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『おんな城主直虎』第四十三回『恩賞の彼方に』超簡易感想(ネタバレ有)

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井伊万千代「それがしは殿の御寵愛を頂いたぞ! 俺や万福に手を出してみよ! 殿の御怒りが及ぶぞ!」

小五郎・釜吉・犬丸・弥七郎「「「「」」」」

 

万千代のカミングアウトに動揺する先任の御小姓衆たち。何時の時代、何処の世界でも同性に対する嫉妬というのは異性の想像を遥かに越える粘度を含むものですが、今回の万千代と御小姓衆の暗闘はヘタな大奥もの(『花燃ゆ』とかね)よりもドロドロした雰囲気があって、嫌いじゃあありませんでした。家康の『ねぎらい』とか、万千代を『可愛い顔をしている』と評した信康とか、随所に散りばめられた意味深ワードもGOODです。先回の記事でも述べたように、信康は既に複数の武将を介在して、万千代とは『遠い兄弟』になっているのですが、それを知ったら、一層喜ぶのではないかと思います。尤も、上記の場面での御小姓衆のリアクションは、嫉妬というよりもガチモンを見た時のドンびきに近かったようでもありました。尊敬していた社長の意外な趣味を知らされてしまった秘書の動顚ぶりとでもいいましょうか。何れにせよ、真顔で嘘をつける万千代の為人は間違いなく、直親の遺伝であり、目的のためには偏見や中傷を厭うことなく、使えるものは何でも使う政略上の演技力は小野但馬の薫陶でしょう。そして、何気に万千代と共に周囲から色小姓にされてしまう亥之助も、井伊家の考えなしの範囲攻撃の巻き添えを食らう小野家の宿命を背負っているといえます。やんなるね。

一方、井伊谷パートは森林伐採による山岳地の保水力の低下がメインテーマ。ぶっちゃけると本編とも歴史とも殆ど関係ない話ですよねと思えなくもありませんが、目に見える被害が発生する前に諸々の手段を講じることができるほどに、おとわも井伊谷の人々も経験を重ねてきたということでしょう。龍潭寺の敷地で種子島をブッ放しておきながら、小野但馬には内緒にしておこうという、バカにターボがかかっていたとしか思えない頃からは考えられない成長ぶり。まぁ、最初が余りにもアレ過ぎたので、相対的に賢くなったように見えるのかも知れませんが、目的のためにキチンと手順を踏み、時に奇策を用いつつも、徒に眉毛の領分を犯さず、自分にしかできないことを成す今回のおとわの動きは、先任の御小姓衆に仕事を振られなくても、自ら率先して動き、自分で自分の居場所を開拓する万千代の描写に通じるものがありました。やっていることは全く関連性がないのですけれども、この辺の対比は巧かったなぁ。

 

井伊万千代「万千代は己の立場ではなく、働きを以て、あの者らを捻じ伏せとうございます」

 

といいながら、状況に応じて、殿の寵童としての立場を利用するのも、

 

おとわ「近藤様が、この普請をなされれば、井伊谷を救うたは近藤。『見よ、あれは近藤の松』などと子々孫々、代々、語り継がれるやも知れませぬな」

 

と蜜の如き甘く滴る毒を眉毛の耳に注ぎ込んでおきながら、裏では甚兵衛の松と命名してしまうところは、本当に似た者同士。実際、ここ数回のおとわは領主の頃よりもイキイキしているよなぁ……見ているほうのストレスも少ない。

しかし、今回の最大のポイントは

 

内藤昌秀の存在が名前だけでも挙げられたこと

 

でしょう。山県、馬場、高坂と並ぶ武田家四名臣でありながら、大河ドラマ『武田信玄』でも『風林火山』でも、存在そのものが【なかったこと】にされてしまっていた内藤さんに触れられたのは、地味に嬉しい。これ、信長主人公の大河で例えると丹羽長秀や滝川一益が登場しないレベルの話ですからね。世の中には四天王なのに五人いるというネタは数多く存在しますが、四名臣なのに三人しか知られていないというのは滅多にないと思う。

年末のイベントに向けて、色々と忙しくなってきたので、今回はこれにて。

 

 


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