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違う、そうじゃない。
恐らくは『別マガ』の巻末コメントで仄めかしていた田中センセの新刊歴史小説。確かに宋代の作品だけれどもさぁ……『奔流』のように日本での知名度の低い名将を魅力的な虚像(誉め言葉です、念のため)と共に提供する作品とか、或いは『白日、斜めなり』みたいに日本での通俗的なイメージを覆すような作品とかを期待していたのよ。いや、新刊が出たのは嬉しいけれどもね。次は史実ベースの作品を期待。鄭和は星野之宣さんが『海帝』で描いているので、候補から外してもよさそうです。今回の話題は3つ。
1.『西郷どん』第28回『勝と龍馬』雑感(≠感想)
先日、知人と『西郷どん』について話す機会がありまして、私のブログでの『西郷どん』に対する批評は概ね御賛同頂いているのですが、そのうえで、
「アナタは佐幕派だから『西郷どん』への評価が辛くなるんじゃあないですか?」
という御指摘も受けました。『辛くなる? 冗談じゃない。それじゃあ、まるで普段の大河批評が甘いみたいじゃないか?』というポプラン的反論はさて置き、確かに穏健的佐幕論と段階的幕府解体論の間を行ったり来たりしている私は、薩長視点の物語に対する偏見があるかも知れないと思い、その可能性を再精査する意味も含めて、個人的幕末~明治の好きな人物ベスト10を考えてみました。順位は特に固定なしで以下の通り。
徳川慶喜(将軍) 幕末後期の混乱はだいたいコイツの所為。
中島三郎助(幕臣) 幕末の嚆矢と掉尾に立ち会った男。
勝海舟(幕臣) 津川さんの勝安房が至高。異論は認めない。
榎本武揚(幕臣) トップに立たなければ有能極まりない政治家。
神保修理(会津藩) 慶喜好きで修理好きって、我ながらオカシイよね。
山川大蔵(会津藩) いわずと知れたミスタープッツン。
佐藤泰然(佐倉藩) この人の親類縁者偉人多過ぎ説。
井上聞多(長州藩) 自他共に認めるミスターナンバー3。
山田市之允(長州藩) あれぐらいやっていかないと(幕軍に)勝てない。
山田方谷(松山藩) ウチの継サァがお世話になりました。
ああ、これは佐幕派というよりもタダの年末時代劇好きですわ。それに将軍・幕臣・佐幕派が過半数を占めているとはいえ、慶喜や勝といった幕府の瓦解に貢献した人物も複数紛れ込んでいるので、アンチ薩長ゆえに『西郷どん』への当たりが厳しいという知人の指摘は、残念ながらハズレといえるでしょう。これで心置きなく、今年の大河ドラマを叩くことが出来そうです。まぁ、今週の『西郷どん』は叩くほどの内容もなかったのですが……いや、本当にスッカスカで何も思い出せないのですよ。相変わらずのおつかいクエストの連続で、しかも、何で吉之助サァがおつかいに出されるのか、おつかいの先で何をしたのか、その結果が歴史にどう反映したのかが描かれず、登場人物が吉之助サァすげーすげーとマンセーするばかりで、何がどう凄いのか全然判らない。『軍師官兵衛』もそうでしたが、他人がプレイしているクオリティの低いゲームを傍から眺めているような心境に陥る作品です。疎外感と退屈感が半端ない。
今回、唯一の収穫は制作陣が西郷を嫌っていることが完全に判ったことでしょうか。うん、だって絶対に嫌いでしょう? 禁門の変の直後、両親と逸れた童や家族の亡骸に縋る女性の傍で、助け出した犬に頬擦りしながら満面の笑みを浮かべるなんて、犬好きの要素を差し引いても真性のサイコパスですやん。描き方に悪意しかないわ。こんなんで視聴者が『吉之助サァって何て優しい人なの! 感動したわ! キャー! もうあげちゃうわッ、あたしのパンティー!』なんて思うと本気で考えてドラマを作っているのでなければ、悪意の裏返しに基づく褒め殺しと解釈するしかありません。先週、目出度く敵認定した『西郷どん』ですが、敵は敵でも単なる無能者か卑劣な内通予備軍かで当方の対応も変えなければいけませんので、総評記事に着手するのは先のことになりそうです。
2.『今日からCITY HUNTER』雑感(ネタバレ有)
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四十歳・独身・派遣社員の女性が『CITY HUNTER』の世界に女子高生として転生するという、現在流行りの『リバイバル二次創作』と『なろう系』と『異世界転生もの』の濃厚魚介系トリプルスープラーメン的作品。世間では『リバイバル二次創作』にはコンテンツユーザーの高齢化や新規作品の人気の伸び悩み、或いは過去作品の栄光に縋るといった類のマイナスイメージがつきまとう傾向があるそうですが、私個人は基本的にウェルカム。漫画にかぎらず、八〇~九〇年代の大量生産&大量消費の時代に創作されたサブカルコンテンツには、毟り残した肉が付着したままで大量廃棄された作品が多数存在しましたから、それを再利用しようとする試みは原作のイメージを損なわない範囲であれば、どんどん推進して欲しいと思います。現在、ネットで配信されている『キン肉マン』の『六鎗客VS運命の王子編』も作者自身による原作へのオマージュやリベンジ要素がてんこ盛りで、毎週の更新が楽しみで仕方ありません。ゼブラVSマリキータの次回は三カ月後……ではありませんという自虐パロディ、ほんとすこ。
