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『真田丸』第16回『表裏』感想(ネタバレ有)

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今週分の放送日に御当地上田市で開催された『第34回上田真田まつり』。ネットでも様々な記事や写真がUPされていますが、アメンバーのKAKさんが撮影した草刈昌幸が個人的にベストショットです。

『今日の稽古? 2016/04/24 藤岡弘、トークショー 上田「真田丸」』

鼻の頭を掻くような手の仕草が実にキュート。丹波昌幸の煮ても焼いても食えない策謀家のイメージではなく、何処か悪戯小僧のような愛嬌を漂わせる草刈昌幸の魅力をスパッと切り取った一枚です。最高。タイトルからも判るように、上田市では同日に平八郎を演じる藤岡弘、さんのトークショーも開催された模様。本作における徳川家の癒し系イメージを決定づけた家康と平八郎のご飯粒の食べっこは、藤岡さんのアドリブとのことでした。乗っかる内野さんも大概だよ! 惜しむらくは初代上田藩主の真田信之が登場しなかったことですが、きっと大泉さんは伊達政宗の甲冑を着込んで、上田城の入口で観光客を出迎えていたのでしょう。KAKさん、色々とありがとうございました。
『真田丸』絡みのニュースをもう一件。

「『真田丸』第16回のBS視聴率が自己最高の5.2% 早くも記録更新」

近年、クオリティ以上に視聴率の低迷が問題視されている大河ドラマですが、BSでの先行視聴組の数値を何らかの形で加算しないのはフェアではないと常々思っていたので、これはいいニュース。作品の善し悪しを視聴率で判断する気はないとはいえ、数字という誰の目にも判るモノで価値観を計る以上、その計算は公正であって欲しいとも思います。まぁ、ヘタに計測し直して、ワースト視聴率大河の座が『おにぎり女』から『平清盛』に返還されることになったら、それはそれで複雑な気分になるでしょうけれども。
ここ2、3回はモニョッとした内容が続いた『真田丸』ですが、今回は面白かった。確かに面白かった。凄く面白かったけれども、

これは大河ドラマじゃない

よね? 第1期3話が大泉お兄ちゃんの騙されっぷりを楽しむ『どうでしょう劇場』であったように、第2期3話の今回は紛うことなき『三谷劇場』。登場人物が信繁や秀吉や清正である必要性が殆どないストーリー展開でした。歴史を元に描いたコメディではなく、コメディを描くために歴史上の人物を当て嵌めたとでもいいますか。いや、面白かったので、文句はないですけれども、コメディ中心の内容ゆえに感想は書きにくい。ギャグの解説ほどに空しい作業はありませんのでね。ストーリー上も大きな進展はなかったので、今回の感想もキャラクターに焦点を当てる構成でいきましょう。


1.今週の真田家

真田信繁「上杉と真田は固い絆で結ばれています!」

高梨内記「上杉が援軍を断ってきました!」
真田昌幸「ありえん! 真田とは固い絆で繋がれておるわ!」


兼続が聞いたら『俺らの間にあるのは絆じゃない! 腐れ縁だ!』と激怒しそうな真田親子の発言。何故、こうも一方的に上杉からの好意を期待できる前提で話を進められるのでしょうか。この発想はストーカーそのもの。そうか、真田は上杉のストーカーなのか。そう考えると、上杉景勝が本作のメインヒロインとして一部の視聴者に認識されているのも判るような気がします。しかし、今回は、

真田信幸「此度ばかりは上杉にも働いてもらわねばなりません」

と、常識人で鳴らしたお兄ちゃんまでも、今までに上杉が何もしてくれなかったかのような物言い。敵に回らなかっただけでもありがたく思えよ。まぁ、お兄ちゃんの口からこういう言葉が出るほどに、真田は追い詰められているということなのでしょう。


