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『おんな城主直虎』第三十二回『復活の火』簡易感想(ネタバレ有)

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小野政次「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ(意訳)

 

滞在先のホテルで連続猟奇殺人事件が発生したうえ、謎の寝落ちをするヒゲ親父と角の生えた女子高生とメガネのガキンチョが同宿しているにも拘わらず、

 

「殺人犯と一緒に居られるか! 俺は自分の部屋に戻るぞ!」

 

と宣言してしまうレベルの死亡フラグを、天にも届くカリン塔の如くブチ立ててしまった小野但馬。直虎の信頼のみならず、なつさんのハートもGETして、恐らくは『今が多分、人生のピークだ!』と欣喜雀躍している彼を、ラスト~次回予告で地獄の底の釜をブチ抜く勢いで叩き落とすとか、脚本家さん、マジ鬼畜の極み(誉め言葉です)。次回の小野但馬の最期は必見ですね。

尤も、今回の内容は必ずしも手放しで褒められなかったといいますか。いや、小野但馬はいいのですよ。ここまで三十二話もの長きに渡り、時には……というか、完全に主人公よりも丁寧に小野但馬の人物描写を心掛けてきた成果が結実していたとは思います(それはそれでどうかという見方もあります)が、但馬の最期は彼一人のみで描けるものではない。彼に引導を渡す井伊谷三人衆の動きがイマイチ判りにくかった感は拭えない。勿論、本作は井伊直虎の物語である(の筈だよね?)以上、但馬の描写ばかりに力を入れるのは考えものとはいえ、実際問題、本作の人気を殆ど一人で支えているのが但馬であるのも確かなので、彼を単なる奸臣として片づけない筋書きにするからには、成敗する側にも相応のパンチ力が必要となりますが、その辺が本作ではちょいと細か過ぎるというか。

 

眉毛「小野を潰せなかったら、ウチらが切り取る所領が減るやん」

眉毛「材木盗難に関する対応を見るに井伊とか小野とか信用できへん」

眉毛「仏像盗難の一件では赤っ恥かかされた。その落とし前つけたる」

 

といった具合に欲望・疑惑・復讐の何れかが原動力であろうことは伝わるものの、どれも決定打には至らない。或いは上記の要素が全マシマシのトッピング状態なのかも知れませんし、そうした井伊谷三人衆(主に眉毛)の暴走を家康が制止できなかったのも、

 

瀬名「小野但馬とか信用できへん。母上売り渡した男の息子やし」

 

という伏線が存在するのも充分理解できるとはいえ、これといった決め手がないままにラストの井伊谷三人衆の暴走に至ってしまった印象を受けました。上記の動機を蓄積したうえで、これが直接の引き金という契機の描写が欲しかったかなぁ。まぁ、構成自体に問題はないので、単純に私の好みに合わないだけかも。『何味かといわれれば困るのだが、とりあえず美味い』というシェフ大泉のインスタントブロッコリーチャーハンのような内容となった今週の『おんな城主直虎』。仕事方面で色々とゴタついている&『アル戦』の記事も控えているので、今週も簡易感想になります。悪しからず。ポイントは3つ。

 

 

1.シャッポが変わるだけ

 

小野政次「他所の商人たちに『是非、うちの領主に』と望まれる。潰されるとなれば、何一ついわぬのに百姓たちが身体を張って歯向こうてくれる。盗賊たちまでが『尼小僧のためなら仕方がねぇ』と一肌脱いでくれる。斯様な領主が、この日ノ本の他の何処におられますか? 私には到底、然様な芸当はできません……降りる道など最早、許されません、殿には」

 

今まで幾度も『当主の座を降りろ』と諫言してきた政次がもはやのがれることはできんぞと笑顔で言い放つ名場面。一見すると、これまでの直虎の苦労が報われた感動の場面に思えますが、先述のように直虎の長所や言動が、そのまま、井伊谷三人衆や今川や徳川の疑念の原因になっている=政次の最期の遠因になってくる辺り、額面通りに受け取れないものがあります。来週、政次の最期を知った直虎が上記の言葉を思い出して、責任を感じて泣いてしまうという展開に六左衛門の魂を全部賭けます。そんな未来が待ち受けているとも知らない直虎は御先祖様縁の古井戸で、井伊家のために犠牲となった人々の霊魂に、

 

井伊直虎「漸く今川に振り回される日々が終わります」

 

と報告。徳川が今川に代わるだけで、大国に振り回される立場に変化はないのですが、今川時代と異なり、徳川の元では譜代の家臣に登りつめるので、結果的に許容範囲でしょう。地味に小野パッパのことも思い出していたのも◎。でも、奥山でんでんの最期は井伊家の犠牲になったというよりも、完全に逆怨みの自業自得としか思えなかったのですが……。

 

 

2.サイコパス二世

 

なつ「斯様な時には『殿のことは、もう何とも思うてない』と、そういうものですよ……なれど、致し方ありませんね。私がお慕い申しあげておるのは、然様な義兄上さまにございますゆえ……(ヒシッ

 

共に本心を隠して、周囲を欺いてきた二人の真心に溢れる告白シーン。これが件のサイコパスであれば、

 

井伊直親「おとわのことは、もう何とも思うておらぬ!(キリッ

 

と爽やかな笑みを浮かべて宣言したことでしょう。直親の闇は深い。まぁ、幼少期にガチで生命を狙われて、あちこち逃げ回ったからね、多少はね……でも、そうなると、現在進行形で逃亡中の虎松も直親のような性格に育つ可能性大。尤も、虎松が魅了する相手は日ノ本一の豆狸なのですよね。ちなみに虎松に随伴している六左衛門ですが、但馬が義理の弟になる(未遂)と知ったら、どんな表情をするやら。冷や汗で顔から失禁するか、逆に開き直って、

 

奥山六左衛門「俺のことは義兄上と呼べ」

 

と居丈高に出るか。ちょっと愉しみではありました。この点でも次回で但馬が退場するのは惜しい。

 

 

3.もうやめて! 但馬のライフはとっくにゼロよ!

 

小野政次「にわかには信じられぬであろうが、井伊と小野は二つで一つであった! 井伊を押さえるために小野があり、小野を『狗』にするために井伊がなくてはならなかった! ゆえに憎みあわねばならなかった……そうして、生き延びるほかなかったのだ! だが、それも今日で終わりだ! 皆、今日までよく、耐え忍んできてくれた(フカブカー

家臣A「とうに存じておりましたよ、殿」

家臣B「我等は我等で、殿を欺いておったのです」

 

何と井伊家の人々ばかりか自分の家臣にまで本心を気づかれていた小野但馬……これは井伊谷三人衆に引導を渡されなくても自ら死を選びたいレベルの恥ずかしさ。しかも、先週と違い、

 

小野政次「井伊と小野は二つで一つ!(ドヤァッ

 

とか気取った演説をぶってしまった分、余計に気まずい。家臣たちも、今まで騙されたフリをしてきたというのであれば、この場も騙されているフリを続けてやれよ。それが武士の情だろ。小野但馬の立場になって考えたら、その場で舌噛み切って死にたいレベルの事案だぞ。寿桂尼の退場で横滑りに作中智謀ステータスナンバーワンの座に収まっていた小野但馬ですが、実は周囲の智謀が低過ぎる所為で相対的に高く見えているだけで、実際は智謀48くらいじゃあないかと思えてきました。そりゃあ、眉毛の企みに気づかない訳ですよ。

 

 

 

 

 


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