冠城亘「ぷりーずこーるあす。もーすとでんじゃらすぺあ」
コイツも綺麗な日本語発音じゃないですか。
『ビリーバー』の時の杉下同様、冠城君の英語もベタなジャパニーズイングリッシュでした。冠城君は杉下のように自称・英国通ではないとはいえ、大河ドラマで西洋かぶれの大山弥助を演じていたのですから、きれいな英語を喋って欲しかった……というか、あの時も殆ど日本語で通していましたね。冠城亘というキャラクター自体は面白いものの、中の人の力量が追いついていない感は否めません。今回もクライマックスの、
冠城亘「ある意味光栄です。貴方が敵として覚える最後の名前が私の名前になるワケですから」
この台詞がメッチャ聞き取りにくかった。録画を巻き戻して聞き直さないといけない台詞というのは結構問題あると思います。
逆にいうと今回の問題点は冠城亘の中の人くらいで、他は概ね許容範囲。詰め込み過ぎ&掘り下げ不足という印象は残ったものの、多少はやり過ぎなくらいのほうが『相棒』らしいといえますので。尤も、片野坂が杉下を煽って、自分諸共に譜久村を逮捕させようと仕向けたのは、かなり早い段階で気づきました。だいたい、杉下に向かって、
片野坂義男「くれぐれも余計なコトはするなよ」
などと念押しするのは、ダチョウ倶楽部の『押すなよ! 絶対押すなよ!』と同じレベルの前フリじゃないですか。況してや、片野坂さんは杉下の元上司。部下の為人を心得ていない筈がありません。寧ろ、二十年経っても人間的成長が窺えない杉下ってどうなのよ。
掘り下げ不足という点では譜久村聖太郎と被害者の関係。男女の関係ではなく、父娘じゃないかと想像していたのですがねぇ。部下の妻に手をつけて子供を産ませていたほうが鬼畜度倍増じゃん? もう一つ、掘り下げ不足なのは杉下が被害者の遺体の在処に気づいた理由。確かに人間の遺体は独特の臭気を発するとはいえ、あれだと別に薔薇園でなくてもいいんじゃないでしょうか。『マスターキートン』で同じように薔薇園を舞台にしたサスペンスがありましたが、あちらは花弁の変色が追肥のチッ素分だけでは説明がつかない=別のものが埋まっているというロジックがあったからなぁ。
とはいえ、上記のようにそれなりに楽しめた今回。その一番の理由は『悪の道に足を踏み入れなければ裁けない悪もある』という片野坂義男の行動と、それを『正義や悪を越えたところで意味のあることをやったと思いたい』と評した冠城の台詞。要するに片野坂は成功したダークナイトではないでしょうか。カイト君に足りなかったのは片野坂のような辛抱強さと思慮深さであって、悪を裁くために自らも悪に堕ちるという発想そのものは、うまく描けば今回のようにちゃんとした物語になり得る。今回の内容はカイト=ダークナイトという『相棒』史上最大の黒歴史に対する、今のスタッフの回答の一つなんじゃないかと思った次第です。
次回は一週お休みを挟んでの十一月十八日放送。ゲストの平岩紙さんはSeason6の『寝台特急カシオペア殺人事件』以来の登場ですね。国原! 生きとったんかワレ! 舞台となったカシオペア号が来年三月で運行を終了するそうで、そう思うと『相棒』の歴史の長さを感じます。
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『相棒14』第4回『ファンタスマゴリ』感想(ネタバレ有)
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