陸奥真玄(前田と不破……この二人がいわば『2大怪獣』だとすると、陸奥である俺がヒーローの立場だ。2匹同時にヒーローが戦えば勝ち目はないが……まず2匹をかみあわせて、1匹残ったところでなら、なんとか倒すことができるはず!)
陸奥真玄「小僧ども、よく聞け! 二人で戦って勝ったほうにウチの娘を呉れてやるぞ!」
ウッちゃん&ケンちゃん「「うおおおおおおおおおお!」」
陸奥静流「男ってホント、バカ」
今月号の内容を簡単にまとめるとこうなるでしょうか。前田とも不破とも拳を交えずに、この場をやり過ごす方途として、これほどに巧妙な回避手段はありません。陸奥真玄は強さよりも老獪さが前面に出ていた感じです。一筋縄ではいかない男。九十九がうちのくそじじいと評したのも宜なるかな。
尤も、真玄もケンちゃんとの闘いから逃げたワケではないでしょう。そもそも、ケンちゃんに闘う意思がありませんでしたし、真玄の『老いて気の抜けたわしと闘っても楽しくあるまい……勝つのはわしだがな』という言葉もまんざらハッタリとも思えない。ウッちゃんの『虎砲』は躱されましたが、圓明流には『無空波』をはじめとする初見殺しの技が幾つもあるのですから、真玄が闘いを楽しむことよりも相手をツブすことを優先する、圓明流本来の闘いをしておけば、悪くとも相討ちに持ち込めたと思います。それをしなかったのは、陸奥の血脈を残すことを第一に考えたゆえでしょう。その意味でも老獪な男。無用な争いを避けて実を取る、陸奥にしては珍しい名人肌の性格といえるかも知れません。
先回の静流VSケンちゃんの食い足りなさを補うかのように、後半怒涛のバトルとなった今回の『修羅の刻・昭和編』。次回で最終回とのことですが、このノリで巌VS徳光さんとかやってくれないかな。今回印象に残ったシーンは以下の通り。
不破現「静流さんがお前に笑顔を向けるのは惚れてるからかもな」
ケンシン・マエダ「お」
『お』のあとは何て続けるつもりであったのでしょうか。
とかでしたら、今からでも冬のコミケでウッちゃんケンちゃんの薄い本が飛び交う可能性もあったのですが、どう見てもケンちゃんも静流さんにベタ惚れなので、流石にそれはないか。実際、現段階だと静流さんはウッちゃんよりもケンちゃんに惚れていると思われるシーンが多いですね。それでも、ウッちゃんと結ばれたのはケンちゃんが何よりも欲するもの=強い陸奥を育てるためでしょう。恋とは求めるもの、愛とは与えるものと考えると、静流さんのケンちゃんへの愛は、天真爛漫極まる言動とは裏腹にヤンデレレベルの業の深さを秘めているのかも。
陸奥真玄「ほう、前田光世ときたか」
ケンちゃんの素性を知っても動揺もなく、また、首を捻るでもない真玄。西郷四郎を倒したことは子々孫々語り継がれているでしょうが、その西郷が前田光世に己の志を託したこと、その前田光世がコンデ・コマとなってブラジルに根を下ろしたことまで調べあげていたのでしょうか。人里離れた山奥で暮らしていても、そのテの情報が入ってくるあたり、陸奥の人脈は結構広いのかも知れません。
ケンシン・マエダ「オレは陸奥を超えたいがために海を渡ったのだ。技の衰えた過去の『元』陸奥に勝つ事に意味はない」
第壱門の掉尾を飾ったケンシン・マエダの名台詞。連載当時は惚れ惚れするほどにカッコよく、今回も語尾に『キリッ』という文字がつきそうな雰囲気を漂わせていますが、残念なことに先回のバトルで静流さんに綺麗に投げ飛ばされているので、説得力も半減です。床がコンクリでしたら、あの一撃で終わっていましたよ、ケンちゃん。
ケンシン・マエダ「やってもいい。ただし、条件がある。オレが陸奥真玄、あんたに勝ったら、静流さん、あなたを貰う」
不破現「静流さんはできそこないじゃありません」
共に己が本心をブチまけてから、遂に静流さんのハートを賭けたウッちゃんケンちゃんのバトルがスタート。本作の連載開始前、川原センセは『今回は青春群像もの』と語っておられましたが、確かに好きな女性を巡って、拳を交えるのは古き善き時代の青春ドラマを思い出しますな。尤も、そのテの作品のヒロインは『私のために争わないで』とか竹内まりやの歌のようなことを叫ぶものですが、本作の場合は『どちらに勝って欲しい?』と父親に聞かれて『強いほう!』と即答するあたり、やはり、尋常ではありません。要するに、
