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『真田丸』第32回『応酬』感想(ネタバレ有)

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第28回~31回にかけての秀次パワハラ自殺秀吉介護問題という、結構な鬱展開から解放された視聴者ですが、逆に作中の信繁と三成は秀吉の『佐吉を頼む』『家康を殺せ』という遺言に縛られることで始まった『真田丸』関ヶ原編。内容的には安定感が際立っていました。各シーズンの初回は敢えてハードルを下げてくる本作では珍しい展開。視聴者としても、秀次・秀吉のシンドイ描写で十二分にタメが蓄積している状態なので、今季は出だしから堂々と全力でいこうということでしょうか。実際、スケジュールの三分の二近くに差し掛かっているのに『関ヶ原』と『大坂の陣』の二大大戦が残っている現状を考えると、末脚を貯めている猶予はないと思います。久々の最終回拡大バージョンもあるかも。そういや、最終回拡大バージョンって最近やっていないような……記憶にある最終回拡大バージョンはGOなのよね。記憶しておきたくもない内容でしたが。そんな記憶を振り払うためにもさっさと感想記事に入りましょう。今回のポイントは9つ。多いな。


1.死ぬほど痛いぞ

真田信幸「出浦は有馬へ運び、養生させることにしました」

出浦、生きとったんかワレ!

先週の自爆で完全に死んだと思っていました。しぶといな流石忍者しぶとい。尤も、スズムシは一番信頼する腹心と切り離された訳ですから、これが東西大戦を控えた真田家に大きな影響を与える可能性大。そこに秀吉の訃報が届きますが、

きり「御無礼致します、きりでございます。源二郎様、急ぎ御城へお越し下さい!」

このきりちゃんは贋者では?

『あの』きりちゃんが『御無礼致します』とか……あり得ん! いきなり襖をパーンと開いてから秀吉が死にましたと大声で叫んでもおかしくないキャラクターじゃあないですか。吉野太夫に続き、きりちゃんも徳川の息がかかった贋者とすり替えられたのかと思い込んでしまいましたよ。それこそ、この場に出浦さんが居合わせたら、無言でドテッ腹に脇差をブチ込まれても文句をいえないレベル。何気に生命を永らえたきりちゃんでした。


2.もう一人の闇深

片桐且元「まるで眠るように……すっとお亡くなりに……」
寧々「長年仕えた助作に手ェ握って貰えて……殿下もきっと喜ばっせたに」


先回放送分で秀吉の遺言を捏造する佐渡と治部の低レベル極まる争いが描かれましたが、今回の且元による秀吉臨終の捏造も大概でした。人も殺さぬ表情を浮かべながら、平気で嘘をつく辺り、何気に且元も恐ろしいです。助作の闇はそれなりに深い。流石は秀吉の御前で猿回しをやってのけるという、前田慶次と同じ境地に達している男。勿論、個人レベルの話であれば、眠るような最期というフレーズは誰も傷つけない優しい嘘なのですが、今回は宿直の且元が爆睡していて秀吉の異変に気づかなかったのですから、優しい嘘というよりも、保身から発した虚偽申告と考えたほうが妥当でしょう。本作の且元は常に困った表情を浮かべながら、しかし、自分自身は決して責任を背負うことなく、周囲の人間から勘違いによる同情を勝ち取るという敵意のない自分勝手な悪意に満ちた人物といえるかも知れません。ジョジョ第6部のサンダー・マックイーンとか。


3.私は聞く耳を持っている(`・ω・´)

石田三成「私は殆ど間違えることがないが、ごくたまに誤った決断をすることがある。そんな時は遠慮のう教えてくれ」

何というか全方位からデンプシーロールでどついてくれといわんばかりの治部の台詞。自分から率先してサンドバックになりにいったとしかおるスタイルは、最近のリアル世界で見たような気がしますが、そんな物語の登場人物のような人間が現実に存在する訳がないので、やはり、気のせいでしょう。何れにせよ、この治部の台詞の突っ込み放題感は半端ない。そもそも、最も信用する相談相手が闇深の刑部殿という点で思いっきり誤った決断をしていますし、間違えることが殆どなくても、肝心のシチュエーションで間違えたら意味がないのは関ヶ原の戦いで描かれると思いますし、何よりも、

