昨日は回線復旧工事の立ち合いで朝早くから居間でTVを見ていたのですが、某放送局のワイドショーが『WCの日本戦を見ない人は何をしていたのか』という特集をやらかしていたので、速攻で画面を消しました。国別対抗戦を応援しない輩は異端者だとでもいいたいのでしょうか。ちなみに私は当該時刻は仕事でしたが、サッカーに興味ないので休日でも見なかったと思います。別にサッカーやWCやサポーターの存在を否定しているワケではありません、念のため。今回の題材は2つ。
1.『軍師官兵衛』第24回『帰ってきた軍師』超簡易感想(ネタバレ有)
感想をやめたあともアメーバなうで実況している『軍師官兵衛』。基本的に内容ゼロの作品なので記事を書くのは結構しんどかったのですが、登場人物が何かやらかすたびに『フフッw』とか『なんでやねんw』と突っ込む分には見られる作品でした……第24回まではな。はい、今回は最悪でしたね。何が最悪って、有岡城から救出された&半兵衛から後事を託されたにも拘わらず、
主人公の成長や変化が全く見られなかった
ことですわなぁ。三木城への降伏勧告の場面で秀吉の幕僚たちが『官兵衛が変わった』とか囁きあっていましたけれども、見ている側は『何処が?』としか思えなかった。あの程度の脅ししかできずに何が地獄の使者だよ。昨年の地獄の使者を見てみろよ。
こんなコワモテに降伏勧告されたら独眼竜政宗の末裔でもビビるか暴発するかのどちらかですよね。実際、そうなったしさ。今回の地獄の使者なんて、世良の足元にも及ばねーよ。
まぁ、それはいいよ。
それよりも問題なのは鶴ちゃんとの対面シーンですよ。あの場面、何で挿入されたのか狙いが全く判らなかったですよ。そもそも、鶴ちゃんが捕まったという史実とかないしさ。いや、史実にないから書いちゃいけないということではありませんよ。そんな野暮はいいません。でも、このシーンは鶴ちゃんが、
「ゴメンねゴメンね、おバカでゴメンね」
と10分くらい延々と繰り返すだけで、それ以外の情報量がゼロなんですよ。捕えられた鶴ちゃんと捕えたクロカンの間で何かドラマがあるワケでもない。ハッキリいって尺稼ぎとしか思えない。
まぁ、それもいいよ。
一番の問題はクロカンがセクシィパパンやオリーブオイルたちに『殿と二人で話がしたい』とかいっちゃったことですよ。あまりにも不用心。タダでさえ片足の踏ん張りが効かないのに、逆上した鶴ちゃんに自分の刀を奪われたらどうするつもりなんでしょうか。そのまま人質に取られて毛利領に連れ去られたら有岡城の二の舞じゃないですか。過去の失敗から何も学んでいない。アホか。それでも軍師か。そんなんで変わったとか変わっていないとかいわれても視聴者のほうが困るわ。
そんなに変わった変わったって騒ぎたきゃ、有岡城から救出された段階でオカジュンから柴俊夫さんにキャスト交代すればよかったじゃん。そうすりゃあ、少なくとも外見の変化は見られたしね&柴さんも『GO』のリベンジできるしね。いや、できんか、この作品じゃあ。
この他にも色々と突っ込む……というか呆れるしかない内容でした。とうに心が折れてしまった私は今後もなうで実況して、気が向いたら日記で触れるくらいの扱いになると思いますが、このブログにコメントを下さるRinkaさんが御自身のブログで『軍師官兵衛』の何がダメなのかを正面から真摯、且つ丁寧に解説しておられます。同時進行の『独眼竜政宗』の感想記事も劇中の挙措を実際に御自身で再現して、その大変さを語るという極めて実践性の高い内容ですので、是非、御一読下さい。
2.屠龍の人・番外編
歴史記事『山川浩~屠龍の人・幕末編~』への多数のアクセス&コメントを頂き、本当にありがとうございました。また、今回も相羽さんのブログで御紹介頂きました。感謝に堪えません。カタヤイネンの記事がお気に入りとは思いませんでした。あの年は6本の歴史記事をUPしたんだよなぁ。それがどーしてこーなった? まぁ、都合の悪い話は措いて本題に入りましょう。
皆さんから頂いたコメントを拝見して気づいたのは、山川の心情に沿った感想というか、彼がキレるのも已むを得ないよねという御意見が多かったこと。私としては山川が如何にキレやすい人物かを強調するために、そうした逸話を拾っていったのですが、確かに自分の記事を読み返すと『こりゃあ、山川がキレるのもしゃーねーよなぁ』と思えてきました。自分なりの考えと思っていることでも、それを文章に表して&第三者の批評を受けることで、初めて己の奥底にある真の論旨に辿り着くことができる場合がある。そのことに気づくことができたのが何よりの収穫でした。
反面、悔いが残るのは山川の人格形成に影響を与えた陽明学に殆ど触れられなかったこと。陽明学については上っ面の知識しかないのもありますが、これを深く突き詰めると全体のテンポが悪くなるのが目に見えていたので泣く泣く削除しました。簡単にいうと朱子学は物事を認識してから実践に移るのに対して、陽明学は実践することが真の認識に繋がるという考えですね。これを知行合一(ちこうごういつ)といいます。要するに考える前に跳べという思想。この解釈は必ずしも王陽明の本意ではないともいわれますが、大塩平八郎、河井継之助、三島由紀夫などの陽明学を修めたとされる人物の生きざま&散りざまを見ると強ち間違った解釈ではないといえるでしょう。特に三島さんに関しては市ヶ谷の事件の手際を論う人々がいますけれども、理非善悪は別として、コトを始める前に成否や影響を考えること自体、陽明学では唾棄すべき思考なんですね。この辺は大塩平八郎の乱の顛末や、晩年の山川が自分の元から巣立つ書生たちに、
「成敗(成功失敗)利純(損得)等は眼中に置かぬがよい」
とハッパをかけたことが傍証になると思います。極めてアグレッシブでオフェンシブな山川の為人は陽明学の影響と無縁ではありません。一方で極めれば極めるほどに悲劇的な最期が待ち受ける陽明学に傾倒しながらも、山川が身を破ることなく生涯を終えることができたのは、何よりも規律と秩序を重んじる会津藩の教育が骨身に染み込んでいたからでしょう。以上、本編で触れられなかったコトの補完として。
さて、明治編については、取りあげる逸話の取捨選択と全体の構成は決まっているので、そこそこ早目にUPできると思います。昨年の大河記事で『あの兄貴の元で帝大総長にまでなったのは凄い』と絶賛した山川健次郎ですが、色々と調べてみると時と場合次第では兄貴よりもタチが悪い人物と知りました。あの兄にしてこの弟あり。類は友を呼ぶ。このブログの歴史記事を貫く永遠の真理です。詳細は明治編までお待ち下さいませ。
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徒然日記 ~2014/06/17~
『独眼竜政宗』第12回『輝宗無残』感想(ネタバレ有)
『独眼竜政宗』と全く関係ない話題で恐縮ですが、明日の『ダウントン・アビー』は1stシーズンの最終回ということで拡大延長ヴァージョンです。時間帯で番組予約をされておられる方は終盤が録画されないという事態も考えられますので御注意下さい。
まぁ、関係ない話で始めるのもアレですので、ムリやり『ダウントン・アビー』を絡めた前置きを書かせて頂くと『独眼竜政宗』と『ダウントン・アビー』はプラス軸で対極の存在といえると思います。敷居の高さ感が半端なく思える『ダウントン・アビー』ですが、実は描かれていることは然程難しくはありません。アメリカ人が製作していれば、かなり判りやすい内容になったと思います。難しく思える原因は登場人物の台詞を常に二言三言足りないラインで留めている所為で、視聴する側の負担が非常に大きいんですね。登場人物の真意が何処にあるのかを考えながら見なければいけない。しかも、画の補完も殆どないので、純粋に推察するしかない。この辺を英国人の慎み深さと見るか底意地の悪さと見るかはさて置き、非常に頭を使う作品なんです。否、頭というよりも心かな。相手の感情を察する力でしょうね。私が一番苦手とすることです。
顧みて『独眼竜政宗』は結構難しい題材を判りやすく描いているといえます。一見、判りやすく思えるのは脚本家や演出家の力量が優れているから。例えば、今回描かれていた輝宗隠居の真意。以前から感想記事で述べているように奥州の大名は皆、親戚衆なので殲滅戦ができない=全土を束ねる覇者が生まれない。これらは本作を見ていると自然に頭の中に入ってくるんですけれども、実は日本人の多くは戦国=信長という価値観に慣らされている。即ち、戦国時代は実力主義&血の繋がりなんて邪魔になるだけという視点が当たり前なんです。その価値観に慣らされていると『何でコイツら、親戚同士でウダウダやっているんだろう。戦国なんだから情け容赦なく滅ぼしちゃえばいいのに』という思考に傾いてしまいがちなんですね。でも、本作は登場人物のシガラミを丁寧に描いているので、そうした違和感を覚えないですむ。確か井上ひさしさんの言葉だと記憶していますが、作劇の妙とは、
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」
なんですよ。『ダウントン・アビー』は実は単純なことを深く描く。『独眼竜政宗』は非常に難しいことを判りやすく描いている。土日連続でプラス軸で対極にある作品を観賞できるのは非常に贅沢なことだと改めて思います。『軍師官兵衛』? あれは『やさしいことを単純に』描いているだけだ。描いているのが素人でなければ単なるやっつけ仕事である。異論は認めない。今回のポイントは4つ。
1.タイミング
先回の感想でも述べたように意外と早かった輝宗の退場。『平清盛』の感想を読み返すとプルーンパパの退場が第16話なので、漠然と輝宗もそれくらいかなぁと思ってました。不意を衝かれた感が半端ない。
でも、主人公が乗り越えるべき存在を何時死なせるかというのは、その作品を語るうえで欠かせない判断材料になります。敢えて極論をいわせて頂くと遅いよりは早いほうがいいと思います。判りやすい例をあげると『太閤記』で本能寺の変を何時やるかで作品の質が見えてくる。或いは『あしたのジョー』だと力石は意外と早く死ぬよ&『グレンラガン』ではカミナが一桁話数で消えるとは思わなかった&『銀河英雄伝説』でいうと【流石にネタバレ厳禁です】が2巻で退場するかよという話。惜しまれつつも、早目に退場したほうが拙劣に居続けるよりも喪失感の裏返しの存在感が際立つ。特に輝宗は進んで隠居することで政宗を世に送り出した人物なので、退場は早ければ早い程よかったんじゃないかと思えてきました。その意味で今回での退場は納得。
2.悪人不在
今回の一番の凄味はこれ。政宗、輝宗、畠山善継という主要キャラ三名の誰もが悪人でないことですね。見ていて鳥肌がたちました。輝宗は兎も角、今回の話の流れでいくと普通は政宗か善継のどちらかを悪人にするしかないんです。成功に驕った政宗が因果応報を喰らう。或いは人質という手段に出た善継を卑劣漢にする。大抵はこれで片づきますし、それで文句を言う人も殆どいないでしょう。
でも、本作は違った。
驕っているように見える政宗も実は家督の重みでイッパイイッパイで常に自問自答を繰り返している。悩みもある。恐怖もある。それでも、覇道のために己の感情をねじ伏せて邁進している。これは視聴者としても共感せざるを得ない。一方の善継にも守るべきもの、背負うべきものがある。自分の生命と引き換えてでも、部下の本領安堵を哀願する善継の姿にも感情移入できる、否、こちらもせざるを得ない。そうした描写があるからこそ史実でなければ冗談としか思えない輝宗人質事件も視聴者には至極自然の流れとして受け入れることができる。一言でいうと、
登場人物の動機づけがハッキリしている
んですね。善継が輝宗を人質にした理由も、政宗が輝宗を結果的に死に追いやった理由も納得がいく。今日の研究では隠居したくせに何かと口を挟んでくる輝宗をウザく思った政宗が善継と一緒に【Nice boat.】することで一挙両得を狙ったという見方すらある今回の事件ですが、そういう説すら無粋に思えるほどのストーリー展開でした。いや、凄い。マジで凄い。
3.ラスボス不在
輝宗の死にも拘わらず、意外なことにお東の方が登場しませんでした。これも実に練り込まれた構成です。普通だと夫の死に何らかの予兆を感じる場面とかで登場してもおかしくないのですが、これも全体の構成を考えれば納得なんです。
今回の主題は父殺しです。
通常が観念上で父親を越えるべきものを政宗は物理上の死に追いやった。でも、それ=血のシガラミを絶つ=をしないことには奥州の覇者たり得ないのは作中で輝宗が言及していた通りです。その意味で今回の政宗の行動は実に自然で当然で首尾一貫しています。しかし、政宗にはもう一人、血のシガラミで越えなければならない人物がいる。言わずと知れたお東の方ですね……というか、彼女こそが血のシガラミの代表者であり、本作のラスボスなのは今までの感想記事で述べた通りです。そうなると今回の話でお東の方がチョロチョロと画面に出てくると政宗が越えなければいけない存在が分散化されてしまうんです。輝宗を殺しても、あとにお東の方が控えていることが視聴者に察せられると輝宗の存在が希薄に感じられる危険がある。それゆえ、今回はお東の方の出番はなかったのだと思います。視聴者を舐めていない。難しいことを判りやすく描いているくせに、決して視聴者を軽く見ることはしない。これが『独眼竜政宗』の凄味の一つだと思います。
まぁ、輝宗の見せ場なのでキンキンをトメのクレジットにするために志麻姐さんを出さなかったor単純に志麻姐さんのスケジュールの問題があったのかも知れませんが(汗)。
4.老兵の行方
芸の細かさという点では終盤の左月&基信の場面。いつの間にか寝入ってしまった両名に対して、小十郎&成実は恐らくはまんじりともせずに父を喪った政宗と一晩を明かした筈です。つまり、左月も基信も気力体力双方の面で既に第一線ではなくなったという暗喩だと思われます。そういったことを台詞なしの場面で描く。それも、別に描かなくても問題ないのに描く。何気にニヤリとさせられた場面でした。
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『ハートキャッチプリキュア!』(再)第43&44回簡易感想(ネタバレ有)
・ケツしばき
花咲つぼみ「お母さんに赤ちゃんができたんです!」
来海えりか「それはめでたい!」
花咲陽一「そう! これは目・でかい!」
月影ゆり「…………フフッ」
デデーン! ツキカゲ、OUT-!
