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『麒麟がくる』第五話『伊平次を探せ』感想(ネタバレ有)

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一月の記事でも触れたように再来年の大河ドラマは三谷さんの『鎌倉殿の13人』に決定しまして、その時の私の心境たるや、控え目にいっても、

 

 

でしたが、先日飛び込んで来た、

 

再放送情報 大河ドラマアンコール「太平記」

 

のニュースを知った時は、

 

 

昨年の『葵~徳川三代~』の再放送が決まった時と同じ心境になりました。しかも、その数分後には、

 

「銀河英雄伝説Die Neue These」4/6からEテレで放送決定!

 

 

となり、その一時間後には、

 

「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」全47回を一挙放送! BSプレミアム・BS4K同時放送が決定!

 

 

とひとしきりハッスルした挙句、

 

 

精神上の過呼吸状態に陥った次第です。NHKはどうにかなってしまったのか? 『ぶっ潰す』とかいわれて、漸く本気を出したのか? 『鎌倉殿の13人』のニュースを知った時には『迂闊に死ねない』と思いましたが、こうもビッグ&グッドニュースが重なると死ねないどころか俺は今年中に死ぬんじゃあないだろうかと逆に不安に駆られる始末。一応、昨年末の健康診断の結果は『概ね正常』でしたが、もう一度、何処かで精密検査を受けておきたくなりましたよ。しかし、昨年のオフ会前に受けた検査結果が二月中旬に届くって……要・精密検査の項目があったら手遅れになるかも知れんやろが。

三作品とも再放送なのでクオリティに関する心配は全く不要ですが、それだけに撮り直しや再編集は不可能なので、当時の出演陣に何事も起きないことを祈るばかりです。これは極論だがね、銀英伝の第二クール終了後は石黒版で続きを放送したらどうだろう? それと絶対にNHKで、

 

『銀河英雄伝説大投票』

 

をやりそうですよね? というか、むしろやれ。俺が許す。ランキングベスト10は、

 

第1位 魔術師

第2位 寄生木

第3位 赤毛

第4位 義眼

第5位 オッドアイ

第6位 不良中年

第7位 メシマズ

第8位 疾風

第9位 猪

第10位 金髪

 

になるとガチ予想してみます。次点候補は鉄壁か爺さん。2位と9位はネタ枠で票を獲得しそう。逆にクロスワードや不良中年とのコンビで光る撃墜王は意外と伸びないと見た。企画も発表されていない(というか、完全に妄想の域に留まる)時点でいうのも何ですが、ネタで投票が許されるのはヨブちゃんまでだぞ! フォークやラングやオリベイラはOUTやぞ! 銀河の民の民度が問われるからな!

それにしても、これでますます、来年の『晴天を衝け』の影が薄くなるなぁ。そろそろ、追加情報を出さないとマジで忘れ去られるぞ。友人も『来年の大河は三谷さんでしょ! 楽しみ!』と満面の笑みで語っていたからなぁ。訂正するのは惜しい笑顔なので、こちらは曖昧なジャパニーズスマイルでお茶を濁しておきました。スマンな。取り敢えず、キャスティングに関しては、主人公の両親の角野卓造&近藤春菜に続いて、

 

徳川慶喜……藤原竜也

 

を希望します。ガチクズ路線・切れ者路線のどちらにも持っていけそう。

 

……随分と前置きが長くなってしまいましたが、今週の『麒麟がくる』の感想に入りましょう。今回もいい点と悪い点がハッキリと分かれる内容でした。総体的には7:3で悪いほうが上回ったかなぁ。

 

 

1.よかった点

 

松永久秀「弓矢や槍なら躱せる……だが、鉄砲の弾は躱せない。銃口を向けるだけで相手の動きを封じることが出来る。弾が当たるかどうかではない。鉄砲の恐ろしさをお互いが知っていれば、気楽に攻め込むことは出来ん。戦のありようは変わるぞ」

 

爆弾正が語る戦争抑止力としての鉄砲装備論。実際の戦場では弓矢も滅多に躱せないという浪漫のカケラもないツッコミはさて置き、なかなかに興味深い視点でした。一見すると突飛な発想に思えますが、鉄砲以前の中世ヨーロッパではクロスボウが余りの威力に戦争での使用を禁じられる先例がありましたので、強ちあり得ない話ではありません。尚、異教徒への使用は許された模様。やキ鬼。それは兎も角、相手の即応能力を上回る兵器を装備して、戦う前にビビらせちまおうというケチな発想は古今東西の歴史において、幾度も繰り返されてきたのは確かです。第一次大戦以前は機関銃、第二次大戦以前は核兵器が同様に『戦争抑止力兵器』の機能を期待されていました。尚、現実は【御察し下さい】。『相互確証破壊論』とかいう頭文字通りのMAD思考、ほんとクソ。

ともあれ、こうした歴史を踏まえたうえでの新しい概念の創作は大歓迎です。単純な平和思想ではなく、作り手側の一捻りがあるのは嬉しい。しかも、その思想が平和に直結するどころか、

 

松永久秀「鉄砲の数はそれぞれ百丁を上限として持つというのは如何かな?」

三淵藤英「左様な数合わせには同意しかねる」

 

という某ロンドン海軍軍縮会議のような水面下の足の蹴り合いまで描いてくれるのは嬉しいかぎりでした。

鉄砲絡みでは序盤の、

 

明智光秀「これを組分けにして、中身を見てみたいのじゃ!」

 

のシーンもよかった! オモチャを買ったら分解したくなる。十兵衛も男の子やね。ここは特に男性視聴者は感情移入出来たのではないでしょうか。同じく鉄砲ではアバンタイトルでの、

 

明智光秀「もそっと右に向けます……ああ、行き過ぎです……さよう! では、指をお引き下さい」

斎藤道三「うむ、判った、こうだな……よし、引けばいいのだな!」

明智光秀「どうぞ!」

 

うーん、この抜き書きすると微妙に悩ましい台詞。鉄砲は男の子の武器。はっきりわかんだね。あとは出張費を2/3に値切ろうとする道三とか、灸を据える爆弾正とかも微笑ましかった。後者は爆弾正の最期に繋がる布石ですね。そして、山路和弘&吉田鋼太郎とかいう天下を取れないほうがどうかしているコンビも存在感あり杉内。ちなみに嫁は上杉謙信公。勝てない(戦国BASARA感)

 

 

2.悪かった点

 

よかった点以外の全部。

 

いや、全部が悪いのではありませんが、要所要所で素敵なシーンは結構あるのに、それらを繋ぐ普通のパートがどうにもシャッキリしないんですよね。『その台詞や場面転換は本当に必要ですか?』と思える箇所がある反面、丁寧に説明しないと意図が判らない難しい箇所も多くて、内容の善し悪し以前に見ているとリズムが崩される感覚に陥るのよ。

冒頭での伊平次を巡る十兵衛と伝吾の会話とか『酒癖の悪い刀鍛冶の伊平次が国友村にいるかも』という話を一分以上かけてじっくりねっとりと交わしているのですが、実際に書き起こすと二十文字くらいの情報量に費やすには長過ぎる時間でした。同じように十兵衛が本能寺前で細川藤孝とバトる場面も時間をかけた割に情報量が少なかった。十兵衛の『ここは本能寺ですか?』という英会話の教科書的な問答から始まって『中にはここから入っていけばいいのか?』とか『お侍だらけで誰も入れない』とか『公方様がおられる』~『公方様?』~『足利義輝様』とか、パッと見れば判る&一度聞けば判ることを繰り返すのよ。そんなこといわなくても、だいたい雰囲気で判るからササッと本筋に入って欲しいのですが、勿体つけ感が半端ない。逆に三淵と爆弾正の手勢の押し問答は『何でコイツらが険悪なのか』の事前情報がない人は凄いストレスが溜まったのではないでしょうか。

この辺、単純に撮影の不手際かとも思いましたが、現場は現場で凝ったことをやっているのですよ。十兵衛VS藤孝の殺陣は、

 

太刀を相手の死角に隠す藤孝~十兵衛の構えで『同門か』と気づく~当初の構えの手の内を知られているのではないかと考えて通常の構えに戻す藤孝~一合で十兵衛が手練れと気づく~やはり、自信のある当初の構えに戻す藤孝

 

といった具合に台詞なしでも藤孝の心理が伝わって来るので、現場も気合が入っているのでしょうけれども、

 

これは極論なんだがね……本編をギュッと絞ったら半分くらいの尺に収まるんじゃあないのか?

 

と思えるのも事実です。

市販のガイドブックのストーリーには、十兵衛と藤孝のバトルに至る具体的な台詞の遣り取りはないようなので、或いは脚本を台本に起こす段階での情報の取捨選択がうまくいっていないのではないかとの仮説を掲げてみますが、何れにせよ、このもっちゃりと間延びしたリズムが本編を楽しむうえでの阻害要因になっています。毎年恒例の『今年の大河ドラマを食べ物に喩える企画』ですが、現時点では、

 

料理の美味しいピストル大泉大河

 

になるでしょうか。『料理が美味しければいいじゃん』と思ったそこの貴方、ピストル大泉の怖さを御存知ないようですね。あれはコース料理のくせに次の皿が出るのに一時間半かかるのですよ。あまりにもリズムが悪い。まぁ、そんな感じで本作もピントの合わせ方が判ってきたので、次回以降の視聴に繋げていければと思います。少なくとも、

 

「麒麟がくる」視聴率下降の原因か…海老蔵の“語り”が不評

 

みたいな周回遅れのクレームに賛同する気はありません。藤村志保さんの一件から何も成長していない……。『真田丸』で有働さんを器用したら『ニュースを見ているようでドラマに集中出来ない』というクレームもあったのですが、それは。今年のナレーションは素敵ですよ。底意なく、海老蔵さんであることを忘れるくらいにクセのない、いいナレーションと思います。少なくとも、

 

去年のよりは聞き取りやすい

 

です。つらいです……『いだてん』が好きだから……。それにしても、本当に日本のメディアって奴は……冒頭で触れた『NHKをぶっ潰す』という政治公約に私が賛同出来ない(個人的に考えるのはアリ)のは、NHKを庇う意図ではさらさらなくて、あそこをぶっ潰したら他の同レベルのメディア≒日本の殆どのメディアも平等に潰さなくてはいけなくなるからです。新聞なき国家と国家なき新聞なら、泣いて後者を選ぶのが私の主義なので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


『麒麟がくる』第六話『三好長慶襲撃計画』感想(ネタバレ有)

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明智光秀「見事に弾丸の通り道が貫かれている……見事だ」

 

本作に漂うもっさり感を象徴する一幕。『見事』を繰り返すことで、十兵衛が受けた感銘を強調したいのかも知れませんが、短い台詞の中で同じ単語が重複すると、どうにも物語のテンポが悪くなる印象を受けます。このあとに、

 

伊平次「そうでなくては弾丸が飛びません」

明智光秀「……美しきものじゃ」

伊平次「美しきものですか。それを見て『美しい』と仰ったのは十兵衛様と松永様だけです」

 

という遣り取りが続くのですが、いっそのこと十兵衛の二度目の『見事だ』と伊平次の『そうでなくては弾丸が飛びません』をぶっこ抜いて、

 

明智光秀「見事に弾丸の通り道が貫かれている……美しきものじゃ」

伊平次「美しきものですか。それを見て『美しい』と仰ったのは十兵衛様と松永様だけです」

 

にしたほうがしっくり来る感じがします……というか、もっと根本的な話をすると、

 

伊平次の存在自体をぶっこ抜いても何とかなった

 

ように思えるのですが。書き手側としては、今回の主人公の上洛は足利将軍家周辺の重要人物との接点を持たせるためであり、その動機づけの一環として『鉄砲を分解したい』というモチベーションを用意したのでしょうけれども、そのための長い前フリをした割に物語上のリターンが余りにも少ないというか。中の人のツイッターによると伊平次は今回で退場らしいので、今後に繋がる伏線にもならなそう。ここは単純に、

 

① 将軍家が鉄砲に固執する理由を探るように道三の密命を受ける

② 東庵一行を安全に京都に送り届けるためニンニキニキニキニンニンニンする

 

のどちらかでよかったのではないでしょうか。まぁ、伊平次に鉄砲の分解&組み立てのレクチャーを受けていたようなので、今後、十兵衛が如何なる場面で鉄砲を自在に操ろうとも『伊平次に習った』の一言で解決出来そうですが、それはそれでハワイで親父に習ったみたいなノリで好きじゃあありません。

それと、上記のように今回で十兵衛と室町幕府の要人との接点を作ることには成功したものの、基本的に視聴者に顔と名前を売っただけで、人物像をしっかりと掘り下げられたキャラクターはいなかったと思います。悪印象は受けなかったけれども、そもそも、印象に残らないという罠。サブタイに使われた三好長慶襲撃計画も、誰が如何なる動機で企図したかの描写が弱過ぎました。伊平次や藤孝にあれこれ解説させるのではなく、長慶・晴元・爆弾正・義輝といった主要人物を使って、キチンとしたストーリー仕立てにして貰わないと面白くない。主人公も人間的な成長や変化が窺えないのが残念ですね。十兵衛は基本的に京都に行っては蝮のことを愚痴って帰るだけだからなぁ。

そんな感じで、今回『いいな』と思えたのは、チャンバラシーンの床一面の紅葉で血を表現したことと、主人公を立ち聞きされる側に回すことで身分の差を越えたコミュニケーションを成立させたことくらいかなぁ。後者は予告映像で『うわぁ、本作も主人公がズケズケと将軍に物申す作品になっちゃうのか』と危惧していたので、本編を見て一安心。あとは今週の予告映像の、

 

斎藤道三「尾張の向こうには海がある! 海を手に入れることじゃ!」

 

が『翔んで美濃』的なネタに思えてしまいました。頼純様には毒入りの伊茶でも飲ませておけ!

 

そんな訳で今週は本編に関して書くことが殆どないのですが、その代わりに先週に続き、今年の大河バッシングネタを一つ。

 

『「麒麟がくる」視聴率が早くも下落…原因は明智光秀にありか』

 

まぁ、題材に触れているだけ、AB蔵のナレーションの所為にした記事よりはマトモといえなくもありませんが、所詮はウコ味のウコと犬のウコ味のウコ程度の違いしかないので、どちらも無視して問題ないでしょう。一部ツイッターで話題になった、

 

「光秀に関しては『本能寺の変』の直前からスタートし、『山崎の戦い』で豊臣秀吉に敗れて自害するまでを描いたほうが視聴者の関心も高かったはず」

 

の一文も、本能寺の変から小栗栖で一年保たせろという意味ではなく、第一話の冒頭で本能寺直前の描写を描いてから、劇中の時間を巻き戻して若い頃の光秀を描けということだと思います。本気で本能寺から小栗栖で一年保たせろと考えているとしたら、そのライターは光秀研究の第一人者か、或いは脳味噌の代わりにでんがらでも詰まっているかのどちらかでしょう。

だいたい、この『新撰組!』手法は大抵、ドラマの途中でキャラクターが変わって、第一話の冒頭に戻れなくなるのよね。斬り込みを前に不気味な笑みを浮かべていたオダジョー斉藤が、左之助の祝言に一刀彫をドーンとプレゼントする性格になるくらいですから……というか、プロローグ代わりの本能寺前夜はやめろというのは私が昨年のオフ会で既に釘を刺しているので、プロのライターがアマチュアブロガーの逆周回遅れ的文章を書くのはどうにかして欲しいものです。

あ、このテのタブロイド的なネタといえば、こちらもありました。

 

『チュート徳井が24日に活動再開へ…テレビ各局に報告』

 

今季の『球辞苑』に間に合わないのは残念ですが、四月からの再放送には問題なさそうなので、NHKには是非とも大松監督の出番を編集していない完全バージョンを放送して欲しい。本放送の際、何処を『配慮』したのか凄く気になるからね(暗黒微笑)……と呟いたら、フォロワーさんに、

 

『1分間美川君のシーンが出てきたらどうしよう』

 

とコメントされた。『いだてん』スタッフならガチでやりそうだから怖い。

 

 

 

徒然日記 ~2020/03/03~

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発生以来、自主的な報道規制を布いてきましたが、先日、宰相閣下が会見を開いたので、有権者である私が口にしても問題なかろうと思い、各地で猖獗している事象について軽めに触れておきます。

今回までブログで触れなかった理由は三つありまして、一つ目は五年前に書いた記事の内容が概ね今回のケースにも通用するから。二つ目は今回の案件の危険度がアンドロメダストレインなのか、或いはジヒドロゲンモノオキシドなのかの判断を下す知識が私にはないから。三つ目は直接的に人命に拘わる可能性を含む事案に迂闊なことはいえないから。現時点では公序良俗と衛生概念に反しない範囲で、各々がベターを尽くすしかないと考えております。諸々の不平不満は『事態が一段落したあとでじっくりと料理する楽しみに取っておく』ことにしましょう。

ちなみに私は先月、或る国際機関に使途を指定したうえで些少の喜捨を振り込んで参りました。結局、今回の騒動の根幹は『現時点で根本的な対抗策がない』の一言に尽きる訳で、逆にいうと対抗策の開発に繋がる組織周辺に金銭をブチ込むことが、遠回りに見えて実は最も近い解決方法ではないかと考えた次第。勿論、これが大洗のポンコツ新隊長レベルのピントボケボケのマト外れ思考の可能性も充分にあり得ますが、その場合は私のフトコロが痛むだけなので、どうか生暖かい目で見過ごして頂けると助かります。

尚、以上は私個人の思考と責任に基づく行動であり、第三者に賛同を求める訳ではなく、他の意見を否定するものでもなく、現段階での責任論を討議する意図もないことを改めて明言致します、念のため。コメント欄でも当事案に関する『議論に発展する御投稿』は差し控えて頂きたく存じます、悪しからず。時節柄、皆さまも御自愛下さいませ。

 

では、今週の更新記事に入ります。今回も『麒麟がくる』の感想メインですが、長年描こうと思っていたネタが放送内容と被ったので、そちらにも触れようと思います。議題は二つ。

 

 

1.『麒麟がくる』第七話『帰蝶の願い』簡易感想(ネタバレ有)

 

織田信秀「守護代とはいえ、同じ織田の一族。何故いちいち、わしのやることに横槍を入れてくる?」

平手政秀「ハッキリ申せば、殿への嫉妬でございます。殿は交易の要たる津島・熱田を押さえて尾張一の富を手に御入れになっている。しかも、戦にはお強い。金銭もあり、力もある縁者など蹴躓いて死んでしまえぐらいに思うもので」

 

この平手のジイは腹黒っぽくて好き。

 

『蹴躓いて死んでしまえ』のトーンが、ガチで信秀をdisっている感がありました。室町幕府や畿内大名の面々に先んじて、ジイのキャスティングが発表された時には、

 

平手政秀「若様、ジイは情けのうございますぞ(ハラキリー

 

みたいな悪い意味でベタな傅役になりやしないかと不安でしたが、本作のジイは良作大河の条件である腹黒可愛いムサオヤジという要素をクリアしています……というか、室町&畿内パートはもっと頑張れ。今のところは爆弾正の一人勝ちだぞ。まぁ、爆弾正以外の室町&畿内パートの面子は、中の人の実年齢よりも若い設定なので仕方ないとも思いますが。

ともあれ、今週は久しぶりにリズムよく楽しめた『麒麟がくる』。前回&前々回のもっさりとしたストーリー展開は何であったのか……ぶっちゃけ、前回&前々回がなくても殆ど話は通じたんじゃあないでしょうか。前回&前々回は帰蝶の出番がない=再収録ではない=あれが本作のスタンダードクオリティではないかと思いましたが、逆に考えるんだ。あれは再編集で尺が足りなくなった分を急遽撮影&本来カットされた部分を継ぎ足したから、リズムが悪くなったと考えるんだ(個人の感想です)

実際、主人公と道三による、

 

斉藤道三「帰れ!」

明智光秀(カチッ)「判りました! 帰ります!(半ギレ)

 

というしらけ世代(死語)の新入社員と上司を思わせる遣り取りもリズムよく展開していました。道三関連では、

 

斉藤道三「わしの仕事は戦をすることではない。国を豊かにすることじゃ。豊かであれば国は一つになる」

 

のシーンも印象に残りましたね。言っている内容はマトモで演じているモックンの表情も神妙そのものですが、場面や台詞にそぐわない不穏なBGMには『これは道三の本心ではありませんよ』との主張が隠されていたように思います。多分、そういう意図の演出でしょうね。『人を説き伏せるには、まず、自らがそれを正しいと思うことが大事ぞ』とは宣っておきながら、その張本人が信じてもいないことを真顔で唱えるとはたまげたなぁ。

MVPは帰蝶。十兵衛に着座を求められた際の、

 

帰蝶「浅ましき話なら此処で聞く。面白き話なら座ってもよい」

 

は素晴らしい。直截な単語が一言も出ていないのに帰蝶が十兵衛の要件を全て察しているのが伝わってきました。こういう勿体つけ方は大歓迎です。十兵衛に『信長の為人を見定めて欲しい』と頼む動機もスキデモナイノニトツグノデスカーではなく、一度目の結婚でエライ目に遭っているから今度は慎重を期したいという、帰蝶再婚説&伊右衛門茶事件のダブルコンボが布石になっているので、素直に納得出来ました。それにしても、信長の品定めをしてこなければ、子供時代の黒歴史を暴露するとか……帰蝶、恐ろしい子! 蝮の子は蝮。はっきりわかんだね。

そして、某サイタマーのように切実に海を欲しがる道三の悲願を知ってか知らずか、海から登場した染谷信長。なかなかに考えられたシチュエーションです。日本は海から来る存在なくしては変わらない国ですから、このシーンはなかなかに象徴的であります。今回は台詞なしでしたが、次回以降の信長の活躍に期待。

 

 

2.大河ドラマと歴史考証

 

唐突ですが、ハリウッド映画に出てくる胡散臭い日本人のキャラクター設定は決して嫌いではありません。寧ろ、日本人が外国人に如何なるイメージを抱かれているかを知る格好の材料と思っています。よくあるのが初対面の相手に握手を求められた際に胸の前で手を合わせるシーン。あれって日本ではまず見られないのに、何故か一昔前の映画では頻繁に見かけたものです。多分、中華圏の拱手か、ナマステのジェスチャーと一緒くたにされているのでしょう。前者は漢字文化圏、後者は仏教的宗教観で混同されているものと推察されます。しかし、それを見た日本人は『馬鹿にしやがって』と怒るケースは少ないと思うのよね。評論家の岡田斗司夫氏が『アニメ夜話』で、

 

「間違っているなりに判ろうとする努力や伝えようとする意志自体は感じられるから不快にはならない(意訳)

 

と述べておられたように、勘違いやディフォルメは時にリアルな描写よりも好意的に受け入れられることが多い。実際、海外ドラマの『BONES』に日本人捜査官が登場した時、彼らと主人公のブレナン博士が御辞儀で挨拶し合ったのですが、これが逆に見ていてイラッとしたのを覚えています。あの心理は何なのかなぁ。ガチで観察・分析されるよりもネタにされたほうが被対象者の受ける負担は少ないのかも知れません。

それで、ここからが本題ですが、今年の大河ドラマの女性キャラクターの立ち膝座りに一部から『違和感がある』『行儀が悪い』『某流ドラマの影響?』との苦情があがっているそうですね。私も当時の貴人女性は立ち膝座りがディフォということは知らず、漠然と『ひょっとしたら、このほうが考証的に正しいポーズなのかなぁ』と思いながら見ていたので、予備知識がないと違和感を覚えてしまう側の気持ちも理解出来ます。勿論、歴史考証の意見が一般的になれば、正座スタイルでの撮影は減少していくべきであり、それが正しい在り方ですが、一視聴者としては考証的には間違っていても、現代視点では歴史劇に見える挙措や所作が廃れるのは情において忍びなくもあります。『葵~徳川三代~』などで描かれる挙措や所作は『史実』ではあり得なくても、我々が見たいと欲する魅力的な『虚像』なのでしょう。この辺、先述した海外作品の間違えた挨拶よりも正しい会釈のほうに違和感を覚える心理に近いのかも知れません。まぁ、その心理は煎じ詰めれば感傷であり、戦国時代にサラブレッドがいるのはおかしいという類のそれをいっちゃあおしまいよ的な無茶振りでもなければ&ストーリーの進捗に影響がなければ、歴史考証の意見は可能なかぎり採用されるべきでしょう。神は細部に宿る。これは古今東西を問わず、名作の条件です。先日発売された『ガルパン最終章第二話』のオーディオコメンタリーでも、

 

「ガルパンはストーリーの展開上、戦車の底の部分を描かなければならないが、普通の資料にはなかなか載っていない。プラモを参考にしようにも裏面は電池パックになっているから参考にならなくて苦労した」

 

というネタが語られていました。創作活動って大変だよなぁ。

 

 

 

 

 

作品のタイトルは忖度して下さい

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この際、ハッキリ申しあげておくと、私が現在の日本映画界に抱く不満点は『漫画やアニメの原作ばかりなこと』でも『某事務所のゴリ押しキャスティングが目立つこと』でも『ハリウッドの有名な映画賞が取れないこと』でもなく、

