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『~literacy Bar~』特選・2022年下半期ベスト5+5+1(ネタバレ有)

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当該年の推し作品を列挙する拙ブログの年末恒例企画……何で越年しとるんやろうなぁ(すっとぼけ)。主な理由は『鎌倉殿』総評で燃え尽きてしまったのが挙げられるが、2022年は上半期下半期共に心に響く作品が多く、選出に悩んだのも事実。ちなみに上半期に触れたものも含めると『ラナ』『Treasure Pleasure』『Unchained World』『ミックスナッツ』『SOUVENIR』『喜劇』『罪と罰とアングラ』『SOUVENIR』『色彩』『新時代』『祝福』『君よ気高くあれ』『Endless Embrace』『MYSTERIOUS』『冥途の子守唄』『夏の雪』『ALIVE』『花の塔』とアニソンの当たり年でもあった。2023年も期待。

さて、下半期のラインナップに触れる前に上半期の修正から。順位は変わらないものの、第5位の『大地』の解釈について、当時は『あるキャラクターの存在は観客ではなく、スタッフのポジションではないか』と分析していたが、今、思い返すと俳優や芸人は権力者のプロパガンダの道具として重宝されても観客は利用価値すらなく切り捨てられるんやでという三谷さんのブラック過ぎるメッセージだと気づいて、いい意味で慄然となった(個人の感想です)。本当は怖い三谷幸喜を改めて実感。次回作が楽しみでもあり、恐怖でもあり。

 

まずは6~10位+次点の発表から。

 

 

第6位 『犬王』(劇場アニメ)

第7位 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(アクション映画)

第8位 『戦国武将、虚像と実像』(書籍)

第9位 『岸辺露伴は動かない』(TVドラマ)

第10位 『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』(TVアニメ)

次点 『相棒21-4 最後の晩餐』(TVドラマ)

 

 

第6位の『犬王』は例年であれば、ベスト5どころかトップを獲ってもおかしくない作品。湯浅監督は『夜明け告げるルーのうた』『きみと、波にのれたら』のようにヌルヌルと画を動かすことに夢中になるあまり、途中からストーリーがグッダグダになった挙句、画自体も終盤にはヌルヌルどころかぷるんぷるんになってしまう悪癖があったが、今回は原作つき&脚本を野木亜紀子に任せたのが幸いしたのか、最後まで作画動画ストーリーのテンションを落とさずに駆け抜けていた。今後も同体制を希望。

第10位の『犯沢さん』は原作版を当時のベスト10ノミネートから外した記憶があるが、今回のアニメ版でまさかの敗者復活。実際に動きと声がつくと格段に面白さがUPしたわ。コナンもキッドも安室さんもフツーに声出し出演してくれるしさ。悪意しか感じられない蘭ねーちゃんのツノの位置、狂おしく好き。

それでは、ベスト5の発表に移る。

 

 

第5位 『アキバ冥途戦争』(TVアニメ)

 

和平のぞみ「ねるなちゃん……私たち、ナイスゲームをやり遂げたよッ!」

 

尚、ゲーム中に二人死んだ模様。

 

萌えとメイド喫茶とヤザとギャグを悪魔融合した2022年最大のカオス作品。そのうえ、上記の台詞の回はプラス野球までやっているのだからワケが判らねぇ。更に途中で二人も刺されたのにゲームを続けたい敵チームのメイドが『死んでないから!』と言い張り、それを信じ込んだ主人公が最後まで試合をやり遂げるという『アストロ球団』よりもトチ狂っていたのが、この第8話のやきう回であった。第3話の総合格闘技回と並ぶ、本作のイカれ具合を象徴する最高の馬鹿エピソード。制作したP.A.WARKSに対しては昨年ラジー賞の『白い砂のアクアトープ』で『こんな作品でお仕事アニメを作った気になるな』と批判を浴びせた記憶があるが、今年は誰がこんなに頭のおかしい方向に振り切ったお仕事アニメを作れと言ったという思いで一杯である、いい意味で。出てくるキャラクターも、

