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『どうする家康』第18回『真・三方ヶ原合戦』第19回『お手付きしてどうする!』感想(ネタバレ有)

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久々の焼味噌を漏らしたことのない家康の画像でこんばんは。

さて、予告しておいたとはいえ、前半最大の山場・三方ヶ原合戦の回の更新を休んでしまったことには忸怩たる思いがありますが、ここ一カ月は腰痛と自家感作性皮膚炎という身体的負担に加えて、他部署の仕事を一切合切丸投げ&引継ぎされたストレス、翌々日になって『代車に車検証とステッカーを入れ忘れてました』と連絡してくる車検のディーラー、更に『歩道の除雪を優先しないのは悪しきオールドボーイズネットワーク的発想!』と都市機能と気候と人口と予算に合わせた行政のフレキシビリティの問題を差別にすり替える公共放送の所為で、メンタル面も著しい消耗を強いられておりました。そのうえ、ボロボロの心身を引きずりながら片道二時間以上の高速道路をスッ飛ばして足を運んだ試合で、

 

バウアー火だるまメッタ打ち

 

と三方ヶ原合戦に勝るとも劣らないDeNAファン脱級の大敗北を見せつけられてしまい、先週は久しぶりの日曜休みにも拘わらず、リアタイ実況どころか翌日の深夜まで大河ドラマさえ見る気が起きないレベルのダウナー状態でした。昨夜辺りから漸くメンタルを立て直しているところです。バウアーはせめて5回で降板させておくべきやったなぁ。でも、新潟でメジャーリーガーを拝める機会なんて絶対にないので、一秒でも長く見られたのは有難かったかも。生デスターシャも出来たし。とはいえ、未だに万全とは言い難い状態なので、前回今回と二話分をまとめて寸感としてお届けします。

 

全体的な評価としては両方とも及第点の内容。全視聴者が切望していた松潤の焼き味噌錬成と、一部の歴史界隈が期待していた柴田理恵の妖怪追っかけBBAの逸話を、未だに家康に帰順しない浜松の民草が家康を貶めるために捏造した噂話として描いたのは巧かった。焼味噌も食い逃げも煎じ詰めると信憑性に疑問符がつく逸話ではありますが、それをガン無視したのでは創作としての面白味に欠けるのも事実。史実的にはあり得ないと判っていても関羽に青龍偃月刀が似合うように家康には焼味噌が似合う訳で、そこをどうクリアするのかが本作に課せられた最大の命題であった(個人の感想です)のですが、上手い落としどころを見つけたと思いました。一見すると焼味噌描写から逃げたように思われそうですけれども、あれは家康が信玄に負けた&浜松の民心を得ていないから屈辱的な捏造話を囁かれている訳で、勝つかキチンとした政治を行っていれば、そのような噂が生まれる余地はなかったでしょう。要するに民草に舐められる家康の未熟さに原因があるという構図。ああいう噂を捏造される主人公の至らなさを描いたうえで、信憑性に欠ける逸話を噂として焼味噌も食い逃げも一括処理する。スマートな解決方法でしたね。

そして、お手つき事件も、

 

瀬名「誰もうまぴょいするなっつってんじゃねえんだ! キチンと手続きを踏んで私の了承を得たうえで後継者や嫁の立場を考えてからうまぴょいしろっつってんだ!」

 

とあくまでも表面上は当時の価値観に則ってガチギレする築山殿を通して、現代的な思考との相違点を浮き彫りにしたのが高評価。瀬名に黙ってお万の方に手をつけた家康の行為は、今日でいうと浮気よりも越権や背任に近いんでしょうね。本来、正室が仕切る筈の女性の選択を自分の許諾なしに勝手にされたことは、瀬名には他の女性に奔られるよりもテメェのツラにクソを擦りつけられる行為であったのでしょう。勿論、女性としてのプライドも傷ついたであろうこともキチンと伝わってきました。そういや、ここ数年の大河ドラマの主人公は浮気しない(十兵衛)→浮気する(A1)→浮気しない(小四郎)→浮気する(家康)のローテーションになっている気がする……来年は浮気はしない(道長との愛人関係は近年否定されている)し、再来年は下半身ネタオンパレードの人物なので、このローテーションは暫く続きそう。2026年の大河ドラマの主人公は浮気しないタイプと予想してみます。グッバイ、伊藤博文大河。

