今週の『真田丸』のラ・テ欄。
「決戦上田城! これぞ天下に名高き真田兵法~徳川7千VS真田2千~愛しき妻涙の六文銭旗~」
長い。『決戦』でいいだろ。
先回は中途半端で意味不明なサブタイでしたが、今回はムダに長かった。第1クールのラストは視聴者が最終回まで見続けるか否かを計る大事な回ですが、このサブタイは逆効果っぽい。ラ・テ欄関係者の奮起を求めます。しかし、一年作品の1クールラストで『決戦』というサブタイも珍しい。最終回のサブタイはどうなるのか心配です。個人的には『真田』になると予想。
さて、肝心の本編は善くも悪くも三谷さんの描く合戦回でした。開戦に至る流れは文句なしで面白いのですが、戦いの火蓋が切られるとゴチャゴチャとした流れでズルズルと終わってしまったといいますか……先回までの盛りあがりが半端なかった分、視聴する側のハードルが高くなってしまったのかも知れません。第二次上田合戦、大坂冬の陣、大坂夏の陣での巻き返しなるか? 今回のポイントは5つ。
1.○ねばいいのに
直江兼続「御武運お祈り致す」
兼続の指令で海津城に集結した上杉の援軍百名。新進気鋭の若武者と百戦錬磨の熟練兵が程よくミックスされた、実に頼もしい陣容ですね。要するにGGEとガキの寄せ集m【斬り捨てますか?】。上記の兼続の台詞も本音を訳すとあと腐れがないように死んでこいという意味に他なりません。や兼鬼。上杉には単純に援軍を割く余裕がないのも確かですが、ここで精兵を与えてしまった場合、
真田昌幸「おっ! 手元の兵力が増えたやんけ! せや! 家康と和睦して上杉を北信から追っ払ったろ!」
とロクでもないことを企みかねないスズムシの存在を考慮したのでしょう。尤も、先回の記事に頂いたコメントによると、上杉は信繁を返す代わりに昌幸の正室を人質として海津城に招聘しているらしいので、寝返られる心配はない……いや、でも、スズムシのやることだからなぁ。真田は北条や徳川に対する緩衝材になるが、緩衝材自体が意思や武力を持つのは好ましくない。真田が滅んでも北信支配の不確定要素が排除される。どちらに転んでも上杉は損をしないというのが兼続の思考でしょう。加えて、兼続個人も御屋形様を誑かす真田には消えて欲しいと思っているので、今回のような判断を下したものと考えられます。や兼ホ。
2.ドーン!
真田昌幸「では、策を伝える。七千の軍勢に真正面から挑んでも勝ち目はない。だが、この七千もこうやって……(ネチョネチョ)……こうやって……(ベトベト)……こうやって……(ネバネバ)……細く長く伸ばしていけば……(グチャグチャ)……僅かな兵でも容易く切り崩すことができる……(ドン! ドン!)……容易くこうして切り崩すことができる……(バン! バン!)……これをやる!」ハァハァゼェゼェハァハァゼェゼェ
出浦昌相「お、おう……」
高梨内記(えぇ……)
真田信幸(このでくのぼうは何をいっているんだ?)
どう見てもキャシィ塚本です。
本当にありがとうございました。
見ている側が不安になるスズムシ昌幸の作戦解説。捏ねた餅をバンバンと叩きつける姿は、まさに四万十川料理教室を彷彿とさせます。当該場面でお餅はスタッフが美味しく頂きましたというテロップが出てもおかしくないレベルでした。徳川の大軍相手に一番不安になっているのが昌幸本人なのでしょう。恐らく、自分でも自分が何をいっているのか理解できていないか、いいたいことはあるけれども、それを言語化できないほどに追い詰められていると思います。一言でいうとテンパっている状態。
そんな昌幸が調子を取り戻す契機になったのは信繁の帰参。何故、信繁なのかは判りにくかったですが、昌幸にとっての信繁は自分の思考をまとめる際に必要不可欠な相談相手なのかも知れません。漫画家にとっての編集者のように、一人で考え込むのではなく、誰かと意見を交わすことでアイデアが整理されるケースは間々ありますので。その証拠に信繁到着以降の軍議は立て板に水を流す如き、誰でも理解できる流暢な内容でした。昌幸=ヤン、信繁=ユリアンと考えると納得かも。ヤンもユリアン不在の間は作戦に精彩を欠いていましたので。
3.私見・第一次上田合戦
主人公の『高砂』で幕を開けた第一次上田合戦。てっきり、
真田信繁「やぁやぁ、鈴井貴之鳥居元忠!」
みたいな流れで始まると思っていました。このシーンだけでいいから、ヤスケン出てくれると嬉しかったな。『対決列島』の冒頭のような真似されたら、本作の上杉景勝でも越後から全力の助走をつけて斬りかかってくるでしょうし。徳川軍が真田の挑発に乗る理由として、これ以上の画はありません。
さて、今回のメインである第一次上田合戦について、主観に拠る補足&感想を述べていきましょう。作中では徳川軍の深入りは信繁の挑発に乗せられた結果として描かれていましたが、それ以上に真田勢の偽装退却の巧緻さがあったと思います。単純に挑発されたという理由で退路を確保せずに敵の本拠地に足を踏み入れるほどに、徳川勢も馬鹿ではありません。殲滅戦に至る追撃と思ったからこそ、徳川軍は深入りしたのです。
