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『相棒14』第12回『陣川という名の犬』感想(ネタバレ有)

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生木拓「俺はこんな男だから……マトモに女に相手にされることはない。俺は『害虫』だよ。アンタの気持ちはよぅく判るよ」

賢しらな寝言をほざくなぁ!

久しぶりに純粋な怒りが沸き起こった話でした。いや、念のためにいっておくと内容は凄く面白かった! 今季ばかりでなく、ここ数年の『相棒』で一番の出来。ラストシーンで泣いちゃったもん! まさか、陣川君回で本気で泣けるとは思わなかったよ! 特命係とは厳然たるラインを引きつつ、メンツよりも真相を追及するイタミンはカッコよかったし、これまではスペック以外に存在価値のなかった冠城君の『珈琲好き』という設定も生かされていましたし、テルオの勇み足を隠蔽するための歪んだ組織力学という『相棒』らしい展開もありましたし、久しぶりに監察官が苦々しげにラムネを噛み潰すシーンも見ることができましたし、殺人鬼と真犯人に微妙に感情移入できたという点でも本当に素晴らしかった! 特に真犯人の『カネない』『モテない』『足が臭い』の三重苦とか俺そのものなんだよなぁ。そんな点でも妙なシンパシーを感じてしまいました……が、冒頭で記した台詞は絶対に許容できません。あの場に私がいたら、確実に生木をボコっていたでしょう。

陣川君は貴様(つーか俺)とは違うんだよ!

陣川君はなぁ、意中の女性にちゃんと告白ができる子なんだよ! たとえ、100%フラれると判っていても、玉砕する勇気を持った子なんだよ! 貴様のように相手の迷惑を考えず、意中の女性に一方的な有難迷惑の善意を押しつけた挙句、犯した罪を償わずに逃げ回る無責任男とはレェェェェェヴェルが違うんだよぉ!(巻き舌
いや、確かに作中で語られた生木の経歴を聞くにつけ、どう見ても『あり得たかも知れない、もう一人の陣川君』という印象は拭えませんでしたし、今回は危うくダークジンカワに堕ちかけたのも事実ですが、もしも、陣川君が生木と同じ過ちを犯したとしても、彼は逃亡せずに己の犯した罪を償う方途を選ぶでしょう。相手を殺めたことに後悔はないにせよ、裁判を受けること、服役することに異論と唱えるとは思えません。キチンと罪を償ってから、改めて意中の相手にプロポーズするでしょう(そして、見事にフラれるでしょう)。フラれることを恐れない勇気、罪から逃れようとしない潔さ、この二点のみでも陣川君と生木の間には天と地との差があります。月と鼈、箸に虹梁、アンスバッハとロックウェルですね。上記したように、私はどちらかというと生木に近い人間なので、冠城君に向かって『笑えよ、色男』といった彼の気持ちは痛いほどに判るのですが、そうであるからこそ、陣川君のように我々とは似て非なる尊いまでの愚直さを持った存在を、自分と同じレベルに貶めることは断じて許せません……というか、こういう時こそ杉下が陣川君をフォローしなくてはいけないと思いましたよ。

杉下右京「陣川君はぁ、アナタとは違うんですよぉ! 恥を知りなさいぃ!」プルプルプルプル

と何時ものアレをやってくれると期待していたのになぁ。まぁ、作劇的には敢えてやらなかったのかも知れません。杉下にフォローさせないことで、視聴者がより、陣川君の心情に寄り添えるような構成を狙ったのでしょうね。『杉下は何もいわなかったけれども、俺らは君と真犯人は似て非なる存在だと判っているよ』という感情を視聴者に抱かせるのが目途ではないかと思いました。何より、今回は杉下が同僚の闇堕ちを防いだということが大きかった。ダークカイトの轍を踏まなかったのは執着至極。
そして、ラストシーンは素晴らしかった。脚本の真野さんは『相棒』で後味の悪い話を書かせたら、近年屈指の存在なのですが、ホントに後味が悪いだけの話になるケースもしばしばで、サブタイの過激さも相俟って、結構不安視していたんですよ。でも、今回は冒頭で冠城君が評したように『珈琲豆を噛み潰した時のような苦み』はあっても、後味の悪さはなかった。フラれるのを覚悟でプロポーズした被害者が実はまんざらでもなかったというのは陣川君には切な過ぎる話ですが、知らずにいるよりも、知っていたほうが今後の陣川君の人生を考えると絶対にいい。

「愛して、その人を得ることは最上である。愛して、その人を失うことはその次によい(To love and win is the best thing. To love and lose, the next best)

というウィリアム・M・サッカレーの名言通りですね。敢えて本作の後味の悪さを追及するとしたらどう足掻いても被害者は殺される運命にあったということでしょうが、この辺は追及しても詮ないことだと思います。見ず知らずの業者に『足が臭い』とかいうクレームを入れる性格とか、足臭の悩みを抱えている私もイラッときましたので。勿論、私はそんな理由で犯罪に奔ったりしませんよ、念のため。

本筋以外で気になったのはイタミンとラムネさん。先回は陣川君回っぽいイタミン回でしたが、今回は陣川君回の中でイタミンが輝いた内容でした。何気に先回と対になる構成であったのでしょう。そして、次回は正真正銘のイタミン回のようですね。ラムネさんのほうは、

大河内春樹「愛する人を殺された気持ちは理解します」

の台詞にニヤッとなった。そういや、ラムネさんも最愛の相手を犯罪で喪っているんだよなぁ。イタミンの描写といい、テルオの軽率さといい、今回は何気に過去作品へのリスペクトが詰まった内容でした。その辺も満足満足。昨年はラジー賞の対象となった本作ですが、今回は今年のベスト10争いに入ってきてもおかしくありません。少なくとも、現時点でのナンバーワン作品と評しても過言ではないでしょう。

ちなみに公式HPでは陣川君の恋愛履歴を絶賛公開中。マジでスタッフからオモチャ扱いされています。最初の相手はエンクミやったんや……時代を感じますなぁ。


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