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『おんな城主直虎』第四十回『天正の草履番』超簡易感想(ネタバレ有)

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先週からBS12で再放送されているショーグン・ミフネ主演の『大忠臣蔵』。ストーリー以前に田村正和が前髪を残した若武者姿で登場している(&演技は今と変わらないのが余計にジワジワくる)ことや、現代視点ではやり過ぎと思える程に通俗的なイメージを踏襲した吉良と大野の配役といったキャスティングが逆にメチャクチャ面白くて、忠臣蔵ものが好きではない私も結構楽しんでおります。有名な増上寺の畳替えの回に出てくる金三という職人を見た時は、

 

与力「何でこんなところに大泉が出ているんだよ?」

 

と思ったら、若き日の欽ちゃんでした。ホント、凄ぇ似ているのよ。容貌は勿論、微妙に胡散臭い喋り方とかもクリソツ。是非、御覧になって確かめて頂きたいのですが、役回り的に今後も出番があるか否か微妙なんだよなぁ……。

次回は運命の松の廊下の回。全五十二話の第五話で『松の廊下』というのは早いですね。大河ドラマ系では『忠臣蔵』で第七話。『峠の群像』で第十四話。『元禄繚乱』で第十九話といった具合に、意外と松の廊下までを引っ張るケースが多い。それでも浅野内匠頭には前半戦で御退場頂くのは共通しています。観客や視聴者が感情移入するのが主人公という定理に基づくと『忠臣蔵』の序盤の主人公は、吉良のパワハラ(史実では未確認)に耐える浅野内匠頭になりますからねぇ。そして、序盤の主人公が何時までも居座っていては、大石の出番がなくなってしまいます。

翻って、今年の大河ドラマは如何に直虎が主人公の物語とはいえ、後半戦の主人公の直政が第四クールに入ってからの登場というのは遅きに失した感は拭えません。しかも、直政を軸に物語を収束するにはキャラクター造型の出発点が低目に設定されています。ここから@2クールくらい残っていないと収拾がつかなそうなレベル。少なくとも、

 

草履を投げている場合じゃねぇ     

 

と思うのですが……或いは草履番に任命された時点で投げ草履を披露するくらいのハイスペック仕様でもよかったのではないでしょうか。つまらない訳ではありませんが、物語の着地点が見えないままで最終クールを迎えた不安感が半端ない。あ、でも、今回のサブタイ弄りはよかった。森下さんは『天皇の料理番』の脚本を手掛けているから、極上のセルフパロディといえるでしょう。しかし、天正……もう、そんな時代になっていたのか。本作は時間や兵力といった数字に関わる描写が致命的に乏しいから、主人公たちが何時、如何なる状況に置かれているのかがイマイチ掴みにくいんだよなぁ。そんな今回のポイントは5つ。

 

 

1.嫌いじゃない

 

榊原康政「此度、殿の命により、城内にまとめて草履を預かる『草履番』を設けることとなった」

 

むしろ、今までは草履番はいなかったのかという疑問がフツフツと湧いてくる小平太の台詞ですが、ここに至るまでの徳川家は草履番を必要としないレベルの小規模の家臣団であったのでしょう。領土の拡大による人員の増大と、それに反比例するシステムの空洞化は何時の世の組織にも通じる課題ですね。大量に召し抱えられた家臣に対応できるシステムが構築されていないことの象徴として、今回の草履番騒動が描かれたのではないか……と超好意的に解釈してみます……いや、流石に無理があるか。

それでも、上記の台詞の際に小平太が頭を下げていたのが好印象。主君の存在を言葉にする際には必ず敬意を表するのは往古の倣い、貴人への礼というものです。この辺の描写がシッカリしているから、他の場面のイマイチさがあっても、作品として切り捨てる気になれないんだよなぁ。

 

 

2.確信犯

 

南渓「焚きつけた訳ではない。わしは虎松が自ら選んだと思うておるのじゃがの?」

 

万千代の井伊家再興の野望を看過しておきながら、しのさんに難詰されるや、言を左右にノラリクラリと責任逃れをする南渓和尚。

 

真田昌幸「裏切るのではない。表返るのじゃ」

 

という昨年のスズムシの迷言を思わせる物言いには大草原不回避です。確かに積極的に焚きつけた訳ではないにせよ、万千代の野望が燎原の火のように燃え広がるのを放置していたのも事実なので、放火の実行犯とはいわないまでも、事後共犯に問われるのは当然ではないでしょうか。しかし、まさか、しのさんが登場人物の中で一番マトモな言動をするようになろうとは……ヤンヤンデレデレで直虎を【nice boat.】しかけたのはいい思い出です。