この『今日からCITY HUNTER』も、リアルタイムで連載を見ていた読者は普通に楽しめる内容になっています……が、私のような原作のヘビーユーザー(?)には些か物足りない……というか、アンフェアな構成に不満を覚えるのも事実。主人公は香の持つ3m棒で自分が原作の第何話にいるのかを把握したり、冴羽さんのもっこりで喫茶店の天井が破壊されるのを覚えていたりするほどの熱烈な『C・H』ファン設定なのですが、その割には海坊主の襲来に備えるために冴羽さんが部屋に子猫を潜ませておいたり、冴羽さんが香の仕掛けたトラップで自爆するのを忘れているという具合に、コイツは本当に『C・H』のファンなのかと疑いたくなる描写が多い。ちなみに私はキチンと覚えていました。あと、美樹ちゃんとかすみちゃんは誕生日が同じ。これ豆な。
まぁ、余談は兎も角、本作は主人公を熱烈な『C・H』ファンと設定しておきながら、物語の筋書きに合わせて原作のストーリーを覚えていたり、度忘れしていたりと悪い意味での御都合主義的展開が多く、リバイバル二次創作なのに熱烈な古参ファンにはオススメ出来ないという、矛盾した作品となっています。いや、繰り返すようにフツーに読む分には問題ないのですが……それにしても、この作品、どこまでやる予定なのか。第一話の冒頭で描かれたVS海原戦は流石に女子高生がついていくのは難しそう。しかも、原作はキャラクターが律義にリアルタイムで年齢とっていく律儀な作品でしたので、その頃には主人公の女子高生設定もどうなることやら。
基本的に公の論壇やインタビューで陰謀論を唱える政治家を支持するつもりは毛頭ありません。内容が正しいか否かは別として、陰謀論という奴は『言ったもの勝ち』ですからね。政治家が迂闊に口の端に乗せてよいものではない。その点を踏まえたうえで、以下の文章に目を通して頂けると幸いです。
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一部で結構な騒ぎになっているらしい現役国会議員の論文。流行りものは敬遠しがちな私ですが、今回はたまたま書店で手に取る機会があったので、購入&拝読しました。結論から申しあげると、著者の個人的体験に基づく憶測が散見するものの、全体的には穏当な内容。要するに『どこかでラインを引かないとエライことになりますよ』という警鐘以上のものではないと思いました。
ただし、この結論を書くために『生産性がない』の一文が必要であったか否かは疑問の余地があります。実際、この段落を丸々カットしても全体の構成に殆ど影響はありません。じゃあ、何でこの文章を入れたのかというと、ここから先は完全に憶測でしかないのですが、筆者が本当に書きたかったのは、まさにその一文であったからと考えるのが妥当でしょう。でも、それを結論に持ってくると流石に反発必至なので、途中にチョロッと書き込んだのではないかと思います。何故そう考えるのかといわれると、
私も時事ネタを書く時には同じ手法を好んで使うから
です。
炎尾燃「作者の一番言いたいことを大ゴマで言わせてはいけない! 言いたいことをストレートにネームにすると作品がうすっぺらくなるから気をつけろ! 本当に言いたいことは小さいコマでボソッと言わせて! あとは言いたいこと以外のこととか、言いたくないことを大ゴマで言わせろ!」
これは漫画や評論にかぎらないモノカキの基本的なテクニックですね。このほうが読者の印象に残るうえ、イザという時の退路も確保出来る。一石二鳥&一箭双雕&一挙両得&一粒で二度オイシイ手段。
今回の騒動では『生産性がない』というフレーズを『けしからん』と捉えるか、或いは『枝葉末節の揚げ足取り』と受け取るかで議論が真っ二つに割れているようですが、私個人は上記の理由から形式上の結論は兎も角、著者の本来の意図は『生産性がない』という言葉のほうに重きが置かれていると解釈しております。
尚、論文それ自体に対する批評は差し控えさせて頂きます、悪しからず。
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