恐ろしく笑いの沸点が低いことが判明したゆりさん。くだらんダジャレを連発されて笑い死にそうになるゆりさんの姿というのは非常に見てみたい。今回の非常に板についたエプロン姿と同じく、妙なエロスを感じずにはいられないと思う。ちなみに44話でムーンライトがクモジャキーとコブラージャを立て続けに屠った蹴り技は『旋』でした。陸奥圓明流まで使いこなすとはマジで何者だよ、ゆりさん。
・裏の顔
来海えりか「彼女へのプレゼントなら白いシクラメンで決まりよ。花言葉は『純潔』。花言葉のカードを添えて贈ってあげてね♪」
一見、真面目に仕事をしているように見えますが、白いシクラメンはえりかの『心の花』です。何かにつけて自分の宣伝を忘れないえりかでした。そして、シクラメンはシクラメンでも、赤いシクラメンの花言葉は『嫉妬』。そして、和名はブタノマンジュウです。迂闊に女性に贈るとエライ目に遭いそうですね。私の中では歌手というよりも名優として認識されている布施明さんの名曲も『ブタノマンジュウのかほり』になるのか。色々と台なし。
・最強デザトリアン
サンタデザトリアン「かっぷるナンカキライダー! くりすますナンカキライダー!」
プリキュア出演おめでとうございます、俺。
全く、何時からクリスマスが人間の繁殖期と定義されてしまったのでしょうか。そもそも、文献を丁寧に読めばイエスの誕生は三月が有力だというのに……嗚呼、実に嘆かわしい世の中です。それこそ、43話で『全ての子供は望まれて生まれてきた』とつぼみが言っていましたけれども、現実の風潮や事件を見れば必ずしもそうは断言できないのも事実。クリスマス=人間の繁殖期という誤った世情が誘発する軽率さへの警鐘を鳴らすためのサンタデザトリアンではなかったかと思います。何気に複雑な事情を匂わせた43話の夫婦の件を考えると、この2話は意外と繋がりあるんじゃないでしょうか。この括りで感想をまとめたのは正解かも知れません。
・最強伝説
キュアフラワー「私の名前は……聖なる光に輝く一輪の花! キュアフラワー!」
尚、正体は還暦間近の模様。
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『独眼竜政宗』第13回『人取橋』感想(ネタバレ有)
鬼庭左月(74)「よいか……儂のように若死に致すなよ……なんてな」ガクッ
左月の生涯最期の一発ギャグかと思いきや、実はガチネタであったります。鬼庭家は長命の家系で九十代まで生きた人がザラだとか。その件は秀吉と綱元の会談で詳細が語られる筈ですが、こんなマニアックなネタを容赦なくブッ込んでくるのが『独眼竜政宗』。政宗と左月が別離の際に刀の鍔を鳴らしあう場面=金丁がありましたけれども、あれも時代劇を見慣れていないと何をしているのか判らないですよね。視聴者に『あれ? これはどういうこと?』と思わせる。瞬間、視聴者の心は膝立ちになる。その分、画面≒物語への距離感が縮まる。視聴者の心を膝立ちにさせてこそ、物語は盛りあがる。どの作品とはいいませんが皆が知っているような話を誰かがやったような流れで描いても物語は盛りあがらないんですよ。見ている側が身体も心もダラーッと横になったままでピクリとも刺激を感じない作品に何の価値があるのかといいたい。
今年の大河批判(あ、言っちゃった)はさて置き、今回も見所満載の本編でしたが、物語の柱は一つしかありません。実は今回の内容には時系列や合戦の経緯などで史実と食い違っている点が結構多いんですよ。それは本編を通じて製作者が描きたい事案を浮き彫りにするためなんです。手前味噌で恐縮ですが、私も歴史記事を書く時に常用する手法です。そんなワケで今回のポイントは一つ。
1.Death and Rebirth
日本語でいうとシト新生……じゃない、死と新生ですね。
『死』のほうが言わずもがな、輝宗という喬木を喪った伊達家の混乱を描くことで彼の存在感が如何に大きかったかを浮き彫りにしています。特に先回の事件はアバンタイトルの解説ですませて、本編が始まったら既にお東の方は輝宗の訃報を聞いたあとという思いきった構成にはビビった。リアルと作劇を(OPテーマを挟んだとはいえ)直に繋ぐとか、素人が迂闊にマネしたら確実に総スカンでしょう。でも、それがお東の方の『青天の霹靂』感を視聴者にもリアル体感させているといえると思います。しかし、まぁ、お東の方も凄い描かれ方をされていますよ。事件の真相を問い質す場面がありましたが、あれ、よく聞くと輝宗を死なせたことを責めているんじゃないんですね。
「お前が直接に手ェ下すこたぁねぇだろ!」
といっているんですね。子の政宗が父の輝宗を(間接的にせよ)殺したことを責めているんですよ。突っ込む所はそこなんかい! 以前、政宗の猛々しさがうんたらかんたらと嘆いていましたけれども、どう考えても母親似です。本当にありがとうございました。この辺も『血』の絆を大切にするお東の方の思考を強調していますね。『血の呪縛』を絶って天下に名乗りを挙げようとする政宗のラスボスはお東の方という構図が更に顕在化した場面でしょう。
話を戻すと、そのお東の方は輝宗に殉死した家臣の子を竺丸の側近に取り立てています。でも、こういう人事って家督を継いだ政宗の裁可が要る事案ですよね。また、古株の一門衆が小十郎を吊るした挙句、実元が『これからは儂が政宗の後見人!(キリッ)』とか宣言しちゃいましたけれども、輝宗が若隠居した理由の一つが、そういう連中が出しゃばらないようにとの判断でした。更に政宗の命令ガン無視で国元では輝宗に殉死する連中が続出します。これ、作中でも描かれていたように政宗にとっては、
という事案の連続なんですね。母親や親戚衆が心からの善意で伊達家の将来を思うのはありがたいとはいえ、その言動は明らかに政宗の職権を侵害している。殉死の件でも『先代を慕って』といえば聞こえはいいですが、こうも殉死者が出ると自分の鼎の軽重が問われるし、有為の人材に死なれると伊達家のマンパワーが低下します。今回はお東の方や一門衆、殉死者といった輝宗を慕う人々がよってたかって政宗に迷惑をかけるという構図なんですよ。
しかも、全く『悪意なし』にね。
その分、余計にタチが悪いですね。皆、伊達家のため、輝宗のためを思ってやっているけれども、当主の政宗の意志は眼中にない。善意って怖いよね。それゆえというか何というか、今回は少なからぬ人死が出る話にも拘わらず、私は結構ニヤニヤしながら見ていたんですよ。全体の構成がシニカルなコメディっぽく思えなくもない。皆が真面目にやればやるほど、主人公が苦虫を噛み潰す結果になったワケですしね。
では『新生』のほうは何か。これは虎哉和尚の言葉通り、目上がいなくなった分、若い力で存分にやる好機と思うことです。そして、真に輝宗の遺志を継ごうとするのであれば、政宗のためになることをやれということ。
まず、虎哉和尚は米沢に戻らず、放浪の旅に出ると宣言した場面。これは自分が米沢を去ることで未だに輝宗を慕う者への指針を示したのだと思います。生きる者も死ぬ者も政宗の邪魔になるようなマネはするな&去るならば政宗へのケジメをつけて去れという無言のメッセージ。同時に自らの存在を消すことで政宗に伸び伸びとやらせようという意図もあるでしょう。そう考えないと、このシーンは納得できないんですよ。史実の虎哉和尚は政宗の元から去っていないですしね。敢えて、そういう創作を入れたということは何らかの狙いがあると考えたほうがいい。或いは大滝さんのスケジュールとか、リアル都合もあったのかもですが、喜多の言動も考えあわせると納得できるのではないかと。
あれ程に輝宗を慕っていた設定の喜多が殉死しなかったのは何故か? 逆にいうと喜多が輝宗を慕っているという設定にした理由は何か? それはやはり、真に輝宗の遺志を継ぐということは生きて政宗のためになることをするということなんだ、という作中メッセージを描きたいがためだと思います。そう考えないと喜多が輝宗を慕っていた設定の必要性がなくなっちゃいますしね。
それでも、輝宗と黄泉路を共にしたいのであれば、ちゃんと政宗の役にたってからにしなさいというメッセージの体現者として選ばれたのが遠藤基信と鬼庭左月の伊達シルバーコンビの二人。基信に関しては今回は格別な活躍があったワケではありませんが、輝宗の墓前で呟いたように小十郎を見出したのは彼なのですから、基信はキチンと政宗のためになることをしていたといえます。左月については言わずもがな。人取橋における獅子奮迅の活躍が全てを物語っていました。
否、実は史実のほうが更に政宗のためになっていたというべきでしょうか。左月討死⇒政宗出陣というのは時系列が逆で、政宗の本陣がヤバイ⇒軍配を預かった左月が殿(しんがり)を務めて討死というのが定説です。追撃側も政宗の首級を狙うリスクを冒すよりも左月の首級で充分な恩賞になるので、そこで追撃の足が鈍ったのは想像に難くありません。じゃあ、何でそういう展開を避けたのかといえば、それだと、
伊達家のヤングパワーの活躍が描けない
からです。人取橋の戦いは戦術上は政宗の惨敗にも拘わらず、作中では辛勝とも取れる描かれ方をされていたのは、輝宗、基信、左月といった先人の自己犠牲のうえに若い力が頭角を現すさま、即ち、伊達家の新生を描かんがための構成じゃないかと思います。作中で成実の活躍がクローズアップされていたのも、そういう意図かと。あ、でも、確かに成実の活躍はガチなんですよねぇ。この戦いで成実が生き残ったのはどう考えても理屈にあわない。
それにしても、先回のキンキンに続き、基信&左月の退場も記憶していたよりも早かったです。それこそ、基信に関しては二本松城の一件が落着してからだと思っていました。自分の記憶力に自信をなくしてしまいそうですが、その分、新鮮に物語を楽むことができると己を騙すことにしましょう。
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徒然日記 ~2014/07/01~
今年も下半期に突入ということで、諸事情で触れる機会がなかった話題を中心に今年の前半を振り返ってみようと思います。まぁ、旬の過ぎたネタばかりなので、長々と語ることのないようにしましょう。今更、ウダウダと述べても六日の菖蒲に十日の菊、証文の出し遅れといわれちゃいそうですしね。尚、ビットコインの件は既出ですので当該記事を御覧下さい。
1.世界杯
グループリーグでの敗退という結果は残念でしたが、マスコミの馬鹿騒ぎが早目に終結したのは重畳至極でした。尤も、ああも簡単に沈静化されると逆に違和感を覚えるのが捻くれ者の本流というもの。本戦が始まるまでは『見ない奴は異端者』といわんばかりの偏見と、徒に数字を捏ね繰り回した妄想で視聴者を煽ったにも拘わらず、自分たちが垂れ流してきた希望的観測が全て外れると、口を拭って知らんぷり。全く以て何時か来た道です。昔、職場の先輩が『サッカーと戦争は国民性がモロに出る』と語っていましたが、その言葉が今回の件で頭ではなく、心で理解できました。少なくとも、本戦に至るまでに費やしたのと同じ時間と予算をかけた『敗戦の原因』と『報道の姿勢』を追及する番組を放送しないかぎり、私のサッカー&マスコミ不信は消えることはないでしょう。放送されても多分、見ませんが。
2.歴史『に』学ぶ
『集団的自衛権』や『原発の是非』については意見がなくはないものの、このブログでは今後も触れることはないと思います。両方とも政治問題じゃなくなっているんですもの。集団的自衛権は軍事&外交、原発は内政&エネルギー政策にも拘わらず、これらの問題は既にイデオロギー闘争になってしまっています。賛成すれば右翼&ファシスト。反対すれば左翼&売国奴。こういう偏見丸出しの括りで見られるのは真っ平御免です。政治問題がイデオロギー闘争にスリ変わるとどういう事態を招くかは幕末の騒乱を見れば一目瞭然なのに、それを誰も思い出そうとしない。或いは都合よく忘れたフリをし続けている。そういう人々がゴロゴロしているほうが集団的自衛権や原発が孕むリスク(これは賛否の意思表明ではありません。如何なるものにもリスクはあるという当然の認識です)よりも遥かに危険なコトに思えてならないんですけどね。政策への賛否は別としても、定められた時間と予算の中で意義のある討議と選択がなされることを祈っています。
3.二度見
炎尾燃「本当にいいものは一度ではわからないものなんだよ!」
昨年公開された映画がどんどんDVD化されて、それを見返す機会が増えていますが、何故か、一度目よりも面白く感じております。特に『風立ちぬ』『劇場版まどマギ』『真夏の方程式』は出色の内容。その中でも『劇場版まどマギ』は魔法少女ものやSFという括りを越えて仏教説話のレベルに達していると思いました。まどかの力をQBに探らせないように自ら望んで魔女になることを選んだほむほむ。しかし、QBの企みやほむほむの捨身飼虎の覚悟も、全てを蹴散らして救済に現れる菩薩まどかの姿はまさに阿弥陀如来そのもの。『尻啖え孫市』の、
「小みちが抱かれるのはいやじゃと申して逃げまわっても、ちゃんと抱いてくださいます。抱くことが阿弥陀如来の本願でございますから。~略~わたくしどもが救われたくないと申しても、だまって救ってしまわれます」
という一節を思い出しましたよ。私個人は信仰を持ちあわせていませんが、実家が浄土真宗を奉じる者として、御宗旨を尋ねられた時には『まどマギ』を例に出して解説しようと考えています。しかし、そうなるとデビほむのやらかしたことはどう解釈すればいいのか。
4.大衆は○○だ!
同じ虚渕さんの作品で只今、最高に盛りあがっているのが『仮面ライダー鎧武』。いやぁ、今回は素晴らしかったですね! 何よりも紘汰がミッチにボコボコにされるのを見て胸がスカッとした視聴者は多いと思います。
呉島光実「希望っていうのはタチの悪い病気だ。それも人に伝染する。紘汰さん、アナタはね、そうやって病原菌を撒き散らしているんですよ!」
よくぞいってくれた、ミッチ!
勿論、ヒーローものである以上、ミッチの主張は覆されるでしょうけれども、何せ主人公が全く懲りない性格で『いい加減、誰かに吐くまで叱られなきゃ判らんのか』と思っていたので、今回の展開で一週間はウルトラハッピーな気分で過ごせそうです。ありがとう、ミッチ。次回はメロン兄さん復帰の模様ですが、あの脇の甘い兄貴が弟を討てるとは思えないので、ミッチにトドメを刺す直前に生命乞いされて、怯んだ隙に逆襲を受けて今度こそ退場という流れになるでしょう。凰蓮が泣くぞ。
尤も、紘汰には紘汰なりの役割があって、ああいう描かれ方をされているのも確かなので、あんまりボロクソに貶すのも可哀想かなぁ。彼は無責任な大衆の代表者なのだと思います。何か衝撃的なことがあると変わった気になるけれども、実は殆ど進歩していない。論拠のない希望的な楽観論にすがりついて事態を悪化させてゆく。全く以て大衆の本質そのもの。でも、逆にいうと紘汰=大衆が変わる時こそ、世界が変わる時でもあるので、彼の変化は最終回までお預けかなぁと考えます。
5.似て非なるもの
『ダウントン・アビー』第1シーズンが終了しました。秋に第2シーズンが放送予定ということですので、それを楽しみにしましょう。本作を御紹介下さいましたレッドバロンさんに篤く御礼申しあげます。それにしても、何故、本作は字幕でやらなかったのか。それだけが瑕瑾ですね。メインカップルのメアリーとマシューの吹き替えを担当されたのが私の贔屓の俳優さんであった分、余計に何ともいえない空気が残ったというか……いや、別に俳優さんの所為ではありませんよ。本作は吹き替えがうまければうまいほどに英国の雰囲気が伝わらないと思うんです。翻訳と演技の二つに日本人的感覚が混ざってしまうんですね。ちなみにメアリーはマリーダさん。マシューはユウキ先輩です。この御二人がうまくないワケがありません。その点は明言しておきます。
あと、このブログの感想記事に『ダウントン・アビー=英国版渡鬼』という説を頂戴しました。両作品共、それぞれの国民性に根ざした作風という点では『成程、理解できる』と思った一方で『いや、納得できないなぁ』とも考えました。『渡鬼』の登場人物は皆、
他人の心に土足でズケズケと入り込む連中
じゃないですか。ハマーン様のいう俗物。確かに『ダウントン・アビー』の登場人物も腹にイチモツある連中ばかりとはいえ、他人の領域に不用意に踏み込んだりしません。階層が上にいけばいくほど、その傾向は顕著です。イヤミ一つ取っても直截な表現は避ける。そして、家族の間にさえ、踏み込んではいけないエリアが物心両面にある。視聴者側の負荷という点では或いは『渡鬼』といい勝負かも知れませんが、少なくとも、見ていて不愉快さは感じませんでした。まぁ、単純に私が『渡鬼』嫌いというのもあるので、話半分くらいで読んで頂けると幸いです。
6.虚構と現実
古美門研介「『金が全てではない』? 金なんですよ! あなた方が相手に一矢報い、意気地を見せつける方法は! 奪われたものと踏みにじられた尊厳に相応しい対価を勝ち取ることだけなんだ! それ以外にないんだ!」
性格の悪さと発言の説得力の反比例という点で古美門は福沢諭吉に匹敵する存在だと思います。公的保障、損害賠償というのはそういうものですよね。人間の価値観はそれぞれですが、自分たちが失ったもの、或いは失われようとするものの巨きさを相手に知らしめる際に求めるべき価値は万人が認める共通のテーマでなければ意味がない。ただし、こんなことを口にして許されるのはブログかフィクションだけです。公の職にある人間が現実世界で堂々と喋って許される筈がありません。人道上は勿論、裁判が拗れて和解が遅れれば政策が遅延するからです。でも、その程度の理屈も判らん奴が、
石原環境相『最後は金目でしょ』中間貯蔵施設巡り発言
などと口走っちゃうのが現実の救いがたさですね。この方の御尊父は二次元作品の表現規制に御執心ですけれども、他人の作品にあーだこーだと難癖をつけるよりも、自分の息子に『フィクションと現実の区別をつけなさい』と諭すのが先決でしょう。
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『ハートキャッチプリキュア!』(再)第45回簡易感想(ネタバレ有)
キュアフラワーの変身解除時、他のメンツのように下着姿にならなかったのは何故でしょうか。いや、なれといっているワケではないですよ。正直、なられても困r……、
いえ、何でもありません、ゲフンゲフン。今回は敵の本拠地にカチコミをかけるというプリキュア定番の回でしたが、一切をコッペさまの奮闘に持っていかれた気がします。何だ、あのOP映像にも匹敵する荒振りよう。もう、コッペさま一匹でいいんじゃないかな。シプレやコフレやポプリも何れああなるのかと思うと複雑な心境です。キュアフラワーのビフォー&アフターといい、時の流れの残酷さを感じずにはいられない内容でした。今回のポイントは一つ。
1.枯れない花
201X年、世界は砂漠の砂に包まれた。
海は枯れ、地は裂け、あらゆる心の花は絶滅したかに見えた。
しかし、心の大樹は死に絶えてはいなかった!
