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『独眼竜政宗』第35回『成実失踪』簡易感想(ネタバレ有)

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伊達政宗「綱元の子として産ませてやってくれ!」
茂庭綱元「……御戯れを」
伊達政宗「戯れにこんなこといえるかッ」
香ノ前「お許し下さいませ」ドゲザー
伊達政宗「謝らんでいい。俺は嬉しいのだ……嬉しいが公にできんッ」キリッ
茂庭綱元「……委細承知致しました」
香ノ前「ウッ」ツワル
伊達政宗「どうした? 大丈夫か?」サスサス
茂庭綱元「…………」


伊達成実「……小十郎、これは茶坊主以下の所業ではないか?」
片倉小十郎「アーアーキコエナイー」


秀次&政宗&義光&レオンの鷹狩ほどではないにせよ、充分に同席したくないシチュエーション。主君の子を身籠った女性を匿うという、少なくとも武士の名誉とは無縁の任務を押しつけられているというのに、肝心の主君と女性が綱元の前でイチャイチャイチャイチャ……これには綱元も苦笑い。主君の御手つき&胤つきという絶対に【禁則事項です】してはいけない女性を妻女同然に扱わなければいけないという大概な目に遭った綱元。何でこんな目に遭わなければいけないのかと自問自答していそうですが、本作では小次郎誅殺の音頭を取ったのは彼なので、或いは因果応報というジェームス三木さんの隠れたメッセージなのかも知れません。明日は先週に続いての休日出勤のため、今回は簡易感想。ポイントは1つ。

1.言わぬが花

太閤の死を受けて、主人公を筆頭に諸勢力が手探りで状況把握に勤しむ回。まだまだ大勢が決まっていないので、登場人物も迂闊なことは口走れない。或いは石田派につかねばならない可能性を考えると、マー君も茶々に往復ビンタ喰らっても泰然としていなければいけない。怒ってもいけない。媚びてもいけない。今は様子見の時。そんな情勢を象徴するかのように、登場人物は言いたいことを敢えて最後まで言わないという場面が目立ちました。
前半は成実と小十郎。
勿論、小十郎は成実の帰参を促す使者で、しかも、自らが最後のシ者である、つまり、私と共に戻らなければ二度と伊達家に帰参できないということを告げているのですが、この場面をよく見ていると、小十郎の口から一度も伊達家に戻ってこいという類の言葉が出ていないんですね。一つには成実と小十郎の信頼関係&今までの友誼の厚さを表しているのでしょう。成実が無言で藁束を叩き、小十郎も無言で薪を割る。その音が両名の会話の代わりのように思えました。また、小十郎が尋ねてきた段階で成実にはラストチャンスだということは判る。小十郎クラスの重臣でも断られてしまえば、あとは政宗が来るしかなくなる。しかし、政宗自らが翻意を促しに来ることは流石にあり得ない。それをやれば、上下の示しがつかなくなる。つまり、これが最後の機会ということでしょう。人選そのものが最後通牒なんですね。
もう一つ、小十郎が具体的な言葉を口に出さなかったのは、出さなかったんじゃなくて、出せなかったという面も大きいんじゃないかと思います。いきなり、会話の出だしから『伊達家に帰参しろ』といっても、即座に『ヤだ!』と返されれば、双方共にあとがなくなる。小十郎としてはそうならないように時間をかけて、ゆっくりと成実の心を溶かしていかなければいけない。政宗の『ま』の字も出さずに、成実の稼業を手伝い、寝食を共にし、相手の現状を踏まえたうえで、直接的な言葉を用いることなく、しかし、それでいて意図が伝わるような表現で帰参を促さなければいけない。実にハードルが高い仕事です。でも、人を説得するってそういうことだよね。そうした機微に配慮した台詞回しであったので、小十郎が説得できなくても、彼は最善を尽くしたのだと判るんですね。
それにしても、成実の城召しあげに大内定綱が難色を示す時が来るとは……いや、実際に伊達家に押されて城を捨てて敗走した経験を持つからこそ、定綱には成実の置かれた状況が判るのでしょう。まぁ、成実としては定綱は死んでも同情されたくない相手筆頭でしょうけれどもね。

そして、終盤では寧々と茶々。

寧々「其方も身を慎まれよ。上に立つ者が風紀を乱しては下々に示しがつきませんぞ」
茶々「何のことでござりましょうか」
寧々「口にするのも汚らわしい噂が取り沙汰されておる」
茶々「口惜しや、奥歯に物が挟まったような仰せられよう」
寧々「身に、覚えがあろう?」
茶々「……アハハハハハハ、何のことでございましょうか?」
寧々「ならばよいが」
茶々「フフフフフフフフフフフ」ドドドドドドドドドド
寧々「ククククククククククク」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


何処からかJoJo風の擬音、もしくは『ざわ……ざわ……』という効果音が聞こえてきそうな女の戦いでしたが、双方共に共通しているのは具体的な名前を何一つ口にしていないということですね。あとあとの回で茶々が三成に自分のおぱい鷲掴みにさせているので、どう考えても茶々と三成の不倫ネタなのに、会話そのものはギリギリの段階で踏みとどまっている。特に寧々。口にした段階で洒落ですまなくなるんですよ、この問題。ぶっちゃけ、

茶々「ふ、ふざけるなよ、戦争だろうが! 疑ってるうちはまだしも、それを口にしたら戦争だろうが! 戦争じゃねえのかよッ!」

と追い込まれた茶々が逆ギレしたら全てが終わる。暴露されることへの恐怖で、茶々が何を仕出かすか予測できない。ついでに、それが全くの冤罪だとしたら、自らの品位も問われる。それゆえ、寧々は茶々に釘を刺しながらも、ギリギリの段階で話を終わらせたのでしょう。人間、思ったことを全部口に出せば全てが丸く収まるとか……そんなことは絶対にありません。何を喋り、何を問い詰めないか、その辺で登場人物の器の大きさ、書き手の水準が判るというものです。

残りは雑感。

① 成実の家族総討死……ですが、これは完全に本作の創作です。少なくとも、そういう事実は確認されていないとのこと。まぁ、こうした創作が史実として人口に膾炙されてしまうのが、歴史劇の恐ろしさでしょう。これ、どういう意図で創作したのか判らないんですが、何方か解説をして下さるとありがたいです。

② 捨て童子・松平忠輝登場。初登場からしてヤンチャ一杯ですなぁ。梵天丸時代の政宗とは似ても似つかない快活極まる童。それこそ、隆慶一郎さんの描く忠輝だとしたら政宗にむざむざと関節極められたりしないでしょう。下手をしたら、もう一つの眼も抉られたかも知れません。

それでは、今夜は早目に寝ます~。


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