 

『翔んで埼玉』がアカデミー賞の選考や興行ランキングに食い込むこと

 

です。予め誤解のないようにお断りしておくと『翔んで埼玉』は大好きです。間違いなく、ここ数年で最も楽しめた邦画ですが、しかし、この作品がアカデミー賞の選考や興行ランキングに絡むことは多少の違和感を覚えざるを得ません。人気原作の映像化が恒常化した影響で、テーマ性のあるオリジナル作品の企画が通りにくくなっているのでしょうか。まぁ、テーマ性のある映画=高尚な作品という発想もスノッブな視方ではありますが、東京テイスティングとかいう原作にもない狂気のオリジナルネタをブッ込む映画にテーマ性を求めるのは、小松江里子(呼び捨て)の脚本に大河ドラマらしさを求めるのと同じくらいに困難な話といえます。別に『翔んで埼玉』が悪いのではありません。他の映画がだらしないだけです。『翔んで埼玉』は大好きです。大事なことなので二回書きました。

そんな訳で、今年の日本アカデミー賞で『翔んで埼玉』が最優秀作品賞の受賞を逃したのは残念とはいえ、やむを得ないことと納得しているのですが、代わりに選出された作品には非常に複雑な思いを抱いております。元々、この作品は『総理大臣官邸の記者会見で鋭い質問を繰り返すダブルの帰国子女の女性新聞記者』という原作者の願望と自己投影を綯交ぜにしたとしか思えない主人公設定(ジャンルは正反対ながら)『永遠の0』を思い起こさせて全く劇場で見る気が起きず、DVDレンタルが開始されてからも、食指の末端神経が断絶したかのようにピクリとも動かなかったのを覚えています。まぁ、本作はノンフィクションを踏まえた創作なので、どこまで原作者の意向が反映されているかは判りませんが、何せ本人もガッツリと映画に出演しているので、全く与り知らぬこととは到底いえないでしょう。疑惑は更に深まった。

兎も角、何らかの必要性に迫られないかぎり、こちらから能動的に視聴することは永遠にないと思える作品でしたが、上記の『翔んで埼玉』の件に加えて、私の推しの松岡茉優さん(←ここ重要!)に競り勝って、最優秀主演女優賞までも獲得した映画が如何なるものかという私怨興味に駆られて、先日レンタルして参りました。感想を一文にまとめると、

 

デビルマン』と『さよならジュピター』の地位が自動的に一つあがった

 

といえるでしょう。何処に出しても恥ずかしいクソ映画です。そもそも、映画と呼んでよいものか些かならずとも判断に苦しむ作品でした。

 

まず、上記の『総理大臣官邸の記者会見で鋭い質問を繰り返すダブルの帰国子女の女性新聞記者』という原作者の願望と自己投影を綯交ぜにしたとしか思えない主人公設定(大事なことなので二回書きました)が、作中で1ミリたりとも活かされていない。主人公の新聞記者が日本人の男性で春日部生まれの所沢育ちであっても、何一つストーリー展開に影響がありません。ハッキリいって要らない設定です。英会話が出来る件も序盤に旧知の外国人記者と会話するシーンしか活用されませんでしたが、そもそも、あのシーン自体が日本人相手に日本語で話しても問題のない場面&内容なので、まさに輪をかけた無駄設定。『英会話の出来るヒロインちゃんカッコイイ』以上の意図が感じられませんでした。これこそ、原作者に対する忖度って奴じゃあないですかね、知らんけど。

次にストーリー展開が恐ろしくかったるい。本作はもう一人の主人公の若手官僚の恩人である教来石景政の自殺からストーリーが動き出すのですが、開劇から自殺までに三十分以上もかかっているのよ。しかも、その間に有用な情報が殆ど提示されない。せいぜい、登場人物の大雑把な人間関係くらいですが、その程度の情報はストーリーと同時並行で描くのが常識じゃあないですかね。普通の映画なら教来石は開始二分で死んでいます。

ストーリー自体もスッカスカ。全体的に『国家が都合の悪いことを隠蔽しようとしているんだよ!』という薄らぼんやりとした雰囲気のみが先行して、具体的に何を隠しているのかが全く語られず、終盤になってから何の伏線もなしに『新設される大学は実は生物兵器の実験場だったんだよ!』『な、何だってー!』と唐突にトンデモない真実(笑)が明かされる始末。そういうの、いらないから。俺らは地道で巧妙な取材で政治家の不正を暴くプロセスが見たい訳であって、別に劇場版『相棒』の出来損ないみたいな突拍子もない設定を見たい訳じゃあないから。この内容でアカデミー賞が獲れるのでしたら、これまでの劇場版『相棒』は全部当年の賞を総ナメにしていないと間尺に合わないと思うのですが、それはさて置き、証拠も伏線もない話を唐突にブチあげて『これが事件の真実! これが日本の闇!』とドヤ顔で宣う訳ですから、本当に始末に負えない。フィクションとしてはストーリー性に欠け、ノンフィクションとしては物証に欠けます。作中でヒロインが『残念ですが、これだけでは記事は書けません』と自虐ギャグを宣うシーンがありますが、これだけでは映画も撮れないと思うのは私一人ではないでしょう。

そういや、本作は主人公の新聞記者がマトモに取材をしているシーンが殆どありませんでしたな。一応、それっぽいシーンは何度か挿入されていたものの、別に相手に食い下がる訳でも、真相を聞き出す訳でもありませんでした。あれは取材とは呼びません。インタビューです。『新聞記者はこういう仕事なのか』と思えるシーンが一カ所もなかった時点で業界モノ作品としても失格でしょう。その割に(一丁前に)メッセージ性(だけ)(ムダに)高かったですね。随所で『権力者を監視する役割としてのマスコミの重要性』を繰り返し唱えていましたが、その方法が脚本の台詞でもなく、監督の演出でもなく、俳優の演技でもなく、

 

原作者が作中のニュース番組のコメンテーターとして発言する

 

という斬新極まるやり方に驚かされました。勿論、開いた口が塞がらないという類の。斬新なのは確かですが、それでしたら、別に映画を撮る必要もないと思うのですが。

 

まぁ、そんな訳で本作を見てよかったと思えたのは、今年の私的ラジー賞の選考に頭を悩ませる必要がなくなったことと北村有起哉さんの名優ぶりを再認識出来たことの二点に留まりました。俺、この俳優さん本当に好き。どの作品のどんな役柄でもクセとアクとワザを発揮出来る役者は滅多にいません。改めてファンになりました。ついでに本作を選考したアカデミー賞の判断に異論を唱えるつもりも毛頭ありません。数年前に『永遠の0』とかいう本作とは真逆の方向性で同レベルのクソ映画を選出していることを思えば、これでバランスが取れたといえますので。

 

尚、私の口座に内調からの金銭は鐚一文振り込まれていません。おかしい、こんなことは許されない。

 

 

 

 

 

 

 

『麒麟がくる』第九話『信長の失敗』感想(ネタバレ有)

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先々週の記事でも触れたCOVID-19を巡る騒動。世間では感染リスクを回避するためのイベント中止に起因する経済活動の不活性化が危惧されているようですが、

 

門脇麦vs川口春奈に木村文乃が参戦 NHK大河「麒麟がくる」女の三つ巴バトル勃発

 

こんな固有名詞を入れ替えれば何にでも使えるレベルの脳味噌の代わりに馬糞が詰まったアホの書く記事で原稿料を貰える連中がいるのですから、日本の経済はまだまだ大丈夫でしょう、知らんけど。しかし、この記事は本当に凄いね。仮に事実としても何一つ有意義な情報はないからね。マスコミやジャーナリズムの知的水準が窺い知れるというものです。いい加減、プロの仕事をしろ。『駄作で金銭を貰ってこそ本当のプロ』というロジックも嫌いじゃありませんが、それはそれ、これはこれ。

生臭い話に発展しそうなネタはここまで。今週は久しぶりの『麒麟がくる』単品記事です。多分、今までで一番面白かった。本作でありがちなモニョッ感が控え目で、ストーリーがリズムよく運んだのが大きい。理由を考えてみると十兵衛の出番が少なかったからかなぁ。主人公がいないほうが話のテンポがいいのはどうかと思いますが。尚、今回の脚本は岩本真耶さん。OPテロップで原作が池端さんじゃなかったので驚きました。次回登板も期待。前何とかさんは出なくていいんで。今回のポイントは5つ。

 

 

1.首無し美女幽霊のロジック

 

菊丸「……広忠さま!」

 

リモコンピッ

 

杉下「冠城君、今のシーンをもう一度見せて下さい」

冠城「右京さん、何か気になることでも?」

杉下「ええ、この死体は確かに広忠さんのものでした。しかし、菊丸さんは首級がない死体を見て、何故、一目で広忠さんと判ったのでしょうか?」

冠城「差料で判断したんじゃあないでしょうか? 実際、直後のシーンで水野信元が菊丸さんの届けた脇差で身元を照合しています」

杉下「ですが、菊丸さんは亡骸の首元を見ながら広忠さんの名前を呼んでいますよ」

冠城「成程。いわれてみれば、不自然ですね」

杉下「犯人の行動にも矛盾があります。本来、首級を奪うのは、それを晒して被害者の死を天下に普く知らしめるためですが、犯行声明は出されていません。逆に殺害を伏せておきたければ、身元の特定に繋がる差料を残すのは道理に合わない。況してや高価な品であれば、殺し掛けの駄賃に頂こうと思うのが人間のサガではないでしょうか」

冠城「相変わらず、重箱の隅を楊枝で突く物言いですね」

杉下「細かいところが気になってしまう、僕の悪い癖」

青木「そんなことよりも僕を殺した犯人をちゃんと突き止めて下さいよ!」

角田「暇か? その犯人な、噂によると若い頃の冠城にそっくりらしいぞ」

青木「お前か、冠城ィ!」

冠城「それは別の大河ドラマの話ですよ!」

 

などという小芝居を思いついてしまった広忠暗殺事件。あーん、青木君が死んだ! 先週ラストに登場したばかりじゃないですか! あんな織田のうつけ如きに殺られるなんて! 登場時間は一昨年の林家正蔵六といい勝負でした。愛之助さんや伊吹御大と対峙してもヒケを取らない青木君が好印象でしたので、本当に残念。正直、二度目の京都パートを全カットしてでも、出番を増やして欲しかった。松平広忠の死因は諸説あり、暗殺説は必ずしも支持層が多い訳ではありませんが、今回は後述するノッブッダのキャラクター造型に効果的な使い方として用いられたと思うので、余計に残念。大河ドラマ『小早川秀秋』で主演キボンヌ。

それはさて置き、今回のシーンで三河の関係者であることが確定した菊丸。スタッフによると『日本人なら大体知っている』レベルの人物らしいので、本名が伏せられているか、或いは鱸丸のように出世して大々的に改名するのか、今後の展開が注目されます。個人的には忍びっぽいのでハットリくん説を支持。尤も、

 

水野信元「今、戦うて勝ち目はあるのか?」

 

などと忍び相手に戦略的判断を問うのはポンコツの極みなので、有力な譜代家臣が世を忍ぶ仮の姿として、身を窶している可能性もアリ。諜報員の仕事は情報の収集であって、分析ではないんやで。

 

 

2.サイコパス(表)

 

帰蝶「信長さまは化け物を見たのですか?」

織田信長「いや、わしは化け物を見られなんだ。されど、わしが池に入ってみせれば皆が安心するであろう。村の者たちは、また商売へ出かけられる。田を作ることが出来る。それが大事じゃ。そう思わぬか?」

 

五世紀も昔に池の水ぜんぶ抜く大作戦を先取りした信長による蛇池神社の逸話。通常、この逸話は(信憑性はさて置き)信長のガッチガチの実証主義の象徴として紹介されることが多いのですが、本作の場合は為政者側の自分が池に入れば、百姓町人も安心するであろうという民心の安定を眼目とした行為に描かれました。これは新しい信長像ですね。飄々としながらも核心を衝く亭主の言葉に帰蝶もほっこり。しかも、干しタコで餌づけされるとか……うーん、これはチョロイン!

この直後に新郎側の友人として新婦に紹介される石礫の名人末吉、竹槍使いの平太、村一番の大食い太助。最初に見た時は何だこのシーン&このメンツはと控え目にいっても意味が判りませんでしたが、直後のアレで直前のアレを思い出すとサイコさん極まる描写で恐怖に震えた。竹槍の名人……あっ(察し

 

 

3.サイコパス(裏)

 

織田信長「父上、この三郎からも目出度き引き出物がございます! この尾張の繁栄には欠かせぬものにございます!」

 

パカッ

 

織田信秀「……そなたらには座を外して貰いたい」

 

親父、蓋をそっ閉じ。

 

自身の婚礼時に親父への返礼として青木君の首級をプレゼントするノッブッダ。これには信秀もドン引き。帰蝶相手のフランクな対応のテンションを維持したまま、満面の笑みで青木君の首級を披露するサイコパス具合に全視聴者が引いた(いい意味で)。玄関先に捕まえた小動物の死体を自慢気に並べる飼い猫感あります。気持ちは判るけど、すげー有難迷惑な奴ね。こういううつけの解釈はいいなぁ。従来の信長の『うつけ設定』は信長が先鋭的なだけで、それについていけない保守的な周囲が古いみたいな描き方が多かったじゃあないですか。いい加減、そのテの描写には飽き飽きしていたので、本作の理屈は通っているがTPOを弁えないノッブッダの人物設定は刺激的でした。前項で触れた化け物探しも、今回の青木君暗殺も、ノッブッダの中では等しく合理的に解釈した結果に過ぎないのでしょう。『わしは父上に褒めてもらえると思って……』という台詞は後年、謀叛を起こされる度に『何で逆らうの? 俺が何か気に障ることをした?』と真顔で答える信長の言動を踏まえたものと思われます。そういうとこやぞ(by荒木・松永・明智)

この場面は敢えて首級の全体像を見せないところがGOODでしたな。ある意味チラリズムの極意。よく見えないからこそ、人は想像力を働かせる。

 

土田御前「この世には見てはならぬものがあるのです。開けてはならぬ箱があるのです」

 

という台詞通り。しかし、前世がたまちゃんの人がいうと説得力があるな。

 

 

4.人質の明暗

 

織田信長「鉄砲は構えが肝心なのじゃ。シカとマトを見よ……放て!」ズギューン

帰蝶「斯様なものとは……楽しゅうございます!」

 

新郎新婦による初めての共同作業、鉄砲入刀でございます。同盟と婚姻を結んだとはいえ、一応は人質扱いの筈の帰蝶ですが、新婚早々、花婿とイチャラブストロベリッている様子は実に微笑ましい。尤も、初めての射撃でトリガーハッピーに目覚めてしまったのか、テンションのあがった帰蝶、まさかの花婿の前で昔の男トーク。十兵衛の話で明らかにテンションがガタ落ちするノッブッダが超可愛い。来週、両名が顔を合わせるシーンは軽く修羅場の匂いがします。さんざん十兵衛をニブチン&朴念仁とコキおろしていた帰蝶ですが、彼女も男心の何たるかが全く判っていませんでした。いとこ同士は似た者同士やね。

一方、もう一人の人質である竹千代君。前田信勝に将棋を指して貰うとか、こちらもそれなりに優遇されている……かと思いきや、

 

竹千代「つまらぬ将棋のお相手をし……わざと負けておるのじゃ」

 

六歳で接待将棋を強いられるという闇の深さを披露。六歳児に将棋で舐めプされる信勝カワイソスですが、もっと可哀想なのは織田家で唯一慕うノッブッダが実父を殺害したことを知らない竹千代君でしょう。帰蝶や竹千代が事の真相を知ったら、どう思うか見ものではありますが、竹千代は兎も角、帰蝶は前夫を実父に毒害されているので、この程度では動じないかも知れません。まぁ、夫に殺害の共犯を何食わぬ顔で紹介されたことは薄気味悪く思うかも知れませんが。むしろ、あまり家康がクローズアップされる&実父の殺害という設定が出てくると、某子孫(自称)による本能寺説に流れそうで視聴者的には怖い。今回の広忠の死みたいにキチンとストーリーとして昇華してくれれば、それでもOKですけれどもね。

 

 

5.紅葉と曲世さんは同じ人

 

妻木煕子「光秀さまは私に仰いました。『大きくなったら十兵衛のお嫁におなり』って」

 

一方、帰蝶ルートが閉ざされた十兵衛には新たに煕子ルートが開通。この取ってつけたルート開通の流れ、ガチでエr……じゃない、ギャルゲー臭いんですけれども。冒頭でも記したように主人公と女性が絡む場面は毎回テンポがもっさりしていて、好きになれない。光秀の場合、生涯側室を持たなかったという点で恋愛要素を盛り込む要素があるのは仕方ないとはいえ、もうちょいクオリティの高い恋愛劇をやって欲しいものです。あと、十兵衛。煕子の言葉を真に受けるなよ。子供の頃の約束なんか、

 

服部平次「今度会うたら、もっとつよめに取るさかい腕磨いて待っとけよ」

 

レベルの勘違いの可能性が高いからな。

 

 

 

 

 

 

 

徒然日記 ~2020/03/24~

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皆さん、こんばんは。先日、レンタルリリースされた『ヴァイオレットエヴァーガーデン』劇場版外伝でエイミーが造花の内職に勤しむシーンを見て、色々と察してしまった与力です。別に女性の魅力を純潔のみに求める訳ではなく、個人的な性癖は真逆といってよいのですが、それはさて置き、こういう細かい暗喩で登場人物の設定を表現する技量に改めて感服致しました。来月公開予定の劇場版本編も楽しみにしております。尚、本作も地元では上映されない模様。劇場版『SHIROBAKO』の時のように夜の高速を飛ばしてレイトショーを見に行くしかないのか。ちなみに劇場版『SHIROBAKO』は単品としては面白かったけれども続編としては別になくてもよかったと思える内容でした。物語前半のガチで世相を反映したしょっぱい展開が洒落にならなさ過ぎ。本編で変な話さんに散々痛い目に遭わされたのにムサニも葛城さんも脇が甘過ぎるんだよなぁ。この辺、色々と書きたいことがありますが、今週は『麒麟がくる』の他に今季『相棒』の最終回の感想もあるのでセーブします。

 

 

1.『麒麟がくる』第十話『ひとりぼっちの若君』感想(ネタバレ有)

 

織田信長「この鉄砲、何処で造られたものか当ててみよ」

明智光秀「…渡来物ではありませぬ。これは恐らく、近江国友村の助太夫や徳左衛門の手になるものと思われます」

 

織田信長と明智光秀、元亀天正の戦国史を主導する二人の名将が鉄砲テイスティング(?)という、翔んだ出会いを果たした今週の『麒麟がくる』。当初は元カレと今カレの遭遇に多少の焦りを禁じ得なかったと思える帰蝶でしたが、細か過ぎて伝わらない鉄砲ヲタトークに花を咲かせる両人に、安堵を通り越して若干ヒキ気味の御様子でした。鑑定中の十兵衛を見る帰蝶の何やってんだコイツという表情が可愛い。あと、十兵衛に見せる『どお? 私の今カレは? ちょっと変わっているけれども素敵な方でしょ?』的なドヤ顔もいちいち可愛い。そして、それを元カレが『何だ、このドヤ顔?』みたいな朴念仁リアクションでスルーしてしまうのが気に障ったのか、

 

帰蝶「コイツは信長さまを『よく判らん変人』とかいっていましたぜ」

 

と本人を前にチクる畜生ぶりが最高に可愛い(勿論、半分は信長に十兵衛への無用の疑いを抱かせないための助け船でしょうけれども)&ガチで慌てる十兵衛も可愛い。

一方、十兵衛を利用して那古野城に潜り込んだのに、元カレにラブラブぶりを当てつける新婚バカップルとか、十兵衛の『釣りはお好きですか?』という何気ない一言でスイッチの入った信長の母親への承認欲求を拗らせたサイコパス告白とか、下手人相手に『うちのパッパ殺してくれてサンキューやで』と宣う六歳児とか、次々とカオス極まる光景に遭遇した菊丸さんのメンタルが心配です。多分、任務中に『ワイは何を見せつけられているんや……?』と幾度も自問自答したことでしょう。主の元に戻っても、

 

水野信元「尾張のうつけは何をしておった?」

菊丸「いや、鉄砲テイスティングを……」

水野信元「は?」

菊丸「信長は母親への愛を捨てた聖帝」

水野信元「はあ?」

菊丸「あと、竹千代さまは広忠さまの死にガッツポーズでした」

水野信元「お前、ふざけているのか?」

 

くらいしか報告出来ないかも知れません。まさに骨折り損のくたびれ儲け。全く、那古野城は変人の巣窟だぜ。手ずから広忠を殺しておきながら、いけしゃあしゃあと、

 

織田信長「竹千代殿は三河の主となる若君、それを今川に渡すなど尾張の命運に関わりまする! 兄上は戦下手ゆえ捕らえられたのじゃ! 自業自得ではありませんか!」

 

と宣い、兄弟をも損得で斬り捨てる信長の発想は余裕でサイコパス係数オーバー300でしょう。母親相手に拗らせた承認欲求を領民への代償行為で発散するとか闇が深過ぎる……しかし、それよりも闇が深いのは竹千代君ですよ。先述の『うちのパッパ殺してくれてサンキューやで』発言に続いて、信長が多少の良心の呵責に耐えかねている今川との人質交換の申し出にも、

 

松平竹千代「今川は敵です。何れ討つべきと思うております。しかし、その敵の顔を見たことがありませぬ。懐に入り、見てみたいと思います。敵を討つには敵を知れと申します。信長さまがお迷いなら、私はどちらでも構いませぬ」

 

という完璧な返答で応じていました。先週の接待将棋の件といい、竹千代君の年齢に似合わぬ覚悟のガンギマリぶりが半端ない。バイツァ・ダスト4周目の川尻早人といい勝負です。既に人生を100回くらいループして、最善手を選択しているとしか思えません。まぁ、冗談は兎も角、戦国を生きる人々が如何に今日的な価値観とかけ離れているかを表現する方法として、サイコパス信長や無限ループしていそうな思考の竹千代というブッ飛んだキャラクター設定は好きです。

逆に前半の駒ちゃんは悪い意味でブッ飛び過ぎかなぁ。伊呂波太夫との『再会』は作中で事前に殆ど情報が出ていなかったので、駒ちゃんが唐突にボリショイサーカスをやらかした時は、冗談抜きで俺は何処かで一週分放送を見逃したのかと本気で心配になりました。伊呂波太夫といい、伊平次といい、視聴者に開示されていない設定を前提に話を進行するのはやめて欲しい。ひょっとしたら、再収録&再編集のシワ寄せが事前の情報開示の欠落という形で出ているのかも知れませんが、そこは視聴者には関わりのないことなので。

 

 

2.『相棒season18』最終回『ディープフェイク・エクスペリメント』感想(ネタバレ有)

 

杉下右京「僕は目的が手段を正当化するとは思いません! 今も昔も! 断じてそんな不正はしませんよ!」

 

いちいち数えあげるのも馬鹿らしくなる程の違法検挙・おとり捜査・越権行為の常習犯である杉下の口から飛び出したトンデモ発言。

 

 

この画像レベルの説得力のない発言に全俺の腹筋が崩壊した。勿論、杉下本人は『ち、違う! これは不正ではなく、真実の追及の捜査じゃ……』と宣うでしょうが、杉下、嘘をつけと反論したくなるのは私一人ではないでしょう。一年前の最終回SPで令状もなしに『楽園の扉』に潜入して、他人のメールを勝手に覗いた挙句、それを見咎められるや、

 

杉下右京「思想をお持ちになるのは自由です。ですが、その目的を達成するために罪を犯そうとしているのなら、それは大きな間違いですよ」

 

と開き直っていた頃から、まるで成長していない。冠城君も『推理力減退症候群』とかいう怪しげな病気を心配するよりも、他にもっと直截な……以前に米沢さんが口にしかけた南井と同じ症状を疑ったほうが建設的だと思うのですが。まぁ、その冠城君も裁判官を通じて捜査妨害をする&ヤクザを使って一般人を脅す&被疑者の四阿を破壊する際に上司の辞職を勝手に賭けるといった大概なキャラクターなので、杉下を心配&糾弾したところでお前が言うなと口を封じられてしまうでしょう。結論。現時点の特命係で一番マトモなのは青木君。厳密にはサイバー課ですが、形式上は兎も角、彼をサイバー課と見做しているのは青木君本人しかいないからね、仕方ないね。

さて、今季の最終回SP。見分けのつかないフェイク映像というネタは以前もやった記憶がありますが、今回はサイバー課の青木君を噛ませることで、より進化したバージョンになったと思います。また、青木君を筆頭にメインキャラクター全員に相応の見せ場があったのも嬉しい。杉下の復調(?)を知った俺たちのテルオの満面の笑みは勿論、今回は設定のみの登場とはいえ、神戸君が杉下を気遣っていたのもGOOD。前回の推理力減退症候群を一番近くで見ていたのは神戸君でしたからね。杉下も定年近いし、神戸&冠城&青木の三人で新特命係結成すればいいんじゃね? 神戸と冠城は仲良さそうだしさ。

一方、サブキャラクター全般には厳しい内容。特に今後のVIPキャラと目されていた桂川さんの頓死には本気で驚いた。あーん、チベスナが死んだ! しかも、犯行の回想シーンでは目玉焼きを失敗した時よりも情けない表情で亡くなったうえ、死後に尼さん萌えという性癖まで暴露されてしまうとか、全体的にチベスナにキツく当たり過ぎじゃあありませんかね。それと三代目花の里の女将の人選。そのポジションには笛吹悦子に開けておいて欲しかった。火サスファンとしては地方記者立花陽介夫妻の復活が嬉しくない訳はないのですが……刑事部長が足繁く通う店になりそう。

あと、物語としては楽しめましたが、犯人や犯罪の構図がすぐに判ってしまいました。まぁ、マクロな事件の起因がミクロな動機(或いはその逆)というのは『相棒』の王道パターンとはいえ、今回は容疑者候補が少な過ぎた。あれで准教授を疑うなというのが無理な話です。ディープフェイクの設定はそのままで、殺人の犯人は冒頭に事情聴取された秘書とかでもよかったんじゃあないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麒麟がくる』第十一話『将軍の涙』感想(ネタバレ有)

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『東京五輪、21年7月23日開幕で4者合意』

 

開催決定時の記事で『オリンピックは常にギリシャで開催するべきと思いつつも、決まったからには大過なく終わってくれることを願う』と書いた記憶がありますが、流石に今回の事態は想定出来ませんでした(他の可能性は幾らでも思いつきましたが)。まぁ、今回のラストストローは仮に他の要素で万全を期していたとしても延期は免れ得ない事案なので、順当な判断と思いますが、後世の歴史書でエンブレムや競技場コンベやマラソンコース移転やボランティアの遣り甲斐搾取や酷暑対策や海浜公園の水質といった諸々の問題が、全て『疫病の猖獗』の一言で上書きされやしないか些か不安。アレらは単品でも充分ヤバイ案件だからな。

しかし、何よりも想定出来なかったのは私自身がオリンピックの延期を残念に思っていることでしょうか。正直、開催決定時の記事を書いた頃の私は『今更、東京でオリンピックといわれてもねぇ……』という心境であり、今も同じように考えてはいますが、それでも、定められた日時と決戦の場にコンディションとスケジュールを合わせてきたアスリートや関係各位の胸中は察するに余りあります。この辺、当時の私は理屈では判っていても、感情面ではイマイチ理解出来ずにいた部分でしたが、昨年の『いだてん』視聴以降、ぼんやりと察せられるようになりました。本当に『いだてん』から受けた影響は大きい。オリンピックの魅力も欠点も美談も醜聞も理想も現実も余さず描き切った作品でした。現時点では大会と異なり、再放送予定の順延はなさそうなので、是非、一人でも多くの方に御覧頂きたい。こういう状況であるからこそ、色々と胸に刺さるシーンもありますので。でも、アヘアヘ金欠ウホウホ借金おじさんの退場回は背筋が凍りつきそう……そこまで現実とリンクしなくていいから、マジで。あ、ちなみに前日からは『太平記』の再放送も始まるよ!

