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『八重の桜』第31回『離縁のわけ』感想(ネタバレ有)

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本来、番組を見る楽しみを味わうべき視聴者がサンドバックのようにタコ殴りにされる本作の構成は如何表現すればよいのでしょうか。もう、今回は極めつけの超絶欝展開。ジッとしていてばコツコツと嬲り殺される。僅かに垣間見た希望に飛びつこうとすれば待ってましたのカウンターで絶望のズンドコに斬って落とされる。多分、


宮田一郎と戦うボクサー


は、こういう気分なんだと思います。そんな雷神みたいな大河ドラマはいい意味で嫌だ。あ、個人的にはカウンターパンチャーとしては沢村龍平のほうが好きです。日本のフェザー級でリカルド相手に善戦できそうなのは全盛期の沢村しかいなかったと思う。異論は認めます。大河ドラマとは全く関係のない例えになってしまいましたが、こーゆー遊びでもしないとやってられないのも事実。願わくば今回が欝展開のピークだと信じたい。次回以降、ヒロインに新しい人生の指針が示されるっぽいしね。それでは本編の感想いきます。


1.出鼻を挫くカウンター


行商に出てもあんまり反物が売れない&寒い季節になってきて、ちょっと下を向きがちなヒロインと姪っ子。それでも、郷里のおしくらまんじゅうっぽい俚謡を歌いながら上を向いて歩こうとする健気さを見せます。直後の欝展開への布石ですね。判ります。もう、30回以上も見ているのでいい加減、ある程度のパターンは解析可能。案の定、本作のプロデューサーっぽい名前の家主が尚之助からヒロインへの手紙を持参して、


内藤新一郎「よいお知らせではないかと、急いで持ってきました!」


おい、やめろ。

それは破局フラグだ。


予想に違わず、ヒロインが手紙を開いてみれば、


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ヒロインのバツイチが確定した瞬間である。これには母親も義姉も思わずドンびき。苦難の中でちょこっといい知らせが入ると次の瞬間に地獄に落とされるといういつものパターン……というか、これが本作の会津の法則。この法則から如何に抜け出すかが第二部の主題ですが、それは今回と次回で語られるっぽい。詳細は後述。


2.新規OPムービー


桜から一転。青々と繁る緑がテーマ。これも『はじめの一歩』のアレですが、


『花は散る。満開の頃の華やかさも賑やかさも残らない。しかし、一つの季節が終わり、そのあと芽吹き、緑に覆われた樹木ほど力強いモノはない』


という意味でしょうかね。幕末の動乱に咲いた季節外れの徒花である会津の時代は終わったが、そのあとにこそ、会津の真価が試されるというか。これも別の某熱血漫画家漫画の台詞ですが、


『何のために花を咲かせるのだっ! 実をつけるためではないのかっ! そいつがなければ咲いても散るだけ! どんなに大きく咲いても一世代かぎり!』


みたいな? このOPも花は散ってからが本当の勝負だぞというメッセージに思えました。


3.斗南藩始末記


当時、不毛の地とされていた斗南で塗炭の苦しみにのたうち回る旧会津藩士。似非栞子さんを助けた斎藤一も助けた相手からおまえら新選組の所為で会津が滅んだと罵られるというやるせなさ。謂れのない苦難に直面した人間は誰かを怨まなければ自分を支えることができないというリアルな状況描写です。ここ、結構好きな場面でしたね。今までの天然でイノセンスな似非栞子さんのキャラが『負の側に転じる』=『誰かの怨み節を考えなしに信じ込んでしまう』展開にマッチしていました。

斗南藩が飢餓に苦しんだ一因として描かれていた尚之助によるヘッジファンド騒動。これは近年の研究で明らかになったそうですね。某会津出身の作家さんの中にも『尚之助は鶴ヶ城落城で会津を見かぎって逃げた』みたいに描いていた方がおられました。

一見するとヒロインの離縁イベントに見えます(勿論、その意味も濃厚です)が、一番の肝は斗南藩の対応ですね。訴えられた尚之助を『斗南とは関わりなし』と見捨てる。ぶっちゃけ、蜥蜴の尻尾きり。他藩の出なのに会津に尽した尚之助を見捨てるのかという意見もありましたが、それは尚之助一人を助けて飢餓に苦しむ斗南藩の皆々を見捨てるということです。冷たい表現を用いれば感情論ですね。その手の感情論に引きずられて幕末の会津は碌でもない目に遭ってきましたから、いい加減、ここらで目を覚まさなければ同じことの繰り返しです。


