結論から申しあげると、
今年11月以降の上京は不可能
となりました。幾つか原因はありますが、最大の打撃は職場の人員不足で定休以外の休みがほぼ取れなくなりそうなため。補充人員の確保すら出来ていないのに若手のホープが抜けるのはマジでキツイ。つーか、来月のコロナワクチン接種の休みを取るのも相当厳しかったからなぁ。久しぶりに大規模オフ会を開けそうな雰囲気でしたが、今年は無念の断念となります。何卒、御了承下さい。
尚、来週は今年最後の遠征、再来週は先述のようにワクチン接種のため、更新が滞る可能性が濃厚。まぁ、遠征帰り&ワクチン接種後も体調がよければ更新するかなといったところ。昨年も3週間くらい休んだから、今年もね。尚、昨年は休んだくせに大河の総評記事は一文字も進まなかった模様。よかった……今年は総評書かないと宣言しておいて本当によかった……その分、今週は分量多めを心掛けていきます。話題は3つ。まずは大河ドラマの感想から。
寧々「一堂に一言詫びを入れて酒でも酌み交わしては?」
石田三成「詫びを入れる? 何故、私が? 私は間違ったことはしておりませぬ。間違っているのは奴らでございます。殿下の御遺言に従って家中が一つになるべき時に、自ら争いごとを起こしておる」
徳川家康「腹を割って話し、其方の考える政を皆にも語ってやったらどうじゃ?」
石田三成「奴らが私の考えを理解したことはございませぬ。私は太閤殿下の置目をしかと行うまで」
寧々「あの子もまっすぐ過ぎる。世の中は歪んでいるものなのに……」
ネットでよく見る『謝ったら死ぬ病』を彷彿とさせる三成の頑なな態度ですが、詫びを入れて宴席を設けたところで馴染みの顔しか出席しない真田丸の悪夢を繰り返す可能性が高いので、頭を下げたうえに招待客が殆ど欠席するという二重の恥をかくのはまっぴら御免との思いがあったのかも知れません。現実の政治や人間の感情よりも机上の理屈を優先させる点では本作も真田丸も同じタイプの三成のようですが、ヤマコーの時はKYっぷりが際立ったのに対して、七之助さんは拗らせた乙女っぷりが印象に残ります。どちらの三成も善き善き。そして、寧々の三成&世間評はなかなかの名台詞よな。結構な割合でやらかすことも多いけど、随所でこういう『ほほう!』と唸らせるシーンがあるから今年の大河は侮れない。
ただ、家康と三成の対立が小学生の仲違いレベルに矮小化されてしまったのも否めない。この辺、以前から述べているように仲良し設定自体は意欲的でしたが、その動機づけは星とかフィーリングとかでなく、政治姿勢の共感をメインに据えて欲しかった。一応、泰平の世を志す者同士でありながら、現実の政治に対する認識の違い(『俺はやれる』という三成と『アンタじゃ無理だ、俺が代わる』という家康)は描かれていたものの、具体的に如何なる方法論の違いで対立に至ったのかがズッポリと抜け落ちていて、単に家康と三成の器と名声の差になってしまっていたのがね。家康的には『面倒な戦後処理にわざわざ手を突っ込んで火傷するのも馬鹿らしい。ここは治部に一任しよう。治部が巧くやれる器と証明されたら合議制を支持するもよし。失敗したら忠次の遺言に従ってワシが天下を取る』というスタンスだと思いますが、この辺がどうにも曖昧なままでストーリーが進行してしまっている。まぁ、容易に腹の内を明かさない狸らしさの表現ということかも知れませんが、それは登場人物には判らなくてもいいから視聴者には判るように提示して欲しいのよね。松潤の兎から狸への見事な化けっぷりを見ると、無理に仲良しからの痴話喧嘩に持っていかなくても、普通に腹黒い家康でイケたんじゃないかな。寧々の『三成はまっすぐ過ぎる』という評価も、視聴者一般に広く受け入れられている治部のイメージに乗っかっているだけで、作中でそういうシーンはあまりなかったから、いい台詞だけど浮いている台詞でもあるんだよなぁ。
