『Literacy bar』は開設から七年目に突入しました。
皆様の日頃の御愛顧に篤く御礼申しあげます。
昨年は職場に関する泣き言繰り言のオンパレードから入るという、実にみっともない記念記事になってしまいましたが、現在は比較的落ち着いているといいますか。まぁ、そうはいっても、事態が根本的に解決した訳ではなく、
台風のド真ん中の静けさ
であり、これまで&これからの苦労を思うと頭痛を禁じ得ないとはいえ、今回くらいは何もかもを忘れて、書きたいことを書き殴ることにしましょう。そんな訳で今回は徒然日記風に最近の出来事&視聴した作品の感想をランダムに紹介することで、七周年を迎えた現在の心境に代えさせて頂きたいと思います。あ、そういえば、今年上半期ベスト10にランクインした『ルワンダ虐殺』がBS1で日曜深夜に再放送予定。興味のある方は是非、御覧下さい。
1.祖母の思ひで
今年のお盆は父方の祖母の〇回忌でした。
明治生まれの、頑固で動物嫌いで出不精で、家族にも滅多に笑顔を見せない『気難しいバアさん』でしたが、その祖母の楽しみの一つはTVでプロレスを見ることでした。私のプロレス好きは祖母の血脈かも知れません。尤も、先述のように非常な出不精のため、当時のJE市では年に3~4回はプロレスの興行があったにも拘わらず、大会を見に行くことはなかった。何度か祖母を観戦に誘ったものの、その度に拒否されました。流血試合も顔色一つ変えずに楽しんでいたので、生で試合を見るのが怖いとか心臓に悪いとかではなく、単純に面倒くさいとかお金が勿体ないとかいう理由であったのでしょう。
しかし、或る時、遂に祖母が私の申し出に応じて、二人でプロレスを見に行くことになりました。心境が変化した理由を祖母は語りませんでしたが、この年の初旬にジャイアント馬場さんの訃報があったことが要因ではないかと思います。前年のJE市での興行時には馬場さんは御存命でした。『何時でもTVで見ることができる』と思い込んでいた存在がいなくなったことに、何か考えるところがあったのかも知れません。
私がリザーブした席はリングサイドの3列目(流石に最前列はマズイと思いました)。実際に観戦した方はお判り頂けると思いますが、リングサイドはマット上の衝撃が直に観客の足に響くのですよ。前座のボディスラムでも足元が揺れるのが祖母には衝撃であったようで、何度も『凄いねぇ、凄いねぇ』と呟いていました。興行の途中に祖母から『トイレに行きたい』といわれたので、
与力(まぁ、次はムラッ気の多い田〇の試合だから見なくてもいいか)
と思い、つき添おうとしましたが、祖母は『おまえは試合を見ていなさい』と一人で歩き出してしまいました。何せ、一度言い出したら聞かない為人ですから、無理についていく訳にもいかず、しかし、流石に気になったので、何時でも飛んでいけるように試合そっちのけで祖母の様子を見ていたら、通常の出入り口ではなく、選手の入場口へと歩いていくではありませんか。『これはマズイ』と思い、あとを追おうとすると、入場口で試合を見ていたレスラーが、スッと祖母に道を空けて、近くのスタッフが正規の出入り口へと案内してくれました。ちなみに、そのレスラーは高山善廣です。サンキューノーフィアー、フォーエバーアパッチタワー。
興行自体も満足のいく内容で、感情を滅多に表さない祖母が、帰宅後も私の両親に『面白かった、面白かった』と繰り返していたそうです。尤も、試合の興奮で寝つけなかった祖母が夜中にトイレに向かう途中で転倒。腰を痛打して入院してしまったので、どうにも後味の悪い結果になりました。昨年の『真田丸』の家族の無茶ぶりで腰を痛める秀吉がトラウマと記したのは、こういう事情です。そんなことを思い出しながら過ごした祖母の法事。当時、祖母に道を空けて下さった高山選手は現在、試合中の負傷で入院中とのこと。一日も早い御快癒をお祈り致します。それにしても、今年に入ってから、柴田、コケシ、高山とリングでの事故が多過ぎる……棚橋が十年かけて抑え込んできたプロレス技の危険度のインフレが、再び台頭してきた感じです。棚橋は決して好きなレスラーじゃあないですけれども、ボディプレスとテキサスクローバーといったBボタン技をAボタン技に定着させることで、技のインフレを抑制していた功績は確かだからなぁ。
2.いいことなのだと思います、多分
その祖母の法事の際、お運び頂いた和尚さんに『うちの御宗旨では御焼香を押し頂かず、回数は一度で大丈夫です』との解説を賜りました。実際、御焼香の作法は葬儀や法要のたびに気を使う案件なので、非常に有難い知識ではあるのですが、しかし、一方で『何故、法事を行うのか』という根源的な解説はなかったように思います。これは全く妙な話で、現実社会で例えると遠路遥々と駆けつけて下さった方々に、自分たちが何のために呼ばれたのか、その理由を説明しないまま、ドレスコードをレクチャーするようなもので、大抵の人は業腹な思いをするのではないでしょうか。『そんなことは知っていて当然』という理屈は成立しません。会合の趣旨をハッキリさせるのはホストや司会の義務だと思いますよ。
