チャーン♪ チャチャチャチャチャラララーン♪
チャラララララーン♪ チャーン♪ ジャジャジャジャジャーン♪
ジャーン♪ ジャジャジャジャジャーン♪
三島弥彦「皆さん、こんばんは! 『いだてんどうでしょう』です。 大型海外企画第一弾『初めてのオリンピック』今夜はその第二夜! どうにか新橋を出発した我々でしたが、何と肝心の嘉納治五郎先生が駅のホームで足止めされるという事態が発生! 一体、嘉納先生に何があったのでしょうか? 一方、日本海を渡り、ストックホルムを目指す我々に早くもシベリア鉄道の洗礼が襲い掛かります。そして、あの伊藤閣下受難の地であるハルビンでは金栗君がパスポートを紛失! 我々は果たして、無事にストックホルムに到着出来るのでしょうか? 『初めてのオリンピック』第二夜。どうぞ、御覧下さい!」
大森安仁子「ドーモ三島サン、知ッテルデショウ? 大森安仁子デゴザイマス。オイ、味噌スープ置イテカッンナ? 残サズ飲メヨ!」
~明治四十五年五月十六日 東京・新橋~ チャッチャララチャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャララチャッチャッチャッチャッ♪
自分で書いておいておきながら違和感なさ過ぎて震える。
先週の感想記事では次回予告が完全にシベリア鉄道版サイコロの旅を思わせる内容であったため、壇ノ浦レポートならぬ、ハルビンレポートを期待すると書きましたが、想像以上に『水曜どうでしょう』とリンクするネタが多かった。流石に『ケツの肉が取れる夢を見た』という台詞はなかったものの、ツインルームの四人使用とか、ヒゲ(ドイツ人)のイビキで寝られないとか、料理の基本が完全に欠落しているピストル安仁子とか、想定以上のどうでしょう劇場で個人的にはバカウケでしたが、一方で『どうでしょう』を知らない視聴者は置いてけぼりじゃあないかとの不安に陥ったのも確かです。尤も、深夜録画実況にお付き合い頂いた方も『どうでしょうは知らないけど面白かった』と仰っていたので、こうした珍道中を傍から見る楽しさは予備知識のあるなしに拘わらず、変わらないのかも知れません。そんな訳で今回の感想記事は『どうでしょう』ネタ多めの構成。そりゃあ、乗るしかないだろ、このビッグウェーブに! まぁ、一応『どうでしょう』ネタ以外の視点もあります、念のため。そんな今回のポイントは4つ。
1.輪を作れ!
金栗四三「ば……狭か!」
三島弥彦「ウチの風呂より狭いな」
金栗四三「風呂より?」
大森兵蔵「金栗君はそっち、三島君はこっちだ」
三島家の風呂よりも狭い空間にバカ笑いとイビキのやかましいヒゲ(ドイツ人)と一緒に放り込まれた金栗&三島。どう見ても魔神です。本当にありがとうございました。二等客室をキャンプ地とする! これでことあるごとに『甘いもの対決』を挑んできたら完璧でしたが、流石にそこまで期待するのは御門違いというものでしょう。何気に『三島家の風呂は二等客室よりも広い』という情報も驚きですが、何せ、今日のオリンピック選手団の待遇とのギャップが多き過ぎる所為で、三島家の豪勢さが比較対象にならなく思えてしまいます。思えなくない? このシーンを見た『どうでしょう藩士』の誰もが、
金栗四三「僕はねぇ、大森くぅん、オリンピックに出る男だよぉ。この作品が放送されている時代ではねぇ、大規模な選手団と共に鳴り物入りで現地入りするレベルの男だよぉ。しかし、今の時代ではだ! 恐らく、日本の徒競走に誰よりも僕が貢献しているであろう僕がだ! ツインルームの四人使用!」
の場面を脳内変換に違いありません。更に先週の感想で触れた、
三島弥彦「寝れないんだよぉ! シベリア鉄道でもう寝れないんだよぉ、俺たち!」
金栗四三「これ、編集されて、モスクワで降りて、ストックホルムのマラソンが本番みたいになるんだよ! 違うんだよ! 本番は寝てる時なんだよぉ! 寝れないんだよぉ!」
のハルビンレポートもキッチリやってくれるという有難さ。ありがてぇ、ありがてぇ……。
2.ウチヌクゾー!
