冠城亘「どんな容疑で令状取るっていうんですか?」
杉下右京「さしずめ、盗撮容疑か何かで裁判所に令状を申請するんじゃありませんかねぇ」
冠城亘「汚くありません? そういうのって?」
杉下右京「証拠の重みから考えれば、ナリフリ構っていられないということでしょうかねぇ。まぁ、僕はそういうやり方は好みませんが」
そうだな。おまえはもっと汚い手を使う奴だな。
法的根拠のない家宅捜索令状を申請したり、オトリ捜査で犯人の尻尾を掴んだり、上記の手口が可愛く思える類の違法捜査の常習犯が何をノタマッテいるのか。深夜にも拘わらず、画面に向かっておまえがいうなと大声で突っ込んでしまいました。若いモンへの影響を考えずに、そういう手口を繰り返した結果がダークカイトを生む一因になったことを本人は自覚するべきでしょう。尤も、今回のヤリクチは搦手とはいえ、特に違法捜査に類する内容ではなかったのも確か。杉下もやりゃあできるんですね。何故、常日頃からこういう穏便な手段を取らないのか。やはり、根本的に他人をひっかけるのが好きなのでしょう。それはそれで、名探偵の必要条件ではあるのですが。
今回も先回同様、Aパートに全体の半分近くを費やすという偏った構成でしたが、比較にならないほどに面白かった。
内村完爾「流石だ! 見事としかいいようがない! 優秀なる君たちに惜しみない拍手を送ろう! この短時間に自白を引き出すとは……しかも、被疑者全員から!」
中園照生「三人とも犯行を認めさせてどーする! 犯人は一人だけでじゅーぶんだ!」
の件といい、月本さんにデートを申し込んだ冠城を『女の趣味が悪い』と評したアナ雪といい、屁理屈も理屈の親戚という自分の言葉に足元を掬われる杉下といい、目撃者をハメるために杉下が用意した写真の三人といい、ラストで真犯人のいる取調室に捜査官全員が集まるシーンといい、終始笑いっぱなしでした。自白の強要とか、目撃者の他人の不幸で飯がうまいを地でいく夕飯描写とか、市民の捜査協力が当たり前という警察の姿勢に対するジメッとした批判とか、それぞれのテーマで一本デッチあげられる題材をふんだんに盛り込んでいるくせに、肝心の本編は社会派でも何でもない内容というのが凄い。いやらしい構成ですね。
しかし、大いに笑い、大いに楽しませて貰った今回の『相棒』ですが、後味という点では近年屈指の胸クソ回であったのも事実です。理由は勿論、現在の相棒・冠城亘の言動。そのほうが面白そうだから&杉下の活躍が見たいからという理由で、冒頭に記した令状申請をツブすのは如何なものか……いや、法律的には間違っていないんですよ? 寧ろ、イタミンたちがやろうとしたことのほうが問題あるのは杉下が指摘した通りです。冠城本人も事件解決に協力することでオトシマエはつけている。でも、この猛烈な胸クソ感は何でしょうか。恐らく、今回の冠城からは真実や法律を無視してでも貫きたい意志が感じられなかったからでしょう。杉下の場合は真実の追及、イタミンの場合は犯人逮捕という、己の中の確固たる価値観があるから、彼らの多少の(?)の悪行も納得はできないにせよ、理解はできる。ですが、今回の冠城には神戸のように己の地位や名誉を擲つ覚悟で杉下の心を動かす気概が見えないので、徒に事態を混乱させて楽しんでいるように思えてしまう。目撃者の青木年男も大概な為人でしたが、それ以上に印象悪かったのが冠城君でした。好感度ダダ下がり。
尤も、あまりにもアカラサマなネガキャンなので、もしかすると、製作者のミスディレクションなのかとも思います。杉下が乗り出したほうが面白いという冠城の主張は彼の照れ隠しで、法的に問題のある令状申請は受け入れられないという、法務省官僚の立場がメインの動機であったのかも知れません。そういえば、ラストシーンのお説教も具体的な内容が描かれませんでしたが、もしかすると、冠城の小細工に対する小言ではなく、
杉下右京「月本幸子さんに手を出したら君でも許しませんよ……というか、トンデモない目に遭いますよ」
という釘刺しの可能性もあり得なくはない。全体的に受け手側の解釈の余地が広い内容であったと思います。
最後に冠城君と同等以上に、本作を胸クソ系の話に仕立てた栄えある功績者、青木年男について。キャラクター的には面白かったですが、彼の父親が警察官というのは最後のシーンまで伏せていたほうがよかったかも。警察嫌いの具体的な理由がないのは私的には◎。別に特命係の活躍で青木が警察を見直すという話でもありませんので、この辺は下手に掘り下げないのが吉。好き嫌いは畢竟、理屈よりも感性に基くものですからね。しかし、証拠隠滅は犯人ではなくても問われる……というか、犯人は問われないのか。それはそれで何か納得できないものがありますね。その点も本編の後味の悪さに通じるものがあります。法律的に正しければ、何をしてもいいことにはならないというのが、今回の主題なのかも。
さて、次回は相棒に三択の女王が登場! しかも、脚本は山本むつみさんときたもんだ! 『見知らぬ共犯者』『人生最良の日』とウェットな話が続いた山本さんですが、予告を見ると今回も同じ系統っぽい。そして、サブタイトルは『右京の同級生』ときたもんだ。こりゃあ、竹下さん、十中八九タイ○ホされるわ。今までの統計でいうと『右京の~』というタイトルでゲストキャラクターが罪を犯していない確率は0%ですので。
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『相棒14』第15回『警察嫌い』感想(ネタバレ有)
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