島左近大谷吉継島津義弘「「「お前は教えられても聞き入れないやろ!」」」

という声が聞こえてきそうですが、当の本人は、

石田三成「聞く耳を持っているが、聞き入れるとはいってない」(`・ω・´)

とかいって平然とスルーしそうです。や佐残。はっきりわかんだね。


4.ゆり世代

徳川家康「すぐに江戸へ戻れ」
徳川秀忠「畏まりました」スタスタ


徳川秀忠「……何故?」キョトン?
徳川家康「……たまには頭を働かせろぉ!」


直前まで秀吉の冥福を祈っていた、乃至は秀吉の死を神仏に感謝していた、或いはこれから成そうとしていることを予め秀吉の霊に詫びていたと思われる、厳粛なシーンの直後にこれ。秀忠の言動には悪気がないのは判っているのですが、それでも、イラッとさせられますな。たまには自分の頭を使えという家康の言い分以上に疑問に思ったことは何故その場で問い質そうとしないのか。微妙なタイムラグを置いて質問されるのが一番イラッとするのよね。こういう奴と一緒に仕事をするのは人間世界の悲惨です。まぁ、何も判らないのに勝手に仕事を進められて、手の施しようがなくなるよりかはマシですが。
ちなみに上記のクイズの正解者はスズムシ。回答は『親子の共倒れが怖いから』でした。流石は腐ってもスズムシです。関ヶ原の戦いの際、家康が結城秀康を関東に留め置いたのも、上杉への備えとか、戦功をあげさせないためとかではなく、単純に血統のスペアを保管するためであったのかも知れません。


5.簡単なお仕事です

石田三成(表)「徳川内府に太刀打ちできるのは大納言さまだけにございます」
石田三成(裏)「そう長くはないだろう」

最近の大河ドラマには毎回毎回死ぬために出される犬千代。まぁ、今世紀に入ってから、一度主役に抜擢されているからね。多少はね。もうちょい早く出してあげればいいのにと思わないではありません。秀吉没後の家康の動きを描くうえで非常に重宝するキャラクターですので。
尤も、この場面で大事なのは犬千代ではなく、政務の詳細は五奉行で策定したうえで、老衆には裁可のみを求めるというシステムを構築しようとする治部の姿勢。トップダウンではなく、ボトムアップ。要するに五大老はハンコを押すだけの簡単なお仕事ですということにしたいでしょう。官僚主導型の国家には往々にして見られるスタイルです。問題はシステムを主導している本人が、

石田三成「誰か一人に力が偏らぬようにするには、このやり方しかない」

と思い込んでいること。傍目には三成一人に力が偏るシステムにしか見えないですが、本人は自分が他人から如何に見られているかを気にしない為人なので、それに気づきません。そこをフォローするのが信繁の役割だと思うのですが、先項で触れたように治部は聞く耳は持っていても、聞き入れる度量は持っていないので、信繁もそこには突っ込まないのでしょう。仕方ないね。


6.闇深の娘

真田信繁「春は?」
「えぇ、存じておりました」ニパッ

何処からか漏れ出る秀吉の死。家族全員が誰から聞いたかという責任を押しつけあう、実に真田家らしい醜い争い(褒め言葉)が生じる中、春ちゃん一人は『知っていましたが、聞かれるまでは黙っていました』というスタンス。一座の中では最年少にも拘わらず、この分別のよさと空気の読み具合は異常です。流石は闇深の娘。秘密というものは公開しても得にはならない、隠蔽してこそ価値が生じることを本能的に察しているのか。それとも、太閤の死の真偽を問い質しても、信繁を困らせるのみと判っているのか。何れにせよ、ここまで底の見えない女性となると、逆に男性の側は持て余しそうです。他にも自分の秘密をアレコレ握られているんじゃあないかと不安に苛まれそう。秀吉の死をペラペラと語る薫さんや稲さんのほうが単純な分、御しやすそうですね。治部がいう『苦労する』というのは、実はそういう点なのかも。でも、そんな春ちゃんが可愛いんじゃあああ!
問題は何処から秘密が漏れたかですが、これは十中八九スズムシでしょう。本人は無言で否定していましたが、お兄ちゃんや信繁が大事を漏らす筈がありませんし、もう一人の容疑者のきりちゃんは大坂城に詰めたままなので、スズムシよりは可能性が低い。タダでさえ、吉野太夫(偽)に秀吉の病状を漏洩した前科があるので、疑われても仕方ありません。今回初の上洛となった三十郎に、

