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『真田丸』第3回『策略』感想(ネタバレ有)

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先日の木曜金曜と休みを取る機会に恵まれまして、遅い朝食を採りながら、昼間のTVを見るともなく見ていたら、何と『あさが来た』のメインキャラクター・五代才助退場の回でした。いや、本当に偶然なのよ。副長登場の件以外は殆ど見ていなかったので、五代退場の週とは知らなかったのよ。今回に至る過程や伏線、特にペンギンが何の符丁なのか全く判らなかったけれども、

五代才助がすっげぇよかった

のよ。土方のゲスト出演と五代退場の回しか見ていない人間が何をほざくかと仰る方もおられるでしょうし、全くその通りだと深く恥じ入っておりますが、そんな私でも『素晴らしい』と思えた。
何が凄かったかって、五代が『自分にはまだまだ成し遂げたいことがある』と無念を抱えて亡くなったことですよ。またぞろ、大河ドラマとの比較になって恐縮ですが、ここ最近、大河ドラマで病没するキャラクターで、五代のように無念を残して世を去るケースってパッと思い出せない(秀吉は無念死が基本なので除く)。それどころか、戦死や刑死した人物でさえ、自分の人生に満足して死んでいくパターンが多かった。それはそれで史実ではなく、創作ならではの優しい世界として許容できるんですが、実際問題として、そこまで人生甘くないよね。その点、本作の五代が『やりたいことが山ほどあんねん』とシビアな言葉を残して病没する流れに、人間の生々しさを感じました。物語のキャラクターではなく、現実を生きた人間のリアルさといいますか。正直、朝ドラを舐めていました。ごめんなさい。反省しています。誰だ? お花畑な助手を侮蔑する際に『あ~さ~ド~ラ~!』などという言葉を使った奴は……今年の大河の主人公の中の人が演じた弁護士だ!
それは兎も角、五代才助という人物が国民的ドラマ枠で主人公級の扱いを受けたことは今までありませんでしたし、これからも滅多にないと思いますが、それだけに五代のイメージは本作の描写で半永久的に固定されるんじゃないでしょうか。私の脳内劇場でも五代才助は勝野洋さんから、ディーン・フジオカさんにキャスティングが変更されたほどです。『あさが来た』は歴史上の人物の魅力ある虚像を提示するという歴史劇の存在意義の一つを見事にクリアした作品であったといえるでしょう。

そういうことを大河ドラマでやって欲しいと考えながら視聴した『真田丸』第三話ですが、本作で新しい魅力を提示できそうに思えたのは意外にもお兄ちゃんでした。今まで大泉洋というキャスティングに難があるんじゃないかと危惧していたけれども、今回の内容でストンと胸に落ちた。

本作の信幸の扱いは『水曜どうでしょう』での大泉さんと殆ど同じなんですね。

今回も多くの視聴者は信幸に対して『アンタ、今回も親父に騙されているんだから』と思った筈ですが、当のお兄ちゃんは、

真田信幸「何言っているんだよ? そんなワケないだろ? 俺に密書を託した時の父上の表情見たろ? 今回はマジだよ!」

と意気揚々と出掛けて、見事に親父の思惑通りに動かされている。本作の信幸は父親に騙されるのが基本スタイルなのでしょう。作中の信幸は無事生還したブンビーさんにおみまいする(未遂)くらいで留めていましたが、その胸中は、

真田信幸「親父ぃ……選べよ、上杉か? それとも北条か? 俺は行くぞ、密書を持って。どーも景勝さん、知っているでしょう? 真田源三郎でございます。

お い 同 盟 組 ま ね ぇ か ?

氏政さんもおいで。同盟組むぞぉ。『一杯食わされそう?』 俺は実の父親から二杯も三杯も食わされているんだよぉ。臣従認めろよぉ! 
そして、それが終わったら、俺ぁ今度は織田家に行くんだ。信長さん、知っているでしょう? 真田源三郎でございます。同 盟 組 ま ね ぇ か ? 俺は行くぞ、本能寺の変が起こらないうちにな」


てな具合の半ギレ状態であったに違いありません。そういうお兄ちゃんの心境が『どうでしょう』で騙されっぱなしの大泉さんが演じていると容易に想像できるのよね。生真面目さゆえに親父に振り回されるという信幸の姿を描くために、大泉さんは好適な配役ではないかと今更ながら思えてきました。バクチまがいの策略にのめり込む父親をフォローし続けた沈着冷静な渡瀬さんの信幸とは異なる、新しい信幸像の確立成る……かも?