 

「おひねりちゃんの着服……めくれないと思ったか?(ズドン

 

などと『めくれる』という専門用語(意味深)をポンポン使うに留まらず、すかさず傍にいた構成員……じゃない、メイドが『出頭させて頂きます!』とチャカを受け取って警察に向かうとか、メイドアニメではなく、Vシネを見ている気分にさせられた。そういや、上記のやきう回も『ダイナマイトどんどん』という元ネタのヤザ映画があるらしい。見たい。それに加えて、毎回豪華ゲスト声優が演じるキャラクターがボコボコ消されるばかりか、その多くがプリキュア経験者という点でも地味にツボッた作品であった。ただ、一時は第1位も夢ではなかったものの、物語のラストを締め括る最終回Bパートで盛大にスベったのは否めないので、この順位。正直、11話で終わっていたほうがよかったね。

 

 

 

 

 

第4位 『完本 1976年のアントニオ猪木』(書籍)

 

「アリと猪木の試合が『世紀の凡戦』となった原因は、ルールではなく、お互いの技術不足にあったのだ」

 

四天王時代の全日でプロレスに目覚めた私は生粋の馬場派を自認しているが、実は物理的な接点は馬場よりも猪木のほうが濃い。子供の頃に実家の真向かいで選挙の応援に駆けつけた猪木と握手をした程度(馬場と握手をした記憶はない。誰が自分の信仰する神仏の手を握りたいと思うであろうか。畏れ多いにも程がある)の接点であるが、それもあってか、アントニオ猪木はプロレスラーというよりも自身のイメージ活動に執心する山師のイメージが強く(その印象は今でも変わらない)、コンニャクドラゴン藤波社長の裁定力のなさにつけ込んで、世間の『極悪バタフライ』のイメージとは程遠い蝶野正洋の実直な現場運営を踏みにじる足利尊氏レベルの困ったちゃん(この印象も今でも変わらない)として、私の中では偉大さを認めつつも、どうにも素直に評価出来ない存在でしかなかった。

そのイメージは当人が他界して以降も変わらず、深夜枠を中心とした追悼番組も殆ど見ることはなかったが、昨年の上京時に帰りの新幹線で読むものを探して、何の気の迷いか手にしてしまったのが運の尽き。マジで危うく上越妙高駅で乗り過ごしそうになる程に夢中で読み耽ってしまった。『猪木は本質的に山師』という今までのイメージが覆ることはなかったが、むしろ、本作の『ガチにも対応出来る大山師』猪木の魅力と欠点を分析した内容に頷かされることも多く、特に冒頭で引用した猪木VSアリ戦の近代総合格闘技の視点から考察した再評価は、この試合を生放送で見る贅沢を味わいながらも『クソ退屈な内容であった』と口を揃えて証言していたウチの両親&他界した祖母に百篇音読しろと言いたくなった。異種格闘技戦というジャンルが未発達な時代にストライカーとグラップラーがガチンコで戦ったらああなることは、思春期~青年期に浴びるように総合格闘技を見た我々の世代には確定的に明らかであった訳で、そこをキッチリと総括してくれたのは望外の喜び。

尤も、そうした総合格闘技と戦わざるを得ない状況を作りあげ、日本のプロレスというジャンル自体を存亡の瀬戸際に追い込んだのも、本著で記されたように殆どが猪木の個人的な積悪由来であったことを思うと、つくづくアントニオ猪木とは巨大な功罪が相半ばする人物であったようだ。そうした点も含めて、本作は(私のように)猪木が苦手な人にこそ読んで欲しい一冊と言える。『2011年の棚橋弘至と中邑真輔』もそうであったが、本著者は題材が嫌いな人間にも興味を持って読ませるスキルがあり、私自身のプロレス好きという欲目を差し引いても純粋に楽しめる作品であった。同氏のプロレス著作には『1984年のUWF』が残っているが、これは次回の遠出の際まで取っておくことにしよう。楽しみ。

