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『西郷どん』第十九話『愛加那』超簡易感想(ネタバレ有)

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とぅま「島の女は嫁にいくと名前が変わります。名前の下に『加那』をつけて呼びます」

西郷吉之助「ほいなら、とぅま加那は?」

とぅま「いやです、そんな心のこもっていない名前!」

西郷吉之助「心か……愛……愛はどうじゃ?」

とぅま「愛……加那?」

 

 

本名が『隆永』にも拘わらず、他人が勘違いで登録した『隆盛』という名前をそのまま使い続けたことから判るように、史実の吉之助サァは名前に無頓着な為人でしたが、愛加那命名の件はキチンとして欲しかったと思います。心=愛という発想は色々と中間点をスッ飛ばしす過ぎじゃあないですかねぇ。恐らくは心=ハート=LOVE=愛なのでしょうけれども、それはそれで当時の価値観では異端ではないでしょうか。当時のLOVEを現代で訳すと『慕う』のほうが適当かと。まぁ、本作の吉之助サァは序盤のチャン・リンシャン経由で西洋のLOVE概念を習得しているので、作中の世界観としてはギリギリ成立するのかも知れません。

 

さて、単品記事としては、実に5回ぶりとなる『西郷どん』感想。ツイッターでの録画実況でも呟いたように善いとか悪いとか以前に内容がなさ過ぎて何も書けないと思い、今週も感想記事を諦めようと考えましたが、少し心に引っかかったことがありまして、超簡易バージョンという形式でUPさせて頂きます。

上記の通り、今回の内容は薩摩の悪代官に苦しめられる奄美のために吉之助サァが一肌脱ぐというベタで中身のない展開に終始しました。特に相木市兵衛演じるダイカン・タナカによる証拠品を仕込んでの冤罪デッチあげや、とぅまに『わしのあんごになるならおやきょうだいをかいほうしてやろう』と関係を強要する#MeToo案件は、ベタな時代劇のテンプレ以上のものではありませんでした。

しかし、吉之助サァと愛加那の馴れ初めを判りやすく描こうとしたら、大抵は今回の内容と大同小異の筋書きに落ち着くのでないでしょうか。実際、日テレ版『田原坂』も似たような展開でした。まぁ、三十年以上も昔の作品から進歩していないのもどうかと思いますが、吉之助サァが地元役人の横暴を膺懲する姿に愛加那が一目惚れするというストーリーは、忠臣蔵でいう松の廊下の鮒侍発言のようなもので、視聴者に判りやすい鉄板ネタ、御約束ネタと考えることもできます。それゆえ、今回は褒める点はないけれども、批判するほどのことでもないかなぁと思ったりしました。

 

尤も、メインストーリーがベタに徹さざるを得ない以上、それ以外の場面ではオリジナリティを出して欲しかったのも事実。今回の事件は奄美というクローズドサークルで完結していましたが、折角、冒頭で一蔵サァからの手紙が届いているのですから、国元で一蔵サァが頭角を現していることをアピールする絶好の好機ではなかったかと思うのですよ。ダイカン・タナカが国元への報告書を取りやめる動機は、本編では吉之助サァの名を恐れてのことでしたが、ここは、

 

ダイカン・タナカ「菊池源吾が『あの』西郷? 下らん。先君の御寵愛を嵩に、藩を窮地に追い込んだ西郷如き輩に何の気遣いの必要やあらん」

 

と突っぱねようとしたところへ、

 

木場伝内「徒目付役大久保正助殿より、田中様に宛てられた書状にございもす」

ダイカン・タナカ「大久保……? 国元で飛ぶ鳥を落とす勢いの、あの大久保か?」

 

と驚愕。吉之助サァよりも一蔵サァの影に脅える形で報告書を諦める……という流れのほうが、奄美一島に留まらない物語のスケールを出せたのではないでしょうか。まぁ、この時期の一蔵サァは三郎の懐に完全に飛び込めていないのですが、本作は謎のLOVE理論を展開するためにイトサァの年齢を10歳も繰りあげた前科持ちですから、今更正確な時系列を気にしても仕方ありません。ラストシーンも吉之助サァと愛加那のチュッチュラブラブではなく、木場からの内々の報告書を受け取った一蔵サァが、パチリと碁石を打つところで〆れば、次回の一蔵サァ主役回(だよね?)へのヒキも完璧でしたのに……どうも本作は吉之助サァの半径5メートル圏内でしか物語を描けないという欠点がありますね。いや、まぁ、その5メートル圏内でも大したストーリーになっていないのですが……。

 

 

 

 

 


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