまったのか、六左衛門を召し抱えてしまう眉毛。流石は元武田の間者……というか、一度は眉毛の生命を狙った高瀬が、今も彼の御傍にシレッ仕えているのはジワジワ来るものがあります。先回、おとわが万千代の生存を眉毛に伝えていなかったことが判明しましたが、まさか、高瀬の前歴も伝えていない? これで眉毛に『井伊の誠意を理解しろ』というのは無理があると思うのですが……。

 

 

2.パワハラ事案

 

おとわ「近藤殿と折り合いが悪いのか?」

奥山六左衛門「はい、私の姿が癪に障るようでして……恐らく、それがしの一挙手一投足が『マヌケな男』だと物語っておるのだと思います」

おとわ「……六左、無理をして此処におることもないのじゃぞ?」

 

六左衛門を気遣っているように見えて、彼の自虐発言自体は否定しなかったおとわ。これは畜将直虎ですね。間違いない。まぁ、実際、人間関係で『虫が好かない』こと以上の悲惨は存在しません。これは好かない側も、好かれない側も同じ。理屈じゃあないんですよね。私も好かない側、好かれない側の両方を経験しているから、今回の眉毛と六左衛門の関係性は凄くよく判るのよ。六左衛門本人が一生懸命なのは眉毛も理解していると思うのですが、本人は自然なつもりでも、傍目にはワザとらしいリアクションや場違いな声のテンション、他人との物理的な距離感の掴めなさなどの、ちょっとした発言や態度がイラッと来るのも確か。私自身が六左衛門と同じタイプの人間なので、よく判るのよ。一種の同族嫌悪といいますか。この辺の描写&演技は本当に巧かった! 特に『何で武家を辞めないの?』という、これも何気に畜生極まるおとわの質問に、

 

奥山六左衛門「どっしよっかな~?」

 

と返答する場面は本当にイラッと来ました。これは身内からも人柄以外にフォロー入らないのも道理ですわ。

 

 

3.天正のジャイアニズム

 

井伊万千代「井伊は以前に材木を商っておりました。その折に手練れの者たちを雇い入れ、その時の技は今も井伊谷の者に受け継がれております。それがしにも是非、一部材木の仕入れを御申しつけ頂けませんでしょうか?」

 

『いいこと思いついた。おまえら、丸太を三千本用意しろ』と『くそみそテクニック』のような物言いで『彼岸島』のような命令を下す第六天魔王。これもうわかんねぇな。勿論、長篠の戦いの伏線でしょう。まさか、中盤の材木の商いが長篠に結びつくとは……本当にロングスパンの脚本ですね。いや、これは巧かったと思いますよ。そのうえ、

 

おとわ「『井伊谷が材木を』とのお話にございますが、生憎、今ここは近藤殿の御領地。炭一本たりとも井伊家のものではございませぬ。その井伊谷を、まるで我が物であるかの如く頼みをよこす井伊万千代は、物事の筋目すらまだ判らぬ未熟者かと存じます。ここはひとつ、近藤殿に、このお役を命じ直して頂けませぬでしょうか」

 

と八方を丸く収める(除く万千代)おとわの水際立った対処には唸らされました。勿論、その境地に達するのが十年遅かったという思いは否めませんが、ともあれ、主人公の成長をキチンと描いてくれたのは嬉しいかぎり。尤も、先述のように虎松の生存や高瀬の素性を伏せておきながら、材木の伐り出し作業に六左衛門を推挙して、

 

おとわ「騙されたと思い、役目を任せられては如何でしょう?」

 

などとシレッと言い放つところがフフッてなりました。『騙されたと思って食ってみろ! 大抵は騙されるがな!』という炎尾燃の名言を思い出しました。

 

次回は遂に長篠の戦い……ですが、予告映像の、

 

本多正信「殿を信じ、バッと前に出るのです!」

 

の台詞とか、高名な【アッー!】か備えならぬ白褌一丁の万千代の姿とか、その万千代に迫る家康とか【ウホッ!】なシーンを期待してしまいます。まぁ、それが長篠の戦いの回でやらなければいけないことかと聞かれると、疑問の余地がないでもありませんが。

 

 

 

 

 

 

 


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