杉下右京「貴女は法に携わる者でありながら、法を破るという最も許されざる過ちを犯したんですよ。いいですか、貴女に言うまでもありませんが、その罪は……極めて重いですよ!」(`・ω・´)
~30秒後~
甲斐享「そのカード……杉下さんのケータイのだったんですね」
杉下右京「あくまで非常手段です」(`・ω・´)
不覚にもクロワロタwwwww
他人に法令の順守を説いておきながら、自らは目的のためには手段を選ばない矛盾をシレッとやってのけるのが杉下右京の本質に他なりません。上記の杉下の言い分が正しいとすれば、最も許されないのは杉下本人でしょう。本ッ当にタチが悪い。杉下の場合は純粋なる正義の執行という大義名分があり、凡百の犯人たちのような自己保身の意志はカケラもないのですが、それでも、今回の犯人が真相を知ったら、絶対におまえがいうなと突っ込んだでしょう。更に上記の誘導尋問が法廷で取り沙汰されれば、真犯人はヤリ手の弁護士先生ですので、こうした綻びからクロをシロと言い包める程度は簡単にやってのけそう。武藤弁護士の初登場回&今回の被害者のように無罪放免という可能性もなきにしもあらず。杉下は犯人さえ捕まられれば、それでいいのか。官房長が評したように組織人としては明らかな欠陥品ですね。カイト君、絶対に見習ってはいけません。まぁ、杉下もクドいほどに『あくまでも非常手段』と繰り返していたので、見習えといっているワケではないと思いますが、教え子とは教師の言うことではなく、やることを見て育つものだという教育の基本を忘れていませんか、杉下警部。
今回はミステリや社会派の要素に加えて杉下の正義の暴走という『相棒らしさ』を感じさせる、近年のシリーズでも類を見ない名作でした。脚本が『相棒』初挑戦で『棋風』という異色作を送り出した金井寛さん、監督が御馴染みの和泉聖治さんなので、この『相棒らしさ』は納得。海外の不動産のカタログも、被害者が真犯人に誘い出される動機づけになっていました。そもそも、一事不再理で起訴されないとはいえ、あんな暴露本書いて、日本に居続けられるワケがないので、この細かい設定は嬉しかった。ミステリ要素は密室トリックの謎解きをあれこれと想像して楽しめましたよ。被害者が自分のアリバイを作るつもりで、実は真犯人のアリバイを作っているというのはミステリの常道手段。島田荘司の【ネタバレ厳禁です】とかね。社会派要素は、ロクにニュースソースの裏取りもせずにセンセーショナルな記事を世に送り出したツケが巡ってくるジャーナリストという構図でしょうか。
ただし、真犯人が事件を密室殺人にした動機が些か不明瞭でした。完全犯罪を目指した密室殺人トリックという言葉ほどに矛盾を孕んだ表現はありません。何故ならば、殺人という段階で密室にする意義がないんですよ。密室を装うからには、死因は事故か自殺か自然死に見せかけなければ意味がない。それゆえ、近年のミステリにおける密室殺人とは、犯罪者の美学か、誰かに罪をなすりつける目途か、偶然に発生した状況か、切羽詰まった犯人の悪あがきというケースが多い。何れにせよ、密室になる必然性が重要なんですね。今回は悪あがきに近いのか。
あ、それと被害者が裏口から外出したという設定なんですが、普通、正面にあれほどの防犯ビデオを設置しているマンションであれば、裏口でもキーを差し込んだ時刻が記録が残る程度の設備があってもおかしくないと思います。この辺にツメの甘さを感じました。ちなみに被害者が履いていた靴が帰宅時と違う、という最大のヒントを出された時の私の推理は、
・アテにならないニュースソースという今回の社会派のテーマ
・元ネタそのものが偽装されている可能性がある
・実は提出された防犯ビデオは事件当夜のものではない
・そうか、俺たちはとんでもない思い違いをしてたのかも知れない
・ど、どういうことだ、キバ○シ?
・実は管理人が犯人だったんだよ!
・な、何だってー?
という内容でした。で、でも、これはこれで筋が通っているよね? ね? あの管理人さん、微妙に台詞も顔出しも多かったしさ。
他に細かい点では弁護士の事務所で三年前の事件記録を洗っている特命係の二人の行動が好対照でした。杉下は一心不乱に記録に目を通しているのですが、カイト君は女弁護士先生のほうにチラチラと視線を送っています。やはり、年上好みということなのか。あとは捜査一課の二人が、カギを失くしたという住人の勘違い証言に振り回されるのも地味によかった。ああいう些細な可能性の芽を一つ一つ潰していくのが本当の捜査というものです。どんなに特命係がカッコよく見えても、実は捜査一課の支えがあってこそ、一時間で事件が解決できるんですよ。
その捜査一課に次回、三浦さんに変わる新たな人員現る? しかも、女性! イタミン、これはチャンスです! まぁ、十中八九、犯人か、犯罪に関わった存在で一回で退場させられそうな気がしますが。
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『相棒13』第3回『許されざる者』感想(ネタバレ有)
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