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『修羅の門 第弐門』第30話感想(ネタバレ有)

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山田さん「不破も、たぶん陸奥もマウントポジションという技法は重視していません。一瞬で極めたり、KOできれば別ですが、複数相手だと馬乗りになった時は、むしろ危険ですから。でも、現代のこんなリングだとかなり有効です。だから、ボルトに限らず、誰もがそれを重視し、マウントを取る技術が磨かれる。特にボルトはそれが最も上手い男だと言ってもいい。なのに、あのバカはその死地に踏み込んだ。相手がレオン・グラシエーロだったら、あんなには返せない。ボルトはあまり強すぎて、マウントを維持するという技法を研く必要が無かった。マウントを取れば終了ですから。でも、だから返せた。あいつはそうやって確かめたんですよ、ボルトの実力と、それでもマウントを返せる自分か、という事をね」


正規解説員の山田さん、丁寧な説明をありがとうございます。でも、鼻くそをホジりながら喋るのはやめて下さい。羽生社長が幻滅しますよ。


まず、何よりも先回の推察がそこそこ当たっていたのは嬉しいです。 レスリングの攻防ではなく、マウントポジションの攻防であったこと。ボルトの力量を試す目途の危険な賭けであったこと。相手がレオンであれば確実に負けていたこと。この3点は山田さんのお墨つき。更にマウントポジションに拘ることがボルトの戦いの選択肢を狭めていたことも、今回のボルトの猛攻で証明されました。


フィリップ・ビンター「ヴォーダンがレスリング界を去った時に安堵された理由……相手が強ければ強い程、フォール勝ちはしない。フィニッシュはボクシングテクを使った投げ……レスリングでKOをとる」


この言葉通り、自らをマウントポジションへの固執から解き放ったボルトの、タックル~ロシアンフック~相手の頭を掴んでマットに叩きつけるという流れは戦慄の一言。先回までのボルトは『強い』でしたが、今回は『怖かった』ですよ。マウントポジションは有利ではあっても絶対ではない。一つのタクティクスに固執すると、それを返された時に手も足も出なくなる。そんな主張を匂わせた先回のラスト付近の描写からは、ボルトが第二のアーロンみたいにヘタレな扱いで終わるかと思いきや、まさかの大反撃。『絶対王者』『最高神』の名に恥じない底力。強かったです。できれば、もう一回分はボルトの猛攻を見たかったなぁ。フィニッシュはボルトの研究成果をド正面からダメージ覚悟で粉砕した九十九の『虎砲』で〆でしたが、個人的には途中で放った、


『神威』


で決まったほうがピンときたと思います。上記のように九十九は本戦でマウントポジションの絶対性を地味に覆していましたが、ラストにはハッキリとした形で表現して欲しかった。この業は片足タックル~ハーフマウントへの流れを封殺できますしね。初見の業ではなく、読者の誰もが知っている業でマウントポジション神話を崩せば、圓明流VS近代総合格闘技の本作なりの回答にもなったでしょう。そこが残念。でも、圓明流は圓明流でも『不破』の業で勝つのでは『陸奥』九十九の勝利にはならないと川原センセは考えたのかも知れません。ともあれ、一回戦第三試合の『兵』VSTSF頂上対決は陸奥九十九の勝利に終わりました。

他に印象に残った点は『神威』を巡る解説席の攻防。元・不破の山田さん以外は誰も気づかなかった業に気づいた凛子さん。珍しく解説者らしい仕事をしました。山田さんに向かって『正解でしょ?』といわんばかりのドヤ顔を向ける凛子さんがウザ可愛い。一方、向けられた側も、


山田さん「ま、そうですね、でも、完全じゃない。ボルトに頭を叩きつかられつつ……ですし、なにより、あいつは陸奥で不破じゃない。だから、ボルトは立てる」


と何気に元・不破の意地を見せる子供っぽさ。『俺なら、あれでKOしていた』といわんばかりです。そんな山田さんも可愛い。そして、


龍造寺凛子「もう一つ気になるのは……マイケル・ラント。あんた、なんで笑ってるの?」


そりゃあ、そうだ。ニック・ギャレット、ニコライ・ペトロフ、ヴォーダン・ファン・デル・ボルトとTSFの看板選手が3タテされて、あとは無名の新人のジン・ライアンしか残っていないのに、この余裕はい……、


与力「あっ……(察し


うん、まぁ、取り敢えずは陣雷、生きて帰れよ。約束だぞ。


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