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『どうする家康』第12回『氏真』簡易感想(ネタバレ有)

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劇場版も三本制作された古沢良太氏の代表作ですが、実は個人的にあまり評価していない作品です。TVシリーズの第一話であのオチを許したら最早何でもアリだよね。あれで最終回はどうするのかと思っていたら、まさかの『最終回が第0話だった』というのは素直に唸らされたものの、結局のところ、ドラマ全体の面白さよりもオチでの卓袱台返し自体が目的になっている作劇が鼻についたのも確か。この辺が今年の大河ドラマの制作発表の記事で『作品は面白いけれども作風が若干苦手な脚本家』と述べた所以ですが、今週の『どうする家康』がまさにそれが全面に出てしまった印象。今回の感想を一言で表すと、

 

 

与力「んー。すごい面白かったんだけど……まぁ……ボツかな」

 

 

でしょうか。序盤で家康と氏真の子供時代の敢えてやらないことで、今回の両名の対立と理解と別離に集約・帰結させたのは、全体の話数配分を踏まえた省エネ構成として一定の評価は出来ますが、幾ら何でも氏真のオリジナルエピソードに頼り切り&コンフィデンスマンJP的後出しジャンケンの要素が強過ぎました。氏真が人質時代の家康の舐めプ接待稽古に大層傷ついていたのは、第一話&今回改めて描かれた大権現魔性のオモプラッタ式チョークスリーパー付近の描写で察しはついていたとはいえ、太守様の『ワイ、ホントは氏真のことを努力の天才として認めてるねん』との発言については、早川殿がもっと早く本人に伝えていればよかっただけの話ではないでしょうか。家臣とか侍女とかでしたら身分を憚って伝えられないこともあるでしょうけれども、早川殿は正室じゃん。

大河ドラマにオリジナルエピソードを入れるなという訳ではありませんが、オリジナルエピソードでキャラクターやストーリーを形成したけりゃ、相応の尺と掘り下げが必要なのに、今回は『太守様はホントは氏真に期待していた』というドラマの展開に都合のいい事実が、ドラマの展開に都合のいいタイミングで、都合よく家康陣営に捕まっていたポッと出の早川殿の口から明かされた訳で、後出しジャンケンの御都合展開になってしまったのは否めません。チョイ役でもいいので、一話辺りから早川殿を出しておけば避けられた批判であったと思います。純粋に描写不足。対峙する氏真と家康に割り込んだ早川殿が太守様の(結果的に)遺言を暴露する件は、

 

早まった動機で殺人をしでかした犯人に『それは貴方の勘違いなのよ!』と事情を知る人物が真実を語る2時間サスペンスのクライマックスシーン

 

のように見えてしまいました。

歴史劇の場合、物語の価値観や展開を一気に覆す方法として史実 or 有名な逸話を持ってくるという方法があり、実際、本作でも三河一向一揆で寺の取り潰しの是非に悩む家康に『元の更地に戻せばいい』という『三河物語』に記された手段を本多正信に伝授させるやり方で、当該問題を解決していましたので、ここは地道にオリエピオリキャラを積み重ねるか、何等かの史実エピを交えて欲しかった。今川氏真の再評価という点では一定の成果を挙げたとはいえ、本作の主人公は徳川家康ですからねぇ。あと、氏真がサツバツとした戦国の国盗りゲームから降りると宣言するのも結果から逆算したキャラクター像になっていたのも否めない。ここは『俺はまた必ず此処に戻ってくる!』と高らかに宣言しながら、のちにぼったま化して戻ってくるほうがストーリーでもギャグでもメリハリが効いたんじゃあないかと思いました。

そんな訳でドラマ自体は楽しめはしたけれども、大河ドラマとしてはどーなんスかそれ的な内容となった今週。そういや、第一クールの〆タイトルが『氏真』ってことは、第二クールの〆は『信長』で第三クールの〆は『秀吉』になるのかな。それくらいで割り振ると丁度よさげですし。最終回は『家康』になるのかも。ただし、関ケ原でエンディングを迎える場合は最終話のサブタイは『三成』になる可能性も微レ存。

 

 


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