 

さて、ここからは現役大河の『麒麟がくる』の感想記事。ここ最近、ジワジワと面白くなってきて地味に嬉しい。やはり、序盤のモタつきやもっさり感は再収録と再編集のシワ寄せが原因であったのでしょうか。物語のテンポがよくなったのか、視聴している側が独特のリズムに慣れて来たのか……とはいえ、作中の時間軸は今週で漸く天文十八年から十九年に移行するスローペース。第一クールも終わりが近いのに全体の尺は大丈夫なのか? 本当に本能寺の変まで辿り着くのか? これは極論だがね……延期になったオリンピックの放送枠を丸ごと『麒麟がくる』に使ってみたらどうだろう? そりゃあ、簡単にはいかない! 主役級の出演陣のスケジュールを押さえるだけでも一苦労だ! だが! 先代帰蝶の一件で潰れた二話分くらいは何とか捻り出せるんじゃあないかなあ? 来年の『青天を衝け』こそ、3クールくらいで大丈夫でしょうし(個人の感想です)。そんな今回のポイントは4つ。

 

 

1.ジイと若君

 

織田信秀「信広は無傷であったそうじゃのう」

平手政秀「戦をし、捕らえられたお方とは思えぬほどカスリ傷一つなく……」

 

今週も織田disが止まらない平手のジイの毒舌タイム。コイツ、本当は織田家のことが嫌いなんじゃあないかと思えるレベルですが、周囲の人間が主君に言いにくいことをズケズケと物申す側近は宝珠よりも貴重な存在であるのは間違いありません。現時点では将軍の役に立っていない室町幕府の面々や、徒党を組んでサボタージュするしか反抗の手段を持たない美濃の家臣団よりも、有能で誠実な人物といえるでしょう。やったね、平手のジイ。新しい人物像をGETだよ。

しかし、そんな平手のジイの健闘をも翳ませたのが目下101回目の人生ループにあるとしか思えない成熟ぶりの松平竹千代君(7)。『美しい国づくり』とか『この駿府でもよい夢を見るがよい』とか甘言を弄して、自分を丸め込もうとする義元&雪斎を見る竹千代君の醒めた視線が末恐ろしいことこのうえない。表立って反抗するでもなく、コイツらは織田のクソザコナメクジボンボンよりも手強そうだなとか冷静に分析している感じです。こんな七歳児おらんやろ。駿府への道中で郷里に立ち寄った時も、

 

松平竹千代「岡崎か……何もかも皆、懐かしい……」

 

納谷悟朗ヴォイスで呟いていそう。

 

 

2.吉良さんブチギレ案件

 

稲葉良通「盟約を結んだ以上、織田から頼まれれば、共に今川と戦わねばならんのです。そのおつもりがあるのかどうかを伺いたいのじゃ」

斉藤道三「わしはそのつもりであるが……戦は一人では出来ん。むしろ、皆に聞きたい、各々方は今川と戦う覚悟はあるのか?」

 

質問を質問で返す詭弁家の常套手段で家臣を丸め込もうとしたものの、嫡子(仮)を筆頭に参加者から総スカンを食らって退散したモックン道三。その程度の詭弁では竹千代君でさえ騙せそうにありません。残念。第二話の伊右衛門茶事件で恐ろしい謀略家としてのイメージを確立したかに見えた道三ですが、その貯金は既に使い果たした感があります。底が浅い訳ではありませんが、意外と策を持たないケースが多い。まぁ、その分、愛嬌のある憎めないキャラクター像が形成されましたね。『真田丸』のスズムシに似てきたな。智謀が高い割に部下とのコミュニケーションスキルが致命的に低い。尾張が今川に併呑されたら、次の標的は美濃であると危機感を煽ることで『いつ戦うの? 今でしょ!』と諸将の発奮を促そうとしましたが、実際に美濃に攻め込まれたのであれば別として、織田と今川の戦争に将来の危機感を覚えるのは難しい模様。ケツに火がつかないとやる気スイッチが入らないのは今も昔も同じですね。況してや、尾張との同盟は国防の必要性以上に『海が欲しい』という道三の個人的欲求に起因している訳で、指導者の私心が透けて見える政策に部下がついてこないのも道理です。

 

 

3.多分、2クール保たない

 

明智光秀(小声で)ケチが!」

 

可愛い可愛い超可愛い。

 

道三の外交失敗(?)の尻拭いに尾張に送り込まれ、美濃の援軍をアテにしていた平手のジイからは駒ちゃん譲りのゴミを見る目で睨まれ、人前でイチャラブストロベリッた挙句に『ショーグンに仲裁をお願いすればいいじゃない』と無茶振りするバカップルの頼みを主君に相談するも金ねンだわの一言で無下にされてしまい、思わず小声で罵ってしまう十兵衛ちゃん不憫可愛い。

 

斉藤道三「案ずるな。いざとなれば帰蝶が逃げ出せるように手は打ってみせる(キリッ

 

を聞いた際の十兵衛の信じられないウソつきを見る目が最高ですね。『手は打ってある』のではなく『手は打ってみせる』というのがミソ。『やったけれどもダメでした』で済まそう感が見え見えのバレバレです。そのうえ、信頼する友人に縋ろうとしたら、

 

斉藤義龍「ん? 今、何でもするっていったよね?」

 

と意味深に言葉尻を捕らえられて、花粉症と思しき頼芸の屋敷に連れ込まれてしまうとか……男同士、頼芸の屋敷、守護職簒奪の噂……何も起きない筈がなく、道三への叛乱計画にくんずほぐれつの片棒担ぎを強いられるとか。十兵衛のストレス半端ないやろ。冒頭でも述べたように現時点で第一クール&天文十九年なので、この先3クール&本能寺まで@30年以上ある筈ですが、現時点で既に、

 

十兵衛がストレスマッハで今にもキチゲ解放しそう

 

で怖い。この作品の十兵衛は本当に小栗栖に到達できるのかという根源的な不安も湧いてきました。本能寺以前に比叡山辺りで延暦寺諸共信長を焼き殺しそう。このうえ、朝倉や義昭や秀吉が控えているのですから、そら、毛も抜けるわ。今までハセヒロにキンカン頭をやらせていいものか判断がつきかねていましたが、本作の十兵衛の描かれ方を見るとストレスで毛根が死なないほうがどうかしているレベルなので納得し始めています。最終回付近では中園参事官と見分けがつかなくなっていそう(個人の感想です)

 

 

4.綺麗は弱い、汚いは強い

 

足利義輝「この世に誰も見たことのない『麒麟』という生き物がいる。穏やかな世を作れる者だけが連れてこられる不思議な生き物だという。わしは、その麒麟をまだ連れて来ることが出来ぬ……無念じゃ」

 

数週前の放送で駒ちゃんが一人旅したとは思えないレベルに治安の悪化した都から脱出してきた剣豪将軍。いや、逆に考えるんだ。駒ちゃんはボリショイサーカス級の体術の達人だから安全に一人旅が出来たと考えるんだ。そう考えると前回の唐突に過ぎた伊呂波太夫との再会も、一種のエクスキューズとして成立するように思えます。思えない?

それはさて置き、今週のメインシーンと思しき十兵衛と剣豪将軍の『三度目』の対面。まさか、義輝がタイトル回収の役割を担うとは思いませんでした。無名の主人公と当時のVIPとの対面という、ともすると御都合主義になりがちなシチュエーションも、都落ちの憂き目にある落魄の将軍が相手であれば、決して不自然ではない。よく練られたシナリオだと思いました。そして、上記の義輝の台詞。言っていることは非常に美しく、且つ、彼を支える家臣たちも健気で凛々しいのですが、それがなかなかにクセのあるシーンですね。義輝や家臣団が美しく見えるのは、現時点の彼らには将軍の他に守るべきものがないからです。家格とか税収とか利権とか銭金とか国境とか、他人と争うものを殆ど失っている。そうであるからこそ、彼らの言動は美しく、現実離れしている。逆に尾張パートや美濃パートに代表される十兵衛のストレスがマッハになるシーンは、彼らには守るべき具体的なものがあるからでしょう。将軍家は弱いから美しい。織田も斎藤も今川も醜いから強い。現在の十兵衛は現実の辛さに目を背けて、実体のない理想に傾倒する危うい状態にあるといえます。

それで、この構図は何処かで見たことがあると思ったら、それこそ『太平記』序盤の足利高氏の思考ルーチンに近いですね。あの作品の高氏も北条家への宮仕えにウンザリしていた頃に都で偶然拝謁した後醍醐天皇の姿に美を感じてしまい、その後の行動原理を確立してしまうのですが、ひょっとすると『麒麟がくる』も『太平記』をベースにしてくるのかも知れません。勿論、完全な踏襲ではなく、何らかの変化はかけてくるでしょうけれども、そう考えると『太平記』の再放送との並行視聴は思っていた以上にスリリングなものになるのではないでしょうか。

尚、多少のネタバレを含みますが、上記の足利尊氏のラストシーンは『ワイが美しいと思っていたものは全部幻で本当は何もかも醜かったんじゃったんじゃあ! でも、それも込み込みでワイの人生なんじゃあ!』という凄まじいもの。ホント、是非、オススメします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麒麟がくる』第十二話『十兵衛の嫁』&『太平記』第一話『父と子』簡易感想(ネタバレ有)

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「大河ドラマと連続テレビ小説の収録を当面見合わせ NHK」

 

与力「これは極論だがね……仮に『麒麟がくる』の放送が一時休止になった場合、日曜早朝の『太平記』を通常の大河枠で流したらどうだろう? あと、これも極論だがね……未収録分の『麒麟がくる』は分割2クールで二年か三年越しで放送したらどうだろう? そりゃあ、簡単にはいかない! 出演陣のスケジュールを押さえるだけでも一苦労だ! だが! 『坂の上の雲』という先例もあるし、案外、視聴者も納得してくれるんじゃあないかな?」

 

『帰蝶ショック』に伴う撮り直しに続き、今回の収録見合わせ。今年の大河ドラマはスタッフ、キャストの方々の負担が半端ないなぁ。特にハセヒロをはじめ、俳優さんは役作りのテンションを維持するのが大変そう。でも、序盤のモタつきが嘘のように面白くなってきているので、時間は掛かっても何とか完パケして欲しい。正直、

 

草彅剛が2021年大河「青天を衝け」に出演 解けはじめたジャニーズの呪縛

 

とか決めている余力があったら、現在進行形の作品に集中してくれませんかねぇ……というか、追加キャストに角野卓造と近藤春菜の名前がない時点で、私の興味は殆ど失われました。これまた極論だがね……もう来年の大河企画は最初から【なかったこと】にして、今年と再来年に集中したらどうだろう? あ、でも、草彅君には徳川家定か一橋慶喜を演じて欲しい。すげぇ似合いそう。そんな訳で拙ブログの運営にも拘わる岐路に立たされている大河ドラマですが、こちらは当面の間、特に方向性も変えずにいこうと思います。

まずは『麒麟がくる』の感想から。尚、今週は短め。ポイントは以下の3つ。

 

 

1.偶然的配慮?

 

煕子さんの疱瘡エピソードがなかったのは愛妻家光秀のキャラのゴリ押しにならなかったので、逆によかった。ヘタに一話丸々費やされたりしやしないかとヒヤヒヤしていましたので。まぁ、この先に似たような話として取りあげられるかも知れませんが。加えて、時節柄ヤバイネタなので、色々な意味で無難&正解。

 

 

2.【悲報】東庵先生、博打で全財産をスる【残当】

 

伊呂波太夫「お前が他人の金で勝つ訳ねぇんだよ!」

東庵「取るっていってないだろ! 『倍にして返してやる』っていっているだろ!」

四国でクリームパン食ったろ尾張で十貫スッたろ、お前!」

東庵「貸しなさい貸しなさい! ワシが全部倍にして返してあげるから! ワシは倍返しの東庵だ!」

 

京の中の懲りない面々。正直、東庵といい、駒ちゃんといい、京都庶民パートは制作陣も使い方を持て余している感があります。話に絡ませようとする度に東庵センセに博打でスらせるのは如何なものか。ラストシーンの信秀臨終のシーンも、ヘタをすると東庵センセが犯人に仕立てあげられる危険もあったのでは? まぁ、東庵センセなら、死人に口なしをいいことに『末期の双六でワシが百貫勝った!』とないことないこと吹聴して金子をせしめる可能性もアリ。

 

 

3.〇右衛門VS〇鷹

 

毒を塗布した鷹の爪による道三暗殺未遂事件。(凶器に)選ばれたのは鷹でした。まぁ、日頃の行いが行いなので、道三による自作自演の可能性も捨てきれません。鷹=頼芸という美濃衆の間で普遍的な印象を逆手に取り、ヴィジュアルのインパクトで守護の悪行をアピールしようとする狙いと思われます。勿論、ガチで頼芸の陰謀の線も捨てきれませんが、その場合は埋伏の毒に等しい義龍に事前の連絡がある筈なので、やはり、道三によるマッチポンプと考えてよいでしょう。物証はないが、心証は確実です。そして、道三の場合は心証が常に正しいからね、仕方ないね。

 

 

さて、冒頭でも触れた&再放送が始まった、

 

 

『独眼竜政宗』や『黄金の日日』を凌ぐマイベスト大河とはいえ、何せ最後に通しで見たのが十年前なので、今年の『麒麟がくる』の序盤のモタつきも相俟って、ひょっとすると私の脳内で懐古的補正が入っているかもとの不安はあったのですが、そんなことはまったくないレベルで楽しめました。

ただ、年月が経過しているので、見る側として注目する箇所が変わっていますね。例えば、OPのアーアアーアーアーアーアーアアーのコーラスがソレスタルビーイングのテーマに聞こえるというどうでもいいことはさて置き、

 

高氏が思っていた以上に残念キャラ

 

として描かれていたのが印象に残りました。真田高氏になって初めてのシーンで、六平さん(キャラ名は忘れた)に『蹴鞠なんぞ、何処が面白いのか』といわれた高氏が『いや、昔、天皇に仕える鞠の名手の大納言がいてね…(中略)…大納言が鞠を蹴りあげると…(中略)…藤原重通っていうんですけど』というたいしたオチもないトリビアを延々と語るとか、本当に残念なイケメン。六平さんは蹴鞠の話がしたいんじゃねーよ! お前と仕事に関する愚痴を垂らしたいんだよ! それなのに頼まれてもいないヲタトークをやらかしてしまう高氏さん、マジKYの極み。直後の闘犬のシーンも私の中では北条高時の無邪気な暴君ぶりが記憶に残っていましたが、今回見返すと高氏の奴、高時の視界に入るところで堂々とアクビしとるやんけ! こんなもん現代の会社でも一発OUTやろ! どう考えても高氏が悪い。まぁ、高氏は母親の郷里の京都周辺で育っている(諸説あります)うえ、異母兄の高義が早逝していなければ、そもそも家督を継ぐ立場になかったので、坂東武者や鎌倉幕府の習慣に疎いのは仕方ないのかも知れませんが、作中の高氏は足利育ちで高義の存在も完全スルーなので、キャラクター設定がチグハグになってしまっているところがあります。逆にいうと、それにも拘わらず、視聴者を主人公に感情移入させてしまう俳優・脚本・演出の凄味といえるでしょう。高時や円喜のヒールぶり、真田広之氏によるスタントなしの闘犬シーンは圧巻の一言。

それでも、残念な描写は徹底しているのか、清子さんに赤橋登子との婚儀を聞かされた時には『くっ、北条の姫君などと結婚しない!』と宣言しておきながら、相手の顔を見た途端に『やっぱり、沢口靖子の魅力には勝てなかったよ……』と対魔忍並みの即落ちぶりを披露。ダメだコイツ、早く何とかしないと。ちなみに第一話で一番印象に残ったのは清子さんとイチャイチャ御菓子を頬張るパパ氏さん。このシーン、パパ氏は烏帽子を脱いで、髷が丸出しなのですが、直前の闘犬シーンでも象徴的に描かれていたように、当時の髷は容易に他人に見せるものではありません。公衆の面前で髷を見られるのは極端にいうとを見られるくらいに恥ずかしいことなのです。つまり、高氏が烏帽子を外して寛ぐパパ氏と清子の部屋に入ったシーンは両親の【アーン♪】な現場を目の当たりにしたことの暗喩……と思うのは穿ち過ぎか。

尤も、パパ氏さんも単なるマイホームパパや右馬介を助けた善人ではなく、結構ドス黒い場面もちゃんとあります。中盤で美濃の北条領が『悪党』に襲撃されて、巻き添えで石の母親が殺されるシーン。これ、全然解説してくれていないんですけれども、要するに件の襲撃は足利の領地を北条家の『悪党』に荒らされたことに対するパパ氏の御礼参りなんですね。

 

「侍の本懐とはナメられたら殺す!」 

 

という『バンデッド』の価値観が既に描かれていたのですが、作中では何の説明もないので、初見時は全く意味が判らなかった。何度か見返すうちに『パパ氏こっわ!』と思ったものです。一応、主人公の父親なので、円喜や高時のような露骨な悪人描写は控え目ですが、怖い&悪い面も描いてくれています。こんなの初見の学生に気づけというのが無理な話やで。しかし、第一話で霜月騒動~吉見義世の死&高氏誕生~義貞&右馬介との出会い~真田高氏登場と時間にして40年も経過してしまう大河ドラマも珍しい。この間だけで普通の大河ドラマ一本撮れそうです。実に贅沢なことをしてやがる。

そんな訳で当初の予想とは違った角度で楽しめた『太平記』の再放送第一話。この先一年間が楽しみです。祈祷する女性のおっぱいも見られたし。

 

 

 

 

 

 


『麒麟がくる』第十三話『帰蝶のはかりごと』&『太平記』第二話『芽生え』簡易感想(ネタバレ有)

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斎藤道三「言葉は刃物ぞ、気をつけて使え」

 

マムシの口から至極マトモな警鐘が飛び出した今週の『麒麟がくる』。疫病と共にデマや生の感情丸出しの発言が猖獗する昨今、全人類が胸に刻むべき言葉であると首肯する反面、マムシに正論を言われるようでは色々とマズイのではないかと思えなくもありません。今週の記事も『麒麟がくる』&『太平記』の感想二本立て。どっちも面白かったから配分に困った結果、両方共簡易感想という画に描いたような虻蜂取らずの構図。今後暫く、この形式が続くかもです。

 

 

1.『麒麟がくる』第十三話『帰蝶のはかりごと』簡易感想(ネタバレ有)

 

「放っておけば、また元に戻ります」

 

母親から形状記憶合金みたいな扱いをされる十兵衛。確かに十兵衛は才幹があるので、問題を抱えていても何時の間にか自力で何とかしてしまうから、周囲の人間としては寄り添い甲斐がないのかも知れませんが、悩みは解決してもストレス自体は残ることを失念しているようです。他人に悩みを相談出来ない自爆型が、金属疲労の果てにキチゲを解放した時の恐ろしさを御存知ない模様。本来、こうした悩みに寄り添うのは武将の細君の役割ですが、煕子さんは嫁いできたばかりで日も浅く、イマイチ十兵衛の扱いに慣れていません。今後の成長に期待です。まぁ、帰蝶のように十兵衛を掌で自在に踊らせるようになっても困りものですが。

さて、今週の『麒麟がくる』は藤吉郎の初登場や、道三による殺鷹返しや、腹を割って話そうとして失敗した平手のジイのまさかのナレ死など、色々と見せ場はあったものの、最終的には道三・義龍・帰蝶の親子の相剋がメインテーマと評してよいでしょう。まずは義龍。コイツは実の父親への反抗心を拗らせた果てに自らの出自を記憶改竄した厨二病気質のキャラクタのようですね。ただ、本人も心の奥底では道三が実父であることは百も承知していると思われます。頼芸が追放される事態に至っても、頼芸と通じていた義龍本人には何のお咎めもないのですから、これは親子ゆえの温情措置としか思えない。義龍もそれを自覚しているから、強気に出られない&道三もそうした義龍の神経を逆撫でする温情で、敢えて自身との血の繋がりを誇示していると思われます。何という神的DV構造。この血の呪縛を如何に断ち切るかが、今後の義龍の課題と思われます。

一方、もう一人の子供である帰蝶さん。こちらは十兵衛に対する、

 

斎藤道三「金銭がかかるだのヘチマだの申す話ならさっさと帰れ。そうでなければ聞こう」

 

帰蝶「浅ましき話なら此処で聞く。面白き話なら座ってもよい」

 

という両名の台詞からも判るように、義龍以上に似た者同士の親子ですが、自分は土岐の血脈という記憶改竄で現実逃避している義龍と異なり、帰蝶は自分が前夫を殺した父親の娘という現実を受け入れたうえで今の亭主を同じ目に遭わせないためにはどうするべきかという建設的な思考に基づいて行動していました。十兵衛に『鉄砲部隊を作る!』と景気のいいことをブチあげておきながら、肝心の予算は一向に出さないキングオブ吝嗇の父親を出し抜き、信長の行列を美々しい鉄砲部隊で飾ることで夫の身の安全を保障するとか、帰蝶さんマジイケメン。金銭は使うべき時に一気に使う。この点で帰蝶は立派に父親越えを果たしたといえるでしょう。伊呂波太夫に砂金ドンするシーンはエリカ様向けの当て書きっぽかったですが、川口帰蝶も普段のイメージとのギャップが逆に好印象でしたね。

あと、細かい箇所では道三が信長との会見に相手の面を知っている十兵衛を同伴させるのはストーリーの都合と並列させたリアリティがありました。影武者徳川家康に騙された井伊家も見習え。あんなもん『コンフィデンスマンJP』レベルの詐欺やぞ。流石は美濃のマムシ……といいたいところですが、

 

斎藤道三「大事な娘を『おおうつけ』と噂される男に預けてしもうた親の気持ちを察して貰いたい」

明智光安「ははっ、御心中まことに……」

明智光秀(え? 叔父上は何で同意しているの?)