金栗四三「ダシは?」
大森安仁子「Dash it(くそったれ)?」
金栗四三「ダシば! ダシば取らんといかんのですよ、味噌汁は! これはお湯に味噌ば溶かしただけでしょ! ねぇ?」
三島弥彦「いや、僕は作ったことないから……ただ、これは確かにまず……」
大森兵蔵「オイシイよ(威圧)。安仁子、凄くオイシイ。そして、美しい(ニッコリ)」
ろくすっぽ……というか、完全にダシを取らない味噌汁をドヤ顔で四三&弥彦に振舞う安仁子さん。マジでピストル大泉の再現。ダシを取らないオソマ汁でヒンナヒンナするのはアシㇼパさんだけだぞ。そして、こういう人にかぎって、具材や調理方法に凝ったりするんですよね。特に安仁子さんは前世(来世?)がマッサンの人なだけにフランベ用のアルコールを恒常的に持ち歩いている可能性大。或いはアルコールランプの中身がウィスキーではないかと思います。このムダなフランベ臭! 兵蔵さんも流石にダシのない味噌汁に疑問を抱かないのはどうかと思いますが、この時点で既に兵蔵さんは病膏肓に入っているので、単なるバカップル描写というよりも、身体機能の低下で味覚が麻痺しているのかも知れません。そう考えると些か闇の深い場面ではあります。勿論、オリンピックに出場する程の健康体を誇る金栗&三島には関係のない話で、食事の度に、
三島弥彦「何で……何でこんな辛い目に遭わなきゃいけないの……?」
大森安仁子「何デソンナニ泣イテルノ? マダマダ帰レナインダヨ、日本ニハ! 今カラ泣イテドウスンノ、三島君! 馬鹿ジャナイノ? アト何日アルト思ッテイルノ? 泣イタッテ誰モ助ケニ来ナイヨ、コンナトコマデ! ホラ、食ベナ! コレシカ食ベルモノガナインダカラ! コレヲ食ベナイト死ヌンダヨ!」
と罵られているかと思うと哀れではあります。本編後半の、
「大森氏の体調、回復の兆しを見せず。遂に安仁子さんが自炊の中止を申し出る」
の件は正直、四三君も弥彦君も生き延びたとの思いを禁じ得なかったでしょう……というか、史実は兎も角、本作の兵蔵さんの病状が悪化したのは安仁子さんの料理に原因があるのではないでしょうか。どう贔屓目に見ても、安仁子さんの料理はピストル大泉のエビチリレベルにしか思えないからなぁ。
それはさて置き、この場面では兵蔵が四三君に『人前に出る時は如何なる場合も正装で日本人としての振る舞いを忘れるな』と諭す場面が重要。常に国際的な視線に重きを置く当時の時代性の表現であり、同時にそうした視点を失って以降、日本は国際社会からの孤立と国家としての凋落を辿る訳で、幻の東京五輪を描く以上、この点は避けて通れないといえます。コメディの中でも重要な要素を書き洩らさなかったことは高評価。
3.一枚目が沼田という『真田丸』に繋がる因縁
池辺幾江「朝はこんタライにその井戸から水ば汲んできて、顔ば洗い終わるまで、こがんして持っとらんといかん」
池辺スヤ「お義母さんが?」
池辺幾江「アンタが! おるが顔ば洗うまで!」
なんだ、タダの綾瀬さんか。
『八重の桜』や『精霊の守り人』であんだけハードなアクションやっておきながら、未だに天然系キャラがしっくりくる綾瀬さんって恐ろしい。『海街diary』では母子の関係を演じた御両名ですが、今度は嫁と姑かぁ。大竹さんも『海街diary』で共演した樹木希林さんの系譜を受け継ぐ、異様な存在感を放つ個性派ポジを着々と固めつつあるようにお見受けしました。
そんなスヤさんの元に届いた四三君の絵ハガキ。ユーラシア大陸絵ハガキの旅ですね、判ります。二枚目に凌雲閣の絵ハガキを選んでしまい、
嘉納治五郎「何とかインチキ出来んのか?」
といわれてしまうのですね、判ります。そして、
金栗四三「各自、鈍った身体をほぐす。それが済んだら最早することなし、話題もなし」
古今亭志ん生「人間ってぇのはどんなに気の合う同士でも、四六時中顔を突き合わせてりゃギスギスしてくるもんですな」