矢沢頼康「こんなことを申すのも気が引けますが、殿は大丈夫でございますか?」

と不安がられるのも無理はないかも。尤も、よくよく考えるとスズムシは昔から全然大丈夫じゃないので、何を今更という気もしますが。


7.今週のMVP

寧々「何を信じてよいものやら……」

既存の人物像に新しい角度から光を与えるという歴史劇の存在意義から逆算すると、今回のMVPは寧々でしょうか。実をいうと本作の寧々は意外と使えない人間なのですよね。秀吉個人の妻としては申し分ないのですが、天下人の伴侶に相応しい活躍の場面が少ない。巷説における寧々は早くから家康を次の天下人と見定めて、清正や正則に色々と働きかけていたとの評価がなされていますが、実際は意外と西軍寄りであったりします。上記台詞のように家康と治部の間で右往左往する寧々というのは実情に近いのかも。そういう視点で描かれた寧々が今回のMVPでしょうか。尚、次点はきりちゃん。秀吉の訃報を知らせてきた際の折り目正しさといい、寧々・茶々・阿茶局の会話の内容を信繁にリークする手腕といい、活躍の度合いは高かったのですが、これも上記したように贋者疑惑と、秀吉死去の情報を漏洩した疑惑が完全に払拭できないので、今回は次点どまり。


8.なぁにが宴会じゃあい!

石田三成「徳川め、大名たちを引き込むつもりだな……負けてはおられぬ、我らもやろう!」

石田三成「……馴染みの顔しかおらぬではないか」

やめて、やめてクレメンス。

冒頭で記した秀次パワハラ自殺、秀吉介護問題に続く、本作特有の妙に生々しいシチュエーション。今回は三成ぼっちパーティーとでもいいましょうか。いざ、自分が同じ立場に陥ったらと思うと、片桐且元ばりに胃に穴が開いてしまいそう。それでも、来てくれたゲストを懸命にもてなすのであれば、可愛げもあるのですが、ホストのくせに平然と宴席を中座する始末……しかも、朝鮮から帰還した清正を労う宴席では、

石田三成「お主は案外城造りも巧いし、領内の仕置きも確かだ。只の戦馬鹿ではない」

これで褒められておると思えというのが土台無理な相談ですよね。こりゃあ、確かに人望なくなるわなぁ。これは友人の指摘を受けて気づいたのですが、

加藤清正「わしはおまえの、そういうところが気に食わんのだ!」

という台詞の裏を返せば、そこさえ直せば清正は三成を好きになれるということですからねぇ。尤も、豊臣家が家康派と三成派に割れる原因を治部個人の性格に帰してしまっているのが残念といえば残念。これだと治部の元に人が集まらない説明はついても、家康のほうに諸大名が集まる理由にはならないのよね。本作の家康は現時点での天下取りに乗り気ではないのですから、余計にそう。


9.ネット弁慶

上杉景勝「我らは太閤殿下の御前にて誓いを立てた。それを裏切る者をわしは許さん!」(`・ω・´)

上杉景勝「忘れたですむ話ではない……ような気がする」
徳川家康「上杉殿、お声が小さい! 耳に入ってこぬわ! ぁあ?」
上杉景勝「……何でもござらん!」(半泣き半ギレ)


これはひどい(褒め言葉)

流石はいいカッコしいの言動には定評のある本作の景勝。予想通りにカッコつけて、予想通りにヘタレてくれました。予定調和とはいえ、超納得。私同様、実際に顔をあわせなければカッコいいことをいえるという景勝のネット弁慶気質を思うと、本作で有名な直江状を書くのは景勝というオチも考えられます。
さて、諸大名と次々と姻戚関係を結ぶ家康。この辺も現時点では天下人たらんと欲していない家康が遺命に背いてまで、諸侯と関係を持とうとする動機に欠けるのですが、公式には殿下は亡くなっていないことになっている以上、遺言は実効力を持たないという釈明は牽強付会の極みとはいえ、成程と思いました。こういうひねり方好き。

次回は七将襲撃事件。大抵の歴史劇では利家の死でタガが外れた虎之介や市松の暴発として描かれる当該事件ですが、本作では治部のほうから手を出す模様。ホンマ、どこか捻らないと気がすまないのか、三谷さんは。


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