デューンの地球砂漠化計画で全人類が結晶化。力の源である心の大樹を喪ったかに見えたプリキュアでしたが、もも姉や番君やナミナミといった人々が生存していたため、最終決戦に臨めたという展開。熱い。何が熱いって、生き残った人々というのは皆、過去にデザトリアン化した&プリキュアが救った面々なんですね。骨折も折れ方次第&治し方次第で折れる前よりも勁くなるように、一度は心の花を枯らしかけたからこそ、彼らは真の心の強さを知っている。
バトルも激熱。先回の戦いで『旋』を見せたキュアムーンライトさんは今回もジョルトのスウィングブロー~前転しての踵落としというスーパーテクニックを披露。これ、確か『へうげもの』で細川忠興が親父をブチのめすのに使っていたな。デザートデビルを倒すために廃墟とはいえビルを破壊するプリキュアというのも凄ぇ。どっちが悪者か判らん。あのダメージだとハートキャッチオーケストラは必要なかったと思う。
何よりも、嘗て自分たちが救った相手に支えられて最終決戦に赴く主人公というのは問答無用で熱い。ヒーローもの、かくあるべし。ラストシーンのハーモニー演出もムダに熱い。しかも、次回は(ネタバレですが)『ここは俺たちが食いとめるから先に行け!』的な展開だし……つうか、先回くらいから完全に小さいお友だち置いてけぼりの内容ですよね。そして、最終回までこのままです。こんなのが(勿論、いい意味です)日曜朝八時半から放送されていたことを当時の私はもっとありがたく感じるべきでした。今はジャンルや時間帯を問わず、全般に規制入っているのが手に取るように判るからなぁ。
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『修羅の門 第弐門』第43話感想(ネタバレ有)
姜子牙ファン①「いやぁ、子牙様!」
姜子牙ファン②「顔は避けてぇ!」
顔以外はどうでもいいのか。
今回、九十九相手に足をとめて闘った姜子牙。カウンターの『発勁』狙いもあるでしょうけれども、ボディに食らった八:二の『虎砲』のダメージが深くて足がとまっているのかも知れません。そこに思い至らないのが、如何にも川原センセの描くミーハー女性ファンらしくて安心しました。先々月で姜子牙の猛攻にドンびきしていた彼女たちですが、今回は基本に立ち戻ったようで何より(?)です。今更、九十九に鞍替えされても困りますしね。今回は本編の動きは少な目の代わりに『ふでかげ』が面白かったので、そちらの感想も込みでUPします。ポイントは4つ。
1.NTR
大爺「お前は父殺しではない……兄殺しじゃ。お前の父は……我だ」
姜子牙(なる程。あの人が何故、母に辛く当たったか、今、理解しました。陸奥に勝ったら……次はあなたを殺します)
山田さん「呂家の長ともなれば魔法をかける事もできるのか……いや、逆になにかを解いた? なる程、これが本物の姜子牙というやつですか」
そうそう、魔法のタネは文字通り、生物学上のタn……って喧しいわ!(セルフノリツッコミ
大爺は若く見積もっても80近くに見えますけれども、そうなると還暦前後にこさえた子供ということに……呂家の大爺は老いてもお盛んです。実の息子の嫁(というか妾)を寝取るとか鬼畜にも程がある。コイツら、大陸系なのに儒教上の禁忌はないのか。しかし、大爺が息子の嫁に手を出す理由が判らん。ルゥ・ズ・ミィンの話を鑑みるに、姜子牙の母親は血統を見込まれたワケじゃなさそうなので、強い遺伝子を求めての婚姻じゃないとなると単純に不倫ということか。大爺、自重しろ。でも、おかげで姜子牙が生まれたので呂家としては結果オーライか。呂凱が不憫過ぎる。
些か唐突に思える姜子牙の過去話ですが、作者が意図する点は明白。姜子牙を九十九と対等の地位に就けるためですね。呂凱殺しは父殺しと同時に兄殺しでもある。冬弥と(恐らくは)ケンシン・マエダを殺している九十九は既に父殺し&兄殺しの経験者なので、姜子牙も同等の条件に近づけるための設定でしょう。ついでに姜子牙が初めて己の鬼を起こした際に呂凱の片目を奪ったのも、九十九が先代たる真玄を隻眼にしたことと被ります。アリオスVSムガビで描かれたように修羅の前に立つのは鬼でなければならない。ただし、これもアリオスの件を思い出しますが、姜子牙が本当に呂凱を殺す気であったのか、或いは結果として死亡に追い込んだだけなのかが問われるかも知れません。
それと、大爺の話そのものがホラという可能性もあり得ます。上記のように余りにも大陸系の倫理観にそぐわな過ぎる。まぁ、暗殺集団に倫理もへったくれもありませんけれども、悪の組織とは外に非道な分、内側には厳格さと同等の温情がなければ成立しないんです。ゴッドファーザーが典型。その意味で大爺の言い分は完全に真に受けることができない。姜子牙に己への怨みを植えつけることで九十九への恐怖を払拭する狙いがあるのかもです。人は信じたいと思うことを信じる。姜子牙の母親への愛情と己の生命を利用した甘言と見たほうが大爺の凄味が増すんじゃないかと。
2.人間賛歌
大爺「敵を怖れぬ者は時に実力以上の力を出し、格上に勝つ事もある。しかし、それは言い方を変えれば偶然にしかすぎぬ。真に強者とは敵を怖れ、死を怖れ、そして、その怖に負けぬ者」
実の息子の女を孕ませるとか白河法皇も真っ青の不良老人ですが、言っていることは正論。これは九十九も常日頃から口にしていることですね。戦うってことは怖いってことだ。そして、そこから逃げないってことだ。恐怖を感じない戦いとは単なる遊戯かビギナーズ・ハイでしかない。何れ真の強者にカモられるのは明白です。ツェペリさん曰く、恐怖を知らない奴はノミと同類なので、相手の強さも判らずに突っ込んで負ける。人間の素晴らしさとは恐怖を知ったうえで、それを捻じ伏せる勇気と知恵を働かせること。プルタルコス曰く、人間の尊厳とは恐怖に耐える誇り高き姿にある。基本、勝つためには何でもやることが黙認されている『修羅の門』で人間賛歌のメッセージが描かれるとは思いませんでした。まぁ、先述のように全部、大爺のペテンかも知れませんけれどもね。
3.菩薩の驚愕
山田さん「100%の発勁をカウンターで」
それも、最も威力が出るアッパー系で食らわせた姜子牙。今までセンスとスピードだけを頼りに考えなしに放ってきた『発勁』でしたが、この一撃は強烈。やはり、恐怖を知り、それを捻じ伏せた者は強いということでしょう。ヒット&アウェイでは加撃に体重が乗りにくいですが、九十九の恐怖に耐えて、両足でガッチリと大地を噛んで放った見返りは大きかった。作中でもインパクトの瞬間で5~6頁費やしたり、ケンシン・マエダのカットが挿入されたりと、この一撃がクローズアップされていましたが、読者的に最も衝撃が伝わったのが、観客席の片山と思しき男がマジビビリの表情を浮かべていたことですかね。海堂以上の『見切りの天才』と謳われた片山ですら息を呑んだカウンターの精度。でも、この表情を浮かべられると片山は既に陸奥を追う『現役』ではなくなっているんじゃないかという不安も覚えます。ケンシン・マエダ戦と同じく、海堂VS片山も回想で描かれる可能性が高まったかも知れません。
4.魔術師降臨
アナウンサー「まさか……まさか……イグナシオ・ダ・シルバ?」
出場するとは思わんかった。
衝撃という点では『異聞』が『本編』を上回った今月号。南米の魔術師イグナシオ、まさかの草サッカーチーム加入です。これに関しては三沢提督の『イグナシオは反則でしょ』という意見に100%同意。余りにも大人気ない。しかし、全力で応援せざるを得ない。本人は、
イグナシオ・ダ・シルバ「このゲームもボールもふでかげのモンや。助っ人は助けるだけ」
とアシストに徹するようですけれども、ここは是非、ガチで戦うイグナシオが見たい。ついでに日本で一年間、神武館の本部指導員をやるとのことなので、九十九の相手という贅沢はいいませんから、代わりに陣雷と遊んでやって下さい。
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『独眼竜政宗』第14回『勝ち名乗り』感想(ネタバレ有)
今日、JE市では高田開府四百周年のイベントが開催されています。感想を書いている今、この時も窓外から記念の花火の音が聞こえています。高田開府は逆算すると一六一四年。大坂冬の陣の年なのか。思っていたよりも遅かったという印象です。『独眼竜政宗』や『捨て童子松平忠輝』のDQNっぷりが印象に強いので、もっと早くから好き放題やっていると思っていました。でも、本作で忠輝を演じた真田広之さんをゲストに招くくらいの思いきりのよさが欲しかった。まぁ、今やハリウッド俳優の域に達した真田さんは難しいとしても、せめて、五郎八姫を演じた沢口靖子さんを招くくらいのことはして欲しかったです。JE市の観光行政のセンスのなさは折り紙つき。何せ、
春日山城の上杉謙信像の除幕式に武田信玄を演じた高橋幸治さんを招く
という贅沢には違いないけれども、確実に明後日の方角のゲストをチョイスしちゃったという前科がありますしね。この一件は落語のネタレベルの面白さ。まぁ、その分は近年のガックン招聘でチャラかも知れません。
さて、恐らくは第二部開幕と位置づけられていると思われる第14話。文句なしに面白かった。何処が如何面白かったかに関しては『見て貰うしかない』としか表現できない自分の至らなさが悔しい。一例をあげると二本松の処遇に関して、政宗が舅の意向を伺うという流れは当時としても筋が通っていますし、現代劇としてもアリな辺りがジェームス三木さんの確かな力量を感じずにはいられない。そんなワケで今回は完全にキャラ萌え感想に終始させて頂きます。取りあげる人物は三人。
1.伊達成実
伊達成実「俺は天の時など信じない。城を守るも人間、攻めるも人間。人間と人間の力比べではないか。子作りとて同じこと。人間と人間が離れていては、何時まで経っても子は出来ん!」
実をいうと昔は成実が好きではありませんでした。このブログを御覧の方はとうに御承知のことと存じますが、管理人は子供の頃からヒネた性格で、成実の一本気な為人が好きになれなかった。尚、リアルタイムで視聴していた時に一番感情移入していたキャラは後述します。でも、年齢を重ねると成実の生き方が羨ましくて仕方なくなってくるんですよね。生きるも死ぬも己一人の責任。敵を倒し、容儀を蔑み、家族を慈しみ、友と語らい、酒を呷り、生きるだけ生きれば戦場で果てるのみ。男たる者、誰でも成実のようにシンプルな価値観で生きてみたいという願望があるんじゃないでしょうか。今回で主人公の政宗が輝宗ばりの度量や寛容さ、強かさを見せて第二部の開闢を視聴者に印象づけた=主人公の成長を描いた分、成実のシンプルな価値観の貴重さが身に染みます。当時、今の私くらいの年代の視聴者は政宗よりも成実に感情移入していたのではないかと今更ながらに思いました。年齢を重ねるごとに物語を見る視点が変わる&様々な視点に耐え得る強靭さが『独眼竜政宗』の真骨頂ではないでしょうか。
ちなみに政宗が小十郎の子殺しを未然に防いだのは巷説通りです……が、その真の動機は『成長したら俺の小姓にするからね♪』というものでした。要するに【アッー!】という奴です。生まれる前から唾つけとくとか、光源氏以上の外道っぷり。流石はマー君。やることが半端ねぇっス。
2.鈴木重信
鈴木重信「上方流の算盤を使うて、伊達家の勘定方を相務め、しかも、逆臣の汚名なき人物はたった一人! かく申す鈴木重信にございます!」
伊達政宗「ん?」
伊達成実「何だと!」
先項で述べたリアルタイム視聴時に一番感情移入していたキャラこそ、この鈴木重信です。十代になりたてという年齢にも拘わらず、こんな地味なキャラを応援していた自分が誇らしいと同時に恥ずかしい。確実に厨二病。他人が応援しないキャラに注目する己のイヤラシサに赤面してしまいそう。当時の自分に会う機会があれば、問答無用でブン殴るか、ヒネた視点を絶賛するかのどちらかでしょう。多分、その時の気分次第。
物語としては伊達家の所領の拡大を如実に示す象徴として描かれたのが重信ですね。確かに文の小十郎、武の成実がいれば当面、伊達家は安泰ですけれども、彼らは政宗の分身、乃至は代理として全軍、或いは分隊の指揮を統轄しなければいけない。所領が拡大しても、それを支える人材がいなければ膨張は空洞化と同義語です。ラインハルト曰く、脳が歩くわけにはいかない。心臓が物をつかむことはかなわない。手や足が必要なのだ。それを表すために登場したのが重信でした。そう考えると当時の私は無意識に物語論や組織学の何たるかを心得ていたのかも知れません。我田引水自画自賛。
3.徳川家康
豊臣秀吉「この秀吉にではなく、関白に頭を下げて貰いたい。今宵はこの関白が家康殿に頭を下げ申す」フカブカー
徳川家康「……心得ました」
高橋幸治さんの織田信長、緒形拳さんの豊臣秀吉に亜ぐ、三英傑のはまり役の登場。津川雅彦さんの徳川家康は一言でいうと『巧い』んだよなぁ。高橋さんの信長は雰囲気があり、緒形さんの秀吉は雰囲気と巧さの双方を兼ね備えているとすると、津川さんは巧さに傑出していると評してよいでしょう。だって、容貌は御世辞にも家康に似ているとはいえませんからね。まぁ、若い頃の……例えば三方原の戦いの頃の肖像には近いかもですが、劇中の壮年~熟年~老年の肥えた家康の雰囲気とは似ても似つかない。例えば漫画『花の慶次』では本作で秀吉を演じた勝新そっくりの家康が登場していて、それがガチで似あっていましたからね。近年の大河では西田敏行さんの家康が容貌の面でハマリ役でしたが、あれは脚本がアレで西田さんの魅力が全然活かせてませんでした。『天地人』や『GO』に比べればマシではありましたけれどもね。世に狸親父と囁かれる家康ですが、津川さんの家康は狸というよりも、
鵺
に近いですね。正体や本心が全く掴めない。実にヌルヌルとした家康です。まぁ、本作の家康は原作の山岡荘八さんの影響が強いのか、結構君子人然とした面もあります。ジェームス三木さんが企図する家康の何たるかは『葵~徳川三代~』を御覧頂ければ判ります。そして、そちらでも見事に家康を演じた津川さん、パネェっす。
物語としては、秀吉と家康の談合は軍記ものの定番なんですけれども、ありきたり感がゼロなんですよね。秀吉と家康の双方の台詞がいちいちいい意味で勿体ぶった言い回しのおかげでしょう。言葉にオリジナリティとリアリティがあります。ジェームス三木さんの脚本に上から目線の批評を下す僭越ついでに言わせて頂けると、この場面の勝新の演技が凄い巧かった。秀吉の台詞&挙措の全てがアドリブとしか思えなかったです。勿論、そんなことはないでしょうけれども、勝新の仕草や間の取り方が絶妙なんですね。すみません。正直、勝新を舐めていました。心の中で焼き土下座しますので勘弁して下さい。
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荒川弘版『アルスラーン戦記』第13章『裏切りの英雄』感想(ネタバレ有)
ファランギース「ルシタニア兵ではないのか?」
ナルサス「カーラーンの部下ではないのか、何者だ」
予想以上のガチ戦闘でした。
展開は概ね原作通りとはいえ、ナルサスVSファランギースは漫画版ならではの激しさ。ファランギースが完全に人○しの目をしてますやん。どこのホムンクルスだよ。否、どちらかというと師匠に近いか。何れにせよ、人の形をした災厄。ナルサスに武芸の心得がなければ冗談抜きでパルスの歴史が変わっていたでしょう。ナルサスがヤンじゃなくてよかった。多分、初太刀で殺されています。逆にラインハルトの相手がナルサスにコンバートされていれば、宇宙の統一は遥かに困難になったに違いありません。ナルサスはヤンみたいに手段に拘らないからね。今回のポイントは4つ。
1.違和感
ギーヴ(笛? 何も聞こえんが……)
音云々よりも笛が小っさ!
