イノケンティウス七世「皮下脂肪がなければ即死だった」
今月号の巻頭アニメ特集でもdisられていたイノケンティウス七世の皮下脂肪ネタ。これにはギスカールもデナトニウム級の苦笑い。日曜夕方では裏切り者の代名詞になっている櫻井ボイスのシャガードといい、第一期よりも面白いアニメ版アルスラーン戦記ですが、第一話で宝剣ルクナバードを持ち去ったボダン一味の動向が描かれないままなのが気になります。アニオリ展開なので、キチンと回収して欲しいのですが、残り2話で何処まで描けるものか……第3期を期待していいのですかね。そんなアニメ版に追いつけ追い越せとばかりに、今回は結構話が進んだ荒川版アル戦。今月号の内容からして、我らがラジェンドラ殿の今年中の登場もほぼ確定したと見てよいでしょう。ジャスワントは……うん、微妙なラインだね。今回のポイントは5つ。
1.濡れ衣
ギーヴ「もっと粘れよ、エラム。つかえない奴だな」
エラム「なんでですか!」
アルフリードがエラムと口論している隙に女性陣の部屋に乗り込もうとしたギーヴ。風呂あがりで廊下をブラつくシーンといい、何やら修学旅行先の温泉ではしゃぐ学生のような雰囲気を漂わせています。いたよね、こういう奴。
尤も、直後に描かれているように、ファランギースはお肌どころか、刃物の手入れ中でしたので、迂闊にギーヴが侵入しようものなら、ガチンコで刺されていた可能性が高いです。如何に同じアルスラーンを主君と仰ぐ間柄とはいえ、ホディールの城では自室への侵入を図ったギーヴを高層階の窓から叩き落とそうとした過去があるファランギース。己の貞操を守るためには同輩の一人や二人屠るのに何の躊躇いもないでしょう。むしろ、ギーヴはエラムに感謝するべき。でも、ギーヴは『美人に無視されるよりも、刺されるほうが本望』とか思っていそうなので、やっぱり、エラムはつかえない奴なのかも知れません。
2.ぐうかわ
アルフリード「ナルサスが信頼してる仲間たちとも、本当はケンカしたくないんだ……エラムには色々教えて欲しかったのに……」
尚、三年経ってもケンカは続いていた模様。
尤も、アルフリードのほうが和解を求めたとしても、エラムが拒めばそれっきりなので、彼女のみに責任を求めるのは間違いでしょう。第一、この件に関しては、何かと曖昧な態度に終始していたナルサスが全ての元凶でしょうからね。しかし、クッションに顔を埋めて反省するアルフリードぐうかわ。ファランギースでなくとも、見ていて笑みが零れるレベル。ますます、ナルサスの優柔不断さが解せない。
3.泣く子とパルスの宮廷画家には勝てない
アイヤール「おじいさまはでんかといっしょではないのですか? おじいさまがまけるわけないよね? ねえ! ははうえ!」
漫画版オリジナルシーン。原作では第二部になって初めて描かれたキシュワードの妻子と閨閥関係を持ってくる辺り、荒川センセの原作の読み込み具合が半端ない。私も今月号を読むまでマヌーチュルフなんて、存在そのものを完全に忘れていました……というか、原作でも『死んだ』としか描かれないレベルのキャラクターなのになぁ。
この場面では……というか、この場面でもギーヴの優遇ぶりが半端ない。マヌーチュルフの訃報の裏付けを語るという嫌な役割を率先して引き受ける辺り、この男は風来坊を自称する割に組織における自分の立ち位置を弁えているという描写でしょう。詳細をダリューンの口から語らせると、キシュワード夫人との間に理屈では整理できない確執を生むかも知れませんので。尤も、ギーヴ本人は人妻とはいえ、美人とお近づきになる契機と考えている可能性が微レ存。上記のアイヤールの台詞のコマではダリューンやファランギースの沈痛な表情と対照的に、既に心理的ダメージから立ち直っている感じでした。心の中で喪に服する女性は美しいとか、実にけしからんことを考えていそうです。
4.ダメ親父
バフマン「青二才共にわしの苦渋がわかるものか……! 苦労知らずのひょっこが好き放題言い散らしおって……」
何というか、身体の芯からダメ親父オーラが漂うバフマン老。ナルサスは『怒ったフリをして追及を逃れた』と評していましたが、城壁で佇む頼りなげな後ろ姿を見ていると、ガチで怒って、ガチで落ち込んでいるようにしか見えません。直後のヒルメスとの会話をキシュワードに見とがめられた時の狼狽ぶりときたら、間男を逃がすだめんず女子といわれても納得してしまうレベルです。百歩譲って狼狽するのはいいとしても、妙にナヨッとしたリアクションはよせ。自分のキャラを考えろ。しかし、アルスラーンの出生の秘密でここまで落ち込むのですから、これでヒルメスの出生の秘密を知る機会があったら、バフマンはどうなってしまったのでしょうか。一周回って泰然と対処しそうでもありますが。
5.痴れ者
バフマン「何者だ。出て参れ。このバフマンが痴れ者に相応しい最期を与えてくれるわ」
ヒルメス「……バフマンだと?」
ついに『痴れ者』呼ばわりされてしまうヒルメス殿下。実際、この変態仮面は敵の城に忍び込んで何がしたかったのでしょう。原作では『城外でバフマンに見つかってしまったんだ……』『何や、コイツ、俺に靡きそうや』『せや! 城に忍び込んで篭絡したろ!』という、まさに間男さながらの動機で城に侵入したヒルメスでしたが、漫画版では一足飛びに城内に侵入していました。ノープランで敵の本拠地に忍び込むとか、残念にもほどがあります。原作では『たとえ、如何なる欠点があろうとも、ヒルメスは臆病者ではなかった』と評されていますが、臆病でなければいいというものでもないでしょう。本編でもバフマンに気配を悟られた際に、
ヒルメス「ふむ……確かにその面は見覚えがあるぞ」
と勿体ぶった登場をしていましたが、内心は『見つかってしまったんだ……』『お、懐かしのバフマンやんけ!』『せや! このまま篭絡したろ!』とか必死に考えているのかと思うと、地味に込みあげてくるものがあります。しかも、ラストは、
ヒルメス「お! アンドラゴラスの小倅やんけ! 殺したろ!」
とか計画性の欠片もない言動。冒頭で触れたアニメ版ではイリーナ救出で株をあげたヒルメスですが、基本的に残念なイケメンなんだよなぁ。まぁ、イリーナも残念な美女なので割れ鍋に綴じ蓋ではあるのですが。
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