仏教(≠原始仏教)では死後の世界で『十王』と称される裁判官たちに、生前の所業を裁かれます。ここでは裁判員制度が導入される以前の日本に負けず劣らず、長い時間を掛けて、地獄か極楽かへの道が審理されるのです(実際はもっと複雑です)が、法要(≒法事)は、その公判の日程に合わせて営まれるのです。縁者が集まり、自分たちの善行を故人に届けることで公判を有利に導く&判決後の世界で修業を続ける故人の助けとなる善行を届ける。要するに死者への情状酌量&あの世への差し入れが法要の本質ですが、私自身が経験した法要法事で、このテの解説を聞いた覚えはありません。先述した御焼香のやり方とか、数珠の持ち方とかいう話のほうが圧倒的に記憶に残っています。
予め申しあげておきますが、それがいいとかよくないとかという話ではありません。現代の日本、少なくとも、私の周辺では宗教とは死者のためではなく、生者のためにある。人々が宗教に、或いは宗教が人々に求めているのは救済や信仰心よりも、
世間で恥をかかないためのマナー
ということです。ニーズに応じた救いを与えることは、宗教として何も間違っていない。善悪の問題ではなく、そうだという話です。曲がりなりにも先進国を自称するうち、今世紀に大規模な宗教テロが勃発していない数少ない国であるのも、人々が宗教に求めるものが真理や救済ではなく、マナーであることのおかげかも知れません。尤も、宗教的概念に全く免疫がないと、前世紀の地下鉄での事件のように極端から極端に奔る連中も現れかねないので、
浦地正宗「奇跡なんか起こるべきじゃないんだ。人は人の力で幸せになるべきだよ」
浦地清次郎「君は強い子だね。でも、僕は誰もが強い世界よりも、弱い人さえ赦される世界が正しいと信じているんだよ。都合のいい奇跡で弱い人が救われる場所が間違いだとは思えないんだ」
くらいの、人と救いに関する輝きのある言葉を拝聴したいものです。『サクラダリセット』も@3回かぁ。革命家の村瀬さんが便利屋過ぎるのが気になるけれども、毎回台詞の力強さに魅かれてみてしまうんだよなぁ。
3.『ダウントン・アビー』最終回雑感(多少ネタバレ有)
バイオレット「ウフフフフフ……アハハハハハ……アハッ……おかしい……アハハハハハ……」
遂にフィナーレを迎えた『ダウントン・アビー』。最終回の大・大・大・大・大団円ぶりには、私もバイオレットのように笑いがとまりませんでした。ここまでやるか。勿論、いい意味でね。マートン卿の『誤診』の件は流石にやり過ぎ感がありましたが、あれほどのハッピーエンドの十字砲火の中、彼一人に未来がないというのも考えものですから、仕方ないね。しかし、あのバイオレットを爆笑させるとは……スプラットのコラム、読みてぇ! 個人的に一番感情移入していた(≒素の私を重ねていた)キャラクターがスプラットなので、このオチが一番嬉しかった。そのスプラットの才能を発掘したイーディスの人材を見る目の確かさよ。男性を見る目は色々と難がありましたが、これも最終的には大どんでん返しのハッピーエンドを迎えたので、結果オーライです。
それにしても、これほどの大団円とは……本作は貴族社会の静かなる崩壊の物語と思っていましたが、全然違った。苦境や困難に抗い、時代の趨勢に即して強かに生き延びる貴族たちの変化の物語であったのですな。それこそ、本作不動のポラリスと評すべきバイオレットにも、若気の至りのスキャンダルがあった訳で、第一話の冒頭で描かれた完璧なる静謐ともいうべき堅牢な貴族社会の描写の裏には、常にそうした難局が存在していたのでしょう。しかし、そうであるからこそ、今後の彼らも様々な苦難を乗り越えていけるのではないかと思えるようになりました。あと、本作のおかげで貴族への偏見を捨てることができたのは大きい。私なんぞは『銀英伝』の影響で、
貴族=リップシュタット連合軍
という絶望的に悪いイメージを植えつけられていましたが、本作のおかげで何故に貴族は尊いのか(勿論、個人差はあるでしょうけれども)が、理解できた気がします。
ちなみに上記のように一番感情移入したのはスプラットですが、本作に登場するキャラクターは皆、本当に魅力的で、大河ドラマの総評で御馴染みのベスト10企画をやろうとしても、絶対に収拾がつかなくなる自信があるので断念しました。それでも、敢えて男女一人ずつを選ぶとしたら、
男性枠=トム・ブランソン
女性枠=ロザムンド・ペインズウィック