2.今週のMVP

平野長泰「言っておくが、権佐が初めてじゃないから。三人目。皆、殿下の怒りに触れて……あの世逝きだ」シュッ
真田信繁「」ヒヤアセタラー


先回、インパクトにイマイチ欠けた秀吉の恐怖ですが、今回の放送で社長の愛人(未満)に気に入られた新入社員の受難という形で描かれていました。重厚さには欠けるとはいえ、これはこれで判りやすい恐怖であり、コメディとも共存できる設定なので、如何にも三谷さんらしい描写といえるでしょう。この秀吉の恐怖表現の立役者は平野長泰。彼が権佐の一件を語らなかったら、視聴者も信繁も秀吉に恐怖を覚えなかったに違いありません。信繁からは『七本槍の最後の一人が出てきません』といわれ、三成からも『そういう奴だ』とゾンザイな語られ方をされていましたが、今回の放送では誰よりもいい仕事をしたと思います。MVPは平野長泰。異論は認めない。『賤ヶ岳の七本槍』というゴリ押しマーケティングユニット(談・加藤清正)の反動でソロ活躍は低迷した長泰ですが、今回の放送で世間的な知名度は大幅UPでしょう。暫くは糟屋武則よりも上位にランキングされそうです。
それと権佐は死んでいないんじゃあないかなぁ。事情を知らされない長泰がフカシこいているだけで、実際は郷里に帰ったに過ぎず、欠員の理由は結城秀康に手討ちにされた馬廻りの逸話に絡んでくるのではないかと推測します。そのほうが三谷さんっぽい。


3.今週のきりちゃん

きり「向こうに帰ってもすることないし」
真田信繁「こっちにいたってすることないだろ!」
きり「何処にいたってすることないなら、此処にいたっていいじゃありませんか!」


人当たりもよく、頭の回転も速い信繁ですが、基本的なところではガキンチョであることを露呈するのがきりちゃんへの対応。『源二郎さまの傍にいたいの!』という告白をスルーするところもそうですが、きりちゃん相手に口喧嘩で勝とうとするのがそもそも間違いなのです。前々回の三成のようにピシャッと何処かに閉じ込めてしまえばよいのです。今回のケースでは有無をいわさず、上田行きの籠にでも放り込んでしまえばよいのです。きりちゃんといい、茶々といい、このテの関わると面倒な女性に好かれるのが本作の信繁というキャラクターなのでしょうか。
そのきりちゃん。今回は何気に視聴者の好感度UPの内容。ちゃんと針仕事もしていましたし……というか、針仕事できたのね。そして、秀吉の前では深々と頭を下げていました。てっきり、天下人の前でも突っ立ってタメ口で話すタイプだと思っていましたよ。ゴメンね。本人曰く、大坂のほうが性に合っているとのことですが、実際そうかも。本人が図らずとも他人と一定の距離を保てる都会のほうが、きりちゃん向きなのかも知れません。


4.今週の茶々

茶々「ねー? 権佐って死んでしまったの?」

先週まで色目を使っていた相手の生き死を尋ねる茶々の口調。ペットの犬猫が死んだんじゃねーんだからさ。いや、でも、茶々本人は色目を使ったという自覚もないと思うのよ。自覚がないからこそ、秀吉の機嫌を損ねるようなヤバい真似を平気でやらかすのでしょう。『自分が悪という自覚のない人間が最も邪悪』という言葉がありますが、本作の茶々の描写を慮るに『自分が悪女という自覚のない女性が最も悪女』といえそうです。新しいタイプのファム・ファタールかも。
尤も、このキャラクターで大坂の陣まで突っ走れるかという危惧もあり。大蔵卿局の『あの御方は……悲しむのをやめた』という台詞が茶々の隠された一面を引き出すフラグになるのか否か……三谷さんはそういう影や闇のある女性は向かないからなぁ。しかし、本当に茶々ときりちゃんはキャラクターが被る。試しに二人を脳内コンバートしてみて下さい。違和感ないでしょ?