 

斎藤道三「共に茶を飲む時、その茶に毒が入っているやもしれぬ」

明智光秀(信じられないアホを見る顔)

 

斎藤道三「大事な娘の婿殿に誰が左様な悪さをするものか」

全視聴者(信じられないアホを見る顔)

 

うーん、この戯言の三段撃ち。

 

 

2.『太平記』第二話『芽生え』簡易感想(ネタバレ有)

 

足利直義「兄上が犬合わせの場で笑い者にされたと申すはまことか?」

 

ブチギレ腹黒い弟の直義。基本的に文治系に属する腹黒い弟の直義ですが、そんな彼でも『ナメられたら殺す』という当時の武家の価値観にどっぷり首まで浸かっている模様。全く中世の日本は修羅の国だぜ。尤も、高氏が犬合わせの場で笑い者にされたのは『執権殿の目つく場所で大アクビをかました』のが原因な訳で、理由を聞いたら、政において秩序と理非曲直を重んずる腹黒い弟の直義は『それじゃあ、しょーがねーなー』と納得しそうでもあります。少なくとも、後年の土岐頼遠への処置を見るかぎり、高氏の取った行動も五十歩百歩だと思うのですが……ともあれ、リアタイ視聴時には予備知識がなかったので気にならなかった腹黒い弟の直義のキャラクター設定ですが、放送当時は専門家からも苦言を呈されていたそうです。確かにオーベルシュタインと思ったらビッテンフェルトが出てきたのですから、気持ちは判る。パパ氏に『出ていけ!』と一喝された直後の、

 

足利直義「兄上は戦下手じゃ。攻める時は攻める。退く時は退く。戦には仕掛け時というものがござるのじゃ」

 

の件も、当代随一の軍略の天才肌(≠天才)である高氏に、百戦連敗の腹黒い弟の直義が用兵を説くとか、凄い違和感あるわな。まぁ、腹黒い弟の直義は後年、高氏を一敗地に塗れさせたこともあるので、強ちおかしなシチュエーションではないのかも知れません。尚、天才と天才肌は『訳の判らん勝ち方をする』点は共通していますが、天才肌のほうは『不可解な負け方をする』という特徴があります(by梅ちゃん)

 

さて、今回は鎌倉に嫌気が差した高氏が、パパ氏のイキな計らいで京都に向かうお話。日野俊基や藤夜叉、ましらの石といった物語前半~中盤を彩る重要人物が登場しますが、メインテーマは高氏の人間性の描写でしょう。職場でヲタトークをする相手がおらず、何処か浮いた存在であったり、犬合わせの場で高時にアクビを見咎められて大恥をかかされたりしたものの、明確な反発に繋がらなかった高氏ですが、丸腰の念仏衆が背後から斬られた時には流石に行動に移りました。義憤で動いてこそのヒーロー『オラこんな鎌倉イヤだ』とパパ氏に憤懣をブチ撒ける契機は私憤ではなく、義憤でなくてはなりません。また、そういう為人であるから、長崎円喜に苦情をネジ込まれた際、家中の郎党がこぞって出迎えたのでしょう。あの人数はやり過ぎ感はありますが、高氏が彼らに慕われ、親しまれているのを伝えるための演出と思うことにします。それに引き換え目が合った右馬介に速攻で踵を返される腹黒い弟の直義ェ……人望ないなコイツと一発で判る場面でした。

尤も、旅先で出会った花夜叉一座の興行で、ましらの石相手に『放った矢を掴めるか否か』の賭けでガチンコ勝負をやらかしてしまう高氏君のKYぶりも健在。いや、如何に遊びでも弓馬の道で武士以外に負けては面目が立たないとはいえ、最初に敗れた武士のように充分にタメを作ってから矢を射るのではなく、悠々とした構えからのクイックモーションを仕掛けるとか、ハナからガチで勝つ気満々やないか! そらあ、観客も白けますよ。挙句に周囲の反応を見て、

 

足利高氏「俺、また何かやっちゃいました?」

 

的なリアクションするのやめろ。お前は素人のたけし軍団相手に本気でホームランかっとばしちゃうヤクルトの大杉か。本当に大人気ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『太平記』第三話『風雲児』感想(ネタバレ有)

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足利高氏「佐々木道誉の屋敷に連れ込まれると、興行に来ていた白拍子が何にも言ってないのに勝手に衣服を脱ぎ始め、

 

『今宵はお守り致すよう仰せつかっておりまする……』

 

そう言った。あなたならどうする……? 最高だった……」

 

前回の冒頭で沢口靖子相手に鼻の下を伸ばしていたと思ったら、今回のラストでりえりえと【アーン♪】とか、ラッキースケベが止まらない高氏君。一見、映画館で刺される前の天狗になっているジョニィのようですが、今回仕込んだ子供に最終回まで苦しめられることを鑑みると一瞬の快楽と引き換えに永遠の絶頂を失ったディアボロに近いポジションかも知れません。ジョースター家よりもラスボスに近い主人公って一体……それでも、好きだった女の子に似ていたから思わずヤッてしまったという原作小説よりはナンボかマシではあります。色々と最低ですね、高氏。

尚、今週の『麒麟がくる』の感想はお休み。テンプレと雰囲気だけで押し切りがちになる聖徳寺会見での信長と道三のシンパシーを、演出と台詞で丁寧に解説してくれたのは好印象でしたが、美芳野の死に関する流れがイマイチ判りにくかったなぁ。MVPは十兵衛。村木砦を鉄砲で攻める織田軍をwktkな表情で見つめる主人公の闇は深い。これは延暦寺をノリノリで燃やしそう。初の『太平記』ピン感想記事のポイントは5つ。

 

 

1.まるで成長していない

 

上杉憲房「そもそも上杉家は式乾門院の蔵人にして、修理大夫重房が建長二年……」

足利高氏「(´Д`)ファー」

 

高氏君、初手から大欠伸。幾ら母親の実家とはいえナメられたら殺すがディフォの鎌倉武士相手に油断し過ぎです。それでなくても、初回で北条高時に大欠伸を見咎められてドエラい目に遭っているのに、何も学習していないのでしょうか。闘犬とはいかなくても、闘鶏用のニワトリをけしかけても文句はいえません。その場合、観客に東庵の御先祖が混じっていそうです。

とはいえ、息苦しい日常を離れて一時のアバンチュールを楽しむ若者にとって、親戚の家柄自慢ほど退屈な話はないのも事実。以前も書いたように高氏は鎌倉ではなく、京の上杉屋敷で育った可能性もあるので、憲房の話は幼少期から耳にミルメシアが出来るレベルで聞かされ続けているのでしょう。そら、欠伸も出ますわ。寧ろ、憲房の目を盗んで粉熟(ふずく)を頬張る右馬介に懐紙を放った高氏のフォローを褒めるべきかも知れません。KYの割に他人のマナー違反には目ざといな、コイツ。

 

 

2.聖水体験

 

一色右馬介「もし、このよき匂いの小箱、何でござるか?」

少年「尿(しと)よ」

一色右馬介「しと……小水? あのお方の?」

足利高氏「」

一色右馬介「若殿、京のおなごも尿はされるのでございますなぁ! アハハハハ!」

 

小箱の中身がオシッコと判明したのに、まるでテンションが落ちない右馬介。これには高氏もドン引きです。右馬介が『オシッコっていうのは、まだ完全に吸収されている訳じゃないから栄養があるんだ』とか『とってもいい匂いがするって言ってごらん? そう言っているとだんだん本当にいい匂いに思えてくるだろう?』とか言い出しそうで怖かった。その直後に米価の高騰を見かねた帝による御救米の様子を見ながら、

 

一色右馬介「闘犬や田楽躍りにうつつを抜かしているようでは北条執権殿も先がありませぬな(キリッ

 

と宣っていますが、如何せん直前まで聖水ネタでハッスルしていたので、イマイチ説得力に欠けます。逆にいうと大地康雄さんの演技のオンオフの切り替えの素晴らしさと評することが出来るかも知れません。

さて、このシーンは高貴な美女の聖水にさえ興奮するおのぼりさん主従というギャグの他にも重要な場面。傍からは美しく見えようとも誰でもオシッコはする。如何なる人間も綺麗なところばかりではない。要するに美しく見えるものは大抵まやかしであるという本作を貫く主題が籠められていると思いました。更に踏み込むと『女性のオシッコさえも美しく思える』=『美しく思えるものは総じてオシッコである』という等式が成立しますね。実際、今週の後醍醐帝も日野さんも判官も匂いたつような美しさがありましたが、後述するように幕府に叛乱計画が露見した途端、高氏を置き去りにしましたので。汚いな流石朝廷汚い。

 

 

3.子猫ちゃん

 

足利高氏「右馬介―!(必死

 

鎌倉からお越しの足利高氏ちゃん、お友だちの一色右馬介ちゃんが六波羅探題でお待ちです。

 

思っていた以上にアッサリと迷子になる高氏君。ポンコツにも程がありますが、それと同等以上に右馬介にも問題があります。この回以降の右馬介はコミカルなシーンが激減して、シリアスな役柄に徹するようになるのですが、或いはパパ氏に『お前がついていながら何をやっていたのか!』とボコボコに折檻された可能性もアリ。

そして、右馬介と逸れた高氏君は遂に運命の帝と御対面。片岡孝夫の圧倒的『帝』感に高氏のみならず、全視聴者がひれ伏しました。しかも、これは第一形態ですからね。髭モジャになってからが片岡後醍醐の本領発揮ですからね。私はあと一回変身を残している。まぁ、この場面は若き高氏が『鎌倉は汚い! 京都は美しい!』という幻想を抱くシーンなので、敢えて後年の後醍醐帝のワイルドな本性は抑え目で清浄な雰囲気を重視したのでしょう。

更に山伏ルックから正装に戻った日野俊基との再会。ここは個人的に大河ドラマの歴史の中でも屈指の名シーン。

 

日野俊基「その者、仔細に及ばず。この日野俊基の友にて候えば、心安き者にて」

 

この声に出して読みたい日本語感!

 

『太平記』は台詞の美しさが光る作品ですよね。『独眼竜政宗』のような修辞重視の台詞や『武田信玄』の文語調の言葉とも違う、何というか柔らかでいて品格のある言い回しが好きです。『太平記』を見たあとは相手を『御辺』や『其処』と呼びたくなる説。

 

 

4.三密でした

 

日野俊基「戯れと思われてもよい。なれど、我らはその詮なき話に生命を賭けている。我らは鎌倉殿を、北条殿を討ちたいのです。帝がここまで思いつめられるには様々な仔細がござる。なれど、その根本は北条殿が己の栄華のために万の民を蔑ろにし、人としての誇りを奪い去ったということです。そのことは足利殿にも心当たりがおありになる筈」

 

帝に拝謁してウッキウキの気分も冷めやらぬうちに、何時の間にか密室に閉じ込められる&倒幕の密謀を告げられる事態にガチで焦る高氏君。憧れの有名人のライブ帰りにスタッフにホイホイついていったら新手のキャッチセールスのカモにされた感があります。しかも、俊基は高氏が犬合わせの場で笑い者にされたことも調べあげており、最早逃れることは出来んぞと言外にプレッシャーを掛けるに留まらず、新田や楠木といった有力者の名を出して、

 

日野俊基「皆、足利が起てば自分たちも起つっていっているんだよな~((/ω・\)チラッ

 

と源氏の棟梁のプライドを煽る煽る。尤も、これは俊基のブラフと考えてよいでしょう。新田には『新田が起てば足利も起つ』と双方の名前を勝手に使って、相手の思考を誘導する意図と思われます。取り調べで『お前の共犯者は全部ゲロった』とカマをかけて、自白を引き出すテクニックに近いと思われます。思えない? そもそも、後醍醐帝が倒幕を志した理由は別に蔑ろにされている万の民のためでも何でもなく、

 

皇統を大覚寺統で独占したい

 

というドチャクソ私欲に塗れた動機なので、このシーンの日野俊基の弁舌は涼やかであればある程に先述した『女性のオシッコさえも美しく思える』=『美しく思えるものは総じてオシッコである』説の補強になり得ると思います。

 

 

5.BASARA

 

佐々木道誉「立花というものは四方いずかたより眺めても見事な姿に作らねばならぬ。それが実に難しい。各々の花が美しゅうても、それはただの花よ。この壺の全ての花が、その全てとして美しゅう見事な姿に形作られねば、立花の甲斐がない。されど、凡俗の某に神仏の作り給うた花が越えられようか……それが面白い! 面白うて、立花はやめられぬ!」

 

みんな大好き、アバンギャルドな佐々木判官登場! 長い大河ドラマの歴史の中でも判官殿以上に主人公の悪友というポジションが似合うキャラクターは存在しないでしょう。私的にも間違いなくベスト10キャラクターに入ります。何というか美味しい役ですよね。好きなキャラクターは他にも沢山いますが、自分に芝居の素質があったら演じてみたいなと思わせる役柄は案外少ない。判官殿はその稀少な例といえるでしょう。

今回の視聴で気になったのは上記の台詞。今までは単純に次に続く『腐った花を切って、美しゅう立て直す時が来ておるのよ』への前フリと思っていましたが、物語終盤の尊氏の『今の世は醜いものばかりじゃ! わしは美しい菩薩が描きたい! 美しい世を作りたい!』と癇癪起こすシーンにも通じるものがあります。どんなに力を尽くそうとも人界に誰もが納得する美しい世を築くことは出来ない。そのことを道誉は既に理解していたのかも知れません。道誉も道誉なりに高氏と同じ苦悩を抱えていたのかも……と今回気づきました。やはり、再放送って大事。

勿論、それは私個人の解釈であり、作中の判官殿は『別に政治への不満とかないッス』と弁解する高氏を『またまたそんなこといっちゃって~高氏君』と自分達の都合で勝手に期待して、ハードルをガンガンあげまくるのが基本形。そのうえ、冒頭で記したように花夜叉によるハニトラを仕掛けた挙句、六波羅探題に倒幕の密謀が漏れたと悟るや、高氏を一人で屋敷に置き去りにするド畜生振りを発揮。前日までチヤホヤしてくれていた人に急に掌をグルングルンと急旋回されたのですから、そら、高氏君も人格歪みますわ。後年の尊氏の『ちょっとアレな性格』はひょっとしたら、こうした判官殿や俊基の掌返しで人間不信に陥った影響かも知れません。

 

 

 

徒然日記 ~2020/04/28~

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うん、まぁ、色々といいたいことはありますが、取り敢えず、

 

TVがずっと『ポポポポポーン♪』でも文句をいわない者だけが『サザエさん』にクレームを入れなさい

 

ってところかな。あとは知らん。触れたくもない。今週の御題は4つ。来週はお休みを頂くかも知れないので、ちょい分量多めです。

 

 

1.『太平記』第四話『帝、ご謀反』感想(ネタバレ有)

 

花夜叉「変な御方だったもの。仰ることが突拍子もなくて、間が抜けていて……でも、笑うと水のような綺麗な目で、こんなに優しい顔があるんだって」

 

一晩褥を共にしただけの少女に『コミュ障なのに顔面偏差値は高かった』と人間性を概ね見透かされてしまった高氏君。本人が耳にしたら相当傷つきそうですが、そんな高氏君にメロメロになってしまった花夜叉さんは、現代風でいうイケメン無罪の走りなのかも知れません。高氏君も判官殿の屋敷に置き去りにされたことや、六波羅探題でコッテリと絞られたことよりも、花夜叉との一夜のアバンチュールが忘れられない模様。ある意味お似合いのカップルですね。尤も、前回の『美しいものは概ねオシッコ』理論に基づくと、花夜叉のいう『綺麗な目』で『優しい顔』をした高氏もオシッコというロジックが成立しなくもありません。こののち、高氏が花夜叉&息子にやらかすことはガチで女の敵としかいえませんので。

尤も、これらの描写は単なる高氏disネタではなく、寧ろ、彼の美点を表しているともいえます。上記のように先週のラストで六波羅の軍勢に囲まれた判官殿の屋敷に置き去りにされるという生命に拘わる放置プレイを食らった高氏君ですが、その件で日野俊基や佐々木判官に対する怨み言は一切口にしていません。日野俊基によるオルグのテクニックが素晴らしかった&それに引っ掛かる高氏が単純過ぎたというのもありますが、パパ氏が同じ目に遭ったら判官殿の領地に悪党を千人単位で送り込むのは火を見るよりも明らかです。しかし、高氏は他人の悪意に鈍感というか、受けた仕打ちを根に持たないんですね。

 

「生まれつき慈悲深く、他人を恨むということを知らず、多くの仇敵すら許し、しかも彼らに我が子のように接する」

 

と『梅松論』で評されるように、この寛容の精神がナメられたら殺すが当たり前の時代で尊氏が士心を得た大きな要因でした。上記のシーンもひょっとしたら、そうした高氏の人間性を描いたのかも知れません。

更に完全に屋敷を囲まれていた筈なのに、いつの間にか脱出している御都合シーンも、高氏が基本的にハイスペックであることを表現していると思います。まぁ、本作は他にも足利の軍勢に囲まれたと思ったら次回の冒頭では切り抜けていたとか、尊氏VS義貞の一騎討ちと思ったら次回の冒頭は尊氏の写仏のシーンから始まるとか、このテのスッ飛ばしが結構見られるのですが。全体的なスペックが高い割に結構残念な面がある点で、足利尊氏と『太平記』という作品は似ているかも知れません。高氏君も六波羅探題での取り調べ時に、

 

足利高氏「足利高氏、それほどのうつけではござらん!」

 

とドヤ顔で主張していましたね。うん、お前は確かにうつけではない。間が抜けているだけでな。人間、誰でも長所と欠点があるものだ。尤も、世の中には半分腐った玉ねぎは全部腐った玉ねぎと同じというロジックもありますが。

 

 

2. 『麒麟がくる』第十五話『道三、わが父に非ず』感想(ネタバレ有)

 

明智光秀「恐れながら、かかる混乱は殿がハッキリとのちの道筋をつけずに家督をお譲りになられたからと存じます。皆、戸惑うているのです。私がお聞きしたいのは、殿が信長様との盟約をどうなさるおつもりだったのか。高政様のお考えをお認めになり、全てを委ねられたのか? そうではなく、高政様の御様子次第で再び御自分が……」

斎藤道三「それはない! 道筋をつけてから身を引くべきであった? 道筋などあるのか? わしは己が正しい道の上を歩いてきたとは微塵も思わぬ。戦も勝ったり負けたりじゃ。無我夢中でこの世を泳ぎ渡ってきた。高政もそうするほかあるまい。力があればうまく生き残れよう。非力であれば道は閉ざされる。わしの力でどうこう出来るものではない」

 

高政に家督を譲った理由を問われて『タダでは話せぬ』とフルボイス課金を要求するとか、宗教法人は非課税と知って出家した両さんを思わせる銭ゲバファンシィダンスな道三でしたが、このシーンのこの台詞はカッコよかった。確かに事業の引き継ぎという面では唐突な丸投げ感が拭えませんが、漢(おとこ)の思考は斯くありたい。家督を譲らなければ『いつまでも権力の座にしがみつくな』と文句を言われる。譲ったら譲ったで『ちゃんと道筋つけてから辞めろ』と文句を言われる。ほならね? 自分がやってみろって話ですよ。そう私はいいたいですけどね。何時の時代も批判する側は気楽なものです(自戒)。尤も、道三が帰蝶に手を回して、色々と画策している可能性も微レ存……否、充分にあり得ますが。

それにしても、本作の高政の残念ぶりが半端ないなぁ。父親は言葉にせずとも『俺のことなど気にせずに存分にやれ』と思っているのに、息子は父親の影に脅えて、意に沿わないことを全部父親の所為にしてしまう。まぁ、それをキチンと伝えるのも引き継ぎとはいえ、

 

リディ・マーセナス「父親っていうのは何時も一言足りないのさ。その分は子供が埋め合わせなくちゃならない」

 

という台詞にもあるように、それを乗り越えてこそ、一人前の後継者。それなのに高政ときたら、父親への承認欲求を拗らせた結果、父親が自分を愛さないのは自分が本当の息子ではないからと無茶苦茶な脳内改竄を行った挙句、兄弟を殺めてしまうとか……そのくせ、その方法が病と称して誘き出しての謀殺とか、一番悪いところが父親に似てしまう悲劇。このちょっとしたシェークスピア感すこ。高政が如何に『自分は土岐の血筋』と標榜しようとも、尾張の帰蝶も似たようなことをやらかしているので、どう見ても父親の血筋です、本当にありがとうございました。この高政と帰蝶の同時並行描写が地味にエグい。帰蝶がどんどんドロドロしていくのに十兵衛がピュアピュアに見える大河って素晴らしいな。

しかし、そうなると余計に先週の美芳野の描写不足が惜しいなぁ。道三・高政・美芳野の関係性を掘り下げてくれていたら、親子の相剋が更に楽しめたと思います。結構、脳内補完が必要な場面多かったので。ちなみに今週の主人公最大の見せ場は、

 

明智光秀「……何故……尾張へ……(ブツブツブツブツ

 

どいつもこいつも面倒臭いことは全部十兵衛に押しつける所為で、ノイローゼ寸前じゃないですか。先週の一件で嫁にも心を許せないと悟った十兵衛君の明日はどっちだ? 更にリアルでも菊丸さんが本能寺ばりの大炎上をやらかしている模様。色々な意味で十兵衛のキチゲ解放待ったなしですね。来週から菊丸さんが何故か別人に変装する展開になっても俺は意外に思わん。変装しなくても意外に思わん。この件に深入りするつもりはない。以上。

 

 

3.『行列の女神 ~らーめん才遊記~』感想(ネタバレ有)

 

ナレーション「研鑽を積み、数々の伝説を打ち立て、やがて日本一のラーメン職人の称号を得た、その女性の名は……芹沢達美!」

 

ハッゲの女体化とは……日本のサブカル&ラーメン文化もいきつくとこまでいってしまったな。

 

まぁ、恐らくは連続ものに移行するつもりが単発で終わってしまったドラマ版『らーめん発見伝』で髪の毛フッサフサの超絶ダンディな芹沢さんを見ているので、今更女体化程度で驚きはしません。いや、鹿賀丈史さんの芹沢は思っていたよりもよかったよ! 個人的に鹿賀さん好きなのもあるけどさ。それに『発見伝』のようにラスボスに据えるのではなく、主人公に設定するには芹沢の人格や履歴は些か難解ですからね。

 

①自らの理想の味である淡口らぁめんで一度不渡りを出す

②ヤケクソで出したコッテリ濃口らぁめんが大当たり

③理想の味とかけ離れた妥協の産物で経営が成り立つ矛盾に苦しむ

④唯一の理解者と思っていた銀行員も実は味なんて何も判っておらず、完全に人格が歪む

 

という経緯を踏まえていないと芹沢は単なるヒールで終わってしまうので、多少の改編はやむを得ないと思われます。原作の芹沢の台詞を借りれば、

 

「ラーメン店とは趣味でも道楽でもサークル活動でもなく、ビジネスです。ならば、まずはどんな形であれ、勝つこと。勝たなければ何も始まらない」

 

訳で、映像化という目標のために手段を選ばなかったのは、ある意味で原作の芹沢イズムを踏襲しているといえるでしょう。実際、ドラマとしてもまとまりがよく、原作を知らない人も相応に楽しめる作りになっていました。そもそも、原作は題材や着眼点は面白いものの、如何せん画やコマ割りがイマイチ(『そのコマ要る?』と思えるシーンが多過ぎる)なうえ、ラーメンもそんなに美味しそうに見えないという欠点があるのですが、ドラマにすることで二つの欠点を解消出来たのではないかと思います。珍しく、二次元の映像化に意義がある作品。

キャラクターは夏川のイメージはバッチリ。河上さんは贅沢過ぎるだろ……というか、杉本さんは剃れば芹沢出来そうじゃね? キャスティングではゆとりが難点かなぁ。いや、黒島さんが悪いのではなく、寧ろ、いい子過ぎる印象を受けます。ゆとりはもっとアホの子なので。個人的には(いい意味で)空気の読めないアホの子を演じさせたら若手随一の浜辺美波さん推しでした。あと、話し方は『激レアさんを連れてきた』の弘中アナのトークが一番イメージに近い。弘中アナは大好きです。あざと可愛い午前一時。でも、ドラマ版の最大の難点は、

 

芹沢が平ザルを使わないこと

 

かなぁ。『らーめん発見伝』でも『平ザルは必ずしも名人の証明ではない』と描かれていますが、これは座頭市の主演俳優が殺陣をやらないというレベルの話なので、出来れば改善を希望。

 

 

4.『シティーハンター the movie 史上最香のミッション』感想(ネタバレ有)

 

 

 

 

そこはかとなく『ルパン三世・念力珍作戦』を彷彿とさせる地雷臭漂うパッケージですが、映像に脳内補正を掛ける負担は半端ないものの、そこを乗り切りさえすれば、メチャクチャ楽しめた点で『宝塚版ルパン三世』に近い作品でした。抜群に面白かった! いや、確かにヴィジュアルはアレだよ? 『すっごい似ているけれどもコレジャナイ感』はあるよ! でも、その壁を乗り越えれば、ガチでC・Hの世界に見えてくるから凄い。理屈ではなくて原作愛を感じるというニュアンスで語るしかないのが悔しいのですが、C・Hを『実写に起こした』らこうなるよねと納得するしかないクオリティでした。

内容は基本的にチープで御下劣。だが、それがいい。原作の槇村が生きていた頃の雰囲気があります(本作でもちょびっと出る)。映画オリジナルストーリーとはいえ、ユニオン・テオーペが事件の背後に暗躍しているのも原作好きには堪りません。事件も表面上は『世界の危機』みたいなことを煽っていたものの、基本的には惚れ薬を巡る冴羽さんと海坊主とユニオン・テオーペのドタバタコメディに終始していたのも結果として正解。やはり、このヴィジュアルで世界の危機を真顔でやられても見ている側は若干ヒくので、世界観をヘタに広げないのは賢明でした。

そして、何よりも『そうきたか!』と思わせられたのが、

 

冴羽さんが(薬の影響とはいえ)男に惚れる

 

という展開。これ、原作でありそうでなかったネタですよね。冴子にハメられて(実はハメてない)潜り込んだ組織で迂闊にベッドインしてしまったボンテージオカマボスとか、男装の女性と知らずに下半身が反応してしまった柏木圭一(圭子)とか、自分がもっこりしないのは相手が宦官だからと思い込んだサリナ(アルマ)とかいったケースはあったけれども、冴羽さんが純粋に男色に奔ったのは驚いたし、面白かった。

アクションシーンも押し並べて楽しめました。冒頭のモッコリーさんを挟んで冴羽さんと海坊主がやりあうシーンや、ザコ敵をバンバン射殺する割にラストシーンの黒幕へのいい意味でくだらない制裁もC・Hらしかった。あのオチは冴羽さんがモロッコ行きを覚悟した殺人バチ事件のラスボスへの制裁っぽい。こういうところも原作へのそこはかとないオマージュを感じます。冴羽さんが飛行機で移動していたのはアレですが、一応、作中で飛行機が苦手と言及しているのでOK。アニメ一期も同じミスをやらかしたからね、多少はね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨時休業のお知らせ ~2020/05/04~

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大河「麒麟がくる」6月に放送中断…撮影再開できず越年の可能性も

 

 

これは極論だがね……今後は海老蔵さんに自宅からテレワークで台本を朗読して貰ったらどうだろう?

