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『真田丸』第1回『船出』感想(ネタバレ有)

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待ちに待った時が来たのだ……多くの駄作大河の感想が無駄骨でなかったことの証のために……再び日曜夜八時の理想を掲げるため! 一年間のレビュー完走という目標のため! 大河ドラマよ、私は帰ってきた!

大河ドラマの感想記事ではお久しぶりです。当ブログの管理人の与力です。事実上、一年半ぶりの大河ドラマの感想記事の執筆ということで、冗談抜きでタイピングする指が微妙に震えています。勿論、相応のプレッシャーゆえで、仕事のストレスで酒量が増えた影響ではないと信じたい。実際、殆どの大河ドラマフリークは不安と緊張で一杯だと思いますよ。何せ、

我々は戦国大河を三作も待たされたのだ! 天地人やGOやぼんくら官兵衛のような分別のない者共に我々の理想を邪魔されてたまるか!

という思いでここ数年を過ごしてきたワケですからね。『風林火山』以来の戦国大河ドラマの復興が掛かった重要作。そのうえ、題材&主演&脚本の三本柱全てが相応の期待値を有する作品というのは近年では珍しい。清盛にせよ、八重ちゃんにせよ、官兵衛にせよ、3つのうち、少なくとも一つは事前に不安視されていたので。このうえは恵まれた題材&主演&脚本からクみたいな作品にならないように祈るのみ。聳え立つソは昨年で見飽きました。まぁ、プロデューサーがGOの人というのが、結構なクソになる危険性を秘めていそうで不安ではあるのですが。

さて、肝心の本編ですが……本格的な戦国大河ドラマにはならないという事前の予想が概ね的中していました。

真田信幸「いい知らせと悪い知らせがあります」

を筆頭に、作劇の雰囲気や台詞回しがいちいち三谷さんテイストなんだよなぁ。これは好き嫌いがハッキリするわという印象。OPテーマも大河ドラマというよりは『人形劇三銃士』に近い雰囲気でした。まぁ、音楽まで三谷さんが絡んでいるとは思えないのですが、印象としてね。この辺、初回で古参の視聴者を絞り込んできているように思います。それこそ、本作のキャッチコピーも大概なフレーズでしたが、あれはワザと寒い文言を選んだのではないでしょうか。『このフレーズやテイストに我慢できない方はお引き取り下さい。このセンスを受け入れて下さる方には同様の方向性に基く面白い作品を提供いたします』という一種の篩掛けではないかと。その一方で浅間山の噴火の一件といい、

「この真田安房守昌幸がいるかぎり、武田が滅びることは決してない」 → 「武田は滅びないといったな、あれはだ」
「この新府こそが最も安全な場所じゃ」 → 「新府城が最も安全だといったな、あれもだ」


のネタといい、一見さんへの間口は広めに取っている。『組!』の時と異なり、今回はナレーションも導入していますが、これがいちいち解説口調ですね。勿論、ナレーションの役目は本編で説明台詞を多用しないように解説を加えることとはいえ、些かやり過ぎじゃないかと思えるくらいに懇切丁寧な内容。この辺も今回から大河ドラマに入る視聴者向けの配慮ではないかと思います。
とはいえ、古参の大河フリークへの配慮も結構してあって、木曽家の人質が処刑されるという、近年の大河ドラマでは登場人物がビービー泣き喚く類の話も、