 

そんな感じで概ね好意的な内容でしたが、及第点であることを踏まえたうえで落第点級の問題点があったのも事実。まず、三方ヶ原合戦での夏目広次の扱いがクドイ。あれ、古沢脚本名物の後出し設定の極みだと思うんですけれども、あそこまで夏目さんの人物像を掘り下げる必要ありましたかね? シンプルに三河一向一揆の際にお咎めを受けなかった恩返しとして死なせたほうがスムーズに話が運んだんじゃあないでしょうか。焼味噌も食い逃げもカットしたおかげで退却戦の殺陣もストーリーも無駄のない緊迫感が生まれていたのに、家康と夏目の過去編が入った影響でリズムが損なわれてしまったなぁ。エピソード自体はよく出来ていたのは認めますが、あの過去編はなくてもストーリーの進捗に何の問題もないのですよ。三河一向一揆の際の不忠を許された恩返しで身代わりになるのと、必ず守ると誓った竹千代が尾張に誘拐される際に助けられなかった悔いを晴らすために身代わりになる。どっちも動機がカブッているのよね。どうせ、史実のエピソードに被せるのでしたら、もうちょい違う方向性の動機を被せて欲しかったなぁ。トンコツスープとトンコツスープでダブルスープを取る行為に意味はあるのかと尋ねたい。そもそも、私は家康が夏目の名前を覚えられない理由は『そういう影の薄いキャラの天丼ネタだから』で納得出来ていたので、そこで『伏線回収!』とかいわれても『その伏線自体、張る意味ありましたか?』と思えちゃったのよね。

また、今週の瀬名とお万の方のやり取りも必要以上に踏み込み過ぎ&台詞で表現し過ぎの感が否めなかった。『男を癒し、慰めて欲しいモノを得るのが女の戦い方。男のように戦と暴力で他人から奪うのではない。自分は何一つ恥じてはいない』という台詞までで留めておけば、確かに乱世の女性はそう考えるのもやむを得ないなぁと納得出来たのですが、

 

お万の方「私はずっと思っておりました。男どもに戦のない世など作れる筈がないと。政もおなごがやればよいのです。そうすれば、男どもに出来ぬことがきっと出来る筈。お方様のような方ならきっと……」

 

まで言わせてしまうのは冗長であり、ストーリーの完成度よりも一定層への配慮を優先したという色眼鏡で見られるのは避けられない。勿論、お万の方の言葉は次回以降の築山事件への伏線であり、同時に自分が素っ裸で木に吊るされて折檻を受けないようにするための阿諛的交渉術であるとは思いますが、如何せん西郡局の百合設定や謎の阿月プッシュという先例があるので、痛くもない腹を探られるのもやむを得ないでしょう。近年のダメ大河は必要なことをせずに余計なことをする作品が多かったのですが、本作の場合は必要なことは出来ているのに余計なモノをクドく付け足して全体のクオリティを下げていることが一再でないんだよなぁ。

それこそ、今回で退場になった(と思われる)足利義昭も典型で、古田新太というキャスティングは挑戦的であり、白塗りメイクの大胆な考証も面白味はあったのに、その両方を同時に投入するほどに重要性の高いキャラクターであったかといわれると断じてNOなのですよ。どっちか片方だけで充分なのに、何で両方やろうとしてしまうのか。毎年恒例の当年の大河ドラマを食べ物に例える企画ですが、普通に出してくれれば充分美味しい筈なのに一手間加えて味を落としてしまうことを鑑みて、現時点での『どうする家康』は、

 

シェフ大泉のハリバットのサラダオーロラ風大河

 

といったところでしょうか。フツーにハリバットと生野菜を和えて出してくれればいいのに、そこで要らぬ一手間のオーロラソースをかけて、逆にビミョーにしてしまう点で、非常によく似ていると思います。ミスターの『オーロラソースはないほうがいい』という身も蓋もない評価好き。

あと、今回のストーリー展開だと明らかに勝頼が主人公ポジなんですが、それは。

 

 

 

 

 

 

 

 


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