でしょうか。トムに関しちゃあ、伸び代が半端なかった。トムほどに作品世界で成長を遂げたキャラクターは『ダイの大冒険』のポップくらいでしょう。素直に友人になりたい。逆にロザムンド叔母さんは実際につきあうのは骨が折れるでしょうけれども、親戚に一人、彼女のような人物がいてくれると本当に心強い。ある意味でバイオレットよりも不動の存在といいますか。まぁ、ぶっちゃけると私の親戚に実際、彼女のような方がいるのよね……ホント、初めて見た時から他人の気がしなかったです。
唯一の心残りは途中離脱したオブライエンさんの去就か。あまりのヒールぶりに降板させられたとかいう役者冥利に尽きる噂が囁かれたこともありましたが、こうなったら、これも噂されている劇場版での再登場を希望。実現したら、人生で二度目の劇場での洋画鑑賞あるかも。
4.『8・15』関連番組雑感(多少ネタバレ有)
今年も8・15関連ということで、先の大戦絡みの様々な番組が放送された中で、ダントツで胸に響いたのは『戦慄の記録 インパール』。戦病没者の詳細な分布データの公開や、ムッちゃんのアレなエピソードを極力排して、その動向に焦点を絞った構成といった具合に比較的冷静な視点に終始したのが高評価の要因。特にムッちゃんが前線付近まで本営を進めて、陣頭指揮を執ったという証言は、後方基地で【ハッスルハッスル】していた逸話が有名になり過ぎている分、意外性がありました。まぁ、本編でも述べられていたように、英国軍の計画は日本軍の突出を誘って、伸び切った補給路を寸断することにあったのですから、ホイホイと前線に本営を進めてしまったムッちゃんの判断は道義的には兎も角、軍事的資質に改めて疑問符が呈されたともいえます。しかし、三週間の予定が二カ月経っても完遂しない作戦に固執するムッちゃん&一度始めた作戦は全滅しても完遂せよという大本営の姿勢を慮るに、インパール作戦とはムッちゃん個人の才幹と同等の割合で、軍隊という巨大な官僚機構特有の硬直性が生んだ悲劇といえるかも知れません。
尤も、官僚的軍事思考の悲劇としては、今年6月に放送された『フランケンシュタインの誘惑~ビタミン&戦争&森鴎外~』のほうが色々とドンびきの内容でした。鴎外の唱える白米優勢論に司令部が固執したことで発生した日本陸軍の脚気病没者が二万人って……インパール作戦は曲がりなりにも軍事行動での戦病死ですが、脚気は戦う以前の問題じゃあないですか。軍隊の悲劇を語るのに戦争を選ぶ必要はない。はっきりわかんだね。尚、本作で海軍から脚気を一掃した功績者と激賞された高木兼寛ですが、この人は疫学の観点から都市衛生を保つために貧乏人は都会から出ていけとか、なかなかに過激な論説を唱えており、それに人道的視点から反対したのが件の森鴎外であったことはスルーされていました。人間の評価って難しいね。まぁ、鴎外は自身の白米優勢論に異を唱える高木のやること全てが気に入らなかっただけかも知れませんが。
評価の難しさといえば、同じように8・15企画と思われる『華族最後の戦い』は近衛文麿&木戸幸一という、このうえなく評価の難しい人物を中軸に据えた意欲作で、内容の是非は兎も角、非常に見応えがありました。佐野史郎さん演じる木戸幸一の、どこかヌルヌルとして、相手に言質や掴みどころを与えない台詞回しが実にGOOD。理非はさて置き、日本は如何なるスローガンを掲げるよりも、国体護持を最優先したほうが色々とスムーズに回る国であったことを改めて実感した番組でした。再放送があったら録画しようっと。
5.今年後半の活動予定
恒例の年末ベスト10は上半期で一区切りつけたので、簡易版かベスト5くらいになるかも……と思う反面、下半期に入っても『メイド・イン・アビス』『アホガール』『華族最後の戦い』『戦慄の記録 インパール』のような有力候補作品がゴロゴロ出てきており、嬉しい悲鳴で喉がガラガラ。これに『この世界の片隅で』や『ひるね姫』が入ったらどうなることやら……。
こちらも恒例の大河ドラマの総評記事は昨年よりは短目になる予感。本編の感想は措くとしてもキャラクターベスト10の選出は不可能に近い状況です。完全に小野但馬の一人勝ちで、他のキャラクターが殆ど印象に残っていないからなぁ。
残るは『相棒』の感想記事。こちらも詳細は全くの不明ですが、個人的には中の人の年齢的にも杉下の作中での定年が近そう&何だかんだで冠城君が3クール目なので、ここで大きな区切りがあると予想。毎回は無理でも初回&元日SP&最終回は確実に感想記事を書くと思います。
正直、冒頭で述べた件で色々とキツイ状態になると思いますが、今後とも当ブログを宜しくお願い申しあげます。
尚、虎回の予定は未定。
いや、大河ドラマの出来不出来は別として、普通にオフ会はやりたくて仕方ないのですが、こればっかりは仕事が落ち着かないことには難しい。やるとなったら、すぐにブログで御報告致しますので、その時は宜しくお願い致します。
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