尤も、個人的には今週分は今までの本作の中でも屈指の推し回になったのも事実。だって、
毛利輝元「そなたは極めて頭が切れる……が、人の心を読むことには長けておらぬと見受ける。人の心には裏と表があるものぞ」
と我らがTERUが三成を焚きつけて家康と争わせようとするシーンがキッチリ描かれていたからね。TERUの『人の心には裏と表がある』とか『真田丸』の昌幸パッパの『問題を先送りにしていいことなど一つもない』に匹敵するお前が言うなですね。TERUはこうでなきゃいけません。是非、このまま関ケ原の戦いの首謀者として三成を背後から操る&肝心の場面で裏切る役回りを貫いて欲しい。何故か、うちの御屋形様である上杉景勝もTERUの腰巾着的なポジションで描かれていますが、TERUの悪行が大河ドラマでしっかりと描かれるのであれば、多少のヒール設定は許容範囲。上杉地元民のワイが許す。このままの路線で往け。
次はこれ。
原作未読のうえ、第1シーズン未見にも拘わらず、何故か今季から見始めた話題作。ぶっちゃけ一秒でも早くAimerの新曲が聞きたかったという資本主義のタイアップの罠にどっぷりとハマッてしまったワケですが、今では主題歌と同じくらい好きなドラマになっています。小耳に挟んだ情報によると再来年の大河ドラマは同じ脚本家&制作陣で臨むとのことで、俄然期待値がアップしている今日この頃。いや、森下さんのドラマって日曜劇場だと結構面白い作品が多いんだけど、NHKではビミョーな時があるじゃん? その辺が『べらぼう』の不安要素であったのよね。実は本作も今季1&2話の段階では『手堅くまとまっていて面白いけど、これ、男女逆転させる意味ある?』みたいな認識でいたんですよ。いや、赤面疱瘡という設定上、男女を逆転させるのは絶対条件なんでしょうけれども、もうちょい別の設定を練り込んだら、SFよりも歴史のIF要素寄りの時代劇として従来の性別区分でやれるのになぁと思っていました。
その考えが覆ったのが第3話の田沼の失脚と青沼の冤罪と源内の横死と内調の社さん……じゃない、一橋治済のエグさ。テメェの息子に人痘を施して貰ったら、あとは用済みとばかりに自身が毒を盛っていた将軍の不予の責任を青沼に押しつけて処断&ついでに政敵田沼も排除&当然将軍にも死んでもらうという、こらぁ、翌日放送の『相棒』で狙撃されてもやむなしと思えるレベルのゲスの極みっぷりを披露した社さんを見て、思わず『うわ、えっぐぅ』とドン引きしたワケですが、同時に『あ、男女の役割を逆転させたのはこーゆーことなのね』と得心しました。フツーの大奥ものでしたら『閉鎖社会に閉じ込められた女の情念や浅ましさ』というジェンダーバイアスで括られてしまいかねない話ですが、ガッツリと表の世界の実権を握っている設定の本作の女性キャラクターも、史実の出来事や従来の時代劇に負けず劣らずエグイ権力闘争や後継者騒動をやらかしているワケですよ。そこに男も女も環境の差もない。男女の性差を主題にした作品は得てして『男性権力社会の弊害!』や『女性が指導者になる意義!』を求められがちですが、本作はそうした輝く理想論ではなく、
男だろーと女だろーと権力の毒に侵された者は陰険で残忍なことをする点で男女は平等だよ(ニッコリ
という恐ろしく冷酷でペシミスティックな視点でジェンダーを描いた作品ではないかと思いました。まぁ、上記のように原作未読&第1シーズン未見の私の意見なんざ、あまり参考にならないとの自覚はありますが、少なくとも本作に『フェミニズムの素晴らしさ』や『有害な男らしさ』や『日本スゴイ論の弊害』を読み取るのは些かピュア過ぎる解釈ではないかと愚考仕る次第。
