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『いだてん~東京オリムピック噺~』第二十一話『櫻の園』感想(ネタバレ有)

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シマちゃん「女性が?」
金栗四三「うん、こぎゃん恰好で槍ば投げおった。野口君より、よう飛んでおった」


再びナチュラルにdisられる野口君。

先週の嘉納センセによる『突出して秀でたものはないが、どれも満遍なくまあまあの記録を持つ君にぴったりの種目だな!』という畜生発言に続き、金栗君にも(悪気なしに)貶された野口君カワイソス。全く、金栗君はやることなすこと、嘉納センセに似てきました。いいことなのか悪いことなのか。多分、四分六で悪いこと。そして、二週連続でdisられた野口君は今週出番なし。浜松河童軍団にはリベンジを誓うシーンがあったのに……あまりにもカワイソスな扱いですが、出たところでトクヨ女史の猛烈アタックに晒されそうなので、冷却期間の意味も込めて、お休みは妥当かも知れません。
今週も職場で色々ありまして、順調にカッサンドラ症候群が進行の一途を辿っておりましたが、昨晩は『いだてん』に救われました。勿論、ツッコミどころは多いけれども、見ていて普通に『フフッ』と笑えた。特に現在は『獅子の時代』とかいう(クオリティではなく、ストーリー的に)救いどころの欠片も見出せない作品を同時並行で鑑賞中なので、単純に笑って泣ける物語が貴重に感じられます。一つには物語の舞台が学校という狭い世界に移行したこともあるのでしょう。本作はキャラクターの造型やネタが前提で話が進むので、オリンピック初参加のストックホルム編は兎も角、幻のベルリン五輪編&復興のアントワープ五輪編といった具合に、世界史的視点が必要な回ではどうしても『穴』が目についてしまうのですが、キャラクター同士が一定の空間にゴチャッと固まっていると、その『穴』を補うことが出来るのだと思います。題材上、このクオリティを世界史レベルのストーリーでも維持出来ないと困るのですが、それはそういう回で文句を述べることにします。今回のポイントは4つ。


1.腋毛が色っぽかった(煩悩)

金栗四三「あ~、エクスキューズミー? キャンアイテイクアフォト? ピクチャー? オーケー?」

放浪先のドイツで槍投げに勤しむ女性たちに出会う金栗君。今回の主題である日本女子アスリート編の契機です。敗戦間もないドイツで女性たちがスポーツに勤しむ余裕があったのか、そもそも、彼女たちはアスリートなのかアマチュアなのか、色々と微妙に気になるところですが、それ以上に『日本での女子スポーツの普及』を予言していた三島天狗から貰ったカメラで彼女たちを撮影する構図がグッと来たので善しとしましょう。
自分がオリンピックのマラソンランナーであることを金栗君が告げると、わらわらと集まって来る女性アスリート。十六位という順位を母国のマスコミにボロクソに貶されても、異国のスポーツ愛好者は暖かく迎え入れてくれるのが素敵でした。オリンピックは参加することに意義がある。はっきりわかんだね。尤も、金栗君の『アイムシックスティーン』という言葉は残当なことに十六歳と受け取られていた模様。今日の十七歳教の走りみたいなものでしょうか。おいおい。


2.おまえ池部だろう!

池部スヤ「四年置きにこぎゃん話かしとるばってん、四年にいっぺんだけいわせてくれんですか? 一緒に暮らせる日ば夢見て、それば心ん支えに日々を生きとります。マラソンの金栗、駅伝の金栗……次は女子スポーツの金栗ですか? 池部なのに!

ブチぎれスヤさん。ロンドンでのパスポート騒動まで只管に結婚&入り婿&改姓を隠し通していた金栗君ですが、身内のスヤさんはバッサリと本名で斬って捨てました。正体バレバレとはいえ、マスクマン相手に『お前平田だろう!』とリングの上で正体バレをやらかしたドラゴンさんの感性に近いものがあります……とはいえ、ここまでの旦那のマラソンキチっぷりに振り回され続けた&マスコミの批判にも敢然と反論したスヤさんの苦労を視聴者は知っているので、どう考えてもスヤさんの言い分が正しく思えます。正直、実家への帰り支度をするシーンで、スヤさんがトランクからスペンサー銃を取り出して、旦那の額に新品の鼻の穴をこさえなかっただけでも、金栗君は幸運であったといえるでしょう。
ちなみに視聴者の間には『いっそ、スヤさんが射撃で出場すれば金メダルが狙える』との意見もあるようですが、クーベルタン男爵曰く『オリンピックはアマチュアリズムの大会』なので、あらゆる意味でプロのスヤさんが出る幕はなさそうです。スヤさん本人は、