 

 

 

 

第3位 『鎌倉殿の13人』(大河ドラマ)

 

北条義時「これが鎌倉殿に取り入ろうとする者の末路にござる!」

 

上半期第一位作品がランクを二つ落としての第3位。上位二作品よりも劣っていた訳ではなく、前半のテンションとクオリティを微妙に維持出来なかった分のランクダウン。まぁ、それでも2022年の総合一位を問われたら迷うことなく本作を推すであろう。作品への私なりの評価は総評で触れたので割愛。上記の台詞は主人公の鎌倉幕府に対するスタンスを過不足なく表した言葉として、地味に本作屈指の名言であると思う。こちらも以前に触れたので、詳細はリンク先を御笑覧頂けると幸いである。

 

 

 

第2位 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(TVアニメ)

 

スレッタ・マーキュリー「……が、ガンダム! 飛べる! 踊れる! エアリアル!」

 

『OO』『AGE』『鉄血』と個人的にビミョーな作品が続いていた&学園モノという設定の所為で、事前の期待値が殆どゼロに近かったガンダムの最新TVシリーズ(女性主人公は待ち侘びていた)。実際、本編開始前のプロローグを完全に失念するレベルで興味が湧かなかったが、

 

「ろうそくみたいできれいだね」

 

という『鎌倉殿』に勝るとも劣らない地獄のフレーズに象徴されるプロローグの内容を人づてネットづてに見聞きし、ひょっとしてトンデモなく面白くなるんじゃないかと思って、本編を見て大正解。現時点で私的ガンダム作品ベスト5入りが確定した(1st seasonまでなので暫定ランキングではあるが)。本作の凄さは女性主人公やらトロフィー理論の否定やらポリコレやらジェンダーやらへの配慮とかでも何でもなく、

 

MSの集団戦や命懸けの戦争がなくても面白いガンダムを描ける

 

ことを証明したことであろう。まぁ、2nd season以降は本格的なドンパチが始まるのは確実と思われるが、1st seasonはそれらの要素を殆どナシでも3~4週に一度のペースで視聴者を絶望のズンドコに叩き込んだことから考えるに、先述のように本作は生半可な従来のガンダム作品よりも『鎌倉殿』に近い作風であり、プロローグの内容を踏まえるとセカンドインパクトの詳細をキチンと描いた『エヴァ』に通じるものがあると思われる。プロスペラマッマ=綺麗なマダオ説好き。

ガンダムシリーズは『Z』で続編の可能性を開き、のちに『Gガン』で『ガンダムっぽい頭がついてりゃ大体ガンダムになる』という概念を生み出したが、本作は『ガンダムは無理に戦争をしなくてもよい』という新機軸を打ち出した(ビルドシリーズはガンプラものだから除外)点で、シリーズ3度目の大きなエポックメイキングになる可能性大……とはいえ、第1期ラストのお手製トマトソースで第2期のハードルを軌道エレベーターレベルの高さにブチあげてしまったのも確かなので、慎重に推移を見守りたい。

ちなみにEDテーマの『君よ気高くあれ』が歌詞もメロディもヅカっぽさ満載なのもあってか、本作そのものも宝塚で演れるんじゃないかと思っている。ただ、スレッタとミオリネだと男役と娘役の組み合わせが混乱しそうなので、主人公カップルはスレッタとグエル先輩でお願いしたい。勿論、グエルが娘役ヒロインでね。

 

 

 

第1位 『THE FIRST SLAM DUNK』(劇場アニメ)

 

桜木花道左手は添えるだけ……(ネタバレ反転です)

 

