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『いだてん~東京オリムピック噺~』第二十三話『大地』感想(ネタバレ有)

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皆さん、こんばんは。先週の『英雄たちの選択スペシャル~大奥贈答品日記~』の放送を楽しみにしていたのに、ゲストコメンテーターに田渕久美子がいると知って、見ないでHDから消した与力です。当たり前だよなぁ? しかし、如何に『篤姫』の脚本家とはいえ、再来年の大河ドラマの発表が遅れている時期に田渕女史がNHKの番組に出てくると、何か不吉な未来を想定してしまいそうになる……。

次に、先日発表された『麒麟がくる』の追加キャストを見て、事前の期待値が一桁回復した与力です。眞島秀和さんの細川幽斎はその手があったかと感動した! 個人的には西島秀俊さん推しでしたが、眞島さんもアリ寄りのアリ。榊原良子さんで脳内再生していたバラライカに小山茉美さんがキャスティングされた時に近い感覚です……というか、菊丸とか平手のジイとかよりも、今回の登場人物やキャスティングを先に発表してくれていたら、無駄に気を揉まずに済んだのにと逆ギレしています。三淵藤英に谷原章介さんとか、来年のNHKはガチだろ。

そして、本日は隣県まで新幹線で『ガルパン最終章・第二話』の日帰り弾丸ツアーを予定しているため、今回の更新は短めに済ませようとしている与力です。ちなみにチケット代の一九〇〇円に対して、往復の交通費が八〇〇〇円超……鑑賞料金の四倍越えという一票の格差と拮抗するレベルの都会と地方の壁の厚さを思い知らされています。少なくとも、普通の映画の四倍は楽しめないと割にあわない気分ですが、そこはガルパンなので何とかしてくれるでしょう。

そんな訳で今週の『いだてん』感想は超簡易バージョン。ポイントは4つ。

 

 

1.シュプレヒコールの波

 

金栗四三「村田ー! 梶原ー!」

女学生たち「ビクッ」

金栗四三「……ヌシら、腹ば減っとらんかね?」

 

『卒業式前の暴力』を思わせる立て籠もり事件を引き起こした教え子の名前を、金八宜しく絶叫した金栗君でしたが、続けて出た言葉は『アーユーハングリー?』。カップヌードルのCMを思い出してしまいました。尤も、実際の立て籠もり事件でも空腹で切羽詰まった犯人が早まった行動に出ないよう、食糧を差し入れるのは交渉術の基本です。金栗君自身、ストックホルムオリンピックに向かう道中、ピストル安仁子の料理が喉を通らず、空腹が原因で三島天狗とギスギスした経験があるので、強ち間違ったやり方ではありません。実際、あと少しで素直に出てきそうになりましたからね。

最終的にはシマちゃん先生の提案で、村田父娘のガチンコ徒競走で決着という運び。如何に『女は男に敵わない』という頑固な思想の持主とはいえ、日頃からスポーツで鍛えている娘に町内の運動会でアンカーを務めたレベルの中年オヤジが勝てると思う見通しの甘さは如何なものでしょうか。世界最強のモンゴル相撲レスラー相手に村相撲で横綱を張ったレベルの虎丸が勝負を挑むようなものでした。虎丸は勝ちましたが、村田パッパは惨敗。残当やね。諦めの悪い父親は、

 

村田大作「もう一回だ! もう一回やらせろ!」

 

一昨年の女城主宜しく、勝つまでは何度も食い下がる姿勢を見せましたが、おとわの場合はファンタジスタがリフティングに失敗するのを待てばよかったのに対して、今回は両名が平等にスタミナを削られる競技なので、勝負を繰り返す程に勝ち目がなくなるという悪循環でした。残当やね。

 

 

2.その直前

 

嘉納治五郎「私は今、六十二だが……百五十歳まで生きるような気がする」

 

唐突にワルター・フォン・シェーンコップみたいな人生観を語り出した嘉納センセ。当時や現代どころか、宇宙歴の時代でも『何いってんだコイツ』と突っ込まれかねない人生観ですが、何せ、本作の嘉納センセは色々とアレな言動が際立っている所為か、火星人に柔道を教えるという台詞も違和感を覚えませんでした。いいことなのか、悪いことなのか……というか、若い頃の役所さんでシェーンコップ見たくない? ちなみに嘉納センセが御存命でしたら、御年百五十八歳。ギリギリ陸奥とやれそう(郭海皇感)。嘉納センセは直弟子と曾孫弟子が陸奥に負けているので、ノリノリで仇討ちにやってきそうです。九十九のほうは対応に困るでしょうけれども。凛子ママがうまくあしらってくれそう。嘉納センセ絡みではシマちゃんの娘さんが何気に嘉納センセに抱っこされたシーンもよかった。あれは元気に育つという暗示ですよね。

そして、今回は落語パートも光っていました。『震災』と『芝浜』と『厩火事』が見事にリンクしていたなぁ。色々と悲壮な事件がメインでしたので、ラスト付近の『だって、寒いんだもん』のサゲで、視聴者的には救われた感ありましたよ。ちなみに上記のシェーンコップの上司の父親は、息子と骨董品のどちらが大事なのかと問われて、

 

ヤン・タイロン「美術品は集めるのに資金がかかったからなあ」

 

と宣った模様。ヤング志ん生以下やな、コイツ。

 

 

3.大河ドラマとイデオロギヰ②

 

村田大作「自警団ですよ。このどさくさで根拠のない流言飛語が出回っている。『大きな余震が来る』とか『井戸に毒が撒かれた』なんて、とんでもないデマまで」

 

ストックホルムオリンピックでもJAPANではなく、頑なにNIPPONに拘った金栗君が、自国民から『お前は日本人か?』と疑われてしまう悲C場面。本作はワールドワイドな視点が必要なストーリーでは物足りなさを禁じ得ないものの、こうした伏線と回収は本当に細部まで作り込まれているなと感心させられます。熊本弁は兎も角、女学生に公衆の面前でパパと呼ばれる時点で不審者案件な気もしますが、そこは娘の父親が、

 

村田大作「なぜ疑うんだい? 彼の日本語は上手だよは娘の学校の先生だよ?」

 

とクリロナ級の超絶イケメン対応でフォロー。これは濡れる。三島天狗の次に抱かれてもいい。マスコミでバッシングを食らっていた執拗なまでの熊本弁推しも、このシーンのための伏線であったのかも知れません。ちなみに『井戸に毒を撒く』は中世ヨーロッパから続く人類伝統のデマ。これ豆な。

しかし、この描写、よくもギリギリのラインで切り抜けたと感心します。書いたら書いたで片方から批判されるし、書かなかったら書かなかったでもう片方から批判されること必至なのですが、具体的な事件や名称なしでキチンと伝わるよう、双方の手が届かない境界線を綺麗にすり抜けていました。私も文章を書く時には見習いたい。尤も、クドカン的には政治思想論争に発展しかねない話題を掘り下げる意図はハナからないとも思います。先週の、

 

金栗四三「女子が靴下を履くのではなく、男が目隠しばしたらどぎゃんですか?」

 

という発言も、女性の意見の代弁というよりはその場のノリとイキオイで極論をブチあげることで論点をズラして周囲を煙に巻く治五郎おじさんの影響と考えたほうがシックリきます。この発言を以て『現実の男性諸君も見習え!』とか、逆に『具体的な解決策になっていない! もっと現実的なジェンダー問題やポリコレの政治姿勢を参考にしろ!』とかいうのは些かおかどちがいではないかと考える次第です。

 

 

4.天罰発言者「せやろか?」

 

清さん「喜びは喜びで思いっきり声に出さねえと。明るいニュースが少ねえからよ」

 

清さん、生きとったんかワレェ!

 

ヤング志ん生の震災プロジェクションマッピングに登場した時点で生存が絶望視されていた清さんですが、まさかの無事生還のうえ、本作でも屈指の名言を残してくれました。いいニュースはいいニュース。不幸なニュースは不幸なニュース。キチンと分けて受け取ることが大事ですね。倒壊した凌雲閣がワートレ的な絶望感を醸し出していた分、清さんの生還はホントに嬉しかった。登場人物の誰一人、美川君のことを心配していないけれども、これは平沼銑次レベルで生命力を信用されているのか、或いは割とどうでもいいと思われているのか。前者だと信じたい。その一方で、

 

増野「どこかで諦めなくちゃいけないんだろうな……本当はもう、少し諦めかけているし……」

 

これは心に刺さる。ネットでは『ごはんが固いなんていわなきゃよかった』のほうがリアリティあるとの好評みたいですが、あれは『天使の卵』やヴィットリオ・デ・ベルティーニのように創作でも結構先例があるので、個人的には『見つかる』よりも『諦める』ことの辛さを抉り取ったこちらの台詞に軍配をあげたい。寅棒丸……本当にいい役者になって……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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