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『龍帥の翼 ~史記・留侯世家異伝~』第二話感想(ネタバレ有)

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先回の巻頭カラーに続く、巻中カラーとなった『龍帥の翼』。カラー扉絵を捲った先に描かれていたのはガチムチのケツ野郎に年端もいかない女の子がムリヤリ服を剥かれるシーンという、なかなかにショッキングな画。嘘は書いていない。内容も第二話で博狼沙という、ちょいと早過ぎるんじゃないかと思える展開が地味にショッキング。もしかすると、本作は長期連載を想定していないのか? それとも、先回の川原センセのコメント通り、描きたいことが多過ぎて、全てが前倒しで進んでいるのでしょうか。尤も、先回今回と超増量頁構成なので、普通に三か月分の連載に換算すると適量なのかも知れません。今回のポイントは5つ。


1.ついてないヤツ

窮奇「黄石は女だぞ」

先回の予想通り、黄石はおにゃのこでした。まぁ、楚漢戦争のメインキャラクターで、この時点で赤ん坊となると虞美人くらいしか思い浮かばないので、自然におにゃのこという推論に行き着くわなぁ。勿論、黄石=虞美人は現段階では仮説にすぎませんが。一方、項羽になるんじゃないかと思っていた窮奇は先回の記述によると十九歳なので、項羽の生没年と照らし合わせると結構なズレが生じます。よって、こちらの予想はボツ。まぁ、多少の年齢的誤差は創作の都合で何とかなるものですが、項羽を描くうえで楚人というアイデンティティを除外するのは流石にムリなので、窮奇の出自を考えるとあり得ないでしょう。


2.ロリコン

窮奇「死を怖れない奴は結局死ぬ。死を怖れない奴と一緒にいたら、黄石もいずれ死ぬだろう」

呂家の大爺を思わせる説教をぶつ窮奇。先項で項羽にはならないという仮説を唱えたペン先も乾かないうちに何ですが、黄石を助けるために御自慢の鉾をツブしてでも虎を倒した窮奇の描写は、のちのちの項羽と虞美人の関係に繋がるのかも知れません。黄石のついでに助けられた張良。キャラクター的にはケンちゃん似の窮奇に対して、静流さんを思わせる張良ですが、流石に獣を倒したりはできませんでした。静流さんなら飛びかかってくる虎をキャッチして華麗にスープレックスを決めたでしょう。や陸鬼。


3.デカい(確信

窮奇「これが街か。なんだ、この大きさ」
張良「ま、巨きさに驚いているのはお互い様だろうね」


魯や斉の国都として知られる臨淄の賑わいに驚く窮奇ですが、臨淄の住人は窮奇の巨躯に驚いた模様。世に山東大漢(シャントンターハン)という言葉があるように、斉付近の住人は長身で知られていますが、その地でも窮奇は目を見張る存在のようです。当時の中国……というか、中世までの世界では見た目の押しが人物の器量を決めるという思想がありましたので、張良の『容貌婦人の如し』という史書の描写は、或いは当時の価値観では褒め言葉ではなかったのかも。
デカい割に活気がない臨淄。主人公の言葉を借りると、

張良「全部始皇って奴の仕業なんだ」

ということですが、張良の目から見た始皇帝の評価は割り引いて考えるべきでしょう。土木事業にせよ、阿房宮の建設にせよ、国土の整備と後継者の増産という意味で非常に重要な案件です。後述する博狼沙での暗殺未遂事件の要因となった天下巡遊も、ローマ五賢帝のハドリアヌスと同じく、自らの目で天下の情勢を確かめて、現地に適した政策を施行する目的であったのかも知れません。長城建設といい、天下巡遊といい、後世の史家の評価が厳しい点といい、始皇帝とハドリアヌスは共通点多いな。


4.逆転の発想

張良「始皇を世にある武器で殺そうとするから無理なのだ。窮奇、お前に合わせて武器を作ればいい」

暗殺界のコロンブスの卵とでもいいますか。始皇帝を殺しにゆくのではなく、向こうが出てきたところを、相手の手の届かない場所から攻撃すればいいという発想。そして、籠城している相手を正面から攻めるのではなく、何らかの形で誘き出して、その隊列が伸びきった時に中核を叩くという考えは兵法に通ずるものがあります。本作の張良が単なる口巧者ではない、作戦家としての資質が描かれた初めての場面。『海皇記』序盤のルガイ関の戦いを思わせますな。


5.カンタァクよりは強そう

窮奇「我は四凶の一、窮奇なり」

ここで有翼虎という伝説上の『窮奇』の姿と、冒頭の虎退治が意味を持つか! これは博狼沙を今月で描かなきゃ伝わらない伏線ですね。してやられた感満載。一方で谷というか、洞窟の先が行き止まりではなく、張良なら通れたというのはちょっと不満。これは棄てた……と思わせた虎革の下に身を潜めているというほうが策士っぽかった。『赤龍王』で張良がたてた策にもそんなのがありましたので。まぁ、あれは本宮センセの創作ですが。
この場面の窮奇で気になるのが次の二点。追い詰められて、敵諸共河に沈むという展開。これ、何となく項羽の最期に被るんですよね。まぁ、項羽は河に沈んでいませんが、何やら、窮奇の将来を暗示する描写に思えてなりません。やはり、窮奇=項羽となるのか。もう一つは窮奇の強さがどのレベルなのか。ガタイでは川原作品でも屈指の恵躰ですが、トゥバン・サノオでしたら、今回レベルの敵の数は正面から制圧できそうですし、正直、今までの川原作品の中で、どの順位にランクインさせたらいいか迷っています。河に飛び込んだのは自身の死を偽装する=張良への追跡の手を絶つ狙いもあると思いますが、そこまで頭が回るキャラでもなさそうだしなぁ。取り敢えず、現時点ではディアブラスよりも若干劣るくらいかなと思って読んでいます。

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