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『おんな城主直虎』第三十三回『嫌われ政次の一生』簡易感想(ネタバレ有)

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小野政次「今後の井伊家の行動を指示させて頂きます。これから、井伊谷三人衆がやってくると思います。貴女は『井伊家は小野但馬に乗っ取られていた』と仰って下さい。そして、これまで通り、彼らからどんな質問を受けても、知らぬ存ぜぬを通して下さい。そうすれば、井伊家は守られます。徳川三河守は誠実で信用できる人物だと思われます。彼の傘下に入ることは、井伊家が幸せになる確率を高めるでしょう。

井伊直虎様、私は貴女に感謝しているのです。先代のサイコパスぶりに絶望し、井伊家を投げ出そうとしていた私を救ってくれたのは、貴女なのですから。私が何を言っているのか、貴女はお判りにならないでしょう。それでいいんです。本当に……本当にありがとう。どうか幸せになって下さい。私のことは全て忘れて下さい。決して罪悪感などを持ってはいけません。貴女に幸せになって貰わなければ、私の行為は全て無駄になるのですから……」

 

サブタイの元ネタは『嫌われ松子の一生』ですが、個人的には『叛臣政次の献身』でもイケるのではないかと思った今週の『おんな城主直虎』。全体の流れは概ね想定&ブレの範囲内でしたが、主人公が手ずから小野但馬に引導を渡す(物理)とは思いませんでした。還俗したとはいえ、ドラマでは僧形を貫いている直虎がガチで手を下すのは……ちょっとドンびき。勿論、当時の寺社勢力が生半な武家(例えば井伊家)では太刀打ちできないほどにオラついた存在であったのは事実ですが、それでも、やり過ぎ感は否めません。ヒロインをキレイキレイさせない姿勢は評価できますが、だからといって、ガチでSATSUGAIするのは流石に脳に中継点がなさ過ぎやしませんかねぇ。確かに今後の徳川との関係を維持するには、あれしか手段はなかったと思いますが、如何せん、物語の振り幅が極端過ぎる。

 

「砂糖を入れ過ぎたから、塩を予定の倍入れて味を中和する」

 

という、まさに調理実習的発想に近いものを感じました。せめて、刺す寸前に直虎の意を察した傑山さんが代わりに手を下す展開でもよかったのではないでしょうか。繰り返すように一定の評価はしています。評価はできるけれども、流石に『やり過ぎ』というのが正直な感想。そんな今回のポイントは4つ。

 

 

1.自演乙

 

中野直之「その方、見たことがあるぞ……近藤の家来だな!」

近藤家来「」グサッバタッ

 

近藤眉毛の自作自演の実行犯という、絶対に生かして捕らえなければいけない相手を、みすみす死なせてしまった中野ジュニア。手際の悪さを責められても仕方のない場面ですが、考えてみると、中野ジュニアも今回の城明け渡しは小野但馬の策謀ではないかと疑っていた一人なので、初動捜査に多少の手落ちが出るのは已むを得ないのかも知れません。これが六左衛門であれば……いや、六左でしたら、そもそも、容疑者に追いつけない&追いついても返り討ちにされそうだからなぁ。こんなところにも井伊家の人材不足が暗い影を落としていたようです。

牢屋で豆狸との対面を果たした直虎。今回の騒動は今川か近藤の謀ではないかと主張します。今川は兎も角、井伊谷三人衆のうち、近藤一人に照準を絞るのは些か奇妙ではありますが、実際問題、三人の中で井伊家が一番迷惑を掛けたのは近藤家なので、直虎も自分たちが怨まれているという自覚はあるのでしょう。後ろ暗いところがあるから相手を誹謗してしまう。人間の心理ですね。しかし、

 

井伊直虎「二心ない証とし、我等は虎松の母まで差し出しました。然様な我らが何故……何故手向かいなど!」

 

との必死の願いも空しく、土下座の姿勢で退場する豆狸。まぁ、家康は後年、実の母親を人質に差し出しても背きそうな奴とつきあうことになるので、これはしゃーない。誰とはいわんがスズムシ、アンタのことだよ。