 

流石に自分でも無理があると思える治五郎センセばりの極論タイム第三弾。まぁ、三月の記事で触れたようにワクチンか特効薬が開発・普及するまでは、根本的な解決には至らないと理解していたので、残念ではありますが、驚いてはいません。『坂の上の雲』のように何年越しでも構わないので、キチンと完結するのを待ち続けます。これまた極論だがね……今からでも大河ドラマ『斎藤道三』として完結させてしまっても誰にも文句はいわれないんじゃないかなぁ? COVID-19関連のニュースでは、

 

『東北と新潟 県またぐ移動自粛で共同宣言へ 新型コロナ』

 

令和の奥羽越列藩同盟と騒がれた翌週には、

 

『新潟・長野など4県、観光自粛求める共同宣言』

 

と中央四県の連携を公表する我が県の二股膏薬ぶりが地味にキています。いや、別に批判している訳ではありません、念のため。時に関東甲信越といい、時に北陸と称し、時に東北を名乗り、時に中央四県と和するといった具合に、状況に応じてスタンスを変えるフレキシブルさが如何にも我が県らしいと感じ入っております。『新潟は東北電力の営業地区!』と指摘されると『柏崎刈羽原発は東京電力の管轄!』と返すのが新潟県民のジャスティス。個人的には『広域関東圏』とかいう『山縣有朋は松下村塾出身』に匹敵する謎理論が好き。新潟は首都圏!(ガンギマリ顔)

……今週も正常性バイアス全開の能天気なことを書いていますが、別に問題を軽く考えている訳ではありません……というか、最終的な勝利条件よりも目の前にブラ下がる『手段』を『目的化』するのに熱心な方々には色々と言いたいことはありますが、友人のウィルスの他に敵を作るなという言葉を胸に刻んで、何とか自制しております。そんな訳で本件に関する現時点での私の敵は、

 

この期に及んで会社の給湯室の蛇口に直接口をつけて水を飲む同僚

 

しかいません。感染の危険云々以前にエチケットの問題やろ……。

さて、随分と前書きが長くなりましたが、先週の記事でもチョロッと触れたように今週の更新はお休みを頂きます。先週、会社の決算を終わらせて、市県民税の納入も済ませて、軽い虚脱状態にあるので、純粋に一息つきたいかなと思いまして。あくまでも仕事から来る肉体的な疲労であって、基本的に精神面は元気です。この頃流行りの『自粛』とも無関係。まぁ、仮に自宅待機になっても(金銭面・インフラ関連への不安は別として)今までシコシコ買ったり焼いたりして貯め込んだ円盤を見るだけで余裕で過ごす自信はある。自室のテレビボードに収納されている、

 

宇宙世紀ガンダムシリーズ(1st&08&0080&0083&Z&ZZ&CCA&UC&F91&V)&∀ガンダム&ガンダムビルドファイターズ、銀河英雄伝説(石黒版&ノイエ版1期)、攻殻機動隊SACシリーズ、カウボーイビバップ、サイコパス1期&3期、刑事コロンボ(旧作シリーズ)、独眼竜政宗、葵~徳川三代~(第三十二話のみ欠番)、いだてん、ガールズ&パンツァー、SHIROBAKO、精霊の守り人(神山版)、宇宙よりも遠い場所、ソードアートオンライン1期&2期&オーディナルスケール&3期放送分&GGO、サクラダリセット、ゲームオブスローンズ、深読み読書会、映像研には手を出すな、ヴァイオレットエヴァーガーデン、JOJOの奇妙な冒険第2部&第5部(只今出張中)、ダウントンアビー、ハーバード白熱教室、ハートキャッチプリキュア、リクリエイターズ、坂の上の雲、孤独のグルメ1期、JIN~仁~(CM未カット)

 

などのシリーズものに加えて、単発の映画やドラマ、更には倉庫に二軍・三軍のラインナップが控えているので映像に限定しても1は戦えるでしょう。世間には『筋肉は裏切らない』というフレーズがあるそうですが、インドア派の私は円盤は裏切らないという言葉を提唱したいですね。日々の筋トレが美容と健康を約束するように、地道な円盤収集も一時の心の安らぎを保障してくれる訳で、その価値は等しく尊いことが改めて理解出来ました。

尤も、休みの夜に録り貯めた映画や手持ちの海ドラを一気に見ようとしていたのに、ベッドでダラダラと中途半端に過ごしてしまい、結局『水曜どうでしょう』の東日本縦断夏野菜スペシャルで寝るまでの時間を潰してしまうことが往々にしてあるのも事実。この現象を何と名付ければいいのかと悩んでいたら、フォロワーのMasaさんが、

 

「ドラマ観ようとしたけどダラダラしてたらアレッと思ってエッチデーデーいじったっけどうでしょう入っちゃってもうウィリーさ」現象

 

と完璧な回答を下さいました。呟いてから返信までの時間が短過ぎて(いい意味で)なまら怖かったよ。

 

 

 

 

『太平記』第六話『楠木登場』感想&『麒麟がくる』第十七話『長良川の対決』簡易感想(ネタバレ有

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先週再放送が始まった『JOJO』第三部でヴ男とペチャパイはアニメ的にNGワードではないと知った与力です。でも、養豚所のブタを見る目はOUT。何 故 な の か ? まぁ、貧乳はステータスで稀少価値だからね。そして、今週はアヴドゥル必死のノンケアピールが見られるので、お楽しみに!

開幕早々、危ない発言を連発してしまいましたが、色々と緊張感を余儀なくされている御時勢なので、諸々注意していこうと思います。大河ドラマに関してもリアルで治五郎センセの極論タイムを思わせる憶測記事が飛び交っていますが、公式発表が出るまでは私なりの極論タイムも自重。昨年の『いだてんショック』と同じように基本的に製作陣の判断を尊重する方向で、最悪の事態を想定しつつ気楽に構えることにします。実際、本人に全く悪気はなく、法律に違反している訳でもなかったものの、発言の趣旨が一般人の感性と致命的にズレていたために大炎上した菊丸さんとオリザさんの例もありますから、発言に用心するに越したことはありません。まぁ、この件は悪気も違法性もない(と思う)ので、糾弾するつもりはありません(擁護する気もありません)が、イジり甲斐のあるネタなのも確かですね。菊丸さんをラジオでボロクソに説教した相方を勧進帳の弁慶に喩えたネットユーザーマジ天才。義経の奴、もう息しとらんちゃうんか?

休み明けも正常性バイアス全開の前書きから始まった今週の記事は『太平記』と『麒麟がくる』の感想&簡易感想。『決算! 忠臣蔵』や『転・コウ・生』についても触れたかったですが、こちらは後日の予定。尚、予定は未定にして確定に非ず。

 

 

1.『太平記』第六話『楠木登場』感想(ネタバレ有)

 

清子「う~ん、この直垂よりもそっとよいものがありましたでしょうに。ほれ、藍摺や紺色の。其方にはあちらのほうがお似合いなのじゃ。そもそも、この菊綴の紫が其方には似合わぬ(イソイソ

 

息子の釈放&ついでにお見合いというダブル慶事でテンション爆超状態の清子さん。ウッキウキで高氏の身なりを整える姿が最高に可愛い。部屋の外から高氏に『早よ来いや』と無言の圧力をかけるパパ氏が不機嫌そうな理由は、妻が息子相手に甲斐甲斐しく世話を焼く姿に少し妬いているのかも知れません。前回ラストのアリクイガッツポーズといい、隙あらば萌えシーンを捻じ込んで来るパパ氏も最高に可愛い。そして、今回も人望のなさを露呈してしまった腹黒い弟の直義がイキリ陰キャっぽくて可哀想。

尤も、初回でも描かれたように単なる萌えキャラではないのがパパ氏のパパ氏たる所以。今回の赤橋邸訪問に際しても、高氏相手に『相手が先に詫びを入れない場合は打ち返すぞ』と実に物騒な相談をしておりました。流石はサムライの本懐はナメられたら殺すを地で征くパパ氏さん。しかし、そんなパパ氏さんの思惑を遥かに越えたのが、

 

赤橋守時「足利殿におかせられましては、わざわざのお越し……赤橋守時、痛み入りまする。高氏殿のことにつきましては、元より北条に非のあること。本来、こちらより罷り越し、如何ようにも詫びねばならぬところ、恐縮の至りでございまする。この守時も北条の一人にござりますれば、罪なき足利殿を牢に留め置く失態、何と申し開きを致せばよいやら、言うべき言葉もございませぬ。此は北条家の不徳! 伏してお詫び致しまする!」

 

この守時さんのスタイリッシュエクストリームジャンピング焼き土下座にパパ氏も完全に気を削がれてしまいました……というか、露骨にドン引き。何か気に食わないことをほざいたら怒鳴りつけてやろうと思っていたら、相手が『もっと罵ってくれ』といいながら、自分にローソク垂らし始めたようなものでしょうか。まぁ、冗談はさて置き、このシーンの守時の対応は完璧ですね。如何に土下座はタダとはいえ、ここまで徹底出来るものじゃあありません。赤橋守時とかいう『理想的なヒロインの兄貴』像。己の面子よりも道理を重んじ、傾きつつある組織を懸命に支えようと務めるタフガイ。男が惚れるタイプの男。ただし、常識人に見える守時のアニキも、

 

赤橋守時「今、幕府も北条も腐り始めています。このままでは世が乱れ、多くの人の血が流れることは必定」

 

鎌倉幕府は腐る前から血を流し放題であることを華麗にスルー。和田合戦や霜月騒動レベルの内紛は出血と認識していないのかも知れません。ホンマ、鎌倉幕府は修羅の国やで。この辺の詳細は再来年の大河ドラマで描かれる……といいなぁ。

 

 

さて、サブタイにもあるように今週から登場となった楠木正成。このキャスティングは放送当時も一部の視聴者の間で物議を醸したらしい(流石に中高生の私はそこまでの情報は入手出来なかった)ですが、結果的に大成功であったといえるでしょう(むしろ、放送開始以降は直義のキャラクター設定のほうが問題視されたらしい)。楠木正成といえば、世にいう大楠公として戦前はアレな扱いを受ける一方、戦後は一転して『悪党』なる学術用語を拡大解釈される憂き目に遭うといった具合に毀誉褒貶の激しい人物ですが、基本的に悲劇の名将というポジションは崩れないと思います。そんな訳で戦前戦中戦後を通じても二の線が演じるのが定石でした(諸葛孔明や岳飛を誰が演じるかという話に近いかな?)が、まさかの金八先生。オファーを受けた御本人が一番驚いたそうです。その際、役作りの参考になったのが、

 

「正成は河内の気のいいオッサンだった」

 

という司馬遼太郎センセの見解であったとか。近年の大河ファンの間では、

 

司馬史観の金八先生解釈

 

というとスィーツ大河とは別の意味で悪い予感しかしない取り合わせです(司馬さんの作品が悪い訳ではありません&武田さんの演技が悪い訳でもありません、念のため)が、豈謀らんや、これがマイナスのマイナスはプラス理論になったのか、従来にない魅力的な正成像に繋がったのですから、本当に物語は蓋を開けてみるまで判らない。血煙よりも土の匂いが似合い、イデオロギーよりも民百姓の安寧を重んじ、孤高よりも親しみを覚えずにはいられない武田正成に、きっと貴方も惹かれるでしょう。桜井の別れの御説教がガチ泣けるのよ……初登場の今回も、

 

楠木正成「自然に世の中は変わる。よい世の中が見たければ、長う生きねば駄目じゃ」

 

久子「何でもお金で買えると思えば、誰も雨の心配などしなくなりましょう。誰も真面目に畑を作らぬようになりましょう」

 

と夫婦揃って現代の俺たちに効く名言を残してくれました。あと、荒くれ者のようで嫂に頭があがらない龍泉殿も可愛い。放送当時は演技力がアレな印象しか残らなかった赤井英和さんの正季ですが、今見ると意外とイケている気がしないでもない……というか、赤井さんよりもアレな演技をする自称俳優を沢山見過ぎt【自主規制です

 

 

そして、今週の高氏君。主演俳優によるガチ流鏑馬という余りにも難易度の高いシーンをサラッとやってのけるのが『太平記』の魅力の一つです。こういう締まったシーンがないと高氏はタダのアホボンにしか見えない訳で、史実の尊氏は色々な意味で真田さんに感謝していると思います。そんな中、佐々木判官から藤夜叉の懐妊を聞かされる高氏君。夜の流鏑馬も一発必中でしたね(最低のオヤジギャグ)判官殿も『都で会うた白拍子を覚えておいでか?』などと勿体ぶった物言いで話を切り出していましたが、高氏にしたら判官殿に六波羅の軍勢が迫る屋敷に置き捨てにされたのですから、忘れようにも忘れられないでしょう。その辺にツッコまないのが高氏の育ちのよさ、或いは器量の大きさともいえます。置き去りにされたことよりも藤夜叉懐妊の報せに反応する高氏さんマジブッダ。

尤も、判官殿も怨み言をいわれるのを恐れていたからこそ、藤夜叉懐妊のニュースの衝撃で置き去りにした一件を有耶無耶にしようと企んだ可能性もあります。勿論、藤夜叉懐妊を教えた目的は高氏が北条一門に取り込まれるのを阻止することが第一義でしょうけれども、他にも密かに狙っていた藤夜叉をNTRれた腹いせ&単純に事態がグチャグチャになるのを見るのが楽しいという動機もあるでしょうね。この悪魔。実際、報せを聞いた高氏君は、

 

足利高氏(ああああ! まさかの一発懐妊とかマジ勘弁してええええ!)ゴロンゴロン

一色右馬介「若殿」(シュタッ

足利高氏(ヤベ、見られた)アセアセ

 

と露骨に動揺しておりましたので。可愛い。しかし、判官殿の屋敷にNINJAのような恰好で忍び込む右馬介のキャラの変わりよう……正直、京都で女の尿に興奮していた右馬介が唐突に寡黙なNINJAキャラに転身したのはリアタイ視聴に混乱した記憶がある。

 

 

2.『麒麟がくる』第十七話『長良川の対決』簡易感想(ネタバレ有)

 

 

斎藤義龍「勝った! 2020年の大河ドラマ・完!」

織田信長「ほーお、それで誰が道三の代わりを務めるんだ? まさか、テメーじゃねーよな?」

明智光秀「あの、主人公はワイ……」

 

という遣り取りが脳裏を掠めた今週の『麒麟がくる』。冒頭で迂闊な極論発言は慎むと宣言したばかりとはいえ、序盤を牽引した道三の退場&美濃編の終了&次回から越前編がスタートする今週で放送を一区切りするのも一つの判断ではないかとは思いました。次回へのヒキの完成度は高かったので。さんざっぱら義龍を土岐の正嫡と煽っておきながら、合戦の場で、

 

稲葉良通「親殺しは外聞が悪うございますからな(ニチャア

 

何を言おうがお前は道三の息子だよと義龍をいぢめる稲葉さんのドス黒さとか、義龍に親殺しの汚名を着せるために一騎討ちを挑みに来た道三とか、ストーリー自体は非常によく出来ていました。特に道三VS義龍は『平清盛』の夢幻一騎討ちと異なり、上記のようにキチンとした理由に裏打ちされていたのが好印象。予算不足をストーリーで補う姿勢は今後の大河ドラマにも参考にして欲しい。あと、中の人&大河繋がりでいうと、

 

樹木希林の祖父がモッ君道三と敵対する

 

というシチュエーションにも胸が熱くなりましたね。

尤も、美濃編のラストとしての完成度はイマイチ。理由は単純明快で合戦回としてのクオリティが低過ぎたの一言に尽きます。合戦回でなければ完璧であったともいえますが、それを差し引いても、合戦とそれに前後するシーンのクオリティには難があり過ぎました。道三の救援に向かおうとする十兵衛に叔父上が、

 

明智光安「この河原は駄目じゃ、敵が山のようにおる!」

 

と制止するシーンも無粋を承知で言う程多いかとのツッコミを禁じ得ませんでしたよ。画面の人口密度がスッカスカですもの。これは極論だがね……大河の合戦回の時は画面比率を4:3に戻したらどうだろう? それと如何に親友同士とはいえ、十兵衛と義龍が戦場のド真ん中でベラベラと喋り過ぎ&義龍の軍勢が迫っているのに明智家のお別れ会が長引き過ぎ。そういう会話は合戦前の離別のシーンとかを設けて、そっちでやって欲しかった。明智庄を離れる場面の十兵衛と牧さんと伝吾の遣り取りとか結構泣かせるんですけれども、流石に話が長過ぎて、敵が迫っている緊迫感が台なし。せめて攻め寄せる義龍の軍勢のカットインとかを多用して、タイムリミットが近いことを表現して欲しかったなぁ。残念。

 

さて、今回で美濃編が完結した『麒麟がくる』。全体のバランスを考えると残りは『越前編』『京都編』『丹波編』になると予想。ただ、これまでの『美濃編』で全体の三分の一を費やしているので、マジで五輪枠を費やさないと厳しそうです。それでも、次回予告の越前編は結構好印象。特に『金銭が要るなら呉れてやる』と嘯く朝倉サンタマリアは、道三と真逆の価値観の持主らしいので、十兵衛との絡みが今から楽しみ。恐らくは、

 

モックン道三……仕事はくれるが給料はくれない。

朝倉サンタマリア……給料はくれるが仕事はくれない。

サイコパス信長……仕事も給料もくれるが休みはくれない。

 

こういうことになるんじゃあないかと予想してみます。これで……眠れる……(キンジパ感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徒然日記 ~2020/05/18~

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「麒麟がくる」と「エール」の放送を一時休止へ 新型コロナ

 

 

与力「これは極論だがね……極論っていうのはどうだろう? 極論に極論を! そりゃあ極論って訳にはいかない! 極論も極論だ! だが、極論を極論して『極論して下さい!』って極論したら、案外極論してくれるんじゃあないかなぁ?(白目)

 

事前に覚悟していたとはいえ、いざ現実となると何時もの極論ロジックにバグが発生するレベルの衝撃を受けてしまいました。ショックで何も思いつかない。まぁ、先週の記事で述べたように基本的に製作陣の判断を尊重する方向で、最悪の事態を想定しつつ気楽に構えると決めているので、放送枠の穴埋めに『天地人』『GO』『軍師官兵衛』『花燃ゆ』『西郷どん』を使わなければ、他に文句はありません。個人的には『八重の桜』第一部の再放送で視聴者のハセヒロロスを軽減するのも一つの手段かと思います。『坂の上の雲』でモックンロスに備えるのもアリ。今週の話題は4つ。

 

 

1.『麒麟がくる』『越前へ』感想(ネタバレ有)

 

『朝倉義景……ユースケ・サンタマリア』

 

想像以上に字の『圧』が凄かったOPのテロップ。戦国大河でカタカナ表記されるのは宣教師枠と相場が決まっているので、古豪・朝倉家当主の名の横に並ぶと新鮮な印象を受けました。ユースケさんは字数も多いので、本名の中山裕介名義になるかもと思いきや、フォントサイズを下げての一行ブチ抜き表記。テロップだけでもお腹一杯になるオイシイ存在です。演技に関してはどう見てもサンタマリアです、本当にありがとうございましたというしかありませんが、伊呂波太夫と腹芸的な会話をしていたので、もうちょい掘り下げられると期待。『信長の忍び』を実写化したら本作の義景になりそう。十兵衛たちが帰ったあとの謎の床拭き指南とか地味にキャラ立てしてくるのも嫌いじゃありません。『越前編』開幕とのダブルミーニングを狙って『新しい生活様式』をブチ込んで来るNHKさん、マジ公共放送の鑑。

 

一方、越前に逃れてきた十兵衛一行は、明智庄を落ち延びる際の『父は城の最期を見届けるのだ、と……』という左馬助のお前もそうなるんやで(涙)的な終盤の布石配置や、お駒ちゃんを助けたビッグハンドマンの正体は十兵衛パッパなどの序盤の伏線回収がメイン。まぁ、ビッグハンドマンの正体はネオ・ロアノーク並みにミエミエでしたので、その辺に意外性を求めるのは野暮でしょうが、十兵衛パッパに助けられた駒ちゃんがいなかったら、逃避行中の十兵衛が伊呂波太夫の申し出を信頼しきれたか判らず、主人公パーティーは無事に越前に逃れられなかったかも知れないので、一応の意味はあったのかな。でも、伊呂波太夫の申し出を信用出来るか否かで決断を強いられるシーンを強調するには不充分。そこに至るまでの間で何度か身近な人間に裏切られて、もう誰も信用出来ないところまで主人公パーティーを追い込んで欲しかった。ドSっていうな。

それでも、逃避行の途中で『食べ物を探してくる』という伊呂波太夫を単独行動させないよう左馬助をつける十兵衛の用心深さの描写はよかった。口には『お供せよ』としかいいませんが、実質『監視しろ』ということですよね。十兵衛君ぐう有能。尤も、職場の人間関係が苦手なのは相変わらずなのか、好意で金銭を用立ててくれるといった義景の申し出を断ったばかりに映像研の部室みたいなあばら屋を提供されるボーンヘッド。あのシーンも道三から受けた『金銭がなければ身体で返せ』という仕打ち教育を説明して『旧主・道三の教えもありますので、牢人の身に過分な御配慮は御無用。後日、恩義を越える功績を挙げた時に改めて賜りとう存じます』とでもいえばよかったのになぁ。地味に菊丸の伝言を駒ちゃんに話すのも忘れているし。菊丸がリアルで何を仕出かしたっていうんや……(すっとぼけ

 

そして、モックンロスが心配された本作ですが、そっち方面は尾張パートの奮戦が光りました。信勝が毒を持ち込んだと承知のうえで、

 

織田信長「弟の! ちょっといいとこ見てみたい! それ、イッキ! イッキ! イッキ! イッキ!」

 

とアルハラコールで返り討ちにするノブさんマジパネェ。『お前を殺す気は失せた』といったな。あれは嘘だ。或いは『殺す気は失せたが、自分で持ち込んだ毒で勝手に死ぬのはセーフ』理論なのでしょうか。何れにせよ、弟に対する殺意を滔々と語るシーンのサイコパス感が凄まじい。あれ、キチンと本人に説明してからでないと殺すのが勿体ないのでしょうな。吉良吉影とかもそんな感じですので。

しかし、それ以上に恐ろしかったのが信勝暗殺の間、外で待機している帰蝶さん。あの表情は覚悟ガンギマリ過ぎで怖い。これはもう『はーちゃん』でも『帰蝶さん』でもない、帰蝶様ですわ(朱様風)。モックン道三が残したキャラクターの爪痕が作中でキチンと受け継がれているは嬉しいですが、予告で久々に登場した爆弾正のシーンでホッとしてしまったのは色々とマズいのではないでしょうか。

 

 

2.『太平記』第七話『悲恋』簡易感想(ネタバレ有)

 

足利高氏「其方を引き取る、そのつもりでいた( ー`дー´)キリッ

藤夜叉「では、どうして北条の姫君を?」

足利高氏「」

 