政治を感情で動かしてはいけない。


それが本作における『会津の法則』から逃れる方途の一つです。今回、尚之助を見捨てることで斗南藩は過去の過ちを繰り返す愚を回避しました。非情な決断でしたが、これは会津の政治勢力としての成長といえるでしょう。

ただし、一回や二回、正しい判断を下しても、長年の間に逸れ続けてきた軌道を一挙に修正できる筈がないのも世の常。今回も尚之助の犠牲という代償を払ってトラブルを回避した斗南藩でしたが、結局は版籍奉還&廃藩置県というダブルコンボで消滅の憂き目に遭います。これでは何のために尚之助を見捨てたのか判らん。会津戦争では敗北と引き換えに名誉を守った会津藩でしたが、今回は同胞を見捨てたうえに守るべき藩も失くすという最悪の展開。世の中、そんなに甘くない。

成長したけれども、それだけじゃダメなんだ。

自分たちの生活を守るためには力が必要なんだ。

そして、力というのは刀でも鉄砲でも大砲でもないんだ。


ぶっちゃけ、政治の中枢に食い込むことなんだ。


今回、斗南藩の消滅を受けた山川浩は東京で旧会津藩の人々の出世の手助けをすると梶原平馬に告げますが、これはそれに気づいたということだと思います。尚之助を見捨て、藩は消滅し、平馬が政治の舞台から脱落するという、致命傷レベルのイベントが相次ぎましたが、これらは敗北ではなく、以降の会津の巻き返しの土台に繋がる出来事ではなかったかと思います。今回の会津は帆船で例えれば強引なタッキングで裏帆をうった状態。でも、早急に進路を修正するには絶対に必要なタッキングであった(ウェアリングでは間にあわなかった)のではないでしょうか。今回、一番見応えがあったのは、この斗南藩始末記であったと思います。

唯一の心残りは『米よこせ! 米がなくては生きてゆけん!』と詰め寄ってきた人々に対する山川の対応。土下座はいかん、土下座はよぉ。史実はどうなのか判りませんが、奴の性格を考えると絶対に、


山川浩「ならば早々に死ね! この窮乏に堪えきれない者など会津藩再興の力になれる筈がない!」


とか宣告してそう。本作の山川はいい奴過ぎるんだよなー。弟以外には。


4.政治の要諦


上記のように会津の人々の苦しみを描く一方、本作は会津視点であっても会津史観ではないという証左に明治政府は明治政府で勝利の美酒に酩酊していたわけではないことをきちんと描いていました。所謂廃藩置県の断行です。これは史実でもまさに断行、というか暴挙ともいうべき施策で、戊辰戦争で勝ったほうも負けたほうも武士は全員お払い箱という処置なんですね。そりゃあ、一揆も叛乱も起きますよ。特に勝ったほうの西国でね。会津は言いがかりとはいえ、戦争に負けたのだから今日の窮乏にも或いは納得いくかも知れませんが、勝ったほうも似たような境遇に落とされるんですから不満も大きいよなぁ。でも、国家の体制を中央集権に移行して、各地の武士=自活できない軍人をリストラしなければ、日本は何時まで経っても西欧列強に並ぶことはできない。ここでの明治政府の偉い点は作中のミッチーが宣言したように、


いずれはやらなくちゃいけないことをズルズルと先延ばしにしなかった


ことですね。これこそが彼らをして時代の勝者たらしめた要因。逆にいうと、これができなかった会津は斗南で塗炭の苦しみに遭っているのです。そこがキチンと押さえられていたのは嬉しい。主題にブレがないなー。でも、GTOは優遇され過ぎだろ。あの会議に同席するのはムリがあるんじゃないのか? OPクレジットでも西郷頼母の後釜の〆扱いでしたし。そこは納得できなかった。第二部になったんだし、今後は兄つぁまが〆でいいんじゃないかと思いました。

その兄つぁまは京都府大参事(知事)の槇村正直相手に持論を展開していました。この二人はのちのち、ヤバい関係(悪左府的な意味ではない)になるので、注目度高いのですが、高嶋兄というキャスティングは意外だったなー。兄つぁまはミッチーの推薦で槇村の相談役になりますが、ミッチーも岩倉も兄つぁまの見識は認めながらも、その手腕を国政では振るわせないという点は老獪そのもの。京都で覚馬のヴィジョンを試して、うまくいけば国でもいいとこ取り。失敗すれば覚馬の所為という魂胆でしょうね。一方で発足当初の明治政府には意外なほどに新国家のプランナーが少なかったのも事実です。それゆえに岩倉使節団なる政府首脳部による西洋の実地見聞旅行までやらかして、その隙に生じた征韓論~西南戦争への流れで5~6年はウダウダと足踏みをすることになります。


