予告通りに更新が一週間空きましたが、別に個人的に何かあったワケではありません。多分、恐らく。代表の気紛れによる仕事の事務処理で恒例の年末上京のハードルがキロメートル単位であがりそうな事態が発生したくらいです。今年のオフ会開催に限りなく赤に近い黄信号が灯りましたが、そんなの全然気にしない。まぁ、そんなワケで来週の更新もちょいヤバめ。暫く隔週更新になると思いますので、何卒御了承下さいませ。
本編の感想に入る前に、色々と物議を醸している次回のサブタイについて。基本的にサブタイの選出は制作陣の権利であり、昨年の『オンベレブンビンバ』のほうが色々と踏み外している気がしないでもありません。ついでにサブタイのセンスでは『直虎』のほうがスベっていたと思います。今回の『太閤、くたばる』というサブタイの問題点は本作の秀吉にこんな奴は早くくたばってしまえと視聴者に思わせるヒール描写が決定的に不足していたことでしょう。勿論、次回の内容次第で相応のヒール描写があるか、或いは『くたばる』というサブタイに何等かの意味が付与される可能性もあるので、あくまでも現時点での話ですが。『くたばる』というフレーズが品位に欠けているのは間違いないとはいえ、昔の大河ドラマでは視聴者から『はよ〇ね!』みたいな御意見が届いた登場人物もおったそうですから、そのくらいの反感を煽ってこそ、真のドラマといえるのではないでしょうか。堀北真希を妻に迎えた三成に対して、視聴者が一様に『やられちまえよ!』と思ったことを想起すればいいと思います。思えない?
さて、前回今回と部分的には『おおっ』と思える箇所はあるけど、全体的にはビミョーな印象を拭えなかった『どうする家康』。枝葉末節の描写はヒネリがあって面白いのに、それらの積み重ねが肝心のメインストーリーの完成度に貢献していないというか……例えば、前回の小田原攻めで家康が北条との戦を避けようと懸命になる件、あれが脳内お花畑の念仏平和論ではなく、
自分が国替えされたくないから
という利己主義に基づく設定であったのはなかなか面白かった。家康の地盤を恐れた秀吉が褒美と称して関東への転封を命じたというのはよくあるパターンですが、口にこそ出さないけれども北条との和議に失敗した家康への一種の懲罰的措置に基づく江戸への国替えとか、なかなか大河で見ない解釈で新鮮でした。しかし、そっち方面のタヌキとサルの化かしあいに特化してくれればよかったのに、何で北条が頑なに上洛に応じなかった動機を瀬名の東国共栄圏とかいう妄想に帰結させてしまうのか……本当に北条が関東でひっそり暮らしたいなら里見や真田の領地を冒さないワケで、そもそもの開戦の理由である沼田の諍いと矛盾してしまっているから、脇に面白いエピソードを拵えてもメインストーリーの根幹にミスがある以上、どんなにいい打球でも結局はファウルにしかならないんですよねぇ。瀬名の東国共栄圏妄想、単にリアリティに欠けていただけでなく、中盤の貴重な尺を浪費したうえ、北条敗北の理由にまでしてしまったこと、シンプルに本作最大のミスやと思う。作品への好き嫌いは別として、この点はキチンと指摘しておきたい。
今週もいい意味でイケメンオーラを感じさせない松潤家康のあじか売りダンスとか、あと一歩で絶対に家康におっぱい揉ませたであろうクレイジー茶々とか、見応え自体はありました。特に古田義昭の再登場と起用方法は本作でも屈指の描写。秀吉という天下人と家康という次期天下人候補の衝突と破局を回避するには、形式上とはいえ(否、形式上だからこそか)天下人であった義昭の言葉が効いたのでしょう。アイツ、権力者同士が抜き差しならない対立で破局を迎える直前に自身の滑稽さで場を取り繕う道化師の役割を果たしているのよね。そう考えると初登場時の白塗りもピエロの暗示であったのかなとも思います。ひょっとしたら、義昭本人は別に深いことなんか何も考えずに自分の思い出話をネタに飲み食いして帰りたかっただけかも知れませんが、それがまたいいのよね。本人がどこまで自覚して仲裁してるか判らんとこがミソ。元天下人の道化師にしか出来ない役回りでした。
ただ、肝心のメインストーリーである唐入り関連の描写がね……秀吉の怖さと家康の主人公らしさを描くための筋書きの脆弱さや、史実の都合の悪い点を全て三成の線の細さに帰結させてしまったのがアカンかったな。もっと骨太な直言治部が見たいんよ。まぁ、家康が主人公ですから、彼をカッコよく見せるために周囲が一定のワリを食らうのは想定の範囲内なんですが、折角、関ケ原の両雄をラブラブ設定にしたのなら、三成にガンガン秀吉へ直言させて、それを家康にフォローさせるようにして、二人の関係性を掘り下げないと意味がないと思うんよ。自分たちで決めた設定を活かしきれていないのよね。ここで協力させてこそ、数話先のメインストーリーとなる関ケ原での対立が際立つ筈ですが、今、ここで敢えてやらなくてもいい義昭の深イイ話を掘り下げてしまうのが本作の特徴なんだよなぁ。義昭も今回の使い方は巧いんだけど、そのためだけに視聴者にムダな負荷をかけるキャラクター造型(主に白塗り)をする必要があったのかといわれるとね……本作って手間とリターンの比率がおかしいのよ。制作陣は採算が取れているつもりなのかもですが、視聴者的には派手な商売の割に赤字が目立つ印象を受けるのよね。制作陣が渾身の勢いで出した構想が概ねスベるの、ホンマ何とかして欲しい。もっと気楽にやれ。