「そういえば聞いた? 木曽さんの御家族、殺されたらしいじゃないの」
「ホントホント、物騒な話よねぇ。ウチは大丈夫かしら?」


みたいに、まるで近所のボヤ騒ぎを語るようなノリで話し合う真田一族という具合に『裏切者の人質を殺すとか当たり前なんじゃ』という価値観が全面に出ていました。

尤も、第一話で一番重要な『本作で何を描きたいのか』という推しがハッキリとしなかったのも事実。武田勝頼が大河ドラマの歴史上で最も人格者として描かれた段階で、優しい人や正しい人では乱世は生き残れないというぼんくら官兵衛への面当てとしか思えないことを描こうとしているのは判るのですが、もう少し明確な言葉として掲げてもよかったのではないかと。これは昌幸が『表裏比興』と評された原点であり、同時に後年の信繁が何よりも家名と名誉を重んじた所以=親父が生き残るために手段を選ばなかった&兄貴が御家の存続に尽力してくれたからこそ、信繁は自らの生命や家名の存続よりも名誉を選んだ=でもあるので、次回以降の掘り下げに期待です。ちなみに本編では温水の讒言で勝頼が真田を頼ることをやめたという描かれ方でしたが、実際に昌幸は北条氏に宛てて『勝頼が岩櫃に来たら、そちらに身柄を引き渡すので4649!』という密書を送っていました(要出典)。つまり、勝頼は真田と小山田のどちらを選んでも詰んでいたということですね。ついでにいうと昌幸の岩櫃案は新府の人質を取り返す口実であったと思われます。勝頼が岩櫃に来る際には当然、真田の人質も同行するのが道理ですから。四郎は泣いていい。
一方、真田信繁個人の描写は或る一点で徹底していました。それは何かというと、現時点での信繁は言動共に後年と真逆なんですね。冒頭で徳川軍に追い回されるのは、大坂夏の陣で家康を自害寸前まで追い詰めるのと逆であり、御家の名誉や亡父の存在に行動を縛られる勝頼に反発する姿は、それこそ、真田の家名と昌幸の遺言の影響で大阪城に参じたことに繋がるのでしょう。敢えて後年の言動と逆のことをやらせる辺り、なかなかに練り込まれております。ここ最近の大河ドラマの主人公は生まれてから死ぬまで一度もキャラが変わらないケースが多かったので、実に新鮮。勿論、その変化の過程をキチンと描くことが大前提ではあるのですが。清盛の時は過程がズッポリと抜け落ちていましたので。

総体としては節々に三谷さん特有のアクやクセが目につき、嫌いな人は絶対に第一話で視聴をやめるんじゃないかと思えた反面、目くじらを立てて批判したくなる箇所も見当たらず。古参の視聴者を篩に掛ける一方、一見さんへのツカミは充分な内容ではなかったかと思います。少なくとも『組!』の第一話のように『龍馬と近藤が顔見知り』という、脚本家の意図はどうあれ、全方位から突っ込まれて、根も葉もない悪評を書き殴られる契機になりそうなる隙を感じさせない用心深さがありました。一言でいうと軽目な割に手堅くまとめてきた印象です。それこそ、ここ数年は大河ドラマで痛い目を見ることのほうが確率的に高かったので、第一話のみで一喜一憂して感情を爆発させることは控えますが、一週間の連勤~深夜帰宅~録画実況という状況下にあって、更に一年半ぶりの感想記事をUPしたことで、私の本作に対する感情を汲み取って頂けると幸いです。このテンションを一年間保てる内容が続くことを祈っています。

最後にキャストに関して。お兄ちゃんは些かイメージと違っていた。大泉洋が真面目な顔で真面目な芝居をやることに違和感を覚えてしまうのは、現在、NG県で絶賛放送中の『水曜どうでしょうclassic』の影響。間違いない。親父に向かって、

真田信幸「こぉの……ダメ人間!」

と吼えるシーンがありやなしや。他は概ねOK。高木渉さんの初大河も印象に残りました。雛ちゃんの婿とか美味しい役じゃん。台本読みに遅刻して林原に椅子を蹴られていた頃が懐かしいッス。上杉、北条、徳川の描写は意外にも氏政が一歩リード。ちゃんとご飯に適量の味噌汁かけられたからね! まぁ、江馬さんによるとぶっかけ飯の逸話は毛利輝元という説もあるそうなんですが。地元は上杉ですが、氏政の中の人が私の大好きな足利直義ということもあり、今季は北条の応援がメインになりそう。『老大国』の実力見せたれ!

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