の件は『どうでしょう』視聴者のわかりみが半端ない。あの弥彦もジャニーズ的に大丈夫なのかと心配するレベルのアヘ顔を披露する始末です。そんな弥彦も終盤では兵蔵の病状を慮り、慣れない異国での汽車泊やオリンピックへの不安で疑心暗鬼&人間不信に陥りかけた四三の自信回復の後押しをしたうえ四三のためだけのTNGコールまで披露するという人格者っぷりを披露。自分の愛車に立小便をかました相手へもファンサービスを欠かさない、まさにタレントの鑑ですね。尤も、次回は四三君と三島天狗によるくんずほぐれつのベッドシーンがあるので、この時点で既にモーションをかけている可能性も否定出来ません。詳細は公式HPの映像を見て頂ければと思います。これは金栗で、ああ、こっちは三島ですね……何だこれは、たまげたなぁ。次回のサブタイは『真夏の夜の夢』ですが、どこかに淫の文字を入れ忘れたのではないかと邪推してしまうのも止むを得ないでしょう。ウィアーオールメン。
4.今週の無茶振り理不尽ホラ吹きおじさん
嘉納治五郎「私が行かなくてどうする? 団長だぞ! ジャパンチームリーダー! ジゴロー・カノー!」
一方、官員という立場上、おいそれと長期海外出張の許可が出ない&内閣交代の事務手続きの不備で、渡航許可が下りずに日本に留め置かれた治五郎おじさん。この辺、史実の内閣交代と時期的に一致しないので、史実至上主義ではない私でも、些か減点材料か。個人的には無茶振り理不尽ホラ吹きおじさんは借金取りに追われる禁治産者なので出国不能なのではないかと思っていました。史料に描いていないことは幾らでも想像を広げてくれてもOKですが、キチンと史料にある経緯は順守して欲しいと思います。
一方でシベリア鉄道の建設意義を描いているのは高評価。
福田「そもそもシベリア鉄道を通したロシア人の目的は? 野口!」
野口「はい! 貿易ルートの確保とアジアへの侵略であります!」
福田「ばってん、我が日本軍は日露戦争に勝利を収め、奴らの目論見ば一蹴した! 我らが金栗四三君擁する日本選手団は今、このシベリア鉄道を逆走してだな、今度はスポーツでヨーロッパに攻め込もうとしている!」
学生一同「うおおおおおおおお!(歓喜
この件は単純に当時の政治状況を描くに留まらず、近代オリンピックというものが如何に高邁な理想を掲げようとも、現実の政治力学からは逃れられないことを如実に示した場面ではないかと思います。本作のOPで力走を見せるアベベがローマオリンピックで金メダルを獲った際の熱狂も、彼の生国エチオピアが長年に渡り、イタリアに占領されていたという歴史的事実を度外視しては理解出来ないでしょう。それがいい悪いではなく、そういうことです。
勿論、我らが四三君はそうした本国の熱狂は知る由もなく、遂にストックホルムの競技会場に足を踏み入れます。この場面、スタジアムに入ってから内観を見るまでの数瞬、一切のBGMを切った演出、狂おしくすこ。実際、このテの建築物に入ると判るのですが、建物の内と外の空気の違いが五感で判るのよ。それを表現するために敢えてBGMに谷間を作ったのでしょうな。演出も判っておるのう(上から目線)。
スタジアム関係でいうと、シベリア鉄道の道中で退屈のあまり、人間的に壊れそうになった四三君相手に安仁子さんが開いた英会話の授業。四三君は殆どやる気もなく、
金栗四三「ほえあいずざすたじあむ?(棒
と反射的にリピートしていましたが、これをキチンと勉強していたか否かが、彼のオリンピックでのマラソンの結果に深く関わって来るのではないかと思いました。これ、結果を知っている人間には何となく伏線であることが察せられるけれども、初見というか、予備知識のない視聴者には伝わりにくいやろうなぁ。この判りにくさが視聴率伸び悩む原因の一つではないかと思います。