ダイラム領民A「他にお前が持ってる情報は?」
ルトルド侯爵騎兵「ない!」
ダイラム領民B「本当か? まだ何か隠してないか?」
ルトルド侯爵騎兵「やめろ! その絵を見せるな! 本当にもう何も知らん、知りません!(gkbl
これぞ、まさに『地獄絵図』である。
公式では未遂に終わったナルサスの画による拷問。アルフリードの『相手が白状したのはナルサスがいたおかげ』というフォローは、田中センセからも贔屓の引き倒しと揶揄されていましたが、荒川版では引き倒しどころかどてっ腹に風穴を開けるレベルで正鵠を射ていたことが証明されました。やったね、アルフリード。ついでにダイラムの領民は完全にナルサスの画に対する耐性を備えていることも証明されました。前回の感想でも述べたように、ナルサスの画を陣頭に掲げて突撃する特殊部隊の編成も夢ではなさそうですが、流石に元領主の画を拷問の道具に用いたと伝えることは出来なかったのか、この事実をパルス軍首脳部は最後まで把握していなかった模様。この特殊部隊さえ編制出来ていたら、後年、ナルサスもアルフリードもあんな目に遭わずに済んだかも知れないのに……嗚呼、灯台下暗し。
今回も二カ月分をまとめた変則型の感想記事。ダイラム編の完結まで待っていただけで、モチベーションやスケジュールの都合ではないと強弁してみる今回のポイントは5つ。
1.誠意は金額でなく素顔
メルレイン「自分を守ってもらおうってのに、この期に及んでも顔も見せようとしない姫さんに、指一本でも動かす気になれると思うか?」
荒川版のオリジナル台詞。メルレインVSイリーナ(?)では絹服を着ている貧乏人なんていないという台詞が有名ですが、絹服を着ている人間からの略奪を生計の術にしているゾット族の言い分としては、些か説得力に難があるのも事実です。その辺、荒川センセはメルレインとイリーナの対立を経済的格差ではなく、
「自分の生命を守ってくれる相手に顔も見せられないのか? どこまでお高くとまっていやがる?」
という人間としての資質を問う形で描いてきました。まぁ、盗賊が人間としての資質を問うのもどうかと思いますが、後述するようにゾット族は略奪暴行も常に素顔で行っているので、本人的にはOKなのでしょう。勿論、現代でも作中パルス世界でも法律的にはどっぷりとOUTですが。
2.やだもーなんていわない
イリーナ「ご無礼をお許しください、パルスの勇者様。生まれつき、目が見えないのです」
一目で茅野愛衣さんヴォイスでの脳内再生が余裕な癒し系御姫様キャラ、イリーナ。メルレイン同様、アニメ版では殆ど出番がなく終わったイリーナですが、これもメルレインと共に漫画版では結構美味しいところを持っていきました。メルレインがマルヤム王室の塩対応をdisる件は本来、ナチュラルに民衆を足蹴にしている自覚のない権力者を論破する『スカッとジャパン』な場面なのに、そこを敢えて逆手に取り、イリーナの盲目設定を前倒しにすることで、メルレインのほうが他人の心情に思い至らなかった己に気まずさを抱く。メルレインがイリーナの要請を容れたのは原作のようにいいたいことをいってスッキリしたからではなく、メルレインなりの彼女への罪滅ぼしなのでしょう。初対面の、しかも、ゾット族の『天敵』である王族の要請を引き受ける動機としては、漫画版のほうが納得出来ます。勿論、キチンとした原作があってこそ、こうしたアレンジが輝く訳ですが。
3.MMT
ミリッツァ「イアルダボード神よ、妹をお守りください」
結構な尺で挿入されたマルヤム陥落編ともいうべき回想シーン。何気にウルッと来るレベルの話を平然と盛って来るなぁ。これがなければ、ジョヴァンナさんは単なる腹黒女官で終わったでしょう。実写化の際には峯村リエさんでお願いします。BGMは『暁の車』で。それにしても、神への最期の祈りが己の魂の救済ではなく、妹の守護とは……『獣の奏者エリン』のソヨンを思い出してしまいました。ミリッツァさんマジ天使。そして、傍目にも脱出経路と判る城下の洞窟に封鎖網を敷かなかったルシタニア軍マジ無能。これは(ボダンによる)教育やろうなぁ……でも、ボダンが作戦に容喙して、不手際が生じた可能性も高そう。
4.魂・閃き・集中・激闘・直撃・挑発(予想)
クバード「惜しいな。勇気に技が伴わなかったか(ズバー
いや、完全に力押しですやん。
技とかテクニックとかいう以前に、完全なるパワー押しでルシタニア騎兵の顔半分を持っていったクバードさん。今回の犠牲者に足りなかったのは技ではなく、クバードに負けない腕力と斬撃を受け止める剣の硬度であったと思うのですが……いずれにしても、クバードさんは容赦がなさ過ぎる。『スーパーアルスラーン大戦』が作られたとしても、クバードの精神コマンドに『手加減』が入ることはないでしょう。まぁ、それをいうたら『手加減』を覚えそうなキャラクター自体、思い浮かばないのですが。技量的にはキシュワードが覚えてくれると助かる。
そして、自称『パルスで二番目の弓の腕』を披露したメルレイン。原作では射落としたルシタニア騎兵が不意討ちを仕掛けてきたのを返り討ちにする描写がありました。『殺されたのが悔しいなら、何時でも化けて出ろ』というキザな台詞と共にトドメを刺すのですが、ギーヴやファランギースでしたら、弓での攻撃の段階で綺麗にヘッドショットを決めていそうですから、この手の台詞を口にすることさえないでしょう。カッコよさそうに見えて、実はメルレインの技量が両名に及ばないことの暗示でもありそうです。
5.痘痕も靨
クバード「ヒルメス王子の人となりはご承知か?」
イリーナ「烈しい方です。でも、私にだけは優しくしてくださいました。それで充分です」
ヒルメスの為人を端的に表現したイリーナの名言ですが、ペシャワール城でアルスラーンに向かって放った、
ヒルメス「すぐには殺さぬ。まず、小せがれよ、きさまの右手首を斬りおとしてくれよう。このつぎ会ったときは、左手首をもらう。それでもなお生きていたら、右の足首でもちょうだいするとしようか」
というショタ系リョナ性癖丸出しの言葉を知っても、尚、ヒルメスを好きでいられるか、些か疑問ではあります。尤も、思い込みの激しさではヒルメスに負けず劣らずのイリーナのことですから『そこに痺れる憧れる』とばかりに、アルスラーンを斬り刻もうとするヒルメスに熱烈なエールを送る可能性もアリ。逆にヒルメスのほうがドン引きしそうです。のちにイリーナはザンデを始めとする部下やメルレインの目前でヒルメスの乙女チックな黒歴史を暴いてしまうことからも判るように、思い込みが激しいうえに周囲の目を気にしない性格なのよね。暴かれたほうは銀仮面の下で、
ヒルメス(イリーナ、それ以上やめて! 死んじゃう!)
と顔色を赤と青に忙しく変化させていたことでしょう。クバードやメルレインからdisられたヒルメスの仮面ですが、この一事にかぎってはナイスな判断であったと思います。流石に本編では難しいと思いますが、単行本のカバー下でヒルメスの仮面を『取る&取らない』のドリフネタをやった荒川センセなら、上記の場面も描いてくれるって、私信じてる!
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