露骨に動揺する高氏君サイテー。

 

判官殿の屋敷から逃げ出す藤夜叉を救いに颯爽と現れた白馬のメンヘラ王子様高氏君。藤夜叉を御姫様抱っこしつつ、馬を疾走させるシーン自体は本当にカッコいいのですが、事が認知事案に発展しそうになるや、言葉を濁す高氏君マジヘタレの極み。まぁ、現時点で藤夜叉を手元に置くのは単純に登子との結婚の障害となるに留まらず、判官殿のマッチポンプと守時の誠意で何とか晴れた帝の謀叛への共謀罪を穿り返されない危険な行為なので、政治的には避けるべき事態であるのは間違いありませんが、高氏君がそこまで考えているかは些か疑問でもあります。ちなみに藤夜叉との間に生まれた直冬に目がいきがちですが、これとほぼ同時期に高氏が他の女に孕ませた&鎌倉に叛乱を起こした際に逃げ損ねて斬られた竹若さんのことも思い出してあげて下さい。ホントサイテー。最終的にパパ氏の説得が奏功して踏みとどまったように見えますが、基本的に高氏は最後に会った人間の意見に靡くので、このあとに判官殿が『やぁやぁ高氏殿』と押しかけてきたら、事態は変わっていたかも知れません。

ストーリー面では特に大きな動きなし。高氏の青春の苦悩を掘り下げる心情メインの回なので、感想も短めです。ストーリー以外では萩原義貞は今回で見納めになります。のちに登場する根津甚八さん演ずる朴訥で誠実な従来のイメージにピッタリの義貞も魅力的でしたが、日野俊基やパパ氏と共謀して鎌倉をひっくり返そうと目論んでいる腹黒陰謀家としての新田義貞も最後まで見てみたかったな。『麒麟がくる』の帰蝶様もですが、演じる俳優が変わるとキャラクター設定も微妙に変更するものなのでしょうか。

あとはメインキャストの滑舌のよさが本作の隠れた魅力。

 

足利貞氏「わざわざのお運び、珍しく嬉しくはべる

 

とか相当日常離れした台詞なのに『言わされている感』が全くないのが凄い。こういう基本的なところを大事にして欲しいですね。

 

 

3.『転・コウ・生』感想(ネタバレ有)

 

柴咲コウムロツヨシ「「『入れ替わってる~!』……って奴?」」

 

恐らくはアフターコロナの日本で企画から放送に至る全ての過程を完遂した最初のドラマ作品。その一点においても存在価値のある作品といえるでしょう。本作がアフターコロナにおけるドラマ形態の雛型となるか否かは判りませんが、諸々の制約が課せられる現今の情勢下で、斯くもチャレンジ精神に溢れた企画を完遂した制作&キャスト一同に感謝です。一生さんの口から『殿!』の台詞が聞けたのは井戸の底の民には御褒美であったのではないでしょうか。単純に『おんな城主直虎』のスピンオフ(?)としても楽しめました。古典的なボディスワップを主題にしつつも、全員の人格が戻ることなく、入れ替わったままで終わるオチは、アフターコロナ下の世界の変容と不可逆性を投影したものでしょう。流石は安易なオチで問題から逃げない森下佳子脚本。

一方で『君の名は』や『民王』でも明らかなように、ボディスワップは入れ替わった人物が普段と違うことをするギャップ&他人に入れ替わりを悟られないように必死になるスリルが肝なので、物理的制約がある&時間的余裕がないのは百も承知のうえで、その辺をもうちょい練り込んで欲しかった。ムロさんの動画生配信の件とかね。ボディスワップでそれを掘り下げないのは食パン銜えた遅刻寸前の女の子が曲がり角で転校生と衝突しないようなものですので。まぁ、後者は兎も角、前者は、

 

柴咲コウ(ムロツヨシ)「全裸で鼻ホジった動画、自撮りして拡散するよ!」

 

の件で満足するべきかなぁ。個人的には肩をはだけなくていいんで、指をもうちょい刺し込んで欲しかった。先っちょだけ! 先っちょだけでいいから! 作品のクオリティ以外の点では、

 

高橋一生(柴咲コウ)「ウイルスは人間の都合では動いてくれないからなぁ。こっちが臨機応変にやっていくしかないんだよねぇ。でも、まぁ、そうやってくうちに今は想像出来なくても、新たな活路がこれから見出せるかも知れない。自分たちの意識も社会の在り方も驚く程変わっていくかも知れない。不安に駆られるだけっていうのはよくないと思うけど」

柴咲コウ(高橋一生)「希望は捨てない。でも、この前提でやっていけるように自分たち人間たちが変わっていこうってことですかねぇ」

 

の遣り取りも必ずしも全面的に賛同出来なかったかも。現状はさて置き、将来的な展望も含めると私はそこまでウイルスに謙虚になれないのよねぇ。『覚えていろ、コロナウイルスども……いつかワクチンや特効薬で他の感冒と同じポジションに捻じ伏せてやるからな!』と毎月研究機関への寄付で復讐の牙を研いでいる次第。万物の霊長を舐めるな(他人の褌)パニック映画では科学を過信して真っ先に退場するタイプかも知れませんが、現実はそうではないと信じたい。

 

 

4.『決算! 忠臣蔵』感想(ネタバレ有)

 

貝賀弥左衛門「大体あのオッサン、あ【ピー!】大事な【ピー!】にハメて【ピー!】さしとんえん! ソロバンとソロバンでな! ワシの【ピー!】

早川惣介「……病気やないか」

 

台詞に【ピー!】が入る空前にして絶後と思われる『忠臣蔵』作品。弥左衛門の口から出まかせオンパレードとはいえ、内蔵助がソロバンとソロバンで何をハメていたのか気になって夜もグッスリ眠れねー。

さて、大石が実際に提出した収支決算書をベースに、討ち入りの実情を予算的側面から赤裸々に掘り下げた本作は、吉良の実家である上杉家のお膝元ということで基本的にアンチ赤穂浪士の越後民(個人の感想です)にとって、非常に好印象でした。堀部安兵衛? 奴は上杉家に叛旗を翻した揚北衆の一員(暴論)。まぁ、新発田重家の叛乱は元を糺すと景勝の依怙贔屓な人事裁定が招いたことは認めざるを得ませんが。安田顕元とかいう戦国のヤスケンには本当にスマンことをした。まぁ、それは(都合よく)措くとしても『天地人』繋がりというか、妻夫木君演じるコスパ度外視のポンコツ軍師菅谷半之丞の存在感が半端なかった。いい意味で『天地人』での偽善者軍師かねたんのリベンジを果たしたと思います。コイツが帷子やら木槌やら揃いのコスチュームやら、何か策を思いつく度に内蔵助の脳内残金がチャリーンチャリーンと吹っ飛んでいくのよね。討ち入り用の松明を買う金銭にも事欠く状況なのに『吉良方の動きを飛び道具で抑え込む!』という菅谷の献策に湧く一同を見る内蔵助のリアクションほんとすこ。

 

間瀬久太夫「他におらんか、弓が得意な者は?」

早水藤左衛門「はい、得意です!」

大石内蔵助「おう早水、お前弓持ってきとるんか?」

早水藤左衛門「いえ!(満面の笑み)

大石内蔵助「チッ」

 

露骨な舌打ちはやめろぉ!

 

何だかんだで泰平の世に五十人近くの同志を死地に伴うことに成功した内蔵助の器量は評価していますが、その内心は本作に近かったのではないかと思います。物語のオチも華々しい討ち入りではなく、結構直前に入った蕎麦屋の支払いでモメるしょうもないシーンが逆に納得出来ました。全体のクオリティは別として、〆のシーンに100%納得出来る映画って意外と少ないと思うの。

ただ、全体的な演出やカメラワークは平凡。キャラクターが順番に前に出て喋るという学生演劇レベルのシーンは何とかして欲しかった。歌舞伎の割り台詞をそのまんま映画に引き継ぐのは余りにも芸がなさ過ぎる。カット割りで自然に見せるのがプロの仕事でしょう。あとは悪い意味で岡村さんの存在感がない。折角、勘定方にスポットを当てるのでしたら、もっと内蔵助とガップリ四ツで組ませて欲しかったな。キャスティングでは石原さとみさんのドS系瑤泉院がクッソ嵌り役でした。是非、大石の代わりに罵って欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徒然日記 ~2020/05/25~

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皆さん、こんにちは。ルイ14世と16世を言い間違えた歴史ビギナー相手にマウントを取るよりも、ガンギマリ顔でルイ15世も面白いよと紹介出来る歴史クラスタでありたいと願う与力です。ルイ15世とかいう嫁が好き過ぎて毎年のように孕ませていたら『もう妊娠したくない』という理由でセクスレス宣告を受けてしまい(11人も生まされればそうなるわ)、その反動でポンパドゥール夫人などの愛人をドチャクソ囲って『最愛王』と仇名されたうえ、在位中に5回もデフォルトをやらかして『あとは野となれ山となれ』と遺言して死に(諸説あり)、孫から『何一つ帝王学のレクチャーがなかった』と嘆かれたド変人国王ホントすこ。ビギナーを叩くジャンルに未来はないからね、気をつけようね。尚、以上はあくまでも一歴史クラスタとしての意見であり、実際の人物・政治・団体・思想・発言・国会答弁とは一切関係ありません、多分、恐らく。今週も『麒麟がくる』と『太平記』の簡易感想二本立て&久しぶりの時事ネタでお送りします。

 

 

1.『麒麟がくる』第十九話『信長を暗殺せよ』簡易感想(ネタバレ有)

 

織田信長「今の世はどこかおかしい……」

 

正しい認識の筈なのに悪い予感しかしねぇ(悪寒)

 

初めての上洛で将軍様とウッキウキで対面したまではよかったのですが、今川との調停に関して、

 

足利義輝「官職は左京大夫でどうじゃ? 今川より上だぞ? 今川が引き下がらないなら相伴衆にしてやる。これで今川も手を出すまい」

 

と形式上の妥協案しか示してくれないと知るや、目に見えてテンションダダ下がりするノッブさん。耳元でイマジナリー帰蝶様が『もうよい、使えぬ奴じゃ』と囁いていそう。尤も、何度も拝謁している&将軍家に往年の威光はないことを知っている割に謎の将軍推しが止まらない十兵衛と違い、二言三言で『コイツ使えねぇわ』と見切った信長のほうを褒めるべきかも知れません。ただし、落胆の余り、

 

松永久秀「将軍様にも目通りしたらしいが……ガッカリしたと申しておった」

 

と金栗君に五輪出場を断られた某極論おじさんみたいなことを言い出した挙句、

 

織田信長「これは極端だがね……尾張と摂津を交換するというのはどうだろう? そりゃあ、簡単にはいかない! 摂津は三好殿の重要拠点だ! だが、戦が絶えないのは将軍家も望むところではないだろうし、松永殿は三好殿の重臣だから、案外スンナリと話を通してくれるんじゃあないかなあ?」

 

とホンモノの極論おじさんも顔負けの極論で爆弾正を驚かせていました。ホンマ、本作の信長は怖い。室町前期や江戸時代は兎も角、戦国時代の真っ只中で『戦をなくすために国替えをしてくれ』とか、目的のために手段を選ばないにも程がある。おかしいのはお前の思考だよ。このノリで比叡山とか長島一揆とか焼討してしまうんやろうなぁ……道三の退場後の物語を支えるのは染谷信長になりそうですね。

さて、昨年来、一部の大河ファンの間で登板を不安視されていた前何とかさんの担当回でしたが、思っていたよりも普通の出来でした。序盤の京都編のもっさり感を引き継いでいたものの、登場人物が何を考えて如何に行動しているかはキチンと伝わってきましたので、今回は及第点。まぁ、織田・今川・斎藤の外交関係&実際にあったとされる信長暗殺計画(未遂)を掘り下げて欲しかったとは思いますが、義輝と信長の対面シーンは内容以前にヴィジュアルで大事なことが描けていたので、アリ寄りのアリ。古豪・朝倉や名門・今川が出席せず、織田や斎藤といった出来星大名が将軍に直々に謁見する構図は、

 

室町幕府の権威は既に死んでいる

 

ことを如実に表していたといえるでしょう。

とはいえ、この時点の信長に室町幕府の無力ぶりを実感させてしまうと、今後、義昭を報じて上洛する際に『信長はハナから室町幕府を滅ぼすつもりで利用しただけ』という旧来の説をなぞることになりそうなので、この辺の整合性をどうつけるのか気掛かり。或いは『義輝個人には失望したが、幕府そのものには希望はある』と考えているのかも知れません。

 

 

2.『太平記』第八話『妖霊星』簡易感想(ネタバレ有)

 

足利高氏「わしの嫁に足利の蹴鞠を見せる! 目もあやに披露つかまつれ!」

 

本作ならではの美しい台詞回しにシビれそうになりましたが、やっていることは新婚初夜に花嫁をほっぽって弟とリフティング勝負という相変わらずの高氏さんでした。蹴鞠に勤しむ兄弟を見遣る嫁&姑の、

 

登子「新婚初夜に蹴鞠とか、どういう教育してきたんですか?」

清子「すまんな、本当にすまん」

 

という表情すここのこ。いや、高氏の気持ちも判らなくはないですよ。相手が名門の御令嬢&保護者の兄貴は抱かれてもいいレベルのナイスガイであればあるほど、藤夜叉と子供の件の負い目は深まる、自分を散々苦しめた北条家と縁続きになる、憧れの後醍醐帝に仕えるという夢は遠ざかる……といった具合にいいことと悪いことが手に手を取って彼の未来を雁字搦めにしてくる訳で……そもそも、前回ラストで決断を迫られた高氏君の出した答えが、

 

「登子も藤夜叉も両方欲しい」

 

という当時の価値観は兎も角、物語の主人公としては人生舐め腐っているとしか思えないものであり、新婚初夜になっても、

 

足利高氏「ぶっちゃけ、これって政略結婚じゃん? それに、ひょっとすると俺は君のお兄さんと戦うことになるかも知れないからね? それでいいの? 本当に俺と結婚するの?」

 

この期に及んで遠回しに破談にならないかなぁと望んでいる高氏君に対して、新婦のほうは『高氏さまの御一生が登子の一生となるばかりのこと』とガンギマリの覚悟で返答してくるのですから、そら、蹴鞠に逃げたくもなりますわ。

まぁ、冗談はさて置き、今回の高氏・登子の祝言は純粋に面白かったです。婚儀を満面の笑みで見るパパ氏、天然系の息子が粗相を仕出かさないかハラハラしている清子さん、北条の姫君に敵愾心剥き出しの直義、各々のキャラクターが一目で判りました。しかし、何よりもグッと来たのが、

 

ナレーション「赤橋家の庭竈の火が足利家に移され、館の明かりとなり、登子を迎えた」

 

の件。こういう当時の風俗をサラッと盛り込んでくれるのが実にいい。歴史考証やセットも大事ですが、物語の雰囲気を醸し出すのはこういうのでいいんだよ、こういうので。後半の円喜暗殺計画よりも好きかも知れません。そういや、円喜暗殺計画は地味に貞顕も絡んでいたようですね。円喜本人に計画が漏れている時点で中止にすればいいものを殺ってしまえば問題なかろうとでも考えたのでしょうか。こんな悪辣な策謀を児玉清さんが練っていたかと思うと、そのギャップに萌え。しかし、事件で最も得をした人間が真犯人という論理に則ると、

 

佐々木道誉「かかる大輪の見事な花を手に入れるためには、さぞや野に咲く花の一つ二つ、泣かせて枯らせてうち捨て給うこともござったであろうな」

 

と痛いところを衝かれ、高時にも『マジマジ? 一体誰のことよ~?』と追及を受けながらも、あの騒動で全てがウヤムヤになった高氏君が一番怪しいという可能性も微レ存(ないない

 

 

3.政治的ハッシュタグは電脳政治の夢を見るか?

 

ここ最近、Twitterのトレンドの上位に食い込むことが多い政治的ハッシュタグ。内容に関する賛否は別として、結構興味深い現象なのは間違いないので、今回は現象そのものに対する個人的見解を述べようと思います。繰り返しますが、個別の政策の賛否には触れません。それがけしからんとノンポリ狩りに奔る方々と議論する気もありません、悪しからず。

さて、今回の政治的ハッシュタグ騒動。最終的に幾つかの法案が延期になったり、廃案になったり、結構な割合で国政に影響を与えた訳ですが、極めて当然のことながら、政治的ハッシュタグにはコミュニティーの構成員の同意に基づいて決められた法的拘束力発動に至る具体的な数値目標が一切なく、これらを選挙や直接請求と同列に扱うのは無理があります。署名活動に比する見方もないではありませんが、署名活動は原則的に実名参加&選挙と同じように一人一票という点を鑑みると、匿名&複垢&連投が可能な本事案と同列視するのは難しいでしょう。最も近いのはデモ活動でしょうかね。今回の案件はコロナの影響でリアルのデモ活動に出られなかった人々が、ネットに活動拠点を移したのではないかと考えています。匿名性は兎も角、複垢&連投は動員数の主催者発表に近いものがあるのではないでしょうか。

誤解のないように申しあげるとデモが他の政治活動に劣る訳ではありません。デモで人類社会がより善き方向に進んだ例は幾らでもあります。悪い方向に進んだ例もありますが、それは他の政治活動も同じですね。単純に似ているという話です。それに政治的ハッシュタグはリアルのデモよりも優れている点も多い。パッと思いつくだけでも、

 

発言のハードルが低い

多くの人々の目にとまりやすい

問題を柵抜きでピンポイントに絞り込める

 

この辺はデモのみならず、他の政治活動も見習うべきものがあると思います。

ただ、長所と短所はコインの裏表なのも事実で、或る法案に関する反応として、500万人のデモ活動と500万のハッシュタグがあった場合、人々が重視するのは確実に前者と思われます。仮に動員数の水増しや複垢や連投を排除したうえで、純粋に同数の勝負になったとしても、多くの人は現実のデモを重視するでしょう。現実のデモは(当たり前ですが)参加者が現場に足を運ばなくてはなりません。或いは仕事、或いは休養、或いはレジャーといったリアルの都合を犠牲にすることで一つの主張を伝えようとしている訳で、誰でも気軽に指先一本で参加出来るハッシュタグにはない重さがある(発信の重さと主張の正しさは別問題です、念のため)。これはネットへの偏見ではなく、人間の心理の問題ですね。仮に政治的ハッシュタグの投稿にリアルデモを上回る手間と労力が必要となれば、両者の立場は入れ替わるでしょう。それだけのことです。

政治的ハッシュタグに対する私見は『敢えて選ぶとしたらデモ活動に近いが、それぞれに一長一短がある以上、単純に同一視することが出来ないので、現時点での国政への影響力を論じるのは早計である』といったところであり、そうした分析を抜きに目の前の数字の多寡を争うのは、

 

釣った魚の数と重さのどちらを競うか決めずにフィッシング大会を開く

 

みたいなものと考えています。そこんところがハッキリと議論されないうちは政治的ハッシュタグに参加する気はなく、そして、そのポジションを決めるよりも今は他にやるべきことがあるのではないかと思っている次第。

 

 

 

 

 


徒然日記 ~2020/06/01~

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おかしいな……先週、マスクより先に給付金が届いたが、もう手元に三千円しか残っていないぞ(白目

 

『おかしいなぁ、おかしいなぁ、この給付金はおかしいなぁ……使ったらなくなるんだよなぁ……他の人の給付金はどうなんだろうなぁ……?』という嬉Cヴォイスと『あったりめぇじゃねぇか、てめぇで使ったんだから!』という大泉ヴォイスが頭の中でリピートし続けている今日この頃。まぁ、今回の給付金は経済を活性化するために国民一人一人が判断を下す政策という側面もあるので、必要に迫られたら速攻で消費するのも一つの方法と自分を正当化してみます。ちなみに十人の諭吉さんのうち、数名を或るコロナ対策プロジェクトへ人材派遣しました。旧一万円札と新千円札の熱いコラボレーション。史実でも諭吉さんが当該研究所の創設に尽力したことを鑑みれば、ある意味で歴史上の出来事を疑似再現する喜びに浸れたと勝手に思っています。寄付よりも『ガンプラで原作の名場面のジオラマを作る』感覚に近い。初期の歴史記事でも述べたように性格はアレな諭吉さんですが、現在にも恩恵を齎し続ける近代化事業への貢献度はガチでぐうレジェなんだよなぁ。後援の御礼の一部として牛乳を贈られた時も、

 

福沢諭吉「この牛乳瓶は汚れている。現場の怠慢は組織の怠慢で、組織の怠慢は指導者の怠慢。大事を成そうと志す指導者が細事を疎かにするのは如何なものか」

 

相変わらずの重箱の隅を楊枝で穿る的確な指導を欠かさなかった諭吉さんマジ教育者の鑑。人格は別として彼のような人物こそ、現在の日本に必要ではないでしょうか。実際、アフターコロナの日本で何よりも力を注ぐべきなのは医療教育であると思っています。医療は言わずもがなですが、教育の優先順位は経済や文化よりも上(個人の感想です)。特に科学・哲学・統計学を重視しないと同じ状況に直面した時、またぞろ手段と目的を取り違えた輩が事態を悪化させかねませんので。でも、最も重視すべき科目は国語でしょうね。

 

『検査』は『治療』じゃない

『不顕性感染』は『陰性』じゃない

『緊急事態宣言解除』は『終息宣言』じゃない

 

この辺の基本的な言語教育からガッツリと叩き込んでいくべきと愚考仕る次第。初っ端から色々と溜まっていたものが噴出した今週の更新ですが、内容は通常通りの感想記事がメイン。諸事情でそれぞれ短め。あ、噴き出しついでに異動になった上司に言っておく。お前の送別会が開かれなかったのはコロナの所為じゃないから。今週の話題は3つ。

 

 

1.『麒麟がくる』第二十話『家康への文』簡易感想(ネタバレ有)

 

明智光秀「何が蹴鞠じゃ!」

足利高氏「蹴鞠を馬鹿にするな!」

 

池端大河の新旧主人公の主張が真っ向から角突き合わせた十兵衛君の問題発言。朝倉サンタマリアが面接をすっぽかしたのは本人の所為であって、蹴鞠が悪い訳ではありません。それに公家の接待も大名の仕事だからね。しかし、十兵衛といい、川崎尚之助といい、ハセヒロから滲み出る『不遇な牢人感』が半端ない。流石はプロの高等遊民。

尤も、今回の実質的な主人公は最終形態に進化した松平元康。来週に控えた桶狭間の戦いを今は越前でブリを託つ(©アグナ)十兵衛抜きで如何に描くかと思っていましたが、十兵衛~帰蝶様~信長~元康のコツコツシコシコと積み重ねてきた人間関係でグルリと包囲する構成とは。次回の内容次第ですが、現時点では挑戦的な試みとして好印象。特に些かやり過ぎではないかと思えるレベルで描かれてきた帰蝶様のキングメーカーぶりが説得力の源になっております。『熱田にいる身内を人質に取って、竹千代を織田方に取り込め』という指示を出す十兵衛も十兵衛ですが、それを冷徹・完璧に信長に遂行させる帰蝶様マジ帰蝶様。リアタイ視聴時は必要性に疑問を抱いた竹千代時代の元康と十兵衛の邂逅も、今回のための布石であったかと思うと、ロングスパン回収に特化した池端脚本であることを改めて実感しました。特に元康が御大の方の手紙に心を動かされるシーンは第一形態から描いてきたのが効いていますね。『死ねばいいのに』といわれた青木パッパ涙目。あとはこれらの伏線・布石を次回で如何に回収・消化するか。あまり凝り過ぎると桶狭間陰謀論みたいな描かれ方になってしまいそうですので、程々に押さえつつ、十兵衛~帰蝶様~信長~元康ラインの有用性を示すという、非常に難しい匙加減を要求されそう。

尚、今回の『家康への文』というサブタイは地味に落第点。視聴者への判りやすさを優先したのかもですが、現時点の名乗りは元康である以上、作中の設定を踏まえて欲しかった。或いは『竹千代への文』でもよかったかも。

 

 

2.『太平記』第九話『宿命の子』簡易感想(ネタバレ有)

 

「お父もお母も三河国の足利党に焼き討ちされて殺された! 誰がやったか判らないから棟梁のお前を殺る!」

 

筋が通っていなくはないものの、余りにも短絡的過ぎる石のリベンジ哲学。ディアボロの『なんかわからんがくらえ!』に匹敵する取り敢えず攻撃してみました感が半端ありません。第一、現時点での足利家の棟梁も襲撃の黒幕もパパ氏ですからね。主人公の高氏が『残念な子』なのは周知の事実ですが、石はその高氏に負け続けるポジションなので、高氏以上に『残念な子』に描かれてしまうのが哀れではあります。登子を見て『おっ、ヨッメ連れとるやんけ! 動揺させたろ!』と、

 

「わぬしの婿殿はわしの妹を慰み者にしおったのじゃ!」

 

