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荒川弘版『アルスラーン戦記』第32章『戦士の帰還』感想(ネタバレ有)

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別冊少年マガジン 2016年3月号 [2016年2月9日発売] [雑誌]/講談社

¥価格不明
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雑誌の表紙&巻頭カラーというダブルコンボで描かれたアルスラーン一味ですが、今回も本編には全く登場しないままで終わりました。いいのか、これ。まぁ、今月号のボダンや王弟殿下の鬼気迫る諸々の表情を見ていると、荒川センセも楽しんで描いているとしか思えないので、よしとしましょう。でも、アニメの第二期が始まっても、原作のストックがルシタニアのオッサン連中の寸劇しかないのは色々と考えもの。今回のヒキから見ても、少なくとも、次回の前半はサームがメインになるでしょうからね。
ちなみに表紙には『七人いれば敵なし!』というアオリが入っていましたが、原作の『征馬孤影』ラストでアルスラーン一味のコアとして数えられていたジャスラントが何気にハブられていました。登場してないからね。仕方ないね。もともと、殿下の護衛役としてはダリューンという完全上位互換が存在するので、ジャスラントは影が薄いんだよなぁ。尤も、ジャスワントという護衛が現れたことで、ダリューンが最前線の指揮に集中できるようになったのも確か。ジャスワントはアルスラーン一味が個人的な共同体から、歴史に名を馳せる一軍閥として成長する際に欠かせない存在であったといえます。ナルサスは政戦両略の発案で忙しいですし、女性のファランギースは四六時中アルスラーンの傍に侍るワケにもいかない。エラムとアルフリードでは些か役者不足。ギーヴ? 貴方は十四歳の多感な少年の護衛に『あんな男』を推して平気でいられるのですか? まだしも、ポプランのほうがマシなレベル。アイツ、少年少女からの信頼は篤いので。
今回のポイントは3つ。


1.逆転宮廷

荒川弘「今月は女性が一コマも出てない(死体をのぞく)

その死体もシーツを被っていたのですが。

先回以上にオッサンの加齢臭が立ち込める内容になった今月号。先回の『真田丸』も、ムサ苦しいオッサン同士がお互いのホッペについたコメツブを食べあうという、誰得のイチャラブ展開が描かれたことから察するに、時代はオッサン萌えがトレンドなのかも知れません。流石に売れっ子漫画家の荒川センセは最先端の流行に敏感ですね。
前半の内容はヒルディゴ殺害に絡むルシタニア陣営の内紛がメイン。『オマエが殺したのか!』とか『被害者の日頃の行いが悪かった!』とかいう台詞や、お互いを面と向かって指差しながら批判しあう様子は『逆転裁判』を思わせるシーンの連続。ボダンや王弟殿下の台詞の出だしに『異議あり!』という枕詞がついてもおかしくありませんでした。『逆転裁判』と異なる点は誰も真実の追及には興味がないこと。つくづく、ルシタニアの宮廷は腐っていますね。個人的にはヒルディゴが『改宗希望者』の女性と同衾中に殺されたことを告げる王弟殿下の表情が最高にイカしていました。これは間違いなくCV・子安武人。脳内再生余裕過ぎます。実をいうと王弟殿下の吹き替えには、もう少し年長の方を予想していたのですが、このコマを見ると子安さん以外にあり得ないのがよく判りました。


2.カット

ギスカール「落ち着かれよ、兄者!」イライライライライライライライライライライラ

『おまえが落ち着けよ』といいたくなる王弟殿下の苦渋に満ちた表情が最高にイカしていました。これは間違いなくCV・子安武人。大事なことなので二回いいました。
この場面で描かれた神旗の争奪戦。ルシタニアは平民階層の教養習熟度が低いため、パルス遠征に際しては利害や大義を説くのではなく、素朴な宗教心を刺激することで彼らの戦意を煽っていました。イノケンティウスを陣頭に立てても誰もついてこないのは確定的に明らかである以上、余計に宗教勢力への依存度は高かったものと思われます。素朴な価値観を持つ民衆の信仰心を煽ることで戦場に駆り立てる構図は作中のみならず、近現代社会でも普通に見られる現象ですね。人類は暗黒の中世から何一つ学んでいないのでしょう。
ちなみに原作では、ヒルメスが斬った聖堂騎士団の構成員に王弟殿下の腹心モンフェラートの実弟がいた所為で更なる一悶着がありましたが、これは原作でも特に回収された伏線ではなかったので、これをカットした荒川センセのセンスが光りました。次回辺りでシレッと挿入されるかも知れませんが、少なくとも、今回の内容に入れるとテンポが悪くなるのも確かですからね。だいたい、これ以上の揉め事が起こったら、王弟殿下がガチで過労死しちゃうかも知れませんので。


3.演技

ヒルメス「どいつもこいつも! とんだ無駄足だ! 馬鹿馬鹿しい!」
フスラブ「あの……お疲れのところとは存じますが……」
ヒルメス「なんだ!」ギロッ
フスラブ「ひぃっ、申し訳ありません!」


アルスラーンの襟首を掴む寸前で王都に呼び戻された挙句、完全なる無駄足に終わったことで荒れるヒルメス殿下。気持ちは判らんでもありませんが、アルスラーン一味、特にナルサスを取り逃がした責任はヒルメスにもあるので、あまり、周囲に当たるのも考えものです。のちにアルスラーンも似たようなシチュエーションで本拠地への帰還を余儀なくされたことがありますが、その際は物事のいい面を見ることで部下からの信頼を篤くしていたことを思うと、やはり、統率者としての器はアルスラーンのほうがu【ザンデに粛清されました
この場面で何気に印象に残ったのは怒れるヒルメスに対するフスラブのリアクション。コイツの正体は【ネタバレ厳禁です】なワケですけれども、今回の描写を見ているとガチでヒルメスの八つ当たりにビビッているようにしか思えません。フスラブであることを演じようとするあまり、自分本来の性格まで見失ってしまったのでしょうか。まぁ、演じるということは本来、そういうものなのかも知れません。ある意味、フスラブの中の人はパルス随一の役者なのかも。

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