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『龍帥の翼 ~史記・留侯世家異伝~』第二十三話感想(ネタバレ有)

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感想記事を書くために何度か読み返しているうちに、本作の樊噲がドランクドラゴンの塚地に似ていることに気づきました。詳細は『西郷どん』のHPを御参照下さい。髭を生やしたら随分と似ていると思いませんか? いや、そうだからといってドーダコーダいうつもりはありませんが、以前の感想記事で樊噲=ゆるキャラ説を唱えた身としては、結構イイ線突いていたなとの自画自賛の気持ちで胸が一杯です。ストーリーとしては張良の援軍が増えた以外は概ね先月号と同じなので、感想記事は短め。ポイントは4つ。

 

 

1.ぬしの名は

 

劉邦「あいつ……何だっけ、軍師のとこの若いやつ」

 

黄石が『丈夫』と評したことからも判るように相当使える人材にも拘わらず、劉邦に名前を憶えて貰っていないことが判明した林秀。少なくとも、盧綰よりも使い勝手がいい人材の筈なので、少し可哀相。尤も、林秀の実務処理能力と情報伝達技能は張良のように好んで諜報を用いる人材に仕えてこそ、その真価を発揮できる訳で、自分の力量では彼の才能を使いこなせないと判っている劉邦はムダなメモリーを使わないのかも知れません。人材とは自らが用いるばかりが全てではなく、人材同士の繋ぎ方も重要。曹操に呂布は使いこなせないが、劉備は呂布を手懐けられる。つまり、劉備を介して呂布を飼いならせばよいと考えた蒼天版郭嘉のような発想です。まぁ、郭嘉が白馬の戦いでブチぎれたように曹操の何時もの気まぐれで実現はしなかったんですけれども。

 

 

2.一種のフラグ

 

劉邦「あいつら失って、わしは再起できるか? 沛の鼻つまみ者だったわしを沛公なんぞと立ててくれた昔の仲間を捨てて、この後、何が出来るって言うんだよ」

 

黄石に『愚』なれども『龍』と評される所以を発揮した劉邦。『生命は大切にするのがいい……が、たまには嘘でもハッタリでも生命を賭けてみせないと誰も惚れちゃくれない』というファンの金言を思い出します。尚、史実……特に対項羽戦では何度も味方を見捨てて逃げるのですが、それは先の話としておきましょう。そもそも、今回の話でも、

 

劉邦「『ふり』でいいんだよ。わしがちょいと前に出りゃ、樊噲は必ずもっと前に出る」

 

と味方をチョロく扱っている訳で、劉邦のタチの悪い人誑しの所以も伺わせています。

 

 

3.魔術

 

張良「人は予見すれば安心し、実像を小さく見る……しかし、予想を超えた時には逆に遥かに大きく見える」

 

前回の会戦と真逆に、本当に万単位の援軍を率いて来た張良。それでも、総兵力では楊熊のほうが上でしたが、一度『虚』と見た攻撃に『実』があった時の衝撃は計り知れません。単純な正拳突きも躱せなくさせるイグナシオのマジック理論に近いものがあります。

しかし、そうはいっても、今回も楊熊は油断し過ぎ。前回の戦闘と同じく、事前に諜報の網を広げておけば、今度こそ万単位の軍勢であった張良の動きも捕捉することができた筈。張良の作戦勝ちというよりも、前回の敗戦に何も学ばなかった楊熊の自滅と評すべきかも知れません。まぁ、そのほうが秦軍にとっては深刻な事態といえるでしょうけれども。国が亡ぶ原因は敵の勢いよりも、味方の自滅のほうが遥かに多いからね。

 

 

4.フクザツ

 

張良「章邯が打てる手……の微かな希望が楊熊……いえ、趙高よりの援軍によって、この大乱が収まった……という形式上の大功を趙高にもたせる」

 

なるほど、わからん!

 

鉅鹿の戦いから引っ張ってきた章邯の思惑。勝とうと思えば何時でも勝てたけれども、趙高に功績を譲るために援軍を待っていたということでしょうか。全く判らないではないですが、些か込み入り過ぎ。少なくとも、ここまで引っ張るネタではなかったと思います。作中で劉邦にも無理だろと突っ込まれていました。そういや、劉邦も晩年は老害化の挙句、家臣を粛清しまくるんだよなぁ。今回、章邯の思惑を甘いと断じたのは後年のフラグ……なのか?

 

 

 

 


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