確かに原作でも小さな水晶の笛と書いてありますが、フルートとはいかないまでも、短い横笛のイメージを抱いていたんですよね。でも、本作のはホイッスルじゃないですか。体育の先生みたいで何か違う。いや、これは美人にはフルートが似あうという私の勝手な思いこみの所為なのか。ちなみにファランギースは人物紹介で『絶世の美女と呼ばないと気付いてくれない』と書かれていました。推す点はそこかい。
2.謀略
ナルサス(なまじ頭の切れる者ほど、掌の上でよく踊ってくれる……)
曹操「確かに残念な子の考えることは常に想定外だ」
足利直義「兄者の思考回路が遂に理解できなかったよ」
エリザベス「あの手の輩って何で空気が読めないの?」
定石を知らない相手の手は読めない。勝負事の基本ですね。世にいうビギナーズラックも、これと無関係ではないかと。まぁ、それこそ、初めの1~2回しか通用しませんので、あとはプロにいいようにカモられるのがオチ。『蒼天航路』版の曹操が『(兵法を)覚えてなくて凄い奴もいるが、最後は覚えている奴が勝つ』と述べている通りです。実際、馬超も最後は曹操に敗れていますからね。いや、待て。そうなると天然系の尊氏が最後の勝利者足り得たのは何故だ? まぁ、尊氏は戦の巧いアルスラーンといった人物なので、直義やナルサスのような軍師の上に立つ存在だと思うことにします。
3.外道
エラム「ことさら信用できない男を雇い、『我々は南へ行く』と教える。その男が予想通り盗みをはたらき、ダリューン様に打ち据えられる。男はカーラーンの元へ密告に行く……カーラーンはナルサス様の裏をかいたつもりで男を間者と思う」
初めて原作を読んだ時は主人公サイドが随分と外道な手を使うものだなと思ったものですが、よくよく考えたら、別にカーラーンが男を殺すとはかぎらないので問題なしか。本作を正統派ヒロイックファンタジーと考えるからド汚く見えるのであって、このレベルの策略は原作者も好きな『水滸伝』では日常茶飯事……否、もっとエゲツナイ手段がボロボロ使われていますからね。殺す必要のない男を斬ったのはカーラーンの心に余裕がなくなっていることを表すものといえるかも知れません。今回ラストの無双っぷり&ヒキ具合といい、本作のカーラーンは優遇されているなぁ。
尚、森林と山岳が錯綜する地帯が騎馬隊を主力とするカーラーンに不利というのは原作初見の頃は『ふーん、そーゆーもんなんだー』というレベルの認識でしたが、後年、三国志を改めて読み解いて納得しました。劉備が漢中争奪戦で曹操相手に初金星をあげることができたのは騎兵主力の曹操軍を山岳地帯に引きずり込んでゲリラ戦に出たからです。騎兵は機動力を封じられればマトがデカい木偶の坊に過ぎません。
4.漫画版オリジナル展開
エラム「殿下、剣一本では心もとないでしょう。名工の作ではありませんが、良い弓です。これをお使い下さい。私のことはおかまいなく。ご武運を」
何気に今回一番のいいシーン。戦闘に際してアルスラーンが弓を用いたのは原作通りですが、それがエラムから託されたものというのは漫画版オリジナルの設定。今まで原作以上にアルスラーンにツンケンした態度で接してきたエラムですが、今回、怖れを押し殺して敵を誘う餌を務めようとするアルスラーンの健気さに感じるものがあったのでしょう。或いは先回の感想で触れたように無辜の民が犠牲になるのを看過しなかったアルスラーンの姿勢に感銘を受けたのか。原作では目立った絡みがないままに何となく打ち解けたアルスラーンとエラムですが、漫画版では双方の立場や思考の違いを軸に、本作の主題である身分と奴隷制について掘り下げてくれると確信しました。ここ数回、展開が遅いのが気になるとはいえ、その分、画や内容でキッチリ見せてくれるのが嬉しいです。何せ、原作者が日本で二番目の遅筆を誇る御仁なので、早過ぎるよりも遅過ぎるほうがいいのかも知れません。ちなみに弓の代わりにエラムが使ったのはボーラボーラという狩猟用に用いられる道具。私は『マスターキートン』で知りました。『ファイア&アイス』は屈指の名エピソードです。
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『独眼竜政宗』第15回『めごとねこ』感想(ネタバレ有)
ランバート・クラーク「徳川家光だよ。家康の孫だ」
鳥羽茉理「それじゃ家光の従兄弟で、母親ともども家康に殺されたのは誰?」
正解はリンク先にあります。
10秒以内に応えられた方には卓越した歴史学のセンスがあると思います。ちなみに私は答えを見るまで判りませんでした。センスナッシング。そんな奴が歴史記事なんか書くなよという至極御尤もな突っ込みはさて置き、母系から見た歴史学には従来にない新鮮な驚きが隠されています。今回の内容は女系と姻戚で見た奥州勢力図と評するに相応しい出来栄え。OPクレジットが少な目でしたので『今回は箸休めかなぁ』と思っていたのですが、とんでもねぇ。拙劣な合戦回よりも歴史と作劇の力量がないと描けない内容でした。かくも複雑な奥州の姻戚関係を非常に判りやすく視聴者に伝えられるって……ジェームス三木さん、どんだけ勉強して本作に臨んだんだよ。視聴者にも判りきっていることしか描かない今年の大河に爪の垢……というか、爪そのものを煎じずに飲ませてやりたい。今回も先回同様、ポイントよりも人物に焦点を当てた感想記事にします。
1.ラスボス
お東の方「竺丸を三春の如き小国へ遣って何になります? 清顕殿の御後室は相馬の出ではないか。しかも、殊のほか気性の強い方と聞いております。竺丸がいけば事々に難癖をつけ頭を抑え込むに相違あるまい」
視聴者全員、
『それをアンタがいうのか』
と突っ込んだに違いない上記の台詞。当事者たる政宗とお東の方の双方が真剣に対立している分、余計に笑えました。真の笑いとは真面目の中に内包されているもの。斟酌するのも畏れ多いことながら、ジェームス三木さんも本稿を書きながらニヤニヤしていたと思います。書いている本人がニヤけないネタは見ているほうも笑えない。『おぎやはぎ』の格言です。
それはさて置き、今回で改めてラスボス臭を漂わせ始めたお東の方。政宗の志とは本編で描かれていたように『血に拘っては領主の道を踏み外す』という血縁ク○喰らえ主義。対するお東の方は何よりも血縁第一主義。彼女の中では公=御家の大事と私=血の縁が渾然なるがままに見事に両立しているんですね。ある意味で公私混同。でも、これは別にお東の方が保守派とか悪者というのではなく、そもそも、彼女に与えられた役割が第一話で描かれたように伊達と最上の鎹になることなので、当然の帰結なんです。主人公の方途を阻む存在にも拘わらず、見ている側もお東の方に自然に感情移入できる。否、今日的な価値観としてはお東の方のほうが近いので、この高い壁を主人公が如何に越えるかに注目せずにはいられない。全くよくできています。
更に愛姫と猫御前の冷戦に対しても、義理の母親の立場から鷹揚にして毅然たる態度で両名の立場を諭し、その心中を慮るなど、見事なまでのパーフェクト超人っぷりを発揮。もっといえば、ここまで公正なスタンスで息子の嫁たちに接することができるお東の方が、竺丸の婿入りの件で政宗に正面から不平不満をぶつけるのは、政宗に対して隔意がないことの逆説的な表現であり、政宗が母親の不満を受けとめられるほどに成長した証ともいえるでしょう。何かにつけて建て前や優しい嘘が人間関係のリアルな緩衝材として描かれる本作であるからこそ、本音でぶつかりあえるのは真の絆で結ばれている者同士だという暗黙の表現と思われます。
2.めごとねこ
女系や姻戚関係から見た奥州勢力図という歴史劇の要素と見事に並立して描かれたのが『めご』と『ねこ』の対比。まぁ、もっとぶっちゃけると男から見た正妻と側室の典型図とでもいいましょうか。
まずは愛姫。一言でいうと重い女です。特に今回は実父の死&実家の御家騒動&側室の誕生というバッドイベントの連続で今までにも増して心を閉ざす傾向に拍車がかかりました。これは男にとっては非常に厄介な相手です。単純に御機嫌取りが難しいのも事実ですが、それ以上に愛姫を従わせられないのは実家の田村家を従わせられないのと同義なんですね。公私共に男の器量が問われる相手なんです。加えて、彼女との間には最低でも二人の子供をつくらなければいけないというノルマがある。如何に絶世の美女が相手でも愛情の結果としてではなく、ノルマとしての成果を課されると、男としては心身共に萎えるわーという心境に陥らざるを得ない。
一方で猫御前こと飯坂局にはそういう気遣いは必要ありません。同盟国の田村家の出である愛姫と違い、別段に実家に気遣いをしないでいい家臣の息女なので、上記のようなノルマを感じなくてすむ。彼女との間に子供ができなくても、誰彼に批判される筋合はないので非常に気楽に接することができるんですね。加えて、本作の飯坂局は『猫』という渾名からも判るようにアカラサマに、
愛人体質の女性
として描かれています。勿論、これは史実の飯坂局への評価ではありません。そもそも、本作の猫御前は政宗の複数の側室の集合体として描かれていますので、特定の誰かという論議自体が無意味です。その点を御了承頂けると幸いです。ここで指摘したいのは政宗と愛姫の間に長年、子宝が授からなかったことから逆算して飯坂局のキャラを設定する巧さであり、政宗≒男性視聴者の共感を得るに足る女性像を描いたジェームス三木さんの見事さです。男性としてリアルに政宗の心情が判る。大河ドラマの脚本家は何よりも歴史劇に通じていなければいけませんが、それだけでは大河にはなってもドラマにはならない。時にメロドラマを思わせる定番にしてベタな描写で視聴者に寄り添うアザトサが必要なのかも知れません。『おんな太閤記』なんてガチの橋田ドラマにも拘わらず、充分に面白かったのが傍証といえるかもです。
尚、本稿の女性観は全く以て男性のワガママに基く偏見です。その点も御了承のうえで御笑覧頂けると幸いです。
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『ハートキャッチプリキュア!』(再)第46&47回簡易感想(ネタバレ有)
今季の『ハピネスチャージプリキュア』は恋愛禁止を掲げた本人が素でジゴロみたいな真似をやらかしたために人間関係ドロドロになりそうで、女の子向けのアニメでやっていいのかと疑問に思いましたが、よく考えたら、方向性は違えども途中から女の子向けのアニメでなくなった作品は『ハトプリ』という先例がありました。終盤四回は完全にアクションアニメの王道。これ、本当に日曜朝八時半からやっていたんだよな? 今更ながら自分の記憶に自信がなくなってきた。まぁ、上記のように『ハピネスチャージ』も大概ですが。神様があんなヒモみたいな男でいいのか。そもそも、世界が乱れたのもラスボスを手酷いフリ方で捨てた神様の所為みたいですしねぇ。去年の岡田よりも酷い。アイツは無能なだけで誰かに迷惑をかけたワケじゃなかったからな。いや、別に文句をいっているワケじゃありません、念のため。寧ろ、平成ライダーのようにドロドロとした人間関係をプリキュアで見てみたいという邪な欲望すらあります。間違っている?
今回も二話分まとめた感想でポイントは3つ。
1.ここは俺に任せてお前は先に行け
クモジャキーとコブラージャを足止めするために残留するマリン&サンシャイン。まさにアクションバトルものの王道……ですが、思い返すと意外と記憶にない上記のシチュエーション。パッと思いついたのは『聖闘士星矢』くらいか。馬越さん繋がりで。逆にベタ過ぎてあまり見かけないともいえます。あ、そういえば先期のプリキュアでもやっていました。アクションバトルの系譜としてはマリンにパイルダーオンするコフレやクモジャキーの拳で用意されたバトル会場の男塾っぷり(八龍制覇の第一戦ね)が地味にクる。こんなネタ、最近の視聴者には判らんだろ。
この戦いもバトルがメイン過ぎて『強さ』と『美しさ』というクモジャキーとコブラージャが戦う理由が結構等閑。あんまりそういうことを考えないで見たほうが面白いかも。敢えて意味を見出すとしたら、クモジャキーの強さに対するマリンの反論。強さは手段であって目的じゃない。そこを取り違えると強さに溺れることになる。あとは真の強さとは力そのものではなく、己よりも強大な相手に立ち向かう勇気にあるという点。最近、どこかで見たなーと思っていたら、今月号の『修羅の門』でした。
まぁ、そんなことを言いつつも、
クモジャキー「精々、俺を楽しませるぜよ、キュアマr」
キュアマリン「」ゴル━━━(((( ゚Д゚)=○)゚∀゚);'.;'.・━━━ァァ!!
とクモジャキーさんの台詞も終わらないうちにジョルトの右ブローを炸裂させるのがプリキュアの恐ろしさ。この精神は何もしていないオレスキーさんの合宿を奇襲でツブそうとした今季の面々にも脈々と受け継がれています。プリキュアたるもの何が何でも勝たねばならない。勝たねば大事なモノを守ることはできない。なまじのロボットものよりも勝利への執念が必要とされるのがプリキュアです。
2.強さの代償
寧ろ、強さを求めた代償を象徴するのがゆりさん。いや、別にゆりさん本人には何の責任もないのですが、プリキュアの枠でアクションバトルを描きたいというスタッフの所為で、色々と手酷い状況に置かれてしまいます。少女向けアニメの枠を超越した強さを誇るゆりさんには、少女向けアニメでは滅多に見舞われない境遇―亡夫(コロン)の仇が実の父とか、終生のライバルが異母姉妹とか―が用意されている。一瞬でマミ○たほうがマシなレベルですね。しかも、次回は更なる衝撃の展開。強いってことは悲しいってことだ。より多くの悲しみを経験した者が強くなれるんだ。何か無想転生みたいだな。強さは大事ですが、闇雲に求めるとひどい目に遭いますよというスタッフのメッセージに思えなくもない……もない?
