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荒川弘版『アルスラーン戦記』第37章『砂岩の城』感想(ネタバレ有)

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本編そっちのけでアニメ版第二期の感想を述べさせて頂くと、第一期に比べて、相当濃密な内容になりそうな予感。全八話という異例の編成影響しているのでしょうけれども、第一話から『征馬孤影』の半分近くまでストーリーが進展していました。そのうえ、ボダン一味がルクナバードを強奪するというオリジナル展開アリ。今月号は原作換算で一〇頁しか進まなかった漫画版と様々な意味で対極過ぎる。これ、どっちが正しいの? いや、漫画版もオリジナルシーンが随所に挿入されていて、それがいちいち面白いので、充分OKですが、流石に今年中に原作三巻に進まないとラジェンドラーを自認する私には厳しい展開です。まぁ、今回でペシャワール城に入ったので、多分大丈夫だと思いますが。
そんなこんなでアニメ版第二期も始まった荒川版『アル戦』。今回のポイントは4つ。


1.血縁関係

アルフリード(あれがアルスラーン王子かぁ……アンドラゴラス王の子だから、もっとすごいの想像してた……)

アルフリードの脳内妄想とはいえガチムチのアルスラーンを見ることができた貴重な一コマ。しかも、ケツアゴ。そのうえ、アメリカンな笑い。アームストロング少佐の首から上を挿げ替えた感が半端ありません。誰得だよ。アルスラーンがこのレベルですから、アンドラゴラス本人が民草から如何なる目で見られているのか、何やらうそ寒いものを感じてしまいますが、ゾット族という盗賊一味の出自であることを鑑みると、アルフリードは国王に対する敵意と偏見を植えつけられて育った可能性もあるので、彼女の印象を一般化するのも考えものでしょう。ちなみにアンドラゴラス王を見たエトワールの反応はこちら。同じネタで漫画とアニメの双方、一粒で二度美味しいネタを盛り込んでくれた荒川センセは原作者の鑑ですね。しかし、上記の台詞は抜き書きすると、微妙な卑猥さが漂うように思えてしまうのは、私の心が王弟殿下並みに穢れ果てているからだと信じたい。


2.脳筋

ファランギース「近くの住民の話では、この周囲3ファルサングは橋がないとのことじゃ」
ダリューン「困ったな……」


『ルシタニア兵十万くらいは俺一人で何とかなる』と真顔で考えたことがあるくせに、急流とはいえ、橋を落とされた川を渡ることには難色を示すダリューン。どう考えても、前者のほうが困難だと思うのですが、彼の脳内では異なる価値観が働いている模様。直後のシーンで『剣が欲しい』とのアルフリードの要請に敵の手首ごと斬って渡すというサイコパス極まる対応も見せてくれました。ダリューンの闇は己の甲冑の色よりも深い。まぁ、受け取った手首を『がさつ者!』の一言で払い除けた、その返す刀で敵の顔面に剣撃を叩き込むアルフリードも大概ですが。
しかも、次の場面ではザンデの挑発に乗って、アルスラーンを危険に晒すという大失態を披露。ダリューン本人は後者のほうが衝撃でしょうけれども、読者にしてみたら、前者のほうがはるかにイメージダウン。『あの』ザンデの挑発に乗って持ち場を離れるって……ダリューンの知力関係のパラメータは意外と低そうです。高くても65くらい?


3.パワハラ

ヒルメス「謝ることはない。謝ったところでペシャワールの城から奴らが出てくる訳でもなかろう」
ザンデ(お優しいヒルメス殿下……)ジーン
ヒルメス(俺が指揮を執っていれば、もう少しなんとかなったかもしれん)ハァ……


どう考えても皮肉でしかないヒルメスの返答の裏を読むことなく、逆に深く感動しちゃうザンデ。今週の『真田丸』では秀吉による無自覚のパワハラに追い詰められる秀次の様子が描かれていましたが、この程よい鈍さが秀次にあれば、次週の悲劇は避けられたかも知れません。人間関係には知らないほうが幸せなこともある。誤解なく判りあえるのが人類の進化というニュータイプ理論は机上の空論。ハッキリわかんだね。
尤も、ザンデの残念ぶりに苦情を漏らすヒルメスに一切の責任がないかといわれれば、全然そんなことはありません。漫画版では触れられませんでしたが、今回の捜索にヒルメスが参加しなかったのは、先回の落馬で手首を挫いていたからです。それを心の棚にあげて、ザンデに皮肉をぶつけるヒルメスさん、マジブラック上司。直後の、

ヒルメス「ザンデはよく働いてくれてはいるが、戦果が乏しいな。ナルサスにしてやられてばかりだ」

の台詞は固有名詞をザンデをヒルメスに変えても普通に通用しますし、そもそも、ナルサスとザンデは先回一度顔をあわせただけ。そのうえ、ナルサスの詭計にかかったのはヒルメス本人です。ホンマ、ヒルメスさんの器の小ささは大陸行路を駆けめくるでぇ。


4.ふぅん、勘でわかるんだ(イジワルそうな声で)

ナルサス「嫌な予感がする!」

欄外の『パルス一の軍師、ナルサス!! 見事危機回避!!』との文句で締め括られた今回の『アル戦』。尤も、アルフリードが自分の部屋を訪ねてくる&エラムと鉢合わせするのは容易に想像できる事態なので、予感というのは方便でしょう。風呂を出ない理由を具体的に説明したら、ダリューンに揶揄われるのは必定ですからね。そもそも、ナルサスはヤンと同じように予感で動くタイプではありませんし、また、勘の働きは鈍いほうです。勘が働くタイプでしたら最新刊のラストのような結末にはならなかったでしょう。今回にかぎっても、ヒルメスがペシャワール城への侵入を目論んでいることへの予感は全く働いていませんでした。
尚、漫画版では初のお披露目となる戦化粧を落としたアルフリードの素顔。これは可愛い。可愛いは正義。意外と胸もあります。マジ、何でナルサスはこんな可愛い子を三年も待たせたの?(威圧


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