次に作戦内容。相手を城の懐に誘い込み、大軍の機動力と打撃力を奪うのが昌幸の戦術ですが、あまり大軍を引き込み過ぎると自軍が崩壊する恐れがあり、逆に引き込んだ敵が少ないと、相手の行動に制限を加えるのが難しくなる。今日風にいうと、
袋が破れたら失格の詰め放題バーゲン
のようなもの。詰め込み過ぎると袋が破れ、早目に切りあげると利益が出ないジレンマ。上田合戦は戦術の巧緻さよりも、この二律背反のバランスを成立させた昌幸の戦局を見る目の確かさをクローズアップするべきでしょう。
そして、上田城から退却する徳川勢の側背を叩いた我らがお兄ちゃんの動き。砥石城にいたお兄ちゃんが都合よく側面を突けるものかという疑問があるかもですが、現地に住んでいた人間の感想をいわせて頂くと上田は意外と凹凸の多い土地。駅正面のメインストリートも結構急な坂道です。お兄ちゃんは砥石城を出たあと、地形の凹面を選びながら、ひっそりと徳川軍の背後に回り込んだものと思われます。
そこで、肝心のドラマですが、こうした点が結構バッサリと排除されていた感アリ。信繁の挑発とキルトラップがメインでした。それはそれで如何にも講談軍記ものらしいといえますが、個人的には俯瞰で戦場を把握する楽しみが欲しかった。まぁ、その辺は事前に描かれた昌幸による碁石を用いた作戦計画図で脳内補完できましたとはいえ、実際の映像は餅を使った作戦計画のほうのモニョッと感が出ちゃいましたね。思い切って、コーエー的CGMAPで戦況を解説してくれてもよかったのかも。
4.攻守逆転
「お逢いするは、徳川を追い払ったあとに取っておきます」
「お乳をやってきます! 赤ん坊は待ってくれませんから!」
「この子のために戦いにいくの。次のお乳までに帰ります」
という台詞を三度口にしながらも、その都度生還を果たした梅ちゃん……でしたが、最期の最期、全体の戦局とは殆ど関係のない戦いに巻き込まれての退場。徳川軍の一二〇〇に対して、僅か五十という戦果が謳われる上田合戦ですが、その五十の中にメインキャラクターが入ると泣けるものがあります。合掌。
しかし、戦場を駆け回る梅ちゃんに些かイラッとしたのも事実。別に梅ちゃんの所為で誰かが死んだり、作戦がダメになったりした場面はなかったとはいえ、そもそも、梅ちゃんの場面は必要なのかという根源的な疑問が沸き起こってくるのも否定できません。戦国の女性が自ら武器を手に戦うのは珍しい話ではないのですが、先回の感想のラストで触れたように、今回は純粋に昌幸の作戦指揮に重きを置いた内容に終始して欲しかったなぁ。
一方、三谷さんが敢えて今回のような内容を描いたことに何かしらの意図を感じてもいます。別に何も悪いことをしていないのに、見ていると微妙にイラッとする言動を慮るに、今回の梅ちゃんは今までのきりちゃんと同じ役割を背負っていたのではないでしょうか。要するに今まできりちゃんがやってきたような、ダブルヒロインの相手側の好感度をあげるための描写であったのかも知れません。或いは次回辺りに何らかのフォローがあるのか。
実際、今回のきりちゃんは何時もにもましてウザさ控え目。戦場に戻ろうとする梅ちゃんを窘めたり、罠に嵌った徳川軍を見て、
きり「これは戦闘と呼べるものではありませんな。一方的な虐殺です」
とCV:羽佐間道夫で脳内再生できそうなカッコいい台詞を口にするなど、なかなかの常識人っぷりを発揮していました。まぁ、赤ん坊を連れて戦場跡に出てくるのは兎も角、重臣の息女が主家の家紋を覚えていないというのは流石にどうかと思いますが。
そんなワケで色々とモニョッとする感情を抱えつつも、自分の中で梅ちゃんの描写には何とか折り合いをつけた次第。まぁ、それを第一次上田合戦の最中にやる必要があるのかといわれると甚だ疑問ですが、もしかすると、作中の梅ちゃんを思わせる史実や伝承が文献に残っているのかも知れません。何せ、
「第一次上田合戦で幸村も戦った? 『不参加』通説覆す学説浮上」
こういう学説が出てくるくらいなので、迂闊に批判できないんだよなぁ。序盤のGGE&ガキの援軍も史実らしいし。マジかよ、上杉最低だな。
5.MVP
佐助。異論は認めない。
特に後半は佐助が出てくる度に爆笑してしまいましたよ。だって、開戦時には上田城にいた筈の佐助が神川の信繁と一緒に徳川軍を挑発して、一部始終を砥石城の信幸に報告。更に上田城に戻って昌幸に戦況を伝えるや、梅ちゃんを助けつつ、次の場面で神川上流の出浦さんと共に堰を切って落とす。最後は信幸・信繁兄弟と共に勝鬨&法螺貝を吹くとか。上田平を常人では成し難い速度で駆けずり回っておりました。これは確実に意図したネタでしょう。忍者だからね。仕方ないね。寧ろ、もっと色々な場面で出してネタ性を強調して欲しかった。
次回から第二部突入。治部と刑部のロマンチコンビとか、三谷さん的見所が多そうですが、一番印象に残ったのは宗匠。文枝さん、イケるやん! 雰囲気あるやん! ここ数年の大河ドラマでは単なる人間ミキサーでしかなかった宗匠ですが、脇役の描写に定評のある三谷作品ですので、これは期待できそう!
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