しかし、ゆりさん、よく一目でサバーク博士が父親だと判ったなぁ。写真の面影が全然ないやん。流石にゆりさんはちゃんと自分の変身を解いて正体を明かしました。数年ぶりに逢った娘があんなコスプレチックな恰好をしていたら、どんな寛容な父親でも平静でいられないでしょうからね。両名共、落ち着いて話す機会があったら、
サバーク博士「ゆり……おまえ、何て恰好を……何処で働いているんだ!」
月影ゆり「お父さんこそ、何時の間に私に妹ができたのよ!」
という会話になったに違いありません。言葉にならないことは時に救いですらあります。
3.姉妹激突
ダークプリキュア「……闇が光を飲み込む時が来た」
キュアムーンライト「…………プッ」
かなり厨二チックな台詞から開幕するキュアムーンライトVSダークプリキュアの最終決戦。お姉ちゃんの前でカッコつけたかったんでしょうか。この台詞の前も高い所で待ち構えていたにも拘わらず、わざわざゆりさんの前に下りてきて、もう一回、同じ場所に戻るという意味不明な動きを見せたダークプリキュア。つぼみへの牽制でしょうか。まぁ、ゆりさんはゆりさんで、垂直の柱を駆けあがるまではいいとしても、バク宙で先端にたつとかムダに美しい動きを見せてくれます。やはり姉妹ですね。
とはいえ、バトルそのものは本作のシングルマッチで随一の出来栄え。打撃のSEも他のメンツよりも重く聞こえます。まさに拳でしか語りあえない男と男の真っ向勝負。同時並行で描かれるマリン&サンシャインVSスナッキー軍団の温度の差が凄い。いや、そっちはそっちで面白いからいいんですけれども、あまりにもムーンライトVSダークプリキュアのバトルが凄過ぎて、主人公のつぼみが置いてけぼり状態というのは如何なものか。一応、地球をバックに、
キュアブロッサム「私は……この世界が大好きです!」
と大見得を切る=地球を背負う場面があるんですが、自らのチェンジの契機として思い出す画像が、
これというのがクスッときます。こんなシリアスなシーンに捻じ込むなよ。
それでも、サバーク博士が実父&ダークプリキュアが異母姉妹と判って放心状態のゆりさんに奮起を促すのは主人公の面目躍如。最弱のプリキュアが最強のプリキュアを復活させる。これは45回の無名の人々がヒーローを支えるという構図に近いものがあります。そして、ブロッサムの援護で妹相手にガチ勝負に出るゆりさん。カッコいいなぁ、大人気ないけど。バトルの〆の、
キュアムーンライト「ハァァァァァァァァァァトチャァァァッチ!」
のフレーズ、復活第一声並みのコブシ入っちゃってます。しかも、食らったダークプリキュア爆砕。完全に浄化技ではない。つーか、どう見てもゆりさんが主人公アニメの最終回。BGMもゆりさんのキャラソンですし、ムーンタクトに添えられた手のエロさも合格。これ、実際に見ていた時は『ラスト2回でつぼみが主人公になれるシーンがあるのか?』と本気で心配になったものです。幸い、杞憂に終わりましたが。
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『独眼竜政宗』第16回『南北の敵』感想(ネタバレ有)
ブログの初期から大河ドラマの感想を書いていますが、実は他のブロガーさんの大河感想記事は務めて読まないようにしていました。私は非常に意志の弱い人間なので、他のブロガーさんの記事を読むと感想の内容がそちらにブレるのが目に見ているんですね。少なくとも、自分の感想をUPするまでは他所様の記事は読まない。これが私のスタンスでした。しかし、御承知のように『軍使官兵衛』は感想記事をやめました。当該題材の『独眼竜政宗』もストーリーのポイントを絞った内容というセミリタイヤ状態なので、現在は結構あちこちの感想記事に目を通させて頂いております。
そんな中で今、大河ドラマの感想記事で最も熱い(当社調査)のがRinkaさんのブログ。『独眼竜政宗』の長所と『軍使官兵衛』の短所、その双方を情感と実践性に溢れた文章で綴っておられます。特に男性視点では容易に斬り込めない女性キャラへの領域に容赦なく踏み込んでおられる点が非常に勉強になる。『軍使官兵衛』の光さんという『特に何かやらかしているでもないのに虫が好かないキャラ』に対する私のモヤモヤ感をバッサリと断罪して下さったのは、思わず、
成程! スカッとしちゃった!
と膝を叩いてしまいました。上記のように私のブログの大河感想はセミリタイヤ状態なので、二作品の詳細で精緻な感想を味わいたい方は是非、Rinkaさんのブログに足を運んでみてはいかがでしょう……というか、強くお勧め致します。他の方の記事を読んでこそ、自分の視点の客観性を意識できる(保てるワケではありません、念のため)ということを改めて認識した今日この頃。
今回のポイントは3つ。
1.アバンタイトル
先回は某ダ○スベイダ○の元ネタとなった政宗の具足の紹介という本編と全く関係のないアバンタイトルでした。今回も成実と小十郎の為人という一見、本編と関係のない内容に思われますが、実は真逆。今回は出番の少ない両名ですけれども、この二人が傍にいなかったがために政宗がシクったという理由づけになっているんですね。この技法は『風林火山』でも使われていました。上田原の戦いや砥石崩れといった武田信玄がボロ負けした戦いの際には主人公の勘助が諸事情で主君の傍にいない。それゆえ、信玄は判断を誤り、敗北を喫したという構図。それを主人公ではなく、超重要人物とはいっても脇役でやっちゃうのが『独眼竜政宗』の凄い点。敢えて描かないことで、そのキャラが如何に重要なのかを描く。しかも、アバンタイトルで。アバンタイトルの段階で既に近年の大河ドラマの本編の構成を凌駕しているというのは『独眼竜政宗』の凄さを讃えるべきなのか、近年の作品の不甲斐なさを責めるべきなのか。余談ですが、甲信越最強武将は上杉謙信。次いで村上義清。異論は認めない。
尚、伊達成実が残した『成実記』全三巻がそれぞれ『天』『地』『人』と題されているのが如何にも成実というか。この前のめりのカッコつけ感が非常に微笑ましい。本編で子供ができないことをうんたらかんたらと言われていましたけれども、主君であると同時に従兄弟の政宗との関係を疑ってしまうのは下種の勘繰りというものでしょう、多分。
2.息をするのも面倒臭ぇ
今回は……というか、今回も登場人物の全ての利害が公私入り乱れて絡まりあうという構成にも拘わらず、誰が何の目的で如何動いているのかが明確に視聴者に伝わるというのが怖い。作中では結構貧乏くじの国分盛重にも輝宗との約束を政宗に反古にされたという納得できる動機づけがある。その盛重も政宗の前で輝宗のことを語る際には片手で礼を施しているので、主君への一定の敬意(同時に胡散臭さ)を感じられる。登場人物全員の利害が何らかの形で対立しているのに全員に感情移入できるってどういうことだよ。強いていえば、猫御前の妊娠偽装は流石に擁護できませんが、それでも、当事者同士(愛姫と猫御前)の間で一言も言葉が交わされないという構成には感嘆を禁じ得ません。一歩間違えると昼ドラ並みの二流のドロドロ愛憎劇に堕してしまうのですが、お互いがお互いの立場や身分をギリギリの段階で弁えて踏みとどまっているんですね。
まぁ、その分、夫と二人きりの時は愚痴が多くなるのは必定。そのうえ、愛姫は自罰傾向が強く、何かにつけてドリフのコントのように『私ってダメな女ねェ。貴方の妻でいる資格なんてないわァ』とか始めちゃうので、全ての原因が夫の不甲斐なさにあるにせよ、
伊達政宗「またかよ! 勘弁してくれよ!」
という主人公の心情にも容易に寄り添える。
その主人公もラストで結構な窮地に陥りますが、過程そのものは決して間違った判断を下しているワケではない。勿論、長期的には失策でしたが、中期的な視野としては正しかったとさえいえる。内紛を煽ったモガミンが介入する前に事態を決するというのはモガミンの立場を慮っているとさえいえます。イザ、全面戦争になればモガミンとしてもいきつくトコまでいかないと事態が収まらないワケですからね。そうなる前に伊達家の内紛という形で決着を図ったのは本心はイヤガラセにあるにせよ、政宗の判断は正しかったといるでしょう。
でも、正しいことだけを積み重ねていれば万事うまくいくほど、人生も人の世も甘くはない。道理を枉げて、正義に背いてこそ、道が開ける時がある。それが国と国との争いであれば尚更です。作中で描かれる軍議のシーン。これ、ボツ案や失敗する謀略が非常に高い割合で描かれているんですけれども、これも世の中の現実なんですよね。自称・天才軍師のいうことが全部正しくて、ソイツのいう通りに世の中が動き、逆らった奴が全員没落する。そんなのは悪い意味での嘘ッぱちですよ。百の選択肢の中から一を選ぶ……否、選ばざるを得ない。しかも、それが最上のチョイスとはかぎらない。そして、その失策を取り戻すには膨大な労力を必要とする……というか、取り戻せるだけマシ。これが世の中の現実。そこに主人公と母親の確執まで絡んでくるのですから、まぁ、本作の構造の面倒臭ェこと面倒臭ェこと。でも、何度も繰り返しているように世の中って奴は息をするのも面倒臭ェものですので、これが本作を非常にリアルに感じられる要因なんですね。
つーかさ、マジ、中盤での政宗とお東の方の確執の場面は凄かったですよ。特に負の感情をぶつけたあとで障子越しにしか母親に本心を伝えられない政宗。しかも、直後に自分よりも母親に愛されている(と政宗が思いこんでいる)小次郎と顔をあわせても、それをオクビにも出さない……というか、出せない棟梁の辛さ。ここで感情を出すと内紛になっちゃうんですよ。この点、お東の方は伊達と最上の鎹を自認していても、基底では母親であるので、我が子と意思疎通できなかった悲しさを小次郎の前で曝け出してしまう。母親の愛情の深さと相反する公人としての業の深さが描かれた名場面です。感想記事の初期から述べているように『独眼竜政宗』とは厨二病息子とヤンデレママの半世紀に渡る愛憎ホームドラマなんですね。
3.今週の鮭様
思っていたよりも久々の登場となった鮭様。うーん、昔の記憶ではもっと出番があったように記憶していたんですけどもねぇ。私の記憶力がアテにならないのか。それとも、演ずる原田芳雄さんの存在感が半端ないのか。多分、後者でしょう。今回も登場するや、場の空気を一気にかっさらっていきました。キンキン&志麻姐さん&原田のアニキ&勝新&技巧派の極北たる津川さん……かくも凄味に満ちた人々を相手に一年間揉まれたナベケンが名優になったのも宜なるかな。それはさて置き、近年仕入れた知識で鮭様の萌えキャラの側面を知ってしまうと、本作の原田さんにも萌えてしまいます。特に謀略の糸を張り巡らす片手間で息子と碁に興じる場面。昔は『凄ぇ! 余裕綽々じゃん!』と思っていましたが、今回見直すと、
最上義光「義康、手前の番だ」
最上義康「父上の番でございます」
最上義光「……お、そうか」
アカラサマに動揺しているじゃないですか!
思わず、フフッてなった。戦国の知識がなくても楽しめますが、あればあったで充分に楽しめるのが『独眼竜政宗』です。
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徒然日記 ~2014/07/21~
先週の金曜日のアクセス数が近年にない突出した値を叩き出していて、思わず、画面に茶ァ噴きそうになりました。特に新しい記事や目立つ話題をUPしたワケでもなかったので、買って半年でPCがぶっ壊れたのかと思いましたが、調べてみると『借りぐらしのアリエッティ』の感想記事へのアクセスが殆どでした。先週の金曜日は『思い出のマーニー』の封切り前日ということで『アリエッティ』が放送されていたんですね。『思い出のマーニー』は完全にノーマークの作品でしたが、deluxeさんが御自身のブログで良作と評価しておられた&マーニーの母親を甲斐田裕子さんが演じておられるという情報を耳にしたので、ヒマを見つけて映画館に足を運んでみようと思いました。昔、何気に書いた記事が時を隔てて何かの拍子にアクセスされるのは、ブロガーとして感慨深いものがあります。
海の日にUPする徒然日記ですが、全く海とは関係ない話題を書き綴る予定。七月以降、妙に見る番組が増えたので、そちらを中心に語っていこうかと。
1.反省してます
『二百三高地』が先週の日曜日にBSで放送されていました。勿論、録画して観賞。何度目かなぁ。本作はエグイシーンも多くて、私の母親などは『二度と見たくない』と語っていますけれども、それでもエンタメ要素もふんだんに盛り込まれているので私はギリギリ繰り返しの視聴に耐え得る作品だと思っています。ちなみに私が『名作だけれども二度と見たくない』と思うのは『ジョニーは戦場へ行った』と『火垂るの墓』と『ショア』。あれはダメです。勘弁して下さい。
さて、何度目かの『二百三高地』を見て、しみじみと思ったのが、
この作品の主題歌を担当したまっさんが右○と批判された理由が全く納得できない
ということ。『美しい国ロシア』に憧れていた古賀小隊長が戦場に叩き込まれた果てに『ロシアは敵だ! NADEGIRIだ!』と憎悪に凝り固まる痛ましくも自然な流れ。古賀を愛する女教師も青年が愛するロシアを愛そうとしたものの、古賀の戦死で黒板に『美しい国ロシア』と書くことができなくなる。確かに通り一遍の反戦映画ではありませんが、絶対に戦争を賛美する内容ではない。まっさんの主題歌も悠久の時空の中における生命の儚さを歌ったもので、それ以上でもそれ以下でもない。イデオロギーに目が曇ると当たり前のことが当たり前に見えなくなる。全く、困ったものです。
尤も、これは誰彼を批判するのではなく、今回は自省の意味で書かせて頂いております。何故かというと最近、BSで放送されている『ワールドプロレスリターンズ』を見るようになったのですが、これが結構面白いんですね。初期四天王プロレス(田上がアームボンバーを使い始めた頃)から入った私には新日への偏見が長く心の奥底にありました。闘魂三銃士は兎も角、第三世代はもうダメ。況や『神の子』とか『百年に一人の逸材』とか片腹痛くて臍でコーヒーが湧いちゃうほどでしたけれども、実際、今年のドームの試合はなかなかに見応えがあった。嘗てのUWF抗争で判るようにプロレスを楽しむ要素の一つは自分たちが支持するファイトスタイルを至上として、他団体との差別化を図ることにあります。まさにイデオロギー闘争。それはそれで非常に興奮できるのですが、イデオロギーに感けるといい試合でも歪んだ目で見てしまう。この年齢になって漸く、イデオロギーの害悪を実感した次第です。
ついでにいうと久しぶりに見返している『∀ガンダム』も抜群に面白いのよ。若い頃に見た時は『富野さん、Vガンのリハビリに必死なんだなー』とヒネた目で観賞していましたが、今回は『富野さんはこういうストーリーをガンダムの枠に囚われることなく書きたかったんだなぁ』と思えてきました。ディアナとキエルの入れ替わりという初見時には突拍子もないと思えた設定も、今見ると恐ろしく物語を盛りあげる要素になっているのな。ガンダムも作品の括りでファン同士がいがみあうイデオロギッシュな要素が強いですが、ニュータイプ思想の基底である人は判りあえるという考えを忘れないようにしたいです。
あ、それと『二百三高地』を見る度に出演者のクレジットに出てくる『榊原良子』の四文字が毎回気になって仕方ありません。これは『あの』榊原良子さんですかね? 私が日本一好きな女優さんなので、詳細を御存じの方、情報プリーズ。
2.ドラマ版『アオイホノオ』簡易感想
大河と『相棒』以外では久々に全編通して観賞しようと考えている実写ドラマ作品。これ以外だと『孤独のグルメseason4』だけかなぁ。漫画原作ですけれども、これはアニメ化よりも実写化のほうが面白くなるに決まっています。その点では『聖☆おにいさん』は何で映画化の際にアニメにしちゃったのかサッパリ判らん。ジョニデか浅野忠信さんにイエスを演じさせるべきでした。
さて、肝心のドラマの感想。作者本人が原作最新刊の宣伝帯で、
焔燃「アニメ化はいいがドラマ化は……だいたい原作通りにならない!」
とかヤバイこと書いちゃっていましたが、本作は普通に漫画のドラマ化作品として見れました。しかも、結構再現度が高い。主演の柳楽優弥さんもハマっていました。微妙にカッコ悪いホノオの疾走シーンは原作のイメージそのまんま。凄ぇ。あと、トンコさんもいいキャスティングしています。ああいう微妙に美人な先輩って大学のサークルに一人はいたよね。
一方でホノオのハイテンションとローテンションの切り替えは真っ正直過ぎにも思えました。ホノオの傲岸さというのは単行本最新刊でも描かれていたように『恥をかきたくなくて頭がいい感じに見えるように振るまっている』結果なんですね。本人も心の奥底では自分は大したことないのが判っている。ホノオは自分が天才とは思っておらず、当時のクリエイターの質が落ちている(と思いこんでいる)から俺程度でもプロになれるという舐めた考えにドップリと浸かっているに過ぎない。ホノオのハイテンションとローテンションは中島敦が『山月記』で記した、
『臆病な自尊心』と『尊大な羞恥心』
そのまんまなんです。この辺が単純なテンションの落差で片づけられちゃっているように思えました。島本和彦が描く熱血は小道具であって本音じゃないんですよ。まぁ、まだ第1話なので、これから先で徐々に描かれていくのかも知れません。でも、
庵野秀明「ショッカーのアジトはどこだ!」
何でこれをカットしたんですか! これはハボックのボインネタと同じで絶対にやらなきゃダメでしょう!