そんなワケで今回は結構楽しめました。第一話の感想でも述べたように、本作は結構危なっかしい場面が多いのですが、それなりにエクスキューズも用意されているので雰囲気以外の点で突っ込みにくいのよね。終盤で同道を願い出た信幸を『おまえは嫡男だから、俺に万一のことがあった時に真田家を率いねばならん』と一喝するシーン。そんなに大事な嫡男を敵に偽の密書を掴ませるような危険な任務に放り込むなよといいたくなりましたが、室賀も信幸が使者であったからこそ、罠とも思わずに食いついてきたのでしょうし、出浦が室賀と通じている以上、ムザムザと信幸を死なせるような事態には至らないでしょうし、でも、本作の昌幸はイザとなったら、信繁がいるから信幸が死んでも何とかなるとか考えていそうだし……てな具合に、少し無理があるんじゃないのと思える箇所も、細かいイイワケが考えられていそう。ここまでやられると逆にイラッとするくらいです。屈折しているのは描き手なのか、それとも、見ている私のほうなのか。
前回、前々回と不安要素しか感じなかった女性パートも今回はスルーできました。如何にも三谷風のラブコメでしたが、これは既に妻を娶ったうえに(父親にいいように使われるだけとはいえ)軍議にも参画できるお兄ちゃんと、現在の信繁との立場の違いを表しているのでしょう。でも、室賀の領民との小競り合いにはもっと真剣味が欲しかったかな。ああいうのはガチで生命と生活がかかった戦いなので、血と泥に塗れたバトルでないと切実さも出ないし、信繁が『真田庄(と梅)を守りたい』という思いを表すには物足りない。

と思っていたのですが、上田馬之助さんや明石のタコさんから頂いたコメントによると、どうも、この時代の風習では生命のやり取りに至るケースのはタブーとされていたそうです。実際には作中の描写が史実的に正しいのですね。訂正してお詫び致します。上田馬之助さん、明石のタコさん、ありがとうございました。

最後までワケが判らなかったのは、温水と共に織田家の虜囚となっていた筈のブンビーさんが、どうやって脱出して、何故に家康の本陣を突っ切って、如何にして真田庄に戻ったかですが、家康の本陣の件はのちのちの伏線になりそうな気がします。それこそ、小松姫との婚儀とかで蒸し返される可能性大。そういや、退出しようとする数正をいちいち呼び止めては指示を出す家康のシーンも三谷風の作劇でした。私は耐性あるけど、ああいうのが苦手な人は我慢できないだろうなぁ。
引っかかる点は当時の価値観をストレートに表現し過ぎることでしょうか。小県の国衆を代表して信長と交渉する父を『私心がない』と評した信幸に『いや、私心がメインだ』と返す昌幸。勿論、天下のためとか泰平のためとかいう寝言をほざくよりは遥かにいいのですが、このレベルのことで私心云々というのは語るまでもないといいますか。私心を大前提として語って欲しいですね。

真田信幸「室賀は織田家との交渉が首尾よくまとまった場合、父上に小県の主導権を握られるのが面白くないのでしょう」
真田昌幸「炎に手を突っ込むのが怖いくせに、栗の実は食べたがる。世の中、そういう人間ばかりよ。まぁ、実際、栗の実は儂一人で頂くつもりだがな」
真田信幸「え」


くらいに『私心』という単語を使わなくても、私心があるのが判るような描き方を見たいものです。

次回は信長登場。初回からお預けを食わされた分、視聴者としてはまってました感は高そうです……が、予告映像は不安要素が多かった。先回の感想で述べた『面白い』という単語が出ちゃっていましたし、何よりも信長がキンカンをランカンに叩きつけるのがなぁ……この通俗的なエピソードを三谷風にヒネってくるか否かで、次回の評価は大きく変わりそうな予感。

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