5.男の我侭と女の矜持


尚之助からの三行半に『自分に至らない点があったのではないか&一緒に斗南にいっていればこんなことにはならなかったのではないか』と悩むヒロイン。まぁ、至らない点は結構あったと思いますが、そういうことを気にしないと尚之助は明言していましたので悩むわなぁ。でも、そんな愚痴を聞かされる義姉にしてみれば、


山本うら「会いてぇなぁ、旦那さまに会いてぇよ。きっと会える。会えば何か判んべ?」


要するに『おめぇの旦那は生きているだけマシだ。会って話す機会もあるしな。こっちは生きているか死んでいるかも判らねぇんだ。贅沢ゆーな』という意味ですね。判ります。そんな気配は微塵も見せないのですが、ヒロインの気不味い表情を見れば一目瞭然。キャラクターの感情を表現するには当の本人を笑わせたり、怒らせたりするばかりが能じゃない。会話する相手の対応で描くこともできるという自信が感じられます。まぁ、この会話も実は覚馬が生きている生きていたほうが辛い結果が待っていたという相変わらずの情け容赦ない展開へのフラグなんですがね。

果たして、フラグ通りに覚馬生存の知らせがヒロイン一家に届きますが、


「何で今まで放っておいた?」

「手紙の筆跡も兄つぁまのじゃない!」

「女の匂いがする!」


という並の男では三日はかかる結論に瞬く間に到達するヒロイン一家。女って怖い。特にうらさんは一番怖かった=よかったです。兄つぁまから送られた櫛を髪に擬す姿とかね。水桶に映った自分の姿は九年前の自分じゃない。苦労の連続で手にも皸や皹が一杯。そんな自分が若い後妻の前で矜持を保っていられる自信がない。覚馬には自分の一番綺麗な姿を留めておきたい。そういう理由でうらさんは会津残留を決意します。ここ、史実ではうらさんが会津に残った理由は不明ですが、いい解釈ではないかと。

でも、単純に『うらさん健気』という内容ではないのは息女のみねに兄つぁまから貰った櫛を側見に渡したことですね。覚馬はみねに会いたいに決まっているし、傍に置きたがるに違いない。しかし、そのみねは常に覚馬が妻に贈った櫛を身につけている。これは男にはプレッシャーです。気の休まる暇がない。ここまで考えて息女に側見を渡したとすれば、うらさんも結構ドロドロした情念の持ち主。まぁ、この仮説が正しかったとしても、肝心の覚馬は失明しているので櫛が見えないプレッシャーを感じないという救われない結論になっています。唯一の救いはうらさんが覚馬の失明を知らないままということでしょうか。悲し過ぎる話だ。


一方、ヒロインは兄の後妻を追い出そうという将来に繋がるフラグを立てていた。


うーん、このムダのない構成。これをやったということは絶対にあのイベントをやるということだよな。勇気あるな。否、蛮勇というべきか。あのイベントは今回のうらさんと違って綺麗にまとめられる話じゃないんで、ちょっと不安です。

これらのイベントに挟まるように梶原平馬の引退イベント&二葉さん離縁イベント発生。ここの平馬も非常に身勝手に見えますが、まぁ、ぶっちゃけ、


心が折れちゃった


んでしょうね。こういう時、二葉さんみたいなしっかりものの奥さんの存在は逆に重い。去年の源義朝と同じですね。落ち込んだ時は理屈抜きで甘えさせてくれる女性のほうがホッとする。勿論、男の我侭と判ってはいますが、その気持ちも判らなくもありません。つーか、ハッキリと判る。


ラストは戊辰を生き延びた山本一家、九年ぶりの再会で〆。覚馬とヒロインと佐久さんが抱きあって号泣する中、キングカズマとみねの二人が蚊帳の外という構図がいい場面なのに不気味でした。キングカズマは『私、気不味い存在?』と思ったでしょうし、みねは『顔も覚えていない父親に会っても嬉しくねーよ。そのうえ、新しい女を娶っているとか正直、ドンびきだね。私に父親ヅラして欲しくねーわ』という表情アリアリ。先述したように今回はヒロイン周辺の欝イベントが一段落する予兆を示す内容でしたので、次回以降は表舞台では善くも悪くも変化のある回になるでしょうが、キングカズマとみねという安全ピンの外れた手榴弾が懐に入ったままです。何時、暴発してもいいように油断せずに覚悟をもって視聴し続けましょう。


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