あ、もう一つの『孤独のグルメ』は完全に原作無視していますけれども、あれはあれでOKですね。松重豊さんの御飯の食べ方は食事に夢中なのに背筋が伸びていて、見ているほうも幸せな気分になれます。ゴールデンでしょーもないグルメ道中とか流すよりもseason1~3を再放送してくれ。
3.深夜枠
アニメの深夜新規枠で見ているのは『ソードアートオンライン2』。あとは『JoJo』と今秋の第二期に備えて再放送されている『PSYCHO-PASS』くらいですね。我ながら手堅く、面白味のないチョイスです。
『SAO』の作風には何かと批判もありますけれども、リアルとヴァーチャルの価値観を同列に置いている点に好意が持てます。このテの作品はゲームを舞台にしながらも結局は『現実世界にしか真実はない』みたいなつまらない結論に到達しがちにも拘わらず、本作は『リアルとヴァーチャルの違いは処理できる情報量の差でしかない』という点で一貫している。一口に現実といいますが人間が認識している現実も脳が処理した情報を元に構築された仮想現実に過ぎないのは京極堂が指摘した通り。リアルとヴァーチャル、どちらの価値が高いとか一概に決めつけるのはナンセンスな発想。逆に『ヴァーチャルで本気になれない奴がリアルで本気になれるワケがない』という本作の主張にこそ熱さを感じます。第二話の、
シノン「せめてゲームの中でくらい、銃口に向かって死んでみせろ!」
は『みゆきち補正』を差っ引いても名台詞。あ、でも、一番好きな女性キャラはリズベットです。そばかすは正義。
『PSYCHO-PASS』は昨年のベスト10の記事でも述べたように近未来SFクライムサスペンスにも拘わらず、溢れるデカ魂を感じずにはいられない名作。しかも、そうしたデカ魂を持つキャラのほうがそれぞれの事情で物語からの退場を余儀なくされる辺りは頭がよくなり過ぎた近年の刑事ドラマの実情を踏まえています。デカ魂の何たるかを知りたければ本作を見よといいたい。宜野座の残念なイケメンっぷり&朱ちゃんの低くて甘くて乾いた声の演技も見所です。これに比べると、
劇場版『SP○C』完結編
は御粗末の一言に尽きました。何かにつけてゴリさんがデカ魂を口にしていたのに、肝心のストーリーとデカ魂に何の関係もなかったな。そもそも、二部構成にした意味も全く感じられませんでしたしね。今年のラズベリー賞最有力候補。
4.神は死んだ
ここ数回、今季のプリキュア『ハピネスチャージプリキュア』がアホみたいに面白くなってきました……というか、明らかにアホ話です。どのくらいアホかというと、
こんな台詞がポンポン飛び交うくらい。冷静に見ると凄い台詞だな、これ。ニーチェも吃驚の神の凋落感。まぁ、本作の神は凋落しても仕方ないレベルの鬼畜野郎なので違和感ゼロなんですけれどもね。だいたい、自分で『プリキュアは恋愛禁止』と謳っておきながら、めぐみを御姫様抱っこでお持ち帰りしたり、御粥をフーフーアーンしたり、自分のことを名前で呼んで欲しいとかいっちゃったり、どんだけジゴロなんだよ。そもそも、下着も着けずにシャツの第二ボタンまで外してギターを爪弾いている段階で変態ナルシスト確定(偏見です)。更にいえば、コイツは自分が敵のラスボスをこっぴどく振った(推定です)所為で世界が危機に瀕しているのを自覚しているのに、同じことを年端もいかない少女相手に繰り返すつもりときたもんだ。
今週の放送で10周年のコメントを寄せて下さったダイヤモンドさんでなくても、こう考えるのは必定。六花はブルーがマナに手を出してきたらマジでやりそうで怖い。真面目な話、本作におけるブルーの役回りって何なんでしょうねぇ。個人的には自分が創設したグループのアイドルに手を出すプロデューサーの暗喩……というか、そのまんまなんですけれども、昨年は叶わなかったイケメン男のラスボス化に向けての布石なのかもです。
色々書いてきましたが、ストーリーは好感度高めです。今回、ひめが人魚になったのは誠司への思いが恐らくは叶わないであろうことの伏線なのでしょう。悲恋は青い魔法少女の宿命か。
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『ハートキャッチプリキュア!』(再)第48回簡易感想(ネタバレ有)
『名作は最終回の一つ前の話が一番面白い』という理論は、このブログで何度も述べた通りですが、本作も例外ではありません。最初から最後までノンストップのメチャ燃え展開。これも何度も述べたように完全に少女向けアニメではなくなっています。
キュアブロッサム「今、万感の思いを込めて!」
の台詞といい、こんなもん、小さなお友だちに判るワケねーだろ。だが、それがいい。真に優れたオマージュやパロディは元ネタが判らなくても楽しめるのは『とり・みき』が証明ずみです。一年に渡った『ハートキャッチプリキュア!』の感想も今回を含めて@2回。流石に残りは全力でいきます。今回のポイントは4つ。
1.姉妹激突・完結編
月影博士「この子は心の大樹を研究して手に入れた技術と、おまえの体の一部を使って造られた……おまえの妹だ」
んーと、それは微妙に妹じゃないんじゃないでしょうか。ラウ・ムウのように親子になっちゃうんじゃないかと思うんですけれども、そんなことはどーでもいーと思えるほどに泣ける展開その一。月影博士に抱きつくゆりさんに向かって放たれた、
ダークプリキュア「サバーク博士から離れろぉ!」
は胸に響きました。父親を取りあう姉妹の図。上記の台詞の直後、月影博士の身体に回した腕に力を込めるゆりさんの反応が実にリアルで生々しい。バーローを筆頭にショタキャラが多い高山さんですが、この人は女性の情念を全面に出すキャラのほうが似あうと思う。消滅に際してゆりさんの心の種の半分を残していくダークプリキュアですが、これは別にいい話じゃないと思います。結局、ムーンライトとダークプリキュアの戦いは世界の運命ではなく、どちらが父親の愛情を独占できるかの勝負でしたので、肉弾戦では敗れても、ちゃんと父親に抱きしめてもらえたダークプリキュアの勝ち。もう、ダークプリキュアはゆりさんの代わりの存在ではなくなったので、ゆりさんの一部(心の種)に拘泥する必要がなくなったということでしょう。最期の笑みも『私の勝ちね』と受け取ったほうがシックリくるかもです。
2.月影博士の憂鬱
月影博士「あらゆる生命と心を見守る心の大樹。私は、その秘密を解き明かせば皆を幸せにできると信じていた……『魔法のように皆が幸せになる方法などない』という言葉さえ、耳に入らないほどに。幸せは皆が少しづつ頑張って掴むもの」
月影博士失踪の真実。何か重大なコトで悩んでいたのでしょうか。イマイチ、月影博士が石仮面で悪落ちするほどに現世に絶望していた動機づけが不明瞭なので、とってつけた感は否めないのですけれども、往年のアクションバトル作品へのオマージュと取ればOK。これも、そんなことはどーでもいーと思えるほどに泣ける展開その二。
実をいうと後半のメインバトルを除けば、この月影博士の述懐が今回一番の名場面。何が素晴らしいかって、月影博士の『幸せは皆が少しづつ頑張って掴むもの』の台詞にマリンとサンシャインの疾走シーンがかぶさっているんですね。これ、単純に月影博士の台詞だけだと画が保たないので動きのある画面を持ってきたというのもあるでしょうが、幸せに向かうためには一歩一歩大地を踏みしめなければいけないというメッセージなんですね。マリンもサンシャインも飛ぼうと思えば飛べるんですよ。そこを敢えて走らせる目的は何かといえば、そういうコトなんじゃないかと。
3.ノリコとかカズミとか
ラスボスたるデューンとの戦いでゆりさんを庇って月影博士が爆死するという衝撃の展開。夫(コロン)を殺されて、図らずも異母姉妹を手にかけて、父親が自分を庇って物理的にも蒸発してしまうというトリプル役満級の災厄に見舞われるゆりさん。特に後ろの二つは10分くらいの間に立て続けに発生。うん、まぁ、そりゃあ、憎しみに駆られるのも無理はありません。でも、それが許されないのがプリキュアの宿命。戦闘勇者さんから頂いたコメントを借りれば、
「倒すだけなら狗でもできる。我等プリキュアは必ず勝たねばならぬのだ!」
ということ。プリキュアは勝ち方にも拘らなければならない。何より、憎しみは敵のパワーの源なので、それを駆りたてれば駆りたてるほどにデューンには勝てなくなる。一時の感情で戦ってはいけない。それがプリキュア。シンドイなぁ。
まぁ、ここも憎しみの連鎖を絶つというつぼみの主張も唐突な感じがするんですけれども、これもそんなことはどーでもいーと思えるほどに泣ける展開その三。今まで後輩プリキュアとしてムーンライトに憧れていたブロッサムが初めて対等の立場でゆりさんに説教かます場面はプリキュア史上屈指の名場面です。ムーンライトを、
キュアブロッサム「月影ゆりッ!」
と呼び捨てにするシチュエーションは絶対に『トップをねらえ!』へのオマージュ。復活したゆりさんに変身を促されて一歩前に出るつぼみ。ここで初めて、キュアブロッサムがキュアムーンライトと肩を並べるワケですよ。49話中48話目で漸く、主人公が先代に並ぶ。長かった! でも、それほどにゆりさんの壁は厚く気高かった!
4.ベストバウト
学園祭で流れた挿入曲『heart goes on』に乗っての最終決戦。ファッションショーが花咲つぼみの集大成であれば、この戦いはキュアブロッサムの集大成という意図ですね。この曲は燃えるよなぁ。感想記事のために視聴したら欲しくなって密林で注文してしまいました。出勤時に車内で聞いています。この戦いはプリキュア10年の歴史中でベストバウトに選出してよいでしょう。次が『スマイル』中盤のキャンディ救出作戦。
内容に関しては見て頂くしかないんですけれども、冷静に見返すとブロッサム単体でデューンに効果的なダメージを与える場面は殆どないんですね。主人公なので『ドキプリ』のマナのパルテノンモードのような見せ場があってもいい筈なんですが、史上最弱のプリキュアの異名は伊達じゃない。強さなんてモノは一年間かけても簡単に手に入るモノじゃない。でも、ブロッサムが戦闘で全く役に立たないかといえばそうではないのも確か。ムーンライトがデューンに効果的なダメージを与えるシーンの殆どでブロッサムのフォローが入っている。ブロッサムが空振りでも攻撃したり、逆に攻撃を受けてデューンの体勢が崩れた瞬間にムーンライトのエゲツナイ打撃が入っているんです。マリンVSクモジャキー&サンシャインVSコブラージャで描かれたように、真の強さとは単純な攻撃力ではなく、仲間のために身体を張れるかという主張を無言のうちに体現しているブロッサム。こここそがブロッサムが本作の主人公であることを証明したシーンといえるでしょう。
ピンチに駆けつけるマリン&サンシャイン。自分で張ったバリアーでもないのにドヤ顔でブロッサムに微笑むえりかわいい。マリンVSデューンも贔屓目にみてマリンの善戦というレベルなのも結構シビアに個々の戦闘力が設定されている傍証といえるでしょう。一方でサンシャインの攻撃のエグイことエグイこと。デューンのパンチをダッキングで避けてボディを連打連打。両手をかざして、顔面狙いと思わせてのダメ押しボディブロー⇒旋風脚。更にブロッサムの近接戦、と思わせてサンシャインフラッシュ、と思わせて巻きあがる砂煙に紛れてのムーンライトの蹴り。情報量多くて何度も見返さないと攻防に追いつけないよ。単純に動いているだけじゃない。ちゃんとフェイントや作戦がある。今回の攻防がヘタな少年漫画よりもバトルものしていると評される所以です。
トドメとばかりに放たれるフォルテウェーブ四連弾&ツインフォルテッシモ。今までは殆ど単独でフォルテッシモを放ってきたムーンライト(サンシャインとは一度あったかな)が後輩であるブロッサムの同道を許す=同格のプリキュアと無言の笑顔で認める場面もいい。これで、ゆりさんとフォルテッシモしていないのはえりかだけですね。何でしょう、この疎外感。そして、ダメ押しに繰り出されるハートキャッチオーケストラ。
もうやめて! デューン様のライフはとっくにゼロよ!