陸奥静流「戦え……ウッちゃん、ケンちゃん……私の手の中で戦いなさい……勝ったほうを私が全身全霊を賭けて愛してあげるよ」
ということでしょう。まるっきりカテ公じゃないですか、静流さん! 静流さんヤンデレ説が更に濃厚になりました。ホンマ、陸奥の女は恐ろしいでぇ。
陸奥真玄「こいつ、初見で『斗浪』を破った」
初っ端から圓明流でも屈指の殺人技と呼べる『斗浪』を繰り出すあたり、ウッちゃんの『心に獣が棲んでいない』とかいう自己紹介は、所謂『三味線を弾いている』んじゃないかと思えるレベルのエゲツない攻撃を披露。しかし、ケンちゃん、これを何とか回避。これは凄い。今回のケンちゃんの攻撃からも判るように、前田光世が目指したファイトスタイルとは当身と組み技の融合ですから、その極北たる『斗浪』を防ぎ得たのも納得です。一方、龍造寺徹心はこの技で事実上、トドメを刺されました。如何に年齢的なハンディ&『訃霞』の影響があったとはいえ、あれはマトモに食らっていたからなぁ。
不破現「帯がゆるかったかな……へへ、体が勝手に抜けちゃったよ」
リアルファイトで炸裂した山田圓明流奥義『脱皮』! 同じ技を二度食らう(?)あたり、やはり、ケンちゃんはまだまだ若い。聖闘士失格。しかし、この技は九十九VS海堂での山田キックのようにもっと決定的な場面で出ると踏んでいたので意外でした。逆にいうと早い段階で奥義を繰り出さなければならないほどにケンちゃんが強いということでしょうか。実際、ウッちゃんの『旋』をワザと食らって捕まえるあたり、ケンちゃんの強さは尋常ではありません。あれ、飛田やイグナシオくらいに体格差があれば可能でしょうが、ウッちゃんとケンちゃんはフィジカル面ではほぼ互角なので、マトモに食らったら一撃KOの危険があります。それを敢えてやるのがケンちゃんの身に棲む鬼なのでしょう。
ちなみにウッちゃんが繰り出したのが正調の『旋』。九十九がよくやる胴回し回転蹴りから、もう一方の足を跳ねあげるのは、飛田のニールキック~アキレス腱固めの応用です……と思っていたら、これは陸奥出海VS坂本竜馬でも使っていたんだよなぁ。『旋』は特に決まった型はなく、空中での二段蹴りの総称と思っておけばいいのか。もう一つ、技の種類でいうと『旋』をツブされたウッちゃんが下から三角締めにいくシーン。静流さんも三角締めと表現していましたが、圓明流では『葵蔓』と呼ばれていたような……いや、あれは山田さんが『不破ではそう呼んでいた』といっていたので、陸奥では違うのかな。
不破現「本気でやってもいいか?」
今までは本気ではなかったかのような物言い。確か、九十九も不破北斗との闘いで、己に暗示をかけるために似たようなことをいっていました。やはり、父子ですね。さて、ウッちゃんの、というか不破の本気となると『訃霞』などの裏技を差し置いてでも、真っ先に思い浮かぶのは『神威』です。これ、本編での用いられ方を見て判るように組みに来る相手を迎撃するのに最適なので、ケンちゃん相手には非常に使い勝手がよさそうですが、流石にケンシン・マエダが負けるとは思えないからなぁ。決まっても倒せないでしょうね。そんで、ボロボロでも闘おうとする、もしかしたら、ウッちゃんが九十九と同じように胴締めスリーパーを食らって絶息寸前のところで静流さんが止めに入るとかいう展開になるんじゃないかと予想してみます。
次回、遂に『修羅の刻・昭和編』完結! しかし、冒頭でも触れたように、この作品のノリは嫌いじゃない&折角、真玄も登場したことですので、そのまま真玄の回想という流れでVS徹心をやってくれないかなぁ。
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『修羅の刻・昭和編』第4話感想(ネタバレ有)
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