との衝撃発言で戦いの主導権を握ろうとしたものの、如何せん登子さんは新婚初夜に弟とリフティング勝負をするという婿殿の奇行に慣らされてしまっていたのか、その程度の話では大してダメージを受けなかった模様。高氏君、結果的にファインプレイでした。勿論、感情を露にしないだけで内心はモヤッとしたものが渦巻いているのは確かでしょうけれども、

 

登子「登子は昨日の月がどのようであったか、満ちていたのか欠けていたのか存じませぬ。また、知りたいとも露思いませぬ。今日の月、明日見る月がこのように美しければ、それでよいのでございまする」

 

と高氏を丸ごと受け止める登子さんマジイケメン。赤橋守時の次に抱かれてもいい。イケメンといえば、今回も動きにくい礼服で大太刀回りをする真田さんもマジイケメン。地面から身を翻して濡れ縁に着地するシーンは地味に難易度高いぞ。高氏君も『北条の姫君という理由で登子にきつく当たるのはよせ』と腹黒い弟の直義に釘を刺すシーンがマジイケメン。時宗の僧侶が斬られた時もそうでしたが、ここぞという場面で『自分ではない誰かのために動く』というヒーローの資質を表すのが高氏君の美点ですね。まぁ、腹黒い弟の直義にいわせると『その資質をコンスタントに出せ』との心境でしょうけれども。

そして、序盤のシリアス&萌えシーンを牽引してきたパパ氏さん、事実上の退場。元々は病床に臥せたままで家時自刃の様子を語る予定でしたが、緒形さんの『火を見たい』という提案で本作のようになったとか。胸に野望の炎を灯したままで朽ちる貞氏の無念を表したかったのでしょう。あとは師重の華佗の術とかいう判る人にだけ判れ感満載の台詞すここのこ。

 

 

3.『天気の子』簡易感想(ネタバレ有)

 

森嶋帆高「もしも神様がいるのならば……お願いです。もう充分です。もう大丈夫です。僕たちは何とかやっていけます。だから、これ以上、僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないで下さい。神様お願いです。僕たちをずっとこのままでいさせて下さい」

 

昨年、喜寿に手が届こうかという父親が一人で映画館に見に行って『結構面白かった』といっていた作品。彼は『コンフィデンスマンJPロマンス編』序盤の登場人物&設定紹介の時点で半分寝るタイプなので、どこまでストーリーを把握していたのか不安でしたが、実際に本作を鑑賞して親父を見直しました。面白いかつまらないかという判断は別として、結構難しいぞ、この作品。まぁ、煎じ詰めれば、

 

世界を犠牲にしても惚れた女を選ぶ

 

というダーク・シュナイダー的価値観に集約されると思いますが、世界の変化とは何かという命題に歴史学的・地質学的スパンで挑んでいる点は『新しい生活様式』が取り沙汰される現代にも通じるものがあります。何が契機で世界が変わるか判らないし、世界が変わったからといって、人々の意識や暮らしが即座に転換する訳でもない。水没した東京でバスの代わりに船舶が当たり前のように運航するラスト近くの情景は『変わるのではなく、慣れるのが人間の在り方』というのが本作の隠れた主張ではないかと思います。何か起こると今までのやり方は全部ダメ何もかもチェンジしなくてはいけないと声高に叫ぶ方々もおられますからねぇ。主人公が本当に世界を変えたか否かも掘り下げ甲斐のあるポイントでしょう。

尤も、作品としては全く好きになれなかったのも事実です。主人公が世界よりも女を選んだことは全然問題ないのですが、それ以外の主人公の言動がいちいち間尺に合わなくてイライラしました。中盤くらいからヒロインを救おうとする主人公が警察に邪魔される展開になるのですが、何故、主人公が警察に追われているのかを端的に述べると彼が、

 

街で拳銃を発砲した未成年の家出人

 

であるからです。警察がチャカをブン回す子供の身柄の確保に動くのは理の当然で、意地悪で主人公の邪魔をしている訳ではありません。半グレのポン引き野郎は兎も角、何も悪くない警官相手に発砲するとかドン引き。しかも、チャカをブン回してまで主人公が家に帰りたがらない理由が殆ど描かれていないので、彼がムキになって警察の介入を拒否する動機が全く理解不能。家族とうまくいっていなさそうなのは東京で疑似家族ごっこに興じている描写で何となく判りますが、終盤で家に連れ戻されてから高校を卒業するまで普通に過ごしているので、実際は大した問題ではなかった可能性もあります。それが思春期の不安定さといえばそれまでかも知れませんが、自分から警察を敵に回す行動をさせておいて、それをさも主人公のピンチであるように見せようとするのはキャラクターの動機づけの観点において完全無欠の落第作品といってよいでしょう。上記した主人公の台詞も成長を拒否するガキンチョそのもの。まぁ、本作は主人公の『成長』ではなく『選択』が主題の物語とはいえ、この辺も共感しにくい要因になったと思います。

 

 

 

 

 

 

『麒麟がくる』第二十一話『決戦! 桶狭間』&『太平記』第十話『帝の挙兵』感想(ネタバレ有)

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『麒麟がくるまでお待ちください 戦国大河ドラマ名場面スペシャル』

 

6月14日(日)「独眼竜政宗」

6月21日(日)「国盗り物語」

6月28日(日)「利家とまつ」

 

放送予定リストに一人アレがおるよな(誰とは言わんが)

 

番組紹介のHPを見るかぎり、MCに芸人の名前が並んでいたり、当時の撮影秘話が語られたりするらしいですが、小細工なしで名作回をそのまま流して欲しいというのが正直な感想です。それに加えて初回から『独眼竜政宗』というのも一回表の先頭バッターの初球に最高の決め玉を投げてしまった感あり。あとの投球の組み立てに苦労しそう。個人的には以前BSで放送された『太閤記』の本能寺の変回をやって欲しかった。

ともあれ、今週で一時放送休止に入る『麒麟がくる』。コロナで収録休止はやむを得ない事情と思いますが、ここでヒキとはやはり酷だ、残酷です。予告に登場したクッソ麻雀が強そうな近衛さんとか、歴代大河で一番人がよさそうな義昭さんとか、従来の人物像と異なる解釈になりそうなキャラクターが続々と登場しそうなので、早く続きが見たい。今回のポイントは4つ。『太平記』の簡易感想もあるでよ。

 

 

1.誠意とは言葉でなく領地

 

松平元康「ここで掌を返せば、家臣たちに勝てるかどうかも判らぬ今川様との戦を強いることになる。駿河にいる妻や子や身内の多くが囚えられ殺され、己は終生、裏切り者と言われる」

 

信長による元康への調略失敗。元康は将来的に二枚舌とか腹黒狸とか焼き味噌とか呼ばれるので、今はその程度の悪評を気にするなと優しく諭してあげたいところですが、現時点では妻子と僅かな家臣団を守り、何時の日か三河に帰るのを夢見るのが彼の精一杯。そこで博打に出ろというのが無理な話かも知れません。先回の感想で今週の本編が桶狭間陰謀論になりやしないかと危惧していましたが、元康の動きは彼のおかれた状況の中で最も自然で無理のない流れであったと思います。それだけに、

 

鵜殿長照「義元公も三河守におなりになって、早速のこの快挙。さぞ御喜びであろう。国を出られる直前、朝廷より三河守に任ぜられたのじゃ。これで殿は名実ともに三河の主じゃ」

松平元康(おかしい、こんなことは許されない)

 

のシーンは元康が消極的サボタージュに出る(逆にいうとそれが現在の元康に出来る精一杯)動機づけとして機能していました。しかも、このサボタージュが回り回って義元の死命を制する遠因=手元の予備兵力不足に繋がるのが実に面白かった。あと、

 

梁田政綱「水野殿の説得は今のところ功を奏しておりませぬ。ただ、御傍に仕える譜代衆の中には『何時でも離反の用意がある』という者もおり、水野殿はなお元康殿の説得に動くとのことにございます」

 

という元康の立ち位置が完全に後年の関ケ原の金吾と一致。加えて『今は飯食っているから此処から動けん』と動員を拒否るのは『宰相の空弁当』に通ずるものがありました。色々と因果は巡るんやなぁ。

 

 

2.今、お前騙されているんだよ

 

帰蝶「殿、籠城では?」

織田信長「この城の中には今川に通じた者もおる。しばし、籠城と思わせる」

 

今川勢の兵力分散に乗じて一気に本陣を急襲すべく、籠城を擬態する信長。敵を騙すにはまず味方からというのは謀略の基本ですね。しかし、この場面の真の恐ろしさは戦場における情報戦ではありません。もし、今川勢が兵力分散をせずに大軍であったらという帰蝶の危惧に『その時はその時! 道三が生きていたら今川を討つ絶好の好機と見做すに違いない! どうせ人間いつかは死ぬのだから、何も恐れることはない!』とクッソカッコイイ台詞で彼女の心に揺さぶりを掛けたあとで、

 

織田信長「名は奇妙丸。わしの子じゃ。吉乃という女子が生んでくれた。わしが死んだらあの子を育ててくれ。わしはこの十年、其方を頼りに思うてきた。今もそうじゃ。尾張の行く末を其方に任せる」

 

このタイミングで隠し子の存在を明かす信長。まさに最大の味方を今まで騙し続けていた訳ですね。帰蝶は出陣前の夫を詰る訳にいかず、勝ち戦の場合は喜ばない訳にいかず、討死したらそもそも文句を言うことも出来ないという八方塞がりのシチュエーション。奇妙丸を膝だっこして泣き笑いするしかありません。急遽駆けつけた十兵衛との、

 

明智光秀「あの御子は……?(あっ……察し)

帰蝶「……天から降って来た大事な預かりものじゃ(こんな時だけ一早く察するな!)

 

の遣り取りホントすこ。でもね、帰蝶さん、今、目の前にいる男が二十二年後に旦那と膝の上の子供を消しますよ。近年の研究では『信長と信忠を同時に討つ好機』が光秀に本能寺の変を起こさせたと言われていますが、こんな子供の頃から会っていた&義母とも仲の良い十兵衛おじさんが謀叛を起こすとは考えもせずに、ノコノコと二条城に入ってしまったんやろうなぁ。ともあれ、キングメーカー稼業に熱中するあまり、嫁いで十年経つのに自分たちの間に子が生まれない状態で、旦那が側室を持たないと信じて疑わなかった帰蝶様が迂闊過ぎたといえるかも知れません。

 

 

3.『夢』を食べれば生きていける(ガンギマリ顔)

 

今川義元「まさか、乱取りを行うているのではあるまいな? 愚か者めが! 敵が残した食い物や金目のモノを漁り回るのは野盗と変わらぬ下衆の振る舞いぞ! それだけは禁じた筈じゃ!」

 

この義元、全然油断していない。

 

進軍の途上で随所に適切な兵力を配置しつつ、軍律違反の味方の不始末で空いた穴を本軍で補うといった具合に、まさに用兵の王道を歩んでいた本作の今川義元。定番の酒宴シーンも油断の演出というよりは低賃金でコキ使われる元康との対比の意味合いが大きかったと思います。当初は織田と松平の敵になる今川を観察するために潜り込んだ元康でしたが、上記のようにギリギリの場面で今川に背くのを拒み、消極的サボタージュに出るのが精一杯であったことを思うと、超過勤務を強いることで逆に組織への隷属の精神を刷り込むブラック企業特有の体質が今川にはあったのかも知れません。乱取りの一件も部下への報償をケチったために発生した可能性もアリ?

それはさて置き、今回の桶狭間の戦いは新説に基づき、決して油断しない義元が何故討ち取られてしまったのかを精緻に描いた内容でした。最終的には兵力分散が敗因とはいえ、油断や慢心ではなく、目の前の状況に対処していった結果、兵力が分散してしまった訳ですね。これが大河ドラマの一話の作品として制作された意義は大きい。今後の桶狭間のスタンダードになることを祈ります……が、内容的にはドラマというよりは歴史番組の再現映像に近い印象になってしまったのは否めません。合戦シーンの迫力のなさを筆頭に、脚本の出来に他の要素がついていけていなかったのではないかと思います。基本、脚本が作品出来の7割を左右すると思っている私ですが、今回は演出系が物心両面で至らなかったかなぁ。兵力差の図説も判りやすい反面、物語にのめり込めないのよね。映像を貼りつけるのではなく、将棋の駒や碁石の数と配置で表現してもよかったのではないでしょうか。あとは『真田丸』のようにナレーションを活用するという手段もあったかも。

 

 

4.お母さん? 帰蝶が?

 

織田信長「父上はわしを褒めなかった。余計なことをすると叱りつけられた。わしは何をしても褒められぬ。子供の頃から誰もわしを褒めぬ。母親も兄弟も……帰蝶は何をしても褒める。いつも褒める。あれは母親じゃ」

 

『他人からの承認欲求への飢え』が行動原理であることが改めて提示された信長。蝮の娘にバブみを感じてオギャる信長の闇の深さよ。まぁ、この辺は信長本人の性癖というよりも、妻に母性を求めざるを得ない状況に追いやった土田御前に責任があります。逆にいうと土田御前が信長に目一杯の愛情を注いで育てていたら、信長も竹千代に将棋でクソザコナメクジ扱いされるレベルに留まっていた可能性もあるので、結果的に土田御前による育成は成功と評してよいでしょう。しかし、帰蝶様はキングメーカーを気取っていたら、実はオカン扱いされていたというのが微妙に可哀想。ある意味で妻としては最大の屈辱ではないでしょうか。私はアンタのママじゃないのよ。或いは二人の間に子が生まれなかったのは信長に精神上の母親を孕ませるなんてトンデモないという禁忌の感情が働いていたのかも知れません。改めて信長の抱える闇は深い……というか、あの二人の間に実質的な夫婦関係があったか否かも疑問視してしまいそうです。それでも、今川の首級の次は『天下』ではなく『美濃』というのが、信長なりの愛情(男女のではない)の示し方なのでしょう。

 

 

 

『太平記』第十話『帝の挙兵』簡易感想(ネタバレ有)

 

日野俊基「この下郎(げろう)! ここは宮闕(きゅうけつ)なるぞ! 退(すさ)れ退れ!」

 

本作特有の気品漂う台詞と見苦しい鬼ごっこのコントラストが印象に残った日野俊基再捕縛シーン。この場面の日野殿は矢鱈滅多と蹴る! 蹴る!! 蹴る!!! 『平清盛』の主人公や西行法師が可愛く見えるレベルの足癖の悪さ。処刑場での日野殿の涼やかな振る舞いに我らが高氏君は初恋の人を喪ったような衝撃を受けていましたが、この捕縛の現場に居合わせていたら、百年の恋も一瞬で醒めていたかも知れません。ある意味で幸福な男、高氏君。更には朝廷が内裏に保護を求めた日野殿を見捨てるという倒幕サイドのドス黒い面を見ずに済んだことも高氏君の今後の行動に何らかの影響を与えたと思われます。本作ではギリギリ描かれませんでしたが、日野俊基が捕縛された時、高氏君が美しいと慕う帝は何をしておられたかというと、

 

後醍醐帝「たまたま病気で寝ていて知らなかった。俊基のことをとても心配していた(棒

 

と『増鏡』に記されている通り、今回も日野殿をトカゲの尻尾として捨て殺しにした訳ですからねぇ。こんな証言、信じろというのが無理な話やろ。しかも、日野殿をパージしておきながら、三月も経たずに暴発気味に挙兵するとか……ほならね? 日野殿が庇護を求めた時に決起しろって話ですよ。私はそう言いたいですけどね。今回のみならず、今後も繰り返される後醍醐帝のアレな言動って、究極的には『よもや朕は殺されまい』という或る種の甘えに起因しているよね。実際、彼の身代わりやスケープゴートにされた人物は悉く非業の最期を遂げている訳で、後醍醐帝がやんごとなき身分の御方でなければ、確実に消されていたでしょう。ちなみに本作では日野殿の処刑を受けて、後醍醐帝が決起した流れになっていますが、史実で日野殿が斬られたのはこの翌年。馬超の叛乱と馬騰の処刑の因果関係と同じで物語を描く側の都合という奴です。あと、文観が捕らえられる場面、何処かで似たようなシーンを見覚えあると思ったら翔んで埼玉やったわ。護摩壇を前に結んだ印が埼玉ポーズでも違和感なかった。

 

一方、鎌倉では佐々木判官殿が長崎円喜の軍門に降りました(表面上は)。『ばさら』で鳴らす判官殿が裸足で逃げ込んで来るところに事態の深刻さが窺えますが、高氏の前でも自身が屋敷の主人のように振る舞うのが判官殿の判官殿たる所以。『判官殿を襲撃すれば、彼を寵愛している高時と覚海尼が円喜を許すまい』と分析する腹黒い弟の直義にも、

 

佐々木道誉「逆に考えるんだ。既に高時と円喜は手打ちを済ませたと考えるんだ」

 

と上から目線の御説教。これ、一見すると説得力ありそうですが、全部判官のデマカセの可能性も捨てきれないからな。その辺を訝しんだのか、長崎円喜の軍門に降るから同道してくれという判官殿の申し出を手厳しく退ける高師直マジ有能の極み。こんな誘いにホイホイと乗っかってしまう高氏君マジKYの極み。如何に帝の御謀叛の件で生命を救われたとはいえ、そもそも、判官殿がいなければ事件に巻き込まれずに済んだ可能性もあるので、足利家としては微塵も恩義に感じることはないのですが、その辺を判っておるのかね、高氏君は……とはいえ、このまま判官殿をにべもなく追い返したら、その足で長崎邸に駆け込んで、

 

佐々木道誉「全部足利高氏って奴の仕業なんだ」

 

とカイザさんばりの笑みを浮かべながら、円喜にあることないこと拭き込むのは確定的に明らかなので、結果的に高氏の判断は奏功したと評してよいでしょう。常に結果オーライの男、高氏君。ホンマ、得な性格しているわぁ。

そして、前回から病床に臥せっていたパパ氏も、

 

足利貞氏「美しいものでは長崎殿は倒せん……美しいだけではのぅ」

 

という今後の展開を暗示する名言を残して退場。お疲れ様でした。ちなみに高氏がパパ氏の危篤時に巻狩をしていたという設定ですが、当時の巻狩は軍事演習神事でもあるので、この点では高氏には(珍しく)非はありません、念のため。パパ氏逝去のシーンでは誰もが涙に暮れる中、一人だけ泣いていない師直が印象に残りました。多分、この瞬間にも様々な計略を張り巡らせているんだろうなぁ。高師直とかいう好色なオーベルシュタインすこ。

 

 

 

 

 

 

『麒麟がくる』前半総評 ~麒麟がくるまでの余話として~

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先週で一時放送休止となった『麒麟がくる』。今月末から収録が再開されるのは嬉しいですが、事情が事情なので決して無理をせずにスタッフの安全を最優先に制作を進めて頂ければと思います。俺らは一年でも二年でも麒麟を待つぞ。そんな訳で暫くは現役大河の感想記事もお休みを頂きます(『太平記』の感想は状況に応じて継続予定です)が、一時放送休止&全四十四話中二十一話終了=折り返し地点目前ということで、ここまでの本作を振り返る意味も込めて、今週は『麒麟がくる』の前半戦の総評を行いたいと思います。恒例の年末の総評はクオリティの割に準備に二~三カ月はかかっているので、それに比べるとアッサリ短目の内容&作品の落着点が見えていない現状では多分に歯切れの悪い文章になりますが、何卒ご了承下さい。全体の構成も特に工夫をせず、シンプルに長所と短所を列挙したうえで、現時点での印象を記すことに致します。

 

 

まずは長所から。最初に特筆すべきはキャラクター造型の面白さでしょう。母性愛と承認欲求に飢えたサイコパス聖帝信長、六歳で接待将棋を強いられる闇深竹千代、代役とは思えないハマリっぷりのキングメーカー帰蝶、公共放送によるステマ疑惑が囁かれる銭ゲバ伊右衛門道三、十兵衛への重過ぎる愛に全視聴者が戦慄したストーカー義龍、戦国一油断のならない人物なのに何故か作中随一のゆるキャラと化した鉄砲プレゼントおじさん爆弾正、織田家disのキレ味に定評のある毒舌家平手のジイといった具合に、本作は従来の戦国もののテンプレから外れているにも拘わらず、なかなかに魅力的なキャラクターで溢れています。前半戦のキャラクターランキングを組むとしたら、帰蝶、道三、信長がトップ3でしょうか。特に帰蝶は前任者のアレがナニした件による緊急登板にも拘わらず、視聴者からの人気が押し並べて高いですね。伊呂波太夫に砂金ドンするシーンを中心に謀略を画策するキャラクター造型はエリカ様の当て書きっぽいですが、川口帰蝶も普段の愛らしいイメージとのギャップが逆に好印象になりました。ようやっとる。ようやっとるよ。序盤の帰蝶様のシーンだけ季節が違うとかいうな。主人公も物語をグイグイ引っ張るタイプではないにせよ、諸々のおつかいクエストを無難にこなしており、強い印象は残さないものの、決して不快な存在ではありません。近年の大河ドラマの主人公は作品のクオリティの善し悪しこそあれ、受動的なタイプが主流(その意味でも清盛は異端でした)なので、この辺は許容範囲。第一話のOPテーマ前に主人公が手ずから数人を斬殺する血腥さや、村木砦を鉄砲で攻める織田軍をwktkな表情で見つめるシーンからも判るように、十兵衛はイケメンではあってもスィーツではないのが有難かったですね。

 

次にストーリー面では随所で見応えのあるシーンを楽しめました。序盤のクライマックスとなった『道三の罠』。第二話で早くも大規模な合戦回&様々な意味で巷を騒がせた伊右衛門茶事件が印象に残りますが、この回の神髄は夫を叱責するフリをしながら、実は父親に助命を請うていた帰蝶&言外に駄目だねと一蹴した道三の遣り取りにありました。その場では判らないものの、あとから思い返すと気づく伏線の張り方は御見事。同じ回の序盤で道三が里謡を口遊むシーンも、実は最初から頼純を始末する気マンマンであったことを暗喩していました。何度も見返すに足る強度を備えている作品ですね。先項で触れたように基本的におつかいクエストの消化がメインの十兵衛も、逃避行の途中で『食べ物を探してくる』という伊呂波太夫を単独行動させないよう、左馬助をつける用心深さを見せるシーンが印象に残りました。口では『お供せよ』としかいいませんが、実質的に『監視しろ』ということであり、こういう描写のおかげで、おつかいクエストに終始している主人公も前何とかさんのぼんくら官兵衛と異なりタダのツカイッパでないことが窺えます。個人的に一番エグイと思ったのは、さんざっぱら義龍を『土岐の正嫡』と煽っておきながら、合戦の場になると『親殺しは外聞が悪うございますからな(ニチャア)』と誰が何を言おうとテメェは道三の息子だよと義龍をいぢめる稲葉さんのドス黒さ。この一言で義龍を担いだ稲葉さんの心底と、彼に担がれた義龍のポジションを概ね理解出来るのは御見事の一言。のちに義龍をアッサリとナレ死させたことを思うと、稲葉さんはテンプレの悪人キャラで片づけても文句はいわれない筈なのに、こうした短い台詞で登場人物の表裏を細かく表現しようとする意欲を感じました。

 

そして、歴史クラスタからの期待値が最も高かったのは新説準拠の人物像&歴史解釈でしょうか。人物像で最もそれが反映されていたのは織田信長。自身の婚礼時に父親への返礼の品代わりに生首ドンするという、本人は合理的な思考に基づいているのに他人には理解されない悲しさと底知れない薄気味悪さは、時代の最先端を突っ走る革命児として好意的に描かれがちな信長の従来とは異なる解釈として新鮮味がありました。この場面の『わしは父上に褒めてもらえると思って……』という台詞は後年、荒木・松永・明智に謀叛を起こされる度に『何で逆らうの? 俺が何か気に障ることをした?』と真顔で答える信長の言動を踏まえたものでしょう。初めて将軍に拝謁した際の、

 

織田信長「今の世はどこかおかしい……」

 

もそうですが、コイツの言動は正しい認識に基づいている筈なのに常に悪い予感しかしませんね。そこが実に魅力的です。実際に仕えたくはないけどね。

歴史解釈での白眉は直近回の桶狭間の戦いでしょう。私の子供時代は、

 

麿&化粧&輿&油断&アホボン

 

のイメージしかなかった(だいたい司馬さん&コーエーの所為≠責任)義元ですが、ここ数十年の研究で明らかになった海道一の弓取りの実像に即して、戦場で正着手を積み重ねてきた側が何故、乾坤一擲の強制手に敗れたかの過程を精緻に描いた今回の桶狭間の戦いの筋書きは実に見応えがありました。これが大河ドラマの一話の作品として制作された意義は極めて大きいと思います。私は物語に関してはリアル(事実)よりもリアリティ(それっぽさ)を重視する主義で、全ての作品に学問上の正しさを求めませんが、最新の研究に即した人物像&歴史解釈へのバージョンアップを怠れば、歴史劇は何時まで経っても先人が耕した畑に種を蒔くばかりの先細りジャンルになってしまうのも事実。その意味で今回の桶狭間は史実の桶狭間同様、大河ドラマの歴史的転換点と評してよいかも知れません。

 

 

さて、ここまで本作の魅力的な要素を幾つか挙げて参りましたが、逆に本作の難点は煎じ詰めると、

 

作品全体から漂うモニョッと感

 

の一言に尽きると思います。魅力的なキャラクター、見応えのあるシーン、最新の研究成果を反映した展開は多いのに、それらを繋ぐ本筋のストーリーや映像がどうにもシャッキリとしない。加納口の戦いで敵の侍大将を叔父上と見紛うシーンを筆頭にその台詞やシーンや設定は本当に必要なのかと思える箇所が結構存在しました。これも上記のように何らかの伏線や布石であって、のちのちのストーリーで回収される可能性も否定出来ませんが、現時点では物語のリズムを狂わせる要素に留まっているケースも多かったです。それが最も顕著であったのは第五話&第六話。十兵衛が鉄砲鍛冶の伊平次を探しに上洛した際に将軍義輝に見える機会を得て、その暗殺計画を阻止するというストーリーでしたが、上洛した十兵衛のモブの『ここは本能寺ですか?』という英会話の教科書的な問答から始まって『中にはここから入っていけばいいのか?』とか『お侍だらけで誰も入れない』とか『公方様がおられる』~『公方様?』~『足利義輝様』とか、雰囲気で大体判る情報をいちいち繰り返すシーンは、

 

これはホントに放送してエエのか?