デューン様を抹殺する気満々。ここで終わっても誰も文句いわない……というか、ハートキャッチオーケストラの段階で視聴者もドンびき気味なのに来週もバトルが続くというのは本放送の時はどうなるんだよと思ったものです。まぁ、最終回の戦いは想像もしなかった方向と予想を遥かに越える必殺技でトドメが刺されるんですが。
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『独眼竜政宗』第17回『宮仕え』簡易感想(ネタバレ有)
次回は本作のラスボスであるお東の方御出陣という一大イベントを控えている所為か、若干、控え目の構成。個人的にも先日、レンタルで観賞した某大作映画がリアルで、
というどうしようもない内容で、いまだにダメージが抜けないので今回は簡易感想で勘弁して下さい。いや、マジでひどかった。作品を見た所為でトイレで戻したのは『北の零年』以来。毎週『独眼竜政宗』を見ていると普通の作品への評価も厳しくなるのに、あんなん見たら戻すっちゅーねん。今回のポイントは2つ。
1.ラスボス
お東の方が男の論理と真っ向勝負する次回の内容を踏まえてか、今回は彼女のスタンスの再確認がメイン。政宗の覇道は公人としては応援する。ただし、御家を危うくするマネは絶対に許さない。そして、自分が鎹となる伊達と最上の手切れも断じて認めない。これが次回に繋がります。
まぁ、次回は次回として、今回の内容に触れると基本的にお東の方の主張は間違っていないんです。寧ろ、あからさまな正論。純軍事的にも南北の勢力を同時に敵に回しては絶対に勝てない。伊達包囲網の一角を担う(というか、裏で糸を引いている描き方をされている)鮭様と和睦して、戦線を限定化するのが最上の手。そもそも、伊達家が袋叩きに遭っているのは当時の奥州の安全保障条約である血の盟約をガン無視して、あちこちに喧嘩を売って回ったからなんですね。軍事的にも政治的にも人情的にも政宗の行動は当時の奥州の人々の反発を招いたがゆえに今日の危機がある。勿論、政宗には『血の繋がりは天下を狙う足枷にしかならない』という思想があり、実際に先駆者である信長の覇道を慮れば、これはこれで正しい判断。全く真逆の価値観の持ち主が同じ城で起居を共にしているのに全く違和感を感じさせないのが本作の凄味ですね。
その『違和感を感じさせない』理由の一つは、ベタなようですけれども、政宗とお東の方の母子関係の描き方の巧みさでしょうか。ブツクサと文句を垂れているようで、お東の方の言葉や表情からは政宗を芯から慮る優しさが窺える。『最上と和睦せよ』というのは御家大事&鮭様の妹というお東の方の立場からの言葉であると同時に、彼女なりに政宗を心配してのこと。でも、政宗は助言を聞いてくれないので、その代償に素直な小次郎を溺愛してしまう。業の深い女。しかし、そんな政宗が実は自分が元服の際に贈った水晶の数珠を肌身離さず携えていると聞くと途端にデレるという可愛さもある。それが嵩じて出陣祝いにポケットマネーで火縄銃を五十丁も贈っちゃうという重度のヤンデレママぷりまで披露。それでも、無条件にデレるのではなく、
お東の方「これだけは申しておく。筒先は必ず南へ向けよ。決して北へ向けてはならぬ!」
と釘を刺すことも忘れない。男前な女。でも、政宗は母親の念押しに明解な返答を避けているんですね。いいタイミングで小次郎が入ってきたので、話は有耶無耶に終わらせることができた。最上も敵と見做している政宗にしてみれば『小次郎GJ!』と心の中で呟いたことでしょう。マザコンのくせにDQNな息子。こういう心の裏を読む楽しみがある作品ていいよね。
尚、お東の方関係で今回のMVPは愛姫。お東の方が頑なな心を僅かでも溶かした契機になったのは、夫が母から贈られた水晶の数珠を大事にしていることを告げたからですが、その水晶の数珠は一度、政宗の手でバラバラにされているんですね。確か家督を継いで初めての戦いでボロ負けした時ですか。その時、数珠を修復したのが他の誰でもない愛姫。あの時、愛姫が数珠を繕わなければ、今回の展開はなかった。毎回毎回、不憫な扱いが目立つ愛姫ですが、実は誰よりも政宗の役にたっている。しかも、それを声高に喧伝しない。この辺の描き方も巧いなぁ。昨今(というか、この先暫くは)猫御前に押されっぱなしになるので、うまくバランス取っている感じです。
2.サブタイトル
以前も述べたように先回観賞した時の記憶が曖昧で、今回のサブタイは秀吉に膝を屈してからのものだと勘違いしていました。それゆえ、見始めた時は『サブタイあわないんちゃうかなぁ』と思っていたのですが、ラストまで見ると完璧にこれしかないと思える内容。今回の肝は、
人に仕えるとはどういうことか
というテーマなんですね。もう一つ追加すると人を使うとは如何なることかというテーマもあります。甘言や監禁に遭っても決して節を枉げるを潔しとしない泉田重光、仇敵ともいうべき政宗の元に抜け抜けと降伏に参上した大内定綱が両極の代表でしょう。家中でいえば主の名誉のためには政宗の側室を手にかけることすら辞さない喜多も『人に仕えること』の苛烈さを表しているといえますが、個人的に目を惹いたのは鈴木重信。
「米がなければ百姓から奪うしかない。それができぬというのであればハナから戦などしないほうがよい」
という主張はナルサスと同じですけれども、このテの正論は多くの場合、武断派の反発を招きますし、ヘタをすると粛清の対象になりかねない。それでも、そうした批判を恐れずに己の意見を堂々と主張する重信はカッコいい。流石、十代の俺が惚れた男。いや、今でも好きですけれどもね。大内定綱が政宗に帰順したのも、単純に芦名での扱いに不満を覚えたからではなく、重信のように周囲から見れば異質の存在が主に疎まれることなく、己が本領をイキイキと発揮できる気風を伊達家に感じたからでしょう。
一方で使う側の気苦労も半端ない。それこそ、本編で触れられていたように大内定綱は輝宗の死と因縁浅からぬ人物だけに、これを如何に遇するかは政宗の器量が問われる場面です。南北に敵を抱えた現今、少しでも敵を減らすに如くはない。それも、敵方の内情に通じている存在であれば猶更です。大義、親を滅す。この度量がなければ人を使うことはできない。必要に迫られてのこととはいえ、畠山善継を窮鼠としてしまった頃から見れば、明らかに一皮剥けた主人公でした。
個人的には大内定綱の帰順は伊達包囲網の存外な脆さを見抜いたゆえだと思います。人取橋の戦いの際も連合軍は伊達家を全滅寸前まで追い込みましたが、結局は内紛で同盟は瓦解してしまうんですね。伊達包囲網といえば聞こえはいいですけれども、中央に伊達の領地があるので、各々の連携や連絡は非常に難しい。最短距離で通信を図れば伊達の領内で使者が捕えられる危険がある。それを怖れて使者を迂回させれば、連携にタイムラグが生じる。これを回避するには何処かの勢力が強権を発動して全ての謀略を指揮するしかないのですが、最上も芦名も相馬も結局は、
何でもいいから土地よこせ!
という欲望で動いているので、どの勢力も主導権は欲しいけれども責任は取りたくないという下心がミエミエ。お互いの信頼関係も何もあったもんじゃない。その辺の事情を大内定綱は芦名家にいただけに見抜いていたんじゃないかと思います。
あとはタイミングが絶妙でしたね。この期を逃せば大内定綱が政宗に帰順する機会は永遠に失われたでしょう。伊達家最大の危機であるからこそ、帰順が認められた。以前の記事で政宗と定綱の関係を曹操と賈詡に例えましたが、帰順の時期を見誤らなかった点でも定綱と賈詡は似ていますね。相手の肉親を奪う契機になった点も共通しています。
ちなみに本編のラストで『政宗が小出森城を落とした』とナレーションされていましたが、この際、以前の八百人斬りにも劣らない五百人規模のNADEGIRIが執行されたのは触れられないままでした(確か当該回の感想記事で触れたと思います)。まー君がママンから貰った種子島を嬉々として発砲している裏で、そんなことがあったのか。
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『ハートキャッチプリキュア!』(再)最終回(第49回)簡易感想(ネタバレ有)
先回の感想でも述べたように、スタッフがやりたいことは先回で全部やっちゃった感があるので、今回は大人しめのまとめになるかと思いきや、改めて見るとAパートの傍若無人っぷりが半端ねぇ。流石にBパートで何とかキレイにまとめていましたが、スタッフ的にはAパートのテンションのままで〆たかったのではないでしょうか。ともあれ、ハートキャッチプリキュアの再放送も最終回。そういえば再放送でしたね、これ。一年間、殆どリアルタイム並みのテンションで見てしまいましたよ。
1.最初からクライマックス!
そんな視聴者のテンションを反映するかのように、先回ラストで繰り出したハートキャッチオーケストラから開幕。通常のバンクでも充分にエゲツナイ技ですが、今回、ヒキで映されていた全体像から判るように、オーケストラで出てくる女神様は小惑星レベルの大きさ。そんなものの拳を喰らったら、邪悪とか善良とか関係なしに消滅してしまうと思います。しかし、そのハートキャッチオーケストラを耐えて凌いだデューン様。痛みに耐えてよく頑張った。感動はしませんけど。まぁ、
デューン「この程度では僕は倒せない」キリッ
とかいっていましたが、直後の巨大化してからの暴走っぷりを考えると、これは舐めプをしていたいうよりも、受けたダメージで憎しみに歯どめが効かなくなった&自我が保てなくなったと考えたほうが自然かも知れません。最終回で巨大化するラスボスは多いですが、個人的には『ダイの大冒険』のバーン様最終形態に近いと思います。女神様を凌ぐ惑星レベルに巨大化したデューン様が繰り出す技は単純な素手の打撃。やっていることはアラレちゃんと変わりませんが、流石に大きさが大きさなので洒落になりません。何の技もなく地球を素手でガンガン殴るラスボスっていうのも新鮮ですね。
2.ジェネレーションギャップ
キュアマリン「……笑っちゃうよね。たった十四歳の美少女がデューンと戦うなんて……ちょっくら地球を守ってこよっ!」
初登場の時は空気の読めない発言で出てきたえりかが、今回は誰よりも空気を読んだ、つまり、デューンの巨大っぷりにビビる仲間の緊張を解く発言と共に先駆けを務めるという展開に地味に燃えた。最終回Aパートで誰よりも輝いていたのは間違いなくえりかです。まぁ、その反動がBパートできちゃうんですが。そして、誰もが思っていても口に出せなかったプリキュアの年齢制限にも言及しちゃうえりか。
キュアサンシャイン「えりか、ゆりさんは十七歳だよ」
キュアマリン「あー! そーだった! ゆりさん、ごめんなさいー!」
キュアムーンライト「……逝きなさい」ニコォ
漢字の変換間違えた気がするけれども、まぁ、いいや。
3.テーマらしきもの
キュアブロッサム「ムーンライト、さっきは生意気なコトいってすみませんでした。ムーンライトが一番哀しい思いをしているのに……」
キュアムーンライト「貴方の優しい気持ちと思いやりの心が私に大切なものを呉れたのよ」
冒頭で記したように、既に描きたいことは全て先回で描き切った感のある本作ですが、今回で敢えて主題を捜すとしたら、これ。確かにつぼみにはゆりさんの気持ちを心の底から理解することはできない。所詮、人は一人。哀しい思いをしている人に正論をぶつけるのは或いは第三者の欺瞞・傲慢かも知れない。でも、誰かが正論を唱えないことには歪んだ感情は暴走するしかない。それこそ、巨大化したデューン様が好例ですね。デューン様の姿はゆりさんが陥っていたかも知れない憎悪の陥穽の果ての姿かも知れないと思うと、この場面はかなり深いものがあります。
4.真・ラストバトル
巨大化したデューン様とプリキュア四人のラストバトル。デューン様はバーン様最終形態と同じく、既に本能で戦っている感じで、パンチも完全にテレフォンなんですが、これだけサイズが違うとカウンターをあわせても意味がない。オマケに相手がプリキュアと知るや、それまでの野蛮さをかなぐり捨てて、額からビームまで出しちゃう始末。これをバスタービームと見るか、エメリウム光線と見るかで視聴者の年齢層が分かれます。何とか回避したプリキュアですが、逸れたビームは月を直撃。あれ? 直撃の割に半壊ですんでいます。もしかして、亀仙人のかめはめ波よりも弱い?
そんなデューン様にトドメを刺したのは同サイズにまで巨大化した無限シルエットによる、
「喰らえ、この愛……! プリキュア、こぶしパーンチ!」
凄ぇ。こぶしパンチときたもんだ。『パンチはこぶしだろ!』と突っ込みたくなりますが、本作ではお尻パンチとかおでこパンチとかが平気で繰り出されていたので何の違和感もない。寧ろ、それらのパンチは全て、こぶしパンチの伏線と思えなくもない。この系譜も今季のラブリーパンチングパンチに繋がっています。しかも、伊達英二も裸足で逃げ出すほどに正確な心臓撃ち、ハートブレイクショットです。これにはデューン様もメロメロ。浄化もやむなしか。尚、無限シルエットはよく見るとオッドアイなんですね。右目がブロッサムのピンクで左目がマリンのブルー。芸が細かい。
5.Bパート
平穏な日常に戻った世界。砂漠は元に戻り、結晶化された人々も復活。でも、ゆりさんの夫も父も妹も戻ってきません。この辺がシビア過ぎる。せめて、つぼみの妹がダークさん似であればわずかでも救いがあったのですが……死んだ人間は生き返らない。少女アニメというよりも『デスノート』ばりの作品です。
つぼみの妹ふたばの登場とか、ラストシーンでふたばと思しき少女が新しいタクトを手にしていることから察するにBパートの主題は次世代に託すものということでしょうか。今後のシリーズでも姉妹プリキュアとかあるかも……いや、既にムーンライトとダークプリキュアは姉妹でした。でも、姉妹か否はは兎も角、先輩・同輩・後輩の力関係がハッキリしたプリキュアというのも見てみたいです。追加戦士は番宣・販促の都合上、どうしても強くないといけないのですが、たまにはシリーズ前半で新米としての苦労を味わい、後半で未熟な後輩の育成に悩むプリキュアというのも見てみたいです。需要ないかな?
何度も述べたように先回&今回Aパートでやりたいことやっちゃったので、普通にいい最終回でまとまっちゃっている本作ですが、それでも、見所はちゃんとあります。勿論、えりかの『我々は凄いことをしてしまった!』のシーン。
おい、端に何か映ってるぞ!
これ、ゆりさんも一緒にやっていたんだ。えりかを窘めてはいたものの、こーゆーノリにつきあってくれるほどにゆりさんが心を開いてくれたというのが嬉しい。この画像で一年間に渡った『ハートキャッチプリキュア』の簡易感想を終わります。おつきあい下さいましてありがとうございました。
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徒然日記 ~2014/07/29~
先日、TVが不調をきたした際に色々とリモコンを構っていたら、今まで入っていたテレビ東京が映らなくなってしまいました。『アオイホノオ』と『孤独のグルメ』が見られなくなったのは非常にツライ。上記の二作品はDVDレンタルを待つしかありませんが、あの『孤独のグルメ』よりもマニアックな『アオイホノオ』がレンタル解禁になるのか非常に不安。解禁されても地元のレンタルショップに入荷するかはもっと不安。メーカーに問い合わせると同様のケースは結構頻発しているようです。皆さんもTVを構う時には必ず説明書を傍に置きましょう。意外と地味にダメージを喰らった事件からスタートする徒然日記。題材は2つ。
1.長生きしよう
「綾瀬はるか主演! 大河ファンタジードラマ『精霊の守り人』が16年春から放送!!」
さて、貴方の反応はどちら?