5.今週の治部

石田三成「これを返しておく。大阪のこと、親に知らせるのは構わんが、何でもかんでも書いていいというものではない」

厳しいようでいて、実は親切極まりない本作の三成。台詞から察するに信繁は大阪の内情を赤裸々に綴っちゃったようですが、外部に機密を漏らす行為は処刑もあり得るシチュエーションなので、殺されても文句はいえません。それを内々に揉み消して、手紙まで返してくれるというフレンドリーな対応。流石はツンデレ治部。『コイツは使えそう』と見込んだ相手には相応に親切です。城の見取り図を『書き留めるな。頭で覚えろ』という指示もキチンと事前に説明している。ロクな社員研修もせずに仕事の最前線に放り込んで使い潰す類のブラック企業にも見習って欲しいです。ウチの上役とか。まぁ、逆に『コイツは役にたたん』と思われたら、長泰のように左遷部屋に送り込まれちゃうのでしょうけれども、作中三成の人事には一応の筋が通っています。演じる山本耕史さんは『助命嘆願が送られるような三成にしたい』と語っておられましたが、信尹叔父さんといい、直江兼続といい、ナンバー2キャラの光る本作であれば、あり得る話かも。
一方で先回異色の存在感を見せた宗匠はイマイチ。陸にあがった魚のように茶室を出た茶人とはこういうものという解釈もできますが、堺の珍品展のシーンはダメ。ああいう大仰な品揃えは見る側には逆に安っぽく映るもの。謁見の場でソッと献上してこそ、品物の価値が映えるというものです。


6.今週の秀長

羽柴秀長「誰もが身の丈から外れた地位と暮らしの中で溺れかけておる。それが今の大阪城じゃ」←わかる
羽柴秀長「虎之介はああ見えて、まっすぐな気性……兄のためなら生命も惜しまぬ男じゃ」←まぁわかる
羽柴秀長「容赦してやってくれ」←(゚Д゚)ハァ?


秀吉政権不動の二番手、大和宰相こと羽柴秀長登場。出典は失念しましたが、三谷さんが好きな戦国武将で上位にあげていた人物です……が、マトモなことをいっているようで、実は内容は大概であったりします。『虎之介に悪気はないから井戸に落とそうとしたこと許してやってね』とか、言い分はサイコパスと変わりません。あの兄にして、この弟あり。納得。信繁もカレリンズ・リフトで井戸に叩き落されそうになったというのに、それで言い包められちゃう辺り、存外チョロい男です。
それでも、急激に勃興した政権の空洞化という秀吉政権が内包する問題点を指摘する役柄として、秀長の登場には意味がありました。これは三成には向かない役回りです。些か食い足りなさを感じた先回ですが、あれは秀吉政権の光の部分、今回は影の部分というように二話で一話と考えると色々と合点がいきます。サブタイの『表裏』とは今回と先回はワンセットですという意味合いなのかも。


7.今週の平八郎

本多忠勝「武具を持って無暗に走ってはいかんというておろう。転んでケガでもして、この美しい容貌に傷でもつけたらどうするんだ?」オロオロ
稲姫「はい!」
徳川家康(えぇ……)
本多正信(これはひくわー)


娘にダダ甘じゃねーか!

頑固親父のイメージから、てっきり息女も厳しいと思っていたのに……いや、逆に考えるんだ。父親がダダ甘であったから、娘が高ピーに育ったんだと考えるんだ。しかし、こういう親馬鹿言動は吉田羊さんのような美人に対してではなく、小早川奈津子のようなキャラクター設定で用いたほうが面白かったと思います。まぁ、それだとお兄ちゃんが救われないので、流石にダメなのだと思いますが。何れにせよ、初登場の稲姫よりも父親のキャラ崩壊に目が向いてしまいました。色々な意味で藤岡さんはキャラが濃過ぎるんだよなぁ。


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