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『相棒14』元旦SP(第10回)『英雄 ~罪深き者たち~』感想(ネタバレ有)

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片山雛子「警察に出向して捜査を覚えたつもりかも知れませんが、刑事ゴッコの域を出ていません」

本編も同じことが言えるのですが、それは。

新春一発目の記事は『相棒』元日SPというのが定番の拙ブログですが、流石に深夜帰宅~2時間半の本編を見て速攻で記事UPというのはキツかったので、一日間を明けての感想になりました。遅ればせながら、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。本編の感想に関しては、概ね冒頭で引用した片山女史の台詞通り。色々とヒネり過ぎて、肝心の刑事ものとしてのストーリーが等閑になっていた感じですね。ただし、好きか嫌いかと問われれば必ずしも嫌いじゃないという、我ながら煮え切らない返答になりそう。今回の元日SPは色々と難しい題材にチャレンジしていたと思います。

まずは『〒口リストの変遷』でしょうか。嘗ての活動家の多くは本編の本田篤人や鞘師九一郎のように理想と現実のギャップゆえに道を踏み外したり、そもそもがカタギではない人間でしたが、現在、世界を騒がせているのは今回の真犯人のように、特定の思想や職歴よりも貧困宗教をバックボーンにしているケースが多い。勿論、そうした動機に基く〒口リズムは古来より人類社会に存在していたとはいえ、ここ数十年は限定的な地域に留まっていたものが世界規模に飛び火しているのは紛れもない事実。そうした変化を現代の日本を舞台に描くとしたら、仏教をベースにするのは定石かも知れません。私の親戚のように『日本には宗教戦争はなかった』とお考えの方は、一向一揆や天文法華の乱でググることをオススメします。近現代の過激派が可愛く見える逸話がゴロゴロ転がっていますので。要するに『日本人は活動家の定義を改めないと手酷い目に遭う時期に来ている』というのが、本作の発したメッセージの一つではないかと。
次に片山雛子と音越栄徳。本編後半における両名の言動は、嘗ての元日SP『バベルの塔』と被る内容でしたが、今回は別に犯罪や悪行を仕出かしたワケではないんですね。少なくとも、法律に抵触する行為はギリギリのラインで犯していない。ハッキリいって、音越が殺されなくてはいけない理由は本編では全く描かれていませんでした。如何に胡散臭い存在であろうと政治家を〒口リズムで排除するのは間違っているというのも、今回のメインテーマの一つだと思います。その一方で政治家や官僚は法律そのものの定義を自在に変更できる権能を持っているワケで、そういう人間が唱える社会正義って奴を鵜呑みにするのも考えもの。確かアニメ版『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』に『当たり前の正論を大声で唱える馬鹿には誰も勝てない』という名台詞がありましたが、同様に政治家の正論を真に受けていたら、権力の監視は成立し得ない、との警鐘も含まれていたのではないかと。
そして、そんな世の中で一個人にできることは何かという問い掛けの回答として描かれたのが三浦さんじゃないかと。今回の事件は今までの事件に比べて、格別に難易度が高い内容ではありませんでした。序盤から中盤で描かれた富山行きがなくとも、杉下は今回の事件は解決できたと思いますが、真犯人の自決を制止するのは難しかったでしょう。流石の杉下でも、真犯人が解毒剤を常備していることは事前に知らなければ察し得なかったでしょうからね。それを成し得たのは三浦さん経由で本田父子の情報がもたらされたから。誰かが誰かを救うというのは、安易な〒口リズムに奔ることでも、支持者を欺くことでもない。個人レベルの善意が報われる社会を築いてゆくことに勝る方法はない、というのが本作の主張なのではないかと思いました。このように今年の元日SPはパッと思いつくだけでも、結構難易度の高い題材を扱っていました。
尤も、難易度の高い題材にあれこれ手を伸ばしたのはいいものの、それらを繋ぐメインストーリーの輪郭が全く見えなかったのが最大の問題点。あっちこっちにストーリーがとっ散らかった挙句、物語の本筋が何なのかが全く判らなかったんだよなぁ。上記した『バベルの塔』も『マクロな〒口に見せかけたミクロな私怨』という構図でしたが、ストーリー全体は極めて判りやすかったですし、後味もよかったからねぇ。事件の構造が似ている分、悪い点の比較が目についた感があります。今回の脚本は真野勝成さんで、この人の『相棒』は昔から詰め込み過ぎが裏目に出る作品が多いんだよなぁ。まぁ、以前も記事にしたように『相棒』はヒネり過ぎるくらいで丁度いいというのが私の持論なので、今回の内容は好意的に受けとめることができました。次回に期待します。
今回一番の衝撃は片山雛子の初敗北でしょうか。今回の雛ちゃんは音越栄徳を祭りあがるだけ祭りあげておいて、本多篤人に社会的(或いは生物的)に抹殺させた挙句、オイシイところを独占する計画なのかと思いましたが、普通に議員辞職に追い込まれていました。如何なる状況でも損をしない女という、本作のジンクスが崩壊した歴史的瞬間でした。これが崩壊したということは陣川君の結婚もあり得るかも。まぁ、あの状況で地位に固執するほうがロクでもない目に遭うでしょうから、目端が利くのは相変わらずとはいえ、今回は完璧に本田篤人の思惑通りに動かされたからなぁ。逆にいうと百戦錬磨の革命戦士・本田篤人でさえ、己の生命と引き換えにしてでも、議員辞職に追い込むのがやっとなのが雛ちゃんのタフさといえるでしょう。今季の最終回SPで再出馬する展開に米沢さんの鉱石コレクションを全部賭けます。

次回は久々に予告が面白そうでした。パッと見た感じだと『QED』の『いぬほおずき』っぽい雰囲気。あれは『QED』フリークには評判の芳しくない作品なのですが、私は好きなんですよねぇ。『銀の瞳』の次くらいに好き。ちなみに次週の放送は正月編成のため、お休みです。昨年はこれの影響で年明け一発目の米沢さん回の序盤を録画しそびれたんだよなぁ……用心用心。



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