ちなみに私は上が4で下が6でした。やっぱり、不安のほうが多いよね。荒川センセによる『アルスラーン戦記』のコミカライズの発表を知った時よりも戸惑いました。いや、荒川版アルスラーンは当初の私の予想を覆すハイクオリティな様相を呈しているので、こちらも実際に見てみないと判らないは確かですけれどもねぇ。何時も以上に煮えきらない文章になっているのは、あまりにも想定外の事態ということでしょう。
まず、三年という長いスパンで描くというのが想定外。確かに原作では全編通じて十年前後の時間が流れているので、ある意味では正しい判断だと思います。時間も予算も充分に確保できそうですしね。しかし、あの『坂の上の雲』でも視聴率は大コケしたのに『精霊の守り人』で視聴者を三年も惹きつけられるかは意見が分かれるでしょう。一年目が勝負ですね。
次にバルサの配役が想定外。綾瀬さんかぁ。原作以上にヴィジュアル基準になるアニメ版のバルサと比較するとお○○いと唇は合格です。『ICHI』で殺陣の経験もありますし、何よりも『八重の桜』で長期間ドラマの主演を務めた経験は大きいでしょう。まぁ、ヒロインが名実共に主役になった第二部の出来がアレという意見もあるでしょうが、鶴ヶ城攻防戦での輝きは素晴らしかったですしね。それでも、個人的な意見を言わせて頂ければ、バルサを演じるのは年齢、容貌、スキル、キャリアの点で、
青山倫子さん
が一番だと思うのですよ。BS時代劇の枠であれば青山さん一択だと思います。NHKとしては局での実績を取ったということでしょうかね。
そして、一番の想定外が実写化という選択そのもの。ぶっちゃけるとアニメ版のクオリティを越えられるかという点。アニメ版『精霊の守り人』は私的アニメ作品ベスト10に入る名作&ラストバトル以外は完璧な作品でしたので、アニメ以上の時間と予算を費やして、あれ以上のクオリティを出せないと『何のための実写化か』という意見が当然出てくる筈です。特に本作は『大河ファンタジードラマ』と銘うち、三年という長期スパンで製作されるワケですから、相応の出来でなければ誰も納得しない。また、三年スパンなワケですから、万一、一年目でコケた場合も途中でやめられない。実写版『デビルマン』や『ガッチャマン』のように『一発狙いましたがコケました。サーセン、フヒヒ』ではすまない。少なくとも、三年間は批評に晒されるクオリティを保持しなくてはいけない。これはハードル高いですよ。あと、二〇一六年から放送で『坂雲』と同じ枠になる可能性を考えると『真田丸』が十一月で終了ということなのかなぁ。現時点では推測の域を出ませんが、それは悲しい。
まぁ、否定的な意見が多くなってしまいましたが、別にやめろといっているワケではありません。実際、楽しみにしている自分がいるのも確かです。願わくば原作と期間と予算に相応しい名作になってくれることを切に期待しております。しかし、放送開始まで@2年、終了まで@5年か……長生きせねば。
余談ですが、私的アニメベスト10は以下の通り。
①劇場版機動警察パトレイバー2
②攻殻機動隊SAC
③おジャ魔女どれみ
④精霊の守り人
⑤千年女優
⑥時をかける少女
⑦機動戦士ガンダム0080~ポケットの中の戦争~
⑧天空の城ラピュタ
⑨カウボーイビバップ
⑩未定
何だかんだでベタなラインナップですみません。取り敢えず、アニメに全く関心のない方でも無条件に楽しんで頂けそうなモノを第一に考えたので『まどマギ』や『消失』や『エヴァ』は敢えて対象外としました。『ガルパン』も第3話までいかないとハードル高いかなぁと思いましたので。
2.オカジ○ンは悪くない
百田尚樹さんの『永遠の0』を読みました。想像していたよりも面白かったです。以前から友人に勧められていた作品にも拘わらず、今まで手を伸ばさなかったのですが、今回、読んでみようと思った理由は、
劇場版がとんでもなくつまらなかった
ので、原作はどうなっているのかを確認するためでした。劇場版『SPEC完結編』を抜いて、今年のラジー賞は確定でしょう。
誤解のないように申しあげておきますが、原作は面白かったです。少なくとも作者が何を伝えたいかは明確に判りました。劇場版には(名指しこそなかったものの)宮さんをはじめ、多くの批評家がイデオロギーに基く批判を浴びせていましたが、そういう基準で作品を図るつもりもありません……というか、その人たちは劇場版を真面目に見ていないと思います。イデオロギー云々の前に純粋につまらないことをプロの映画関係者が気づかない筈がないからです。勿論、この劇場版を『面白い』という意見も尊重されて然るべきです。そして、本作を語るうえで俎上にあげられることの多いカミカゼの是非を論ずる気もありません。この点を御承知下さったうえで、以下の文章を御笑覧頂けると幸いです&この段階で不愉快に感じられた方は、これ以上、読み進まないことをお勧め致します。
さて、劇場版の何が一番ひどかったといえば主人公に全く魅力がないことでしょう。別に悪い人じゃないんですよ。その逆で作中ではズバ抜けていい人です。ええ、いい人でした。でも、それだけです。他に何の魅力もない。主人公はゼロ戦の腕利きパイロットですが、常に『死にたくない』『家族の元に帰りたい』と口にします。それは人間として当然の感情であり、そういう人が理不尽に生命を絶たれるのが戦争の愚かさであり、悲惨さである。その路線で攻めるのであれば、別に文句もありませんでした。しかし、その一方で主人公は生き残るための努力を何もしていないんですよ。原作だと主人公は生き残るために非常にエグイこともしており、その分、主人公の生への執着もリアルに感じられたのですが、そういう描写が一切ない。そればかりか、主人公が戦う場面も殆どない。結果、常にブツクサブツクサと文句を垂れるばかりで何もしていないというキャラになっちゃっている。それなのに作品上は『彼は立派な人でした』という結論が導き出されるのがどう考えてもおかしい。
繰り返しますが、原作では主人公が『生き残らねばならない』と考える動機は判然と描かれています。それは心情的にも合理性においても概ね同意できるものでした。あまりにも正論過ぎる所為か、
ぼくの かんがえた さいきょうの ぱいろっと
的なアレを感じずにはいられなかったものの、戦場で上官を選べるのであれば、この主人公がいいなぁと思えるのは確かです。でも、劇場版の主人公は逆です。こんな男に自分の背中を預けて戦える奴は余程のツワモノか、或いは後ろに目がついているかのどちらかでしょう。
どうしてこうなったかと考えると、原作の主人公の持つ毒気を完全に抜いてしまったことが原因でしょうね。元々、原作の主人公もキャラとしては淡泊なんですが、それでも、先述したように生に賭ける執念や必死さは伝わってきました。寧ろ、それこそが本作で原作者が伝えたかったことだと思います。しかし、劇場版は上記のようなイデオロギーに基く批判を避けたいがために原作のエグイ箇所を狙いすましたように完全にカットしちゃったので、主人公の魅力も全くなくなっちゃったんですよ。そんな主人公に『どんなに苦しくても、生き延びる努力をしろ!』とかいわれても、肝心の本人がそういう努力をしている場面が殆どないので説得力0。オマケに原作の一番大事な核を抜いちゃったものだから、作品に何のオリジナリティも残されていない。どこかで見たようなシチュエーション、どこかで聞いたような台詞が紡がれるばかりでした。少なくとも、本作でしか味わえない場面というのは劇場版には皆無です。
しつこいようですが、原作の記述には概ね納得いきました。この点を何度も繰り返すのは本作がデリケートな問題を孕んだ作品なので、誤解を招かないように何度も述べておこうと考えるからです。そんなにビクつきながら感想書かなくてもいいじゃんという御意見もあると思いますが、この劇場版が持つ問題点は結構身近にも存在することに気づいたので触れさせて頂きました。劇場版の問題点、即ち、
①主人公が飛び抜けていい人
②でも、具体的な活躍はない
③オリジナリティの著しい欠如
これらと共通する作品をどこかで見たことがありませんか?
『軍使官兵衛』の構造と瓜二つですね。
最近は人相と共に黒くなったとか囁かれていますけれども、クロカンのやっていることは序盤と全然変わっていませんからね。説得コマンドが『宥め賺す』から『凄む』に変わったに過ぎません。そもそも、主人公の主張に何のオリジナリティも説得力もないしさ。
この画像が『軍使官兵衛』の本質です。
毎回の感想記事を書いていた頃はプラマイすれば『平清盛』や『八重の桜』と変わらないんじゃないかなと思っていましたが、こうした創作姿勢を放置しておくと大河ドラマでも劇場版『永遠の0』のようなアレがゾロゾロと出てきちゃうんじゃないかと思いまして触れさせて頂きました。まぁ、近年の迷走ぶりを見ると手遅れな気がしないでもありませんが。
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OVA版ガールズ&パンツァー『これが本当のアンツィオ戦です!』感想(ネタバレ有)
アンチョビ「しまった! 寝過ごした!」
何処のうっかり官兵衛さんですか、全く。
しかし、よく考えるとアンツィオ高校の校風『ノリとイキオイは誰にも負けない』『調子づくと恐ろしく手強い』『義理人情に篤い』『うっかりミスが多過ぎる』……これ、悉く佐川官兵衛の特徴じゃないですか。規律や秩序に厳しい分、マニュアル一辺倒という点でドイツに似ている会津の中で、官兵衛は異色の存在だと常々思っていましたが、そうか、官兵衛はイタリア系なのか。何となく納得。
さて、OVA版ガルパン。実際に手元に届いてみると本編が40分弱との表記があったので『些か物足りなさそう』とか思いながらディスクをプレーヤーに入れたものの、終わってみれば満足度120%の出来。寧ろ、若干冗長に感じたほどでした。これは全体の構成が『本編の縮図』『番外編OVA』『劇場版の予告編前』という3つの要素を備えていたからだと思います。戦車道に励むキャラの日常~試合~ノーサイドという流れは本編の構成の踏襲。アンツィオ高校の活躍や風紀委員・自動車部・ねこにゃーさんたちの場面は番外編ならではのサービス。今回の中で出てきた耳慣れない単語や名称などは恐らくは劇場版の布石でしょう。これならば正味30分強の尺でも充分に満足。個性の強いイタリア戦車の解説を手がけた御馴染みの『戦車講座』も本編の延長と呼んで差支えないでしょう。戦車講座は毎回、戦車への愛に溢れていて好きなんだよなぁ。私の歴史記事もこういうノリで書きたいのですが、まだまだ力不足。今回のポイントは3つ。
1.アンツィオ高校
今まで登場した国(?)の中で最もモデルに近い……というと語弊がありますが、最もモデルの国のディフォルメ要素の濃い学校でした。既出の中ではサンダース高校の主将ケイがアメリカらしさを全面に出していましたけれども、実は勝つためには手段を選ばないという点ではアリサがアメリカの真の顔を象徴していたと思います。それはさて置き、アンツィオ高校では『金銭がないから部費を稼ぐ』という理由で毎日学校で屋台を出していましたが、あれ、どう考えても営業資金を貯金に回したほうが早いよね。あんな旨そうなパスタを三百円で売っていたら、絶対にモトが取れないと思います。あからまさなイタリアン。
バトル面では秘密兵器のP40よりもCV33のほうが強烈に印象に残りました。この辺も起死回生の作戦が悉く裏目にでるイタリア&官兵衛クオリティ。それにしても、CV33……あんなに小さい戦車が本当にあるんですか! ディフォルメが入っているのではなく? 八九式にボコボコにやられながらも、その度にムクッと起きあがってくるしつこさはバッド・カンパニーやハーヴェストといった群体型スタンドに近い恐怖がありました。しかし、最終的には八九式の砲撃で全滅。八九式で撃破できる装甲って戦車としてどうなの? 八九式をボロクソに叩いていた司馬さんも吃驚でしょう。
2.OVAらしさ
先述のように基本、本編の縮図といった構成のOVAでしたが、実は本編では殆ど用いられなかった場面が多様されていました。それは練習シーンです。本作はスポ根の流れを汲んでいるにも拘わらず、思い返すと本編では練習シーンは意外と詳細に描かれていない。俺の桃ちゃんが色々と激を飛ばす場面はあっても、対戦相手の特徴を踏まえた対策を練るシーンとか、地道に汗を流すシーンは滅多にない。練習シーンよりも試合のほうが面白いという理由の他にも、戦車に乗る人間が汗水垂らすとどうしても要らぬ生臭さが出てしまうからじゃないかと思います。その辺の配慮が地上波放送ではなされていた。でも、本作はOVAなので購買層を特定できる。そうなると上記の配慮は必要ないので今回はカエサルの装填訓練のような汗臭い自主練習を描くことができたんじゃないでしょうか。あくまでも、推測ですけれどもね。
あと、練習シーンでは三突の砲撃訓練。千五百メートル先のマトを撃つ特訓がありましたが、あれ、今回の試合では回収されなかったのかな? カルパッチョとのシングルマッチも最後は装填速度の勝負でしたしね。そうなると、これは劇場版への布石と考えてもいいのかも。OVAを見ておいてよかったと思える劇場版になりそうです。
3.主人公
パッケージの画とかエンディング映像とかで猛烈なアンチョビプッシュが為された今回のOVAですが、試合では主人公・西住みほの強さが際立つ内容でした。サンダース高校やプラウダ高校との試合では若干、相手チームの舐めプに乗じて勝った(勿論、勝ちは勝ちです)印象が残る大洗ですが、今回は完全ガチ勝負でした。アンツィオと大洗は資金面や人材面で厳しい遣り繰りを強いられている点で似た者同士。しかし、その分、指揮官の力量の差がモロに出る試合になりました。敵も味方もアンツィオのノリとイキオイに引きずられる形で当初の想定を完全に逸脱した戦いになったものの、大洗の指揮官は動揺も焦燥もなく、激変する状況に応じた手をうち、最終的には敵フラッグ車を殺し間に引き込むことに成功。味方の損害も三突のみ。それも、敵の副将と相討ちとなる形でしたので、完勝と評してよいでしょう。そう、西住みほは強いんです。サンダースとかプラウダとか黒森峰の戦車がバケモノ過ぎるだけです。そのことがよ~く判った戦いでした。すみません、今までみほを甘く見ていました。反省しています。練習用の模擬弾とはいえ、自分が標的になっているのに砲門に平然と姿を晒すみほさん、パネェっす。
そんなみほが唯一、黒星を喫したダージリンさんには劇場版でのリベンジが控えているっぽい。今から凄い楽しみなんですが、多分、地元の映画館じゃやらないんだよね……ヘタすると『まどマギ』の時のように隣県のUED市まで足を運ばなくちゃいけない予感がします。まぁ、それは覚悟していますので、せめて、足回りのいい季節に上映して下さい。冬の越後~信濃路はキツイのよ。
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マキシマムの憂鬱
「アニメ『新編集版 PSYCHO-PASS サイコパス』第4話放送中止を発表」
槙島聖護「あぁ、本当に嘆かわしいことだ」
他の如何なる作品が自粛しても、この作品だけはこうした対応をして欲しくはなかった。否、するべきではなかった。嘗て『腐ったミカンの論理』に異を唱えた金八が後年のシリーズで他校の問題児を排除しようとした時と同じ失望感。第二期&劇場版を控えた大切な時期という大人の事情は判ります。しかし、本作は過剰なストレスケアが蔓延る社会に、筋金入りのシリアルキラーである槙島が正論に近い強烈なアンチテーゼを叩きつけることで、そうした秩序への警鐘を鳴らす作品であった筈です。そんな作品が視聴率のために現実とフィクションをごっちゃにしたマスコミが垂れ流すバッシングに脅えてどうするんでしょうか。だいたい、毎回のEDのラストに『この物語はフィクションです』という但し書きがあるじゃないですか。そこから先は受け手側の問題でしょう。
半世紀近くも昔の話ですが、手塚センセの『ブラックジャック』全盛期の頃、学校の屋上(だったかな? 兎に角、高い所であったと記憶しています)から飛び降りた子供がいました。一命を取り留めた子供が『何でそんなことをしたのか?』と問われて答えたのが、
「怪我をしてもブラックジャックが助けてくれると思った」
というものでした。勿論、それを聞いた当時の人々の感想はアホちゃうかという至極、健全な反応であったのはいうまでもありません。事件や犯罪を無理矢理にでも漫画やアニメに結びつける昨今のマスコミの姿勢や、それを鵜呑みにして疑わない人々のほうが明らかに異常な反応だと思います。
槙島聖護「己の意志を問うこともせず、ただシビュラの神託のままに生きる人間たちに果たして価値はあるんだろうか?」
『シビュラ』を『マスコミ』や『世間』に変換すれば、槙島が何を言いたいかは一目瞭然ですね。全く、槙島は完全無欠の犯罪者ですが、その発言は常に真実に満ちていると認めざるを得ません。このような風潮が拡大すれば、何れは本作で描かれたように目の前の理不尽に対応できない人間が大量生産される世の中になるでしょう。そして、人々の多くがユーストレス欠乏性脳梗塞を患い、イカれたサイボーグから、
泉宮寺豊久「嘆かわしい話だな。ヒトは自らを労るあまり、生物としては寧ろ、退化してしまったというワケか」
などと愚痴られるようになるに違いありません……というか、今回の放送分をカットしたら、コウちゃんが槙島の尻尾を掴んだ経緯も、藤間幸三郎の現在の姿も、最終話で登場したあやねるの子の意味も全く判らなくなるじゃないですか! そんな中途半端なコトをするよりは思いきって再放送やめちま……いや、やっぱり、続けて下さい、お願いします! だって、面白いのは確かなんだもの!
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