 

と背中が嫌な汗でビッショリになるレベルのクオリティでした。そもそも、序盤で伊平次を探す途中で、十兵衛がたらい回しにされる&袖の下を集られる描写も、丁寧といえば丁寧ですけれども、ないほうが明らかに物語のリズムがよかった。当時の鉄砲製造技術は秘中の秘で容易に鍛冶職人を探し出せるものではないことを表現したかったのかも知れませんが、それがなくても全然ストーリーは問題なく進むのも確かです。これらのシーンはアレがナニした影響でポッカリと穴が開いた尺を埋めるために急遽撮影&編集された可能性もありますが、肝心の帰蝶のシーンではそうした場面はあまりないので、これが本作の本来の意図と考えてもよいでしょう。要するに本作は新説の採用や歴史の新解釈のため、物語の全ての設定を自分たちなりの手法で一から表現することに拘りが強く、従来型のテンプレ描写で済ませることを避ける傾向があります。それ自体は志の高い思考で有難くはあるのですが、テンプレのほうがよい箇所まで無理に作り込もうとするあまり作品全体のクオリティがダダ下がりするという本末転倒な現象が随所で見受けられました。特に美芳野は道三親子二代国盗り説の描写に執心するあまり、彼女の死に関する状況の説明不足が甚だしく、結果、道三VS義龍の対立構図がピンボケで終わった感は否めません。

これは上記の趣旨とは若干ズレるかも知れませんが、登場人物の衣装の色彩設定に関しても、多少なりとも通じる事情があるように思います。周知のように本作の衣装設定は放送開始時に結構物議を醸しまして、衣装や時代考証に関わるスタッフやネットの反応によると『当時の装束は実はカラフルであった』という史実を反映している&4K8Kで見るとシックリくる色彩になっているらしいですね。その辺りの真相は将来的に我が家で4K8Kが見られるようになってから、改めて自分の目で確かめたいですが、少しでも画質のいいものをというスタッフの意気込みは判るものの、実際問題として、

 

4K8K自体があまり普及していない

 

事情を鑑みると意欲と拘りが空回りしていると思えてしまうのも確かですね。

まぁ、4K8Kの件は別として、通年&当初の予定通りに収録と放送が進んでいたら、そうしたスタッフの拘りを視聴者に伝えるための充分な基礎固めが出来たかも知れませんが、如何せん今年は二度目の幻の東京オリムピックの影響で話数を削られたうえ、周知のようにアレがナニしたために放送が半月遅れる&更に尺を失うダブルコンボに見舞われてしまったのが致命的でした。モニョッと感の原因は上記の他にも、

 

・脚本家の意図を現場が拾いきれない

・大河ドラマを制作する基礎体力の低下

 

も考えられますが、後者は兎も角、前者はスケジュールの遅れが一因になっている可能性もあるので、視聴者的に斟酌の余地はあると思います。むしろ、アレがナニした割に帰蝶が際立って面白いキャラクターとして、視聴者に認識されていることを褒めるべきかも知れません。尤も、スタッフもキャストの交代によるクオリティの低下を危惧し過ぎたのか、帰蝶の描写に力を入れ過ぎるあまり、主人公や他に描くべき武将が目立たなくなったのも事実ですね。帰蝶はスィーツ思考と真逆のキャラクターなので、見ていて面白くはあるのですが、もうちょい力を入れるべきキャラクターが存在した筈です。帰蝶の兄貴とか。また、キャスティングは信長や道三を筆頭に従来の人物像を覆すイメージの俳優が選ばれているのは嬉しいですが、今思うと見た目は従来型なのに中身は全然違うほうが、視聴者の印象はよかったかも知れません。特に本作の信長は新しくはあるのですが、従来の信長とのイメージの違いに戸惑っている視聴者も少なからずいる模様(少なくとも我が家に約一名)なので……その点で『真田丸』は見た目は定番なのに中身がイメージと違うキャラクター設定が巧かったなぁ。

あと、合戦シーンはおしなべて低クオリティ。『平清盛』の夢幻一騎討ちと異なり、道三が義龍に親殺しの汚名を着せるために一騎討ちを挑みに来るというキチンとした理由に裏打ちされていた長良川の戦い、そして、上記のように最新の研究を踏まえた新たなるスタンダードとなるべき桶狭間の戦いも構成や筋書きは別として、肝心の合戦シーンは落第点でした。単純にエキストラが少ないというだけでなく、戦場のド真ん中 or 敵が城に迫っている状況で長話をするのが緊張感に欠けた主要因。後半での巻き返しを期待するや切。

 

 

毎年恒例の当年の大河ドラマを食べ物に例える企画ですが、今年は現時点では、

 

崩れた目玉焼きを炒め直した半生スクランブルエッグ大河

 

かな。当初は綺麗な目玉焼きを作ろうとして、予期せぬアクシデントで形が崩れて、態勢を整えているうちに時間がなくなって、それでも何とか水準点に届く料理に仕上げたものの、ゴチャッ&モニョッとした感覚が拭えない。半生も好き嫌いが分かれますからね。一方で序盤に比べると尻あがりにジワジワ面白くなっているのも、諸々の問題点をクリアする過程で半生に火が通っていく感じがあり、今後の調理次第で極上のスクランブルエッグに変貌する可能性への期待も込められています。

 

以上が『麒麟がくる』の前半総評です。点数は現時点ではつけにくいかな。センター試験当日に大雪が降った所為で予定通りに会場に辿り着けなかった受験生感があるので、具体的な数値が要求される採点は最終回を見終えるまで保留致します。尚、前半限定とはいえ、一週間で総評を仕上げる暴挙を仕出かしたので、来週の更新はお休みを頂くかも知れません。上半期ベスト10企画も控えていますからね。

 

 

 

 

 

臨時休業のお知らせ ~2020/06/22~

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先週の記事でも述べたように、今週の更新はお休みを頂きます。前半戦限定とはいえ、現役大河ドラマの総評記事を一週間でまとめるのは流石に骨が折れたので、今年二度目の臨時休業。まぁ、本作最大の問題点である駒ちゃんに言及するのを完全に忘れていた段階で、如何に頑張った&疲れたと言い張ろうともやっつけ仕事の感は拭えないとの自覚はありますが、その辺は本編終了後の総評完全版に取っておこうと思います。尤も、ハセヒロの『全四十四話完パケしたい』というメッセージを鑑みると『麒麟がくる』の完結越年はほぼほぼ既定路線のようですね。毎度毎度、年末の忙しい時期に頼まれもしないのにヒーヒーいいながら総評記事を書いている身としては、今年の年の瀬は例年よりも落ち着いて過ごせそうなことに複雑な思いと些かの安堵感を覚えていますが、よくよく考えると放送スケジュールが3カ月押したら、最終回は会社の決算&確定申告の時期を直撃しそうなのよね……地獄! 余りにも地獄!

 

与力「これは極論だがね……この際、先代帰蝶と五輪で削られた話数を復活させて、来年の6月まで放送したらどうだろう? そりゃあ簡単にはいかない! 恐らくは『青天を衝け』のスケジュールも一杯一杯だ! だが! 実際に本能寺の変と山崎の合戦が起きた月に合わせて放送すれば、話題性も充分なんじゃあないかなあ? グレゴリオ暦? 何それ美味しいの?

 

と久々の極論おじさんモードに入ってしまいました。

そうそう、極論おじさんといえば、先日放送された『映像の世紀 ~オリンピック 激動の祭典~』は、嘉納治五郎や金栗四三といった『いだてん』の登場人物の映像が随所に盛り込まれていて、非常に見応えがありました。まーちゃんが『一種目モ失フナ』と上から張り紙をしたクーベルタン男爵の『五輪は参加することに意義がある』という名言は、大会参加が個人から国家単位になったために試合がギスギスしてきたことを懸念した際のものであったのですね。尤も、その名言の解説シーンにドランドの悲劇の映像を被せるスタッフの底意地の悪さよ。如何に高邁な理想を掲げようとも、現実はクーベルタンの理想とは程遠かったことが判る人にだけ伝わる構成でした。御見事。

一番印象に残ったのはメキシコ五輪編でしょうか。表彰台で抗議パフォーマンスを行ったトミー・スミスとジョン・カーロス、そして、彼らの行動に賛同したピーター・ノーマンが、アスリートとして不遇の後半生を強いられたのは色々と考えさせられました。個人的には彼らを大会から追放したIOCの判断は間違っていないと思います。この種の特例を認めると五輪が政治宣伝の場になってしまいますからね。勿論、近代五輪自体が政治と密接に繋がっていることは周知の事実とはいえ、建前は大事。それにスポーツとはルールを共有することで参加者の平等性を確保するものですから、それに反した参加者にペナルティを与えるのは運営の責任でもあります。しかし、自身のキャリアと表彰台の栄誉を犠牲にしてでも、己の信条を貫いたスミス、ノーマン、カーロスの行動にも胸を打つものがありました。特に二人に同調したという理由で不遇の後半生を終えたノーマンの葬儀で棺を担いだのがスミスとカーロスとかドラマティックにも程がある。そして、サンノゼ大学にスミスとカーロスの銅像が建てられた際、本人の意向で敢えてノーマンの席を空けておき、

 

「ピーター・ノーマンは共に立った。どうかあなたもここに立ってほしい」

 

と記すという完璧過ぎる流れに胸と目頭が熱くなっちゃいましたよ。全米が泣きそう。

全米といえば、ここ数カ月、上記にも関連する騒動の流れで、サムおじさんが半世紀遅れて雀狩りおじさんの顰に倣う状況になっているようですね。私は今回の騒動は『差別』よりも『格差』に原因を置いて考えたほうが理解しやすいのではないかと思い、近いうちに時事記事でも書こうかと予定していましたが、上記の番組を見て執筆を断念しました。どの国にも他の国においそれと口を出して欲しくない事案はあるものですが、サムおじさんにとっては当該案件と銃社会がそれに該当するのではないかと思いましたので。方法論の是非に関しては意見が分かれるようですが、それらもひっくるめて、そちらの国内でよりよい結論を導き出すことを願っています。尤も、あちらさんはマニフェストデスティニーとかいう有難迷惑大きな御世話な思想にどっぷり浸かっている御国柄でもあるので、今回の事案に関しては如何なる結論に至ろうとも他国に同じ思想を強要しないよう、そして、銅像をブッ倒す程にジェファーソンを嫌う現地の方々は御手元の2ドル紙幣を私に送って下さいますよう、伏してお願い申しあげます。

 

 

 

 

 

『~literacy Bar~』特選・2020年上半期ベスト5+α(ネタバレ有)

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今年、管理人が触れた諸々の作品の中で特に印象に残ったものを列挙する年末恒例企画にして、ここ数年は上半期に一度、ランキングをまとめるのが慣習になりつつある当該企画。今年上半期はアレの影響で昨年以上に企画の難航が予想されたが、豈謀らんや、例年に勝るとも劣らない布陣となった。今年下半期もアレの影響が懸念される昨今、上位5作品がそのまま年末のベスト5に繰り越しになる可能性もアリ。もしかするとベスト企画と大河の総評を書かずに年越し出来るかもとか不埒なことを考えているのは内緒である。ベスト10~6位は以下の通り。

 

第10位『とんがり帽子のキッチン』

第9位『シティーハンター the movie 史上最香のミッション』

第8位『ちいさな独裁者』

第7位『太平記』(再)

第6位『B・N・A』

 

『B・N・A』は差別、貧困、格差、犯罪、民族紛争、歴史認識、ポリコレ、テロリズムという某美しい国で話題になっている対立構図を闇鍋の如くブチ込みながらも、説教臭さを微塵も感じさせないバカアニメに仕上げた手腕を評価。第五話の野球回は(いい意味で)描いている奴の脳味噌はドーパミンとβ-エンドルフィンがダダ漏れになっているのではないかと本気で心配になった。やきう回の面白いアニメに凡作なし。欠点はアレの影響があったのかなかったのか、作画と動画のカロリーが低めになっていたこと。演出で補う手腕は嫌いじゃあないけどね。尚、当方はBS11での視聴のため、最終回のネタバレは御勘弁頂きたい。それでは、ランキングの発表に移る。

 

 

第5位『Living』(リモートドラマ)

 

『麒麟がくる』を筆頭に、多くのドラマやバラエティの収録がアレで休止に追い込まれた今年の上半期、愚にもつかない……というか、ハッキリと害悪と呼ぶべきワイドショーをダダ漏れにする民放を尻目に、実験的な番組構成に挑んだNHKの意欲作。放送された4話がアレの制約下にあるとは思えないレベルで全て面白かった。先行のテレワークドラマ三部作が『まぁ、初めての試みだから、クオリティ的にアレなのは仕方ないよね』との印象は否めず、内容的にも不穏当なネタを避けておっかなびっくりやっていた感が拭えなかったが、後発の本作は戦争とか種族滅亡の危機とか家庭内自主隔離とか色々な意味でタイムリーなネタをブチ込みつつ、それらを笑いや感動に昇華させていた。リモートドラマと感じさせない普通に面白い作品というのが最大の賛辞になると思う。本来の意味での『やおいネタ』といおうか、良質でシュールなショートショートといおうか。一番完成度が高かったのは第3話の『おでんとビール』であるが、最も好きなのは第2話の『国境』。

 

ライ「アンタ、石くれたよね。俺、五歳の時、俺が欲しかった石くれたよね。『石あげるから溺れちゃった子と一緒に遊んでいたの、僕です』って言えって……俺、欲しかった石貰えたから『僕です』って言った。欲しかった石貰えたから、余所に預けられても内緒にしていた……覚えている?」

 

闇が深いにも程がある。しかも、この兄弟が如何なる関係なのか視聴者に色々と背景を想像させた挙句、それらをガン無視して全く関係のない場所に話を落着させるという、ナンセンスでハイセンスな内容であった。瑛太さんは『篤姫』のナヨゴローの印象が強かったが、今回みたいにブッ壊れたキャラクターのほうがハマるのかも。今回は『リモートドラマと感じさせない作品』であったので、次回作は『リモートドラマでなくてはやれない作品』になることを期待。

 

 

 

 

第4位『映像研には手を出すな!』(TVアニメ)

 

昨年の『トクサツガガガ』に続き、今年も冬季枠でヲタ心を擽る名作を世に送り出したNHK。これは極論だがね……来年の冬季枠は『燃えよペン』を映像化したらどうだろう? 勿論、主演は柳楽優弥さんで! それはさて置き、本作を見た最初の感想は『え? これって漫画原作なの?』であった。いや、番宣を兼ねた前フリ番組を見ていたので、原作付きなのは承知していたが、実際に本編を見ると『むしろ、この内容を漫画で描いている原作者さんスゲー!』と変な意味で感心してしまったのを覚えている。それ程にアニメという表現手法に適合した作品。更に監督が『夜明け告げるルーのうた』や『きみと、波にのれたら』のようにアニメの動きを追求する余りにぬるんぬるんぷるんぷるんの境界線に際どく立つ作風の湯浅政明氏であったことも幸いした。例えるならサイモンとガーファンクルのデュエット! ウッちゃんに対するナンちゃん! 高森朝雄の原作に対するちばてつやの『あしたのジョー』! ジョセフとシーザー! 吊られた男と皇帝! キラークイーンと猫草! ジョルノとミスタっつう感じっスよぉー!

単純にアニメを制作する側の視点に留まらず、ヲタク特有のイヂワルな先人リスペクトを欠かさなかったのも◎。初回でアカラサマに『未来少年コナン』(こちらもNHKさん、再放送ありがとうございます)へのリスペクトを捧げておきながら、その舌の根も乾かぬ翌週に、

 

浅草みどり「翼に角度がないんじゃよ」

水崎ツバメ「ホントだ! これじゃ風を受けられないから回らないね!」

 

ナウシカEDの風車disネタをブチ込んでくる姿勢ほんとすこ。ちなみにアニメ版と入れ替わるように放送された実写版も嫌いではない。何時までもアイデアを出さない浅草氏と水崎氏に業を煮やした金森氏が有名作品丸パクリの企画をブチあげようとする場面と、最終回のエイゾウケン ニハ テヲダスナという電報はグッと来た……が、肝心の『そのマチェットを強く握れ!』の映像が殆どないのはイカンでしょ!

 

 

 

 

第3位『劇場版ダウントン・アビー』(映画)

 

ここだけの話、夜の高速を飛ばして鑑賞しに出掛けた『劇場版SHIROBAKO』の出来はイマイチであった。やっていることが本編の二番煎じとか、ムダにオペラパートが多いとか、ランダム配布でGETしたミニ色紙が苦手キャラしかいなかった(まだタロー&平岡のほうがネタになった)とか、様々な不満要因が思い浮かぶが、最たるものは希望に溢れた本編ラストと余りにかけ離れたムサニの窮状と、その落差に見合うカタルシスを作中で示せなかったことであろう。あそこまでムサニをしょっぱい状況に追い込んだ以上、それを上回る大団円を期待するのが人情であるが、作中で製作された『シヴァ』のラストと同じく、精一杯やった割に不完全燃焼で終わった感は否めない。基本的に人気作品の劇場版は(全てではないにせよ)本編以上の冒険心よりも、予定調和なお祭り騒ぎが求められているのではないかと考えた次第である(ガルパンとかね)

その点、本作は本編で多用された家族や使用人同士の感情的な対立構造を最小限に抑えることで観客のストレスを省く一方、英国国王夫妻の行幸というビッグイベントでストーリー全体を盛りあげるというベタな劇場版の王道を完璧にこなした作品であった。身内の喧嘩らしい喧嘩はカーソンさんの臨時復帰にヘソを曲げるトーマスとボイラー技士に嫉妬するアンディくらい。観客のヘイトを全て王室の随行員に向けさせることで、普段は御世辞にも仲睦まじいとは呼べないダウントンの使用人が一致団結するという、まさにお祭り騒ぎの構成になっていた。一方、本人が打ち首を覚悟したモールズリーさんの大失態を、

 

メアリー王妃「いいのよ、慣れているから。私たちが近づくと皆、挙動がおかしくなるの」

 

とフォローしてくれたメアリーさんマジ王室の鑑。尤も、王室使用人の女性がダウントンでアレをやらかしたのはメアリー王妃のアレな為人を反映しているのかもと邪推してしまったりする。王室といえば、本作の事実上の主人公は、

 

トム・ブランソンとかいう王室の危機を二日で二度救ったアイルランド人

 

であったことに異論の余地はあるまい。これにはダニエル・オコンネルも苦笑い。コイツ、完全にマシューを越えたよな。惜しむらくはトムと並ぶ私のお気に入りのローズとロザムンド叔母様が出なかった&オブライエンさんが復帰しなかったことくらいであろうか。あと、終盤付近にバローさん純愛伝説を成就させることで価値観の変遷=時代の移り変わりを描いたのも御見事の一言。

 

 

 

 

第2位『あなたがいることで』(ニューミュージック)

 

自分の敏感な箇所を晒すという意味で『好きなアーティストを白状するのは己の性癖を暴露するよりも勇気がいる』と考える私である(アーティストの責任ではなく、あくまでも個人的見解である、念のため)が、この場を借りて申しあげると止まるんじゃねぇぞの所為で幾分ネタ曲扱いされている『フリージア』を初めて聞いた時からUruの大ファンである。この方がノイエ版銀英伝の第1期OPに起用されると聞いた時&本編OPを鑑賞した時は、ドーリア星域会戦の直前に第11艦隊の所在を掴んだヤンよろしく小躍りした。『Binary Star』はいいぞ! まぁ、私の音楽の守備範囲はグレープからB'zを経てハービー・ハンコックに至るという訳の判らなさなので、支持されても嬉しくはないかも知れないが……。

話を戻すと本作を初めて聞いた時には『いつも通りいい曲だなぁ』という印象であった。それが一変したのは忘れもしない3月30日。地上波で初めてこの方の生歌が流れた時である。丁度、世間がアレの影響で物心両面での孤立を強いられ始めた時期に、改めて耳にした本作の歌詞と歌声が、まさに今という時代のために生まれたように思えて、鼻の奥がスンとなったのを覚えている。ある意味『リンゴの唄』に匹敵する時代を反映した歌謡曲。御本人の意向や番組企画の問題はあるとは思うが、是非、年末の紅白で当該曲を披露して欲しい。ちなみに本作が主題歌を務めた『テセウスの船』は見ていない。何でやねん。

 

 

 

 

第1位『デスノート』(特別読切漫画)

 

ジャンプスクエアに掲載された『デスノート』の読切短編が上半期の第一位。感想は二月の記事でも書いたので詳細は省くが、本作は今という時代におけるデスノートの最高の使い方を示した名作であった。単純に監視カメラの増加やサイバー犯罪への対応能力の向上といった技術的進歩に対抗するノートの使用方法に留まらず、現代の世界が抱える闇と課題、即ち、

 

拡大する経済格差と富の再分配

 

に今のキラが如何に対峙するかという社会的要素を欠かさなかったのが大きい。冒頭でも述べた某美しい国の騒動も、この辺に長期化の一因があると思うと本作の着眼点のよさが窺える。

 

『入札する各国首脳は金額だけを言い、余計な事は言うな』

 

というaキラのメッセージは、自身の知的ゲームに変な色をつけられそうになったことへの不快感以上に、綺麗事ばかりで具体的なことは何もしない権力者への反発≒aキラの正義なのかも知れない。デスノートを使わず、重大犯罪にも手を染めずに勝利を収めたaキラの手際は見事であったが、現実が本作のようにはいかないのは果たしていいことなのか悪いことなのか。原作者によるデスノートの外伝はもう一作あるらしいが、そちらは未見。何時かまとめて単行本化して欲しい。

 

 

 

 

 

さて、続いては恒例のラジー賞の紹介。こちらは感想を書いた時には各方面への無用の忖度でタイトルは伏せていたとはいえ、流石に受賞記事とあっては名指ししない訳にもいかないだろう。尚、次点は『天気の子』と『ルパン三世 THE FIRST』。こちらも色々とヤバかった。

 

 

ゴールデンラズベリー賞『新聞記者』(映画)

 

見終えた瞬間に私の脳内で『デビルマン』と『さよならジュピター』のランキングが自動的にあがった作品。『総理大臣官邸の記者会見で鋭い質問を繰り返すダブルの帰国子女の女性新聞記者』という原作者の願望と自己投影を綯交ぜにしたとしか思えない主人公設定(大事なことなので今回も書きました)が何一つ活かされていないキャラクター造型。並みの映画では開始2分で死ぬレベルの登場人物の去就で30分以上も引っ張る稚拙な構成。『何かよく判らんが政府が悪いことをしているに決まっている』というプロパガンダとも呼べない低レベルな印象操作。根気強い取材シーンは一切なく、チラ裏レベルの譫言をネットで書き殴るしか能のないジャーナリスト(笑)。アンコの代わりにウコが詰まったタイヤキのように頭のてっぺんから尻尾の先までどっぷりとゴミクズ映画と評するしかないクオリティであった。まぁ、本作レベルの映画はそこそこコンスタントに製作されているのも事実ではあるが、本作の場合は、

 

作品のメッセージを原作者本人がコメンテーター役で登場して解説する

 

という主義主張の賛否以前に『これもう(映画にする意味が)わかんねぇな』と呆れるしかない点がラジー賞授与の決定打となった。本作唯一の功績は『翔んで埼玉』のアカデミー賞最優秀作品賞受賞を阻止したこと。『翔んで埼玉』は最高に面白い映画ではあるが、流石にアレが日本アカデミー賞になるのはね。『翔んで埼玉』は大好きです。大事なことなので今回も赤文字&太文字にしました。

 

 

 

 

以上が2020年上半期ベスト10&ラジー賞一覧。下半期は……いや、色々と期待している作品はあるが、実際に放送&制作されるのかという根本的な問題があるので、迂闊に名前を挙げるのは差し控えさせて頂きたい。ホンマにアレの影響は深刻で絶大やでぇ。

 

 

 

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