しかし、田沼意次がベビーフェイスで松平定信がヒール設定とか……ここ数十年で歴史の評価がガラリと変わったよなぁ。『べらぼう』では田沼にナベケンの登用が決まりましたし、再来年も本作と同じ路線で行く可能性大。ナベケンも『北条時宗』以来の久々の大河。大いに期待しています……え? 『西郷どん』? 知らない作品ですね。次の話題に移りましょう。
杉下右京「実は仕事で左遷されましてね……人材の墓場と言われている窓際部署でして……ああ、一人、部下がいるんですがね、これがまた気が利かない男でしてねぇ」
『微笑みの楽園』に潜り込むための方便として語られた杉下の愚痴。あまりにもアッサリと杉下一味の潜入を許した教団のガバガバセキュリティは御都合主義的展開との批判は免れ得ないかも知れませんが、一方で杉下の語った愚痴はほぼほぼ事実と本音であるのも確かであり、巧みな嘘とは99%の真実に紛れた1%の欺瞞であることを思えば、これは素直に杉下の手腕を褒めるべきでしょう、多分、恐らく。まぁ、公安にマークされているほどの危険な教団が本庁の名物刑事の情報を把握していない時点でリアリティがなさ過ぎるとは思いますが。しかし、杉下の相談内容を深く突っ込んで聞き出さない亀山が可愛い。これが神戸だったら『どうせ杉下警部のことですから、ロクな部下もいない窓際部署に左遷された、とでもテキトーな嘘を並べて同情を誘ったんでしょ?』と見抜いたのではないかと思います。この亀山の程よい鈍感さは、神戸、カイト、冠城という察しの良過ぎる相棒に慣らされてきた杉下には、逆にホッとする要素ではないでしょうか。尤も、教団に追われるシーンでの陽動テクニックも杉下のおんぶにだっこは考えもの。こうしたサバイバル技術はサルウィンにいた亀山のほうが一日の長があると思うのですが……。
さて、今季の第1話はここ数年の通例通りの前後編。2時間SPと違い、前後編は次回へのヒキが必須になるため、全体の構成の難易度はあがるのか、本作(特に初回SPの)前後編はイマイチな回が多くなりがちですが、今回は概ね及第点かな。全体のストーリーも判りやすく、適度な謎を残しつつ、次回へのヒキも相応に盛り上がったからね。社さんが撃たれたのは前日の『大奥』での悪行の因果が巡った説あると思います。そして、視聴者へのサプライズプレゼントと思われる亀山と青木の初顔合わせもベネ。
亀山薫「青木……? 君、カシオペア号にいなかったっけ?」
青木年男「それは禁句です」
衣笠藤治「前世の話題はやめろ」
という流れにならなかったのはチト残念ですが、流石にそれはメタ過ぎるネタになるので、回避はやむを得ないと思われます。今回、何気に青木の株があがったよな。暴漢に襲われてもそこそこ戦えたし、上原阿佐子の手を引いて避難させる男気もあったし。真っ先に逃げ出すものと思っていたわ。まぁ、美女に対する下心があるのかも知れませんけど、上原阿佐子はまだ黒幕の可能性があるから、その場合は勝手に失恋ということになるのかな。彼女が白クリか黒クリか(ダークサイドミステリー感)でガラッとオチが変わると思う。そもそも、彼女が杉下の話を聞きだした被告人が誰かというのも地味に興味ある。
ただ、これは本作の悪癖というか弱点というか、相棒のカルト教団って陳腐な描写になりがちなのよね。アッサリと杉下一味の潜入を許すザル警護はまだ許せるけど、
教団の敷地内に浮かんでいるシャボン玉は何の目的で何処から出てきているの?
という根本的な疑念が拭えなかった。カルト教団の怪しさの演出としてもベタだよね。元ネタになっていそうな話を御存知の方、おられましたら情報プリーズ。