実は『映画は好きだが、映画館で見るのが苦手』という難儀な性格である。値段とか拘束時間とかよりもこの映画、撮影している途中でスタッフの誰かがヤバイということに気づかなかったのかと思えるアレなクオリティの作品であった時、何故か、同じ会場で映画を見ている他の観客の失望感を勝手に斟酌して居たたまれなくなるという謎の感覚に囚われてしまうのだ。一種の共感性羞恥であり、他の観客は楽しんで見ているかも知れないと判ってはいても、この気持ちを抑えることが出来ずに苦労している。逆にいうと劇場でその気持ちを覚えずに全編見ることが出来た作品は自動的に私の中で名作に叙されるが、そうした作品は滅多に存在しない。

その点で本作は『閃光のハサウェイ』以来の、共感性羞恥を一切覚えずに劇場で鑑賞出来た作品であった。まず、何よりもバスケシーンのクオリティがズバ抜けており、現実の名試合を見ているような興奮を味わえた。原作連載をリアルタイムで読んでいた時にはよく判らなかった沢北のへなちょこシュートも『ああ、こういう動きなのね』と本作で漸く納得(理解が遅い)。加えて、試合以外のドラマパートを設け、原作の湘北メンバーでは比較的エピソードが少な目の宮城リョータにスポットを当てて、彼の半生と試合を同時並行で描くことで、試合自体は山王戦後半に絞り込む(前半から全部やっていたら確実にスケジュールが万策尽きそう)ことに成功していた。正直、このドラマパートは原作者の他作品『リアル』を想起させる重めのストーリーで、視聴者の賛否が分かれると思うが、私的には湘北スタメンで最も贔屓のりょーちんにスポットを当ててくれた時点で大満足。ドラマパートの所為で試合のリズムが悪くなるという意見も一理あるが、そういう方は円盤が出たら買ってドラマパートをスキップして見ればいいのだ(暴論)

尚、本作をTVアニメ版と比較して『試合のリアリティが高い! 徒競走のように長々とコートを走りながら台詞を喋るTVアニメ版はダメ!』と批判する人もいるが、それはTVアニメと劇場アニメ&20世紀と21世紀の作劇環境の違いを理解していない暴論であろう。例えるとしたら、

 

前世紀のマラソンのアベベ・ビキラと今世紀の短距離走のウサイン・ボルトのどちらが早いか

 

というような比較の設定自体を誤ったナンセンスな設問といえる。

欠点を挙げるとしたら、ボス猿のカツラ剥きがカットされたのが残念なことと、沢北サイドのドラマ描写をもうちょい増やしてもよかったと思うくらいかなぁ。公開前に散々物議を醸したキャスティングも問題なかったしね……というか、作画動画CG演出のクオリティの高さで、新旧キャスティングの違いからくる違和感は充分にカバー出来ていたと思う。

 

 

 

 

さて、2023年の注目作品は『アルスの巨獣』。作画動画キャラデザがよく言えばクラシカル、悪く言えば古臭さが拭えないとはいえ、第一話の時点でアニメは動かしてナンボという思想を全面に出した、見ていて飽きない作品である。このテンションを維持出来るかがカギ。『海賊王女』みたいに途中から動きもストーリーも失速しないことを願う。正月の記事でも触れた『岸辺露伴ルーヴルへ行く』は劇場版に相応した迫力と構成を打ち出せるか否か次第。悪い意味でTV版の延長にならないといいけれど。大河ドラマは事前の予想よりもはっちゃけた内容で楽しい。初大河脚本でこのオリジナリティと安定感は異常だぞ。もっとおっかなびっくりになると思っていたわ。やり過ぎ感も否めないけれども、良くも悪くも大河のプレッシャーに負けていないのが凄い。現時点で物語……というか、視聴者を牽引している魔王でサイコパスでド変態のオカジュン信長が退場したあとがどうなるかが最初の山場になりそうな予感。

 

あ、来週か再来週は更新をお休みすると思います。もしかしたら、両方とも。予め御了承下さいませ。

 

 

 

 


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