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『相棒13』第9回『サイドストーリー』感想(ネタバレ有)

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歳の瀬になんちゅうものを見せやがるんだ。

いや、もの凄く面白かったよ。謎解きは弱いけれども、それは今回の主題がミステリよりも社会派のベクトルが大きかったからですし、真犯人を除いた登場人物全てに感情移入できるという点で、今季一番の出来と断言してもいいんですが、よりにもよって、こうも重い話を今年最後の回でされると、幸せな気分で年越しできないというか。幾つか大きな穴はあっても、先回の馬鹿話のほうが歳の瀬を飾るに相応しい内容であったと思いました。シリーズ構成の人は仕事をしてんのかと野暮を承知で文句をつけたくなりましたよ。
話の系譜としては、歴代でも随一の問題作と呼ばれる『ボーダーライン』に連なる内容でしょうか。他にも『ライフライン』というのもありましたな。兎に角、見ていて身につまされる系の切なさのオンパレードで、面白かったけれども二度と見たくないという奴です。小宮山親子の置かれた境遇、或いはもっと悲壮な状況下にある現実の介護問題というものを否応なく考えさせられました。我が家でも両親が亡き祖母の介護をしていた記憶があるので、その辺でも感情移入しちゃったのかなぁ。勿論、私の両親はキチンと介護をしていましたが、ネグレクトに奔った小宮山親子の関係性も判らんではない。息子も別に親が憎くてやっているワケじゃない。八方塞がりでどうしようもない状況から目を背けたいという感情で心が一杯なんですよ。それが正しいというつもりは毛頭ありませんが、その感情を理解(同意ではありません)しないと、ネグレクトの問題の社会的フォローは難しい。そして、母親がネグレクトする息子を庇うのは、息子に見放されたら他に面倒を見てくれる人がいないという厳しい現実があると思います。杉下の思わせぶりな物言いのように単純に息子を庇う母心ばかりではない。まぁ、その辺をリアルにやっちゃうと『ボーダーライン』のよう心底救われない話になっちゃうので、ベタでも綺麗にまとめたほうが視聴者の負担も少ないという配慮でしょうね。それこそ、

杉下右京「ドラマの場合、ただ事件を描写しても面白味がないんでしょうねぇ」

というように、ガチで問題を扱い過ぎてドラマ性がブッ飛んでいた『ボーダーライン』の教訓を生かしているんじゃないかと思いました。
一方でサイドストーリーに感けて本筋が疎かになるというのは作中での事件報道のアリヨウ、ひいてはリアルマスコミorネットへの警鐘とも捉えられますね。別に夜の仕事をしていたって、ヘルパーの業務に支障を来さなければ何の問題もないにも拘わらず、本質とは関係のないサイドストーリーで他人を叩く風潮は現実世界でもよく見るパターン。実際、本作で誰が一番のクズかというと、真犯人よりも冒頭とラストでの露骨過ぎる掌返しを見せた劇中のマスコミなんですね。まぁ、彼らも別に悪気はなく、目の前の利益を確保するのに精一杯なんでしょうけれども、小宮山さんの息子さんも同様の理由で被害者と真犯人を会わせてしまったがために今回の殺人事件が起こってしまったワケですから、そうした人々に対する何らかのメッセージであるのは明白。この辺は私もブログを書いている者として気をつけねば……手遅れかも知れませんが。

不満点は2つ。
まず、エンディングで小宮山さんの入居施設が決まった件。あんなに都合よく決まるワケねーだろ! 本当に大変なんですよ、介護施設に入居するのって。私の祖母も入るまでは大変でしたし、一度、病気の都合で退所すると再入居も難しい。せめて、犯人扱いされた社会保険労務士の助言を元に介護施設を探し始めたくらいで留めるべきでした。
もう一つはその社会保険労務士。自分がやっていないのであれば、何でもっと強硬に無罪を主張しなかったんでしょうか。てっきり、誰かを庇っているのかと思いきや、事件とは殆ど関係ないままでの退場。それこそ、社会保険労務士がキャバクラ通いをして何が悪い。特に後者は非常に大きな穴です。ここをうまく補完してこそ、物語のクオリティが保たれるというものではないでしょうか。まぁ、それこそ、ベタで意味のないサイドストーリーの象徴としてのフェイクなのかも知れません。

上記のように今年の『相棒』は今回で〆。次回は元日SPです。仲間さんの再登場は期待の要素が多いとはいえ、予想はしていました……が、もっと驚いたのは寺島進さんの再登場ですよ! 懐かしい! 『バベルの塔』以来じゃないですか! あの回では何気に杉下よりもいい仕事をしたので、今回も肝心の場面で美味しいトコロをかっさらっていくんじゃないかと予想してみます。

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