 

 

2.酸っぱい葡萄の反対

 

小野政次「昔、ここの検地を先代と共に誤魔化そうとしたことがあって……先代はひどうてな。『俺に任せる』というた挙句、最後は全ての罪を俺になすりつけようとした。ひどくはないか?」

 

改めて、小野但馬の口から聞かされると更に際立つ直親のサイコパスぶり。これ、ほんとひで。あのサイコパスが早期退場したのは、井伊家にとっては幸いであったのではないかと思える程です。しかし、それでも、

 

小野政次「しかし、それでよかったのかも知れぬ……なつが笑う話となった」

 

と何とかいいほうに話を持っていってくれる小野但馬ぐう聖過ぎる。政次さん、それは手に入ったモノはロクでもないモノでも素晴らしいモノと思いたくなるスィートレモンの心理ですよ。手に入ろうが入るまいが、いいものはいい。悪いものは悪い。サイコパス直親との長年のつきあいで、小野但馬は少しメンタルをやられちゃったのかも知れません。

 

 

3.誰得の展開(意味深)

 

近藤康用「寝所に忍び込まれてのぅ」ハァハァ

 

そんななつさんとのイチャラブシーンから一転。近藤眉毛の寝所に忍び込むだの忍び込まないだのという暑苦しい展開に……何だ、これは。たまげたなぁ。ムダに鼻血をタラつかせる小野但馬の面貌が、余計に事態の深刻さを物語っているかのよう。一応は女性である直虎と、見目麗しくとも男性の小野但馬のチェンジに応じる近藤眉毛の対応も、いらぬ疑念を抱く材料に思えてしまいます。

それは兎も角、この場面はちょいと納得がいかないといいますか。近藤には直虎と政次の身柄交換に応じる動機はないと思うのですよ。両名の身柄を確保したのを幸い、

 

政次もろとも直虎を斬る

 

のが自然の推移ではないでしょうか。まず、近藤が自作自演を起こした動機の一つは井伊家の領地を切り取り次第にするためであり、それには井伊家を引き継ぐ人間はいないほうがいいに決まっています。領土欲の観点から見れば、直虎を生かしておくメリットはありません。そして、もう一つの動機は井伊家への疑念と復讐ですが、片方を殺す代わりに、もう片方を助ける程度で収まる話でしたら最初に捕らえた直虎を斬って小野を助命すればいいのですよ。何故、小野但馬を捕らえるまで、直虎を生かしておいたのか。この辺のチグハグ感が拭えませんでした。更に口封じの観点からも、事件の真相に勘づいている小野但馬の身柄を拘束する反面、同じように真相を知る直虎を釈放する件も矛盾しています。

或いは井伊谷三人衆の中でも、近藤康用と菅沼忠久&鈴木重時では求めるものが違っていたのかも知れません。近藤は復讐、菅沼&鈴木は領土欲、そして、三人を結びつけていたのは井伊家に対する疑念。こう考えれば、彼らの一貫性のない行動も、その原因は最初から一貫性がなかったという結論で何とか納得できなくもない……かも?

 

 

4.仏門て何だっけ(哲学

 

井伊直虎「……地獄へ落ちろ、小野但馬!」グサー

小野政次「グエー、死んだンゴ」ガクッ

 

冒頭でも触れたようにあらゆる意味で想像の斜め上をいった小野但馬の最期。目の前で幼馴染が死ぬだけでもトラウマものの事案であり、小野但馬としては、

 

小野政次「おとわ、俺を見るな。『傷』になる」

 

と心配していたに違いありませんが、まさかの『ちょっと待ったー!』からの手ずからトドメ刺し。小野但馬が独り身の設定は今回のためにあったのかも知れません。小野但馬は直虎との信頼関係があるからいいけど(よかないけど)、流石に亥ノ助をグサーという展開はマズ過ぎるからなぁ。それでなくても、今回の顛末をなつさんが真相を知ったら、ヤバイことになると思うので。

 

 

 

 

 

 


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