一方、主犯の万千代は常慶の詰問に『殿が言い出したことだからね、仕方ないね』とシラを切ろうとしたものの、

 

松下常慶「六左から全て聞いた」

 

の一言で沈黙を余儀なくされてしまいます……というか、万千代は『あの』六左衛門が沈黙を守り切れると思っていたのでしょうか。小野但馬の追求を受けた際にも酸欠の金魚のようにパクパクと口を割ってしまった六左衛門ですから、万千代の見通しは相当に甘かったと評さざるを得ません。この辺のどうにかなるさ精神はラオウ~サイコパスと受け継がれる井伊家の血脈。はっきりわかんだね。

 

 

3.癒しの一人と一匹

 

近藤康用「井伊家を再興するつもりはないと、あれほど言うておったではないか!」

おとわ「あれは虎松が勝手にやってしまいましたことで……」

近藤康用「然様な言い訳が通ると思うか? だいたい、虎松なる者は死んだのではなかったのか!」

 

今週も地味に出番があった眉毛。空気を読まない出たとこ勝負で動いている井伊家の面々と比べると、善くも悪くもブレない眉毛の存在は癒しの要素さえ感じさせます。忠正叔父さん、権八つぁん、御屋形様に代表される近年大河ドラマのムサ可愛いという要素を継承しているキャラクターでしょう。初登場時には、これほどまでに感情移入することになるとは思いませんでした。まぁ、他のキャラクターがアレ過ぎて、相対的にマトモに見えるのかも知れませんが……井伊谷侵攻時は兎も角、現在に至っても、眉毛に虎松の生存を知らせていなかったのは、流石に政治的配慮がなさ過ぎやしませんかね、おとわさん。

もう一つの癒し要因はにゃんけい。コイツが登場するとホモ・サピエンスの演技よりも目で追ってしまいます。また、いい動きをしやがるんだ、コイツ。ガチでキャラクターベスト10入りあるかも。

 

 

4.高さ危険太郎とか

 

おとわ「その昔、井伊にはまこと人がおりませんで……」

 

尚、現在も質・量共にマトモな人材はいない模様。

 

視聴者としては知ってたという言葉しか出てこないおとわの自虐発言。小野但馬というばんてふに匹敵する暗黒期エースの在籍時は兎も角、その引退後も若手の育成に何ら力を注いでいなかったツケが祟ったといえるでしょう。小賢しさが先に立つ万千代の跳梁を阻止できないのも宜なるかな。その万千代に草履取りを任せることで人材の育成に励んでいる家康とは対照的ですね。まぁ、のちに万千代は監督の愛人枠から大正義スラッガーに昇格するので、結果的に問題ないといえなくもありません。ちなみに直虎が当主時代の井伊家で打線組んでみました。

 

1(中)中野直之

2(一)瀬戸方久

3(三)龍雲丸

4(投)小野政次

5(遊)傑山

6(二)昊天

7(捕)井伊直虎

8(右)奥山六左衛門

9(左)にゃんけい

 

監督 南渓

 

うーん、この暗黒臭&長打を打たれたら終わる臭&権藤権藤雨権藤雨雨権藤雨権藤レベルの小野但馬酷使臭。中野ジュニアがリードオフマンという段階で色々と終わっているな……。

 

 

5.大人になれよ

 

おとわ「一介の百姓の草履じゃが、よろしゅう頼む」

井伊万千代「」

 

万千代に『今は一介の百姓』と言われた意趣返しをするおとわ。本当に大人気ありません。鬼と呼ばれた後年の井伊直政であれば、

 

 

とブチギレたことでしょう。それにしても、本当にレベルの低い争いやなぁ。同じ苦労でも父親の仇の前でリフティング芸を披露しなければいけないファンタジスタのほうが、余程大変そうに見えてしまいます。苦労しているのは万千代だけではないんやで。

しかし、それ以上に苦労しているのは万千代パッパ(マトモなほう)

 

松下源太郎「たとえ、仮初でもわしは虎松の父じゃった。ならば……最後まで親らしくあらぬか? あやつの思うように送り出してやらぬか?」

 

いい人だ! とてもいい人だぁ!(福澤朗風

 

しのさんは直親よりも先に松下家に嫁いでいたほうが、色々と幸せであったのではないでしょうか。ここにきて、松下家の株ストップ高状態。今年中盤まではキャラクターベスト10の候補がおらず、頭を抱えていた大河総評ですが、何とか光明が見えてきた感じです。

 

 

 

 

 

 


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