新島八重「オリンピックか世界一かどうか知らんが……所詮、素人の大会の大将だろうが。悪いが、私はプロの世界一なんだ(ジャキーン

と冴羽さんみたいなことをいってのけそうではあります。あのシーンは子供心に濡れた。男だけど。


3.迷走

美濃部孝蔵「俺も何にもなかったのに指詰められそうになっていたよな?」

不自然な程に阿部サダヲ似のマーちゃんが脱ぎ捨てた衣服から拾った財布で帰京を果たしたヤング志ん生。あくまでも落ちていた服から拾っただけで、決してスッたりギッたりした訳ではありません。落とし物だからセーフ理論です。セーフじゃない?
尤も、因果は巡るのか、久しぶりに再会した清さんと小梅は目出度く御成婚。上記の台詞のように勝手に間男の濡れ衣を着せられて、エンコ詰めの危機から逃れたというのに、全ての元凶たる女性が親友と結婚しているとか、感情のぶつけどころがありません。東京脱出の際にヤーさんの追跡から身を挺してヤング志ん生を守ってくれた清さんですが、結果から逆算すると、あれらも全て仕組まれた小芝居という可能性すら出てきます。嗚呼、人間不信。しかし、親友に出し抜かれたヤング志ん生よりも哀れなのは小梅に捨てられた美川君。コイツは演出なしで何処に向かっているのだ……。
そして、それ以上に何処に向かっているか判らなくなったのが、いけ好かない人気取りのテニスのコーチ。

永井道明「いけ好かないキャラだから美川とでも思ったか! 俺だよ!」

先週でセミリタ宣言をした筈の永井センセが、まさかの女子校テニス部顧問に就任! 視聴時、リアルで飲み物噴いたぞ! どうしてくれる! いや、確かにテニス経験者で若い頃はブイブイいわせていたとの伏線はあったけどさぁ……服装も前回までの厳格な黒から清潔感溢れる白に変化。逆夜神月的変化ですね。


4.金栗君「骨盤がバーン!」可児先生「やったぜ」

金栗四三「頼む! 形だけでよか! 一投ずつでよかけん! 頼む! オイの顔ば立ててくれ! 頼む!」
村田富江「……本当に一回ずつですか?」
金栗四三「勿論! もう二度と無理強いはせんけん!」


台詞だけ抜き書きすると通報案件としか思えない金栗君(教員)と村田富江(女生徒)の会話。話題が槍だけに『先っちょだけ! 先っちょだけ!』とか言い出してもおかしくありませんでした。今日日、こんな発言をしたら一発でPTA案件です。そもそも、槍を片手に半袖短パンで満面の笑みを浮かべながら女子校の敷地に佇む姿だけで、充分に不審者です。可児センセのフレディコスのほうがまだしもマシなレベル。まぁ、シマちゃんにとっては可児センセの授業もトラウマ同然の記憶のようでしたが。冒頭で述べた治五郎センセ級の野口君disといい、可児センセ譲りの『骨盤バーン発言』といい、金栗君は根が純朴な分、指導者の影響をモロに受けてしまった模様。ノロケ以外はマトモであった大森監督の逝去が悔やまれる今日この頃です。
尤も、周囲の人間に対する感化力も治五郎センセから受け継いだのか、上記のシーンから五分足らずで女子校全員をスポーツ一色に染めてしまった金栗君。最初はツンツン当たっていた……というよりも不審者に対する当然の対応をしていた村田富江も『くっ、こんな槍なんかに屈しない!』から『スポーツには勝てなかったよ……』的な即落ちを披露してしまいました。まぁ、前世が『アシガール』だからね、槍に関しては多少はね。この辺、槍一本で全員感化よりも、時間を掛けて少しずつのほうがリアリティあったと思いますが、全体の尺を考えると落としどころとしては順当でしょう。実際、今回ラスト付近では、

 

嘉納治五郎「私のほうはね! 神宮競技場の工事再開に漕ぎつけたところだ!」

 

という平和の祭典の舞台になる筈の会場がアレな使われ方をするフラグをおっ立ててくれたので、描きたいことがあり過ぎて、追っつかないんだろうなぁと好意的に解釈することにします。


次回は『ヴィーナスの誕生』。半角斎の備前焼みたいなサブタイだな。ストックホルム編以来